まつやまふみお、愛真出版、1980、133p、22x31cm
目次
◆漫画家誕生・
◆鋭い諷刺のなかにもあたたかな人間味 (蔵原惟人)······
◆カラー図版・解題
モノクロ図版・
◆モノクロ解題
◆漫画人生・
◆松山文雄(永井潔)
年譜まつやまふみおの77年 (石子順)
作品索引0000
レイアウトカバーデザイン/斉藤茂男
鋭い風刺のなかにもあたたかい人間味
蔵原惟人
まつやまふみおの喜寿を記念して、その作品の展示会が故郷の長
野県でひらかれ、また彼の多数の作品のうちから主要なものを選ん
で集大成されたこの画集が出版されることに、彼と同じ年に生れ、
彼と同じ激動の時代に生き、同じ分野で活動したたかってきた私は
特別の感慨をもち、特別のよろこびを感じています。
まつやまふみおが、日本の漫画の歴史のなかで、早世した柳瀬正
夢とともに、戦前からのプロレタリア的、民主的な潮流を代表し、
その先端を歩いてきた作家であることは、ここにあらためて言うま
でもありません。彼はその作品を通じ、この偉大な変革期の生活と
政治の流れのなかで、反動的なもの、否定的なものと、進歩的なも
の、肯定的なものとをはっきりと見定め、その一方に鋭い諷刺の矢
をはなつとともに、その他方に深い同感とはげましをあたえること
によって、わが国現代の社会と文化の発展をたすけてきました。
彼は本書のうちにも収録されているその「漫画人生」という文章
のなかで、ドーミエの作品にふれながら、「漫画は笑いの芸術とい
われるが、悲しみの芸術、怒りの芸術でもあって、歴史上これほど
人間味豊かな漫画をかいた人はいない」と言っていますが、彼もま
たこうした漫画を指向した芸術家で、この時代の生活を広く深く観
察し、体験し、若い頃に童画や詩をかいていた彼の作品には、その
痛烈な諷刺のなかにも、人間的、抒情的なものが流れていて、それ
が彼の作品を親しみ深いものとしています。
私はこの画集が多くの人びとに受けいれられるとともに、彼の健
康と健筆が今後とも変らないことを期待します。
カバー(少ヤケ、弱シミ)