維新史の再発掘 : 相楽総三と埋もれた草莽たち <NHKブックス>
維新史の再発掘 : 相楽総三と埋もれた草莽たち <NHKブックス>
「維新史の再発掘」 相楽総三と埋もれた草莽たち <NHKブックス>
維新史の再発掘 : 相楽総三と埋もれた草莽たち <NHKブックス> <NHKブックス> 相楽総三(小島四郎)は、多くの場合、幕末の江戸攪乱事件の首謀者として さらに赤報隊の偽官軍事件において、知られている。しかし、その姿は 「テロリスト」であったり、「官軍を騙る浪士」であったり、あるいは 「新政府に裏切られた悲劇の義士」であったりと、断片的だ。 そんな相楽の「草莽(そうもう)の志士」としての実像を、史料に基づいて 描こうという労作。関東の尊皇攘夷派の郷士としての活動を縦軸に、 清川八郎や渋沢栄一、桃井可堂らとの共闘。さらに板垣退助や伊牟田尚平、 益満休之助ら薩摩・土佐の人脈への広がりから、やがて関東における 独自の倒幕運動へと走っていった姿に迫る。 往々にして陰謀論の好きな歴史愛好家は、相楽を「西郷の密命で動いたワルイ奴」 的に単純化してしまうが、実際には関東において知識層、豪農・豪商の 有徳家層に反幕の「草莽」活動家が多数あり、それらが民衆の世直しのために 武力行動に出ようとしていたという背景があって、薩土の悪巧み(?)で動くほど 単純な話ではなかったのだ。 一方、この武士ではない(藩の命令でくくれない)、浪士・郷士層の武力集団 というものが、維新直後の東征軍の中で「指揮系統に従わない」独立独歩 という存在で、邪魔者とされてしまった。 相楽の赤報隊の悲劇はそういった背景から引き起こされたのだった (そういう意味で、相楽がもっと政治的に立ち回ることができれば、 あるいは赤報隊が生き延びることができた可能性も…あるか)。 本書が50年も前に出されているため、最新の研究とは矛盾する点もあるので、 その分は差し引いても、今も相楽総三や関東の倒幕運動を知る上で必読の書 と言っていいかもしれない。
現代思想 1976年4月号 特集=幕末の思想 近代日本の源流●吉田松陰の天皇観●西郷隆盛における天皇制●侵略的天皇制の成立