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状態良好　

1刷　 カバー 帯付　 カバーヤケ無し　 帯ヤケ無し　本体三方ヤケ無し　線引き無し　書き込み無し　保存状態良好の美本です。
この小説はトリニダードという国のミゲル・ストリートという小さなコミュニティーを舞台としていて、少年の「僕」が成長の過程で出会う、様々な大人を一人ずつ丹念に描き出していきます。そして、少年が出会う大人と言うのが、一般的にはよい大人ではないのだけど（ネクタイをしめてきちんと働いていたりしないし、奥さんや子どもをなぐったりしてしまうし、犯罪を犯して刑務所に入れられたりしてしまう）、そして、経済的にあるいは情緒的に不安定な人生を送らざるを得ないのだけど、それぞれ自分なりの個性や人生観を持っていて、きわめて魅力的な人たちなのです。
　また、この小説の登場する大人は共通してある種の諦観を持っているようで（ある大人は「人生ってのは大変なもんだぜ。厄介ごとが起こるってわかっていても、それを止めるのに何もできねえんだ。腰を据えて状況を見つめて、じっと待つことしかできないなんてな」と言います）、読んでいて人生が思うようにいかないことの悲しさや苦しさを感じざるを得ないのですが、一方、そのような悲しみや苦しみを超えて（あるいはそれらを受け入れて）、なんとか自分なりの人生を歩もうとする人の強さも感じられるような気もします。
　最後は、少年が様々な思いを抱えつつも新しい世界に前向きに向かっていく姿が描かれますが、この場面に関しても、個人的には自分が故郷を離れる場面が思い出され、心に沁みるものがありました。
　もしも死ぬ前にあと3冊だけ小説を読んでよい、ということになったら、そのうちの一冊はこの本を選びたいと思います。