吉田満 著、文芸春秋、昭和55年4月、342p、20cm
4刷 カバー 帯付 カバーヤケ無し 帯ヤケ無し 本体天点シミ 本体小口と地ヤケ無し 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
著者は東大の3年生の時、時の国家により学生でありながら強制徴兵されたあの明治神宮での学徒動員兵である。そして海軍に所属し、戦艦大和の沖縄特攻に加えられたが、大和は撃沈され多くの人がもろとも海に沈んだが、著者は幸い命拾いをし、戦後の復興、高度成長に貢献した世代である。私は昭和23年生まれの戦後派である。著者は多くの徴兵者と同じように国家命令に従い、悶々としてつらい生死をかけた戦争に組み込まれていった。ただ、本人が書くように、このことを彼は与えられた状況として受け入れ、国家に忠誠に義務として受け入れ、どうしてこんなことになったのか、どういう連中等が主導したかなどには関心が言っておらず、深くそれを追及することがない。その代わり、個人の経験と死生観に意識が集中している。そういう点では深いものがあるが、私には物足りない。唯一152ページからの「一兵士の責任」は注目されてよい。戦中派と戦後派の戦争と死生観は当然違って当たり前だが、戦中、戦後を生き抜いた著者の文章としては、すぐれているが、いまいち物足りない。基本的に保守的である。追伸。このレビューを書いてNHKのオンデマンドで「巨大戦艦ヤマトーー乗組員たちが見つめた生と死」(3時間)を見た。興味ある方はぜひのお勧め。