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この巻にはベンサムの『道徳および立法の諸原理序説』とミルの『自由論』『代議政治論』『功利主義論』の四作が収録されている。ベンサムとミルは功利主義の最も古典的な代表的人物二人だと言って良い。単なる軽い入門書や軽い解説、軽い哲学史で済ませるのではなく、古典的功利主義を古典的名著、古典的偉人に直接触れる事で理解するため有用だろう。勿論、あくまで収録著作が限定されている以上そのために十分だというわけではない。何にせよ本巻は功利主義の巻だと言って良い。

一見してベンサムよりミルが収録著作数において優遇されているように見えるが、実際ミルの主要な著作に触れるにあたってはなかなか贅沢な集め方がされているようにも思う。初めて見た時は涎が出る思いだった。しかしとても残念なのは『代議政治論』が部分訳で済まされており、かなり多くの部分が省かれてしまっている点だ。厳密には訳者の「要約」が省かれた章には付いているのだが、しかしどれもかなりの短文であるし、省かれた部分は決して少なくはなく、しかも重要性に劣るわけでもなく、名文にも満ちているため、このような要約だけで満足するのは全く困難である。これを補うためには現状、岩波文庫になっている『代議制統治論』を単独で読む他ない。とは言え、これも長らく絶版になっているようで入手があまり容易ではない。優れた著作であるだけに残念だ。ちなみに省かれているのは七章以下なのだが、繰り返すように・・・
ベンサム「道徳および立法の諸原理序説」、ミル「自由論」「代議政治論」「功利主義論」。非常に人間的にも興味深いふたり。

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