文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大

古書を探す

転換期の歴史  第二次世界対戦終了後、アメリカとソ連という二大超大国の世界支配とAA諸国の台頭という新情勢を眼前に、世界史の終点にして世界のモデルというヨーロッパ像を前提とした、従来の世界史=ヨーロッパ史像はその根底的な再検討を余儀なくされた。このようなヨーロッパ史の相対化は、戦後も70年を経たいま一見確かに「あたりまえ」のこととなっているのかも知れない。50年代に活躍したヨーロッパそれもその中枢を自負したイギリスの歴史家たる著者バラクラフの、少なからぬとまどいを孕んだヨーロッパ史の相対化=その多元的世界史像への開放の主張には、今となってはある種の新鮮さすら感じられる。  だが21世紀に生きる我々は本書に彼が示した歴史叙述上の課題を、本当に克服したと言えるのだろうか。確かに表面的なヨーロッパ中心主義的歴史叙述は影を潜めたのかも知れない。だが言語論的展開後の論争により再度強調されたように、歴史叙述の価値観に支えられたレトリック性を有することを考えるに、今日の歴史叙述が不可視のヨーロッパ的価値観から脱却できているか、疑問なしとはしない。新自由主義-グローバリズム的言説の支配を通じて、かたちを変えた啓蒙主義的価値観は依然我々の思考を骨がらみにしているのではないか。その点で本書第一章に語られる歴史叙述の問題は、依然我々自身の問題たり続けている。  そうした歴史における西洋的価値の相対化の意識を踏まえ第2章、3章では、ヨーロッパ理念の再検討が語られる。ここでもまた著者は従来的-近代至上主義的な立場に立つヨーロッパ像を批判する。だがその一方で彼はヨーロッパという歴史的現象の実在を信じ、これを断固守り抜こうとしているかのようにも思われる。とはいえそれは地理的にはロシアや東欧、時代的には暗黒時代として軽視されがちだった初期中世を含む、より柔らかな文化的伝統を核に結晶するヨーロッパである。  続く第4章~8章においてはこうした著者独自の歴史叙述観、ヨーロッパ史観を背景に、著者の専門分野である中世史の諸問題が これまでの図式的把握とは若干異なった光源を通じて考察されている。それらの論考は中世史の諸事象を、近代中心史観の色眼鏡にもその裏返しとしてのロマン主義歴史観の色眼鏡にも染め上げられることなく、それが形成する正にその形成過程そのものの内懐に入り込んで理解しようとする姿勢において、一貫している。皇

佐藤書房

転換期の歴史  第二次世界対戦終了後、アメリカとソ連という二大超大国の世界支配とAA諸国の台頭という新情勢を眼前に、世界史の終点にして世界のモデルというヨーロッパ像を前提とした、従来の世界史=ヨーロッパ史像はその根底的な再検討を余儀なくされた。このようなヨーロッパ史の相対化は、戦後も70年を経たいま一見確かに「あたりまえ」のこととなっているのかも知れない。50年代に活躍したヨーロッパそれもその中枢を自負したイギリスの歴史家たる著者バラクラフの、少なからぬとまどいを孕んだヨーロッパ史の相対化=その多元的世界史像への開放の主張には、今となってはある種の新鮮さすら感じられる。  だが21世紀に生きる我々は本書に彼が示した歴史叙述上の課題を、本当に克服したと言えるのだろうか。確かに表面的なヨーロッパ中心主義的歴史叙述は影を潜めたのかも知れない。だが言語論的展開後の論争により再度強調されたように、歴史叙述の価値観に支えられたレトリック性を有することを考えるに、今日の歴史叙述が不可視のヨーロッパ的価値観から脱却できているか、疑問なしとはしない。新自由主義-グローバリズム的言説の支配を通じて、かたちを変えた啓蒙主義的価値観は依然我々の思考を骨がらみにしているのではないか。その点で本書第一章に語られる歴史叙述の問題は、依然我々自身の問題たり続けている。  そうした歴史における西洋的価値の相対化の意識を踏まえ第2章、3章では、ヨーロッパ理念の再検討が語られる。ここでもまた著者は従来的-近代至上主義的な立場に立つヨーロッパ像を批判する。だがその一方で彼はヨーロッパという歴史的現象の実在を信じ、これを断固守り抜こうとしているかのようにも思われる。とはいえそれは地理的にはロシアや東欧、時代的には暗黒時代として軽視されがちだった初期中世を含む、より柔らかな文化的伝統を核に結晶するヨーロッパである。  続く第4章~8章においてはこうした著者独自の歴史叙述観、ヨーロッパ史観を背景に、著者の専門分野である中世史の諸問題が これまでの図式的把握とは若干異なった光源を通じて考察されている。それらの論考は中世史の諸事象を、近代中心史観の色眼鏡にもその裏返しとしてのロマン主義歴史観の色眼鏡にも染め上げられることなく、それが形成する正にその形成過程そのものの内懐に入り込んで理解しようとする姿勢において、一貫している。皇

¥1,000

  • 著者 G.バラクラフ 著 ; 前川貞次郎, 兼岩正夫 共訳
  • 出版社 社会思想社
  • 刊行年 昭和53年9月
  • ページ数 417p
  • サイズ 19cm
  • 状態 中古品(良好)
  • 解説 4刷  カバー月 カバー背少ヤケ  カバー両面ヤケナ無し 本隊三方少ヤケ 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。

クレジットカード使用可 銀行振込可 代引き不可 公費可 海外発送可

マスターID:256458
初版刊行年:1964

かごに入れる
気になる本に追加
印刷

店舗情報

店舗外観

〒192-0082
東京都八王子市東町 12-16 
TEL:042-645-8411
FAX:042-645-8415

東京都公安委員会許可 第30883078591号
書籍商 佐藤書房

新着書籍

書籍の購入について

支払方法等:

郵便振込み、銀行振込み、クレジットカード決済(「日本の古本屋」での受注のみ)

・先払いをお願い申し上げます(公費のぞく)※受注後14日間ご連絡または入金確認できない場合、お取引キャンセルとさせて頂きますのでご了承下さい。

公費購入は合計金額税込み1000円以上のご注文で対応いたします

代引きの扱いはありません。

商品引渡し方法:

クリックポスト、レターパックまたはゆうパック
※商品代金とは別に送料をご負担いただきます
厚さ3cmA4サイズまで1kg以内はクリックポスト 送料185円
厚さ3cmA4サイズまで4kg以内はレターパックライト 送料430円
厚さ3cmを超えレターパックプラスの封筒に入るサイズ 送料600円
それ以上の品はゆうパックにて発送いたします。
価格表をご参照ください。
https://www.post.japanpost.jp/cgi-simulator/youpack.php

なお店頭での受け渡しも可能です。

・ゆうパック以外は日時指定出来ません。日時指定をご利用になりたい方はゆうパックをご利用ください。

返品について:

※こちらの瑕疵によるものでないかぎり返品・返金は致しかねます。

他特記事項:

・日曜日の配送はございません※12月31日〜1月3日まですべての業務を休業いたしますので、この期間のご注文対応はいたしかねます。

・2023年8月10日より海外発送は不可となりました。

・If you wish to ship internationally, please buy from Buyee.

書籍の買い取りについて

出張買取も対応いたします(ダンボール2箱以上より)ジャンル不問。まずは事前にご連絡の上ご相談くださいませ。