恵畑欣一 [ほか]編、日本医師会、1991.9、364p、26cm
編集にあたって
現在の画像診断学は従来のX線診断学に加えてコンピュータ断層 (CT),超音
波検査,核医学検査などの新しい画像診断法も臨床の第一線に欠くことのできな
い手段となってきた。近年の画像診断法の進歩は著しく, 磁気共鳴画像 (MRI),
digital radiography, サイクロトロン核医学,さらにコンピュータを用いた新し
い画像診断法が続々と登場してきた. 放射線診断学の潮流は大いに変わりつつあ
るといえよう。 画像診断の所見が手術所見,肉眼的病理所見と多くの分野でよく
合致するという静的な面もさることながら, 動態 CT, 核医学, MRI の進歩は生
体内の動的過程の画像化をも可能にせんとしている。これらのハイテクノロジー
を駆使する診断法はより多く施行すればより多くの情報を得られることはもちろ
んのことであるが,実際の臨床ではこれらすべての画像を情報手段とする必要は
ない。むしろこれらの診断法の適応と限界をよく知り, 不必要な検査は避ける努
力が望ましい。 画像診断を並列的に考えるのではなく,患者を出発点としてス
テップを踏んだ検査を進め、 新しいタイプの情報を加え,それらを統合し、最も短
い距離で,最も良い情報を得る診断フローチャートを考えて診断を進めていくこ
とが必要となってきている。 すなわち, 正確, 迅速, 安全,低侵襲, 低被曝など
を考えて診断の最適化が望ましいことになる。
患者の症状から出発した問診, 診察, 検査という過程は画像診断の選択と順序
にも最適化を要求する. したがって,この過程を, 症状から診断まで類型化する
ことははなはだ困難なことであり, あるいは不可能とさえいいうるかもしれない.
今回日本医師会の生涯教育シリーズとしての『症状からみた画像診断』はそのなか
で代表的なサンプルと考えられるもので,考え方の統制を意図したものではなく、
むしろ異なった考え方をもつ会員の方々の批判を待つべく企画されたものと理解
している。このような無理難題をあえてお引き受けいただいた各執筆者の諸先生
のご努力に対してお礼申し上げる次第である.
本書が各医師会において生涯教育の一助として利用していただければ望外の喜
びである。
昭和61年11月
状態:良