葛兆光著/新井孝重監訳/永田小絵翻訳、志学社、2025
「同文同種」、「一衣帯水」と同質性や共通性が強調されてきた中国と日本。
しかし、両国の近代史がまったく異なる展開を辿ったことからも明らかなように、両国の政治文化の根底には決定的な違いが存在する。
本書は「皇権と革命」、「郡県と封建」、そして「王権と神仏」の三つの観点から詳細に比較検討することで、従来「東洋」として「西洋」に対して一括りにされてきた両国の間には決定的な違いがいくつも存在することを明らかにする。
清末以降、中国の知識人を苦しめてきた難問に、中国史学の理論的牽引者が挑む長編論考、早くも邦訳。
[目次]
日本語版序
【序】 「大同に小異を求む」
【上篇】 皇権と革命――政治権力の合法性
一 皇帝と天皇―「天に二日無し」あるいは「天下を共にす」
二 忠誠と反逆―政治倫理的絶対と相対
三 革命と改良―「王朝交代」か「体制一新」か
四 「革命」か「放伐」か―初歩的な議論
【中篇】 郡県と封建―国家形態と社会構造
一 日本は律令国家だったのか―二重体制と重層構造
二 皇権は県を下る―中国の郡県制と科挙制
三 古代日本から近世日本まで―親藩、譜代と外様
四 近代に向かって―封建と郡県の利害得失
【下篇】
王権と神仏―イデオロギ―と宗教・信仰
一 公家、武家、寺家の鼎立―信長の延暦寺焼き討ちから
二 「皇帝は当今の如来なり」―政治に屈服した中国宗教
三 「権門」と「方外」―仏教の政治文化における相違
四 中世からの脱却―近代化の過程における宗教の位置
五 結論とは言えぬ結論―日中政治文化、政教関係の遺伝子
付録 【書評】
同文同種は大いなる誤解か―尾藤正英『日本文化の歴史』
中世の日本、朝鮮と大明―田中健夫『中世対外関係史』
東アジア外交史の「名」と「器」―周一良訳、新井白石『折たく柴の記』
思想史の政治倫理問題として―丸山眞男『忠誠と反逆』
古琉球史から見る国境内外と海洋アジア―村井章介『古琉球 海洋アジアの輝ける王国』
葛兆光教授『形似神異』―翻訳出版趣意書―(辻康吾)
葛兆光氏の論を読む(新井孝重)