「スパイと言われた外交官 : ハーバート・ノーマンの生涯 ちくま文庫」の検索結果

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1刷　 カバー付　 カバーヤケ無し　本体三方ヤケ無し　線引き無し書き込み無し　保存状態良好です。

日本生まれのカナダ人、ハーバート・ノーマンが我が国の「戦後レジーム」に及ぼした影響は実に大きい。ノーマンは1930年代はじめに留学したケンブリッジ大学で時代の背景もありマルキシズムの洗礼を受けた。その後、ハーバード大学で執筆した博士論文をIPR（太平洋問題調査会）から1940年、『日本における近代国家の成立』として出版した。同書が開戦直前の米国の日本観に大きな影響を与えたことは間違いない。そして戦後早々にはＧＨＱの対敵諜報部の調査分析課長として来日し、共産主義者の解放や近衛文麿の戦犯指定と新憲法制定に深く関与した。さらに著書や講演など啓蒙活動を通じて戦後民主主義の創生に深く関わった。

本書は、Ｈ．ノーマンの祖父ウィリアム・ノーマンの英国からカナダへの移民から始まり、宣教師となった父の赴任先の長野で生まれ、駐エジプト大使であった1957年、47歳で自殺するまでの物語である。ノーマンがゾルゲや尾崎秀実のような意味でのスパイや工作員であったかは明らかではないが、左派的な思想をもち、行動したことは事実である。そしてその業績や著書はいまだに一部の知識人の支持を得ているようである。ノーマンは日本に生まれたが、日本の学校教育を全く受けていない。日本の歴史についての解釈は、都留重人や羽仁五郎の影響が大きかっただろう。ノーマンは彼らの代弁者という感じを受けるのは小生だけだろうか？　色々と考えさせられるノーマンの伝記である。