菊地章太 著、大修館書店、2011、216p、四六判
西暦1900年、北京。義和団の襲撃を逃れ、公使館区に避難した人々は、孤立無援の籠城戦を強いられることになる。そのなかに、若き日のフランス人東洋学者ペリオの姿もあった。かれは日々の出来事を小さな手帳に書きとどめていた。知られざるペリオの日誌を手がかりに、いま明かされる「北京の55日」の真実!
欧米列強を仰天させたこの事件に関しては、その直後からおびただしい数の書物が出版された。おそらく欧米では中国近代史のなかでも群をぬく量ではないか。現場で事件に遭遇した人々の記録も数多く残されている。
ペリオ自身も二ヶ月におよんだ籠城のようすを事細かに手帳にメモしていた。この手帳は他の書類にまぎれて、ずっとコレージュ・ド・フランスの図書館に埋もれていた。それが再発見されたのち、煩雑な校訂作業をへて『北京日誌』と題して公刊された。
これは動乱の渦中にいた人間の記録である。義和団事件を回想した書物はたくさんあるものの、たいていは後日談であって、リアルタイムで記録した資料はかならずしも多くない。
本書は、このペリオの記録をもとにしながら、西洋人の目に映った義和団事件の経過をたどるこころみである。従来の定説をくつがえすとは言わないが、普通に理解されている事件のあらましとはややちがった面も見えてくるであろう。
登場人物も多彩である。日本から北京に留学していた学者たちも北京籠城に加わるはめになった。のちに日本の東洋学をしょって立つ人々であるが、その人たちの回想も残されている。ペリオのそれと比較してみたい。また、日本ではよく知られたジョージ・モリソンも登場する。世界に名だたる東洋文庫にかかわりある人だが、なかなか複雑な人物であったことがうかがえる。
ペリオの日誌の校訂本には、義和団事件のときの写真が掲載されている。彼自身の撮影ではないけれども、貴重な映像なのであわせて紹介したい。(「はじめに」より抜粋)
目次
はじめに
◆第1章 義和団事件の世界地図
◆第2章 ペリオの手帳から
◆第3章 暗雲たれこめる北京
◆第4章 翻弄される人々の群れ
◆第5章 単身敵陣乗りこみ
◆第6章 前近代か、汎時代的か
◆第7章 いくつもの女帝像
◆第8章 ペリオ、中央アジアへ
参考文献
登場人物
あとがき
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