加藤俊明 [ほか] 編、NHKプラネット東北 , NHKプロモーション、2012、414p、27cm
生誕100年 松本竣介展開催にあたって
画面に湛えられた澄み切り痛いほどの詩情。 松本竣介の画業はいまなお多くの人の心を捉えて離しま
せん。本年、2012年は松本竣介の生誕100年の記念すべき年に当たります。 この年に、第二次世界
大戦をはさむ20世紀半ばの日本近代美術を代表する画家のひとりである松本竣介の、その重要性と
汲み尽くせぬ魅力に相応しい規模と内容を備えた回顧展を開催することは、今回の巡回展に参加し
た美術館にとって思いを共有する長年の宿願でありました。2008年から参加館相互の調整が開始さ
れ、2009年春以後、 画家のご子息である松本莞氏の全面的なご協力を頂きながら、会合を重ね、よ
うやく実現に辿りついた展覧会です。
当初、巡回先の会場が、 画家との縁の深い、岩手、 神奈川、 宮城、島根、 そして、 東京と、日本各
地に分散する5館の公立美術館となり、当然、 借用期間も長期に及び、 同じ内容では巡回は不可能
ではないかと危ぶまれ、 展示作品を大幅に変更していくような変則の巡回展案も検討されました。と
はいえ実際に出品交渉を開始してみると、 所蔵家の方々、作品を収蔵する多くの美術館のご理解とご
協力を幸いにも頂くことができ、一部展示替えの必要はありますが、全体としては、ほぼ同じ内容の展
覧会として巡回することが可能になるという、主催者としてたいへん喜ぶべき誤算がありました。しかし、
昨年2011年3月11日に東日本大震災が発生し、巡回館のうち宮城県美術館は施設の一部が地震に
よって被災し、 一時期閉館して修理することを余儀なくされ、 また、 岩手県立美術館は2011年度の特
別展の開催をすべて断念するという予想外の事態に立ち至りました。本展準備の本格的な再開まで
の間、関係者の方々には、たいへんご心配をおかけし、同時に多くの励ましの言葉を頂きました。連
絡の不備などの不手際をお詫びするとともに、かわらぬご理解とご協力にたいして心より感謝申し上げ
る次第です。
ハードカバー