夢想 ＜ルーゴン・マッカール叢書 第16巻＞

初版　 カバー　 帯付　 カバー背少色アセヤケ　カバー両面ヤケ無し　 帯ヤケナッシ　本体天点シミ　小口と地極所為典シミ　小口と地ヤケ無し　線引き無し　書き込み無し　保存状態良好です。　

驚きました。自然主義の巨匠ゾラに、こんな天使のような純潔で美しい物語があったなんて。
舞台は中世そのままの夢にまどろんだような地方都市ボーモン。街の中心であるカテドラルの前に捨てられていた少女、アンジェリクは、カテドラルの傍の家に住む刺繍職人に拾われて、聖歌と鐘の音と、唯一与えられた聖人伝の『黄金伝説』を心の糧として成長します。そしてある日、夢の中の王子様が現れ‥‥。それは少女の夢想が育んだ聖女の奇蹟へと、そして当然のことながら悲劇へと、まっしぐらに向かい‥‥
　いったい、ゾラはこの作品で、何を書こうとしたのでしょうか。ひょっとすると、『居酒屋』などいわゆる代表作の自然主義的ゾラは仮面で、本心はこの作品のような、聖者たちの彫像の見守る中に教会音楽の鳴り響くといった、カトリック的なロマンチシズムにあったのではないかと、考えさせられる名篇でした。