亀田治男 編集、医学書院、1983.10、509p、26cm
今回, NIM Lecture Series の一つとして消化器病学が刊行された。 その編集に当たったものとして,はじめに,本書の企画, 目的, 特徴などを記載する。
近年,医学の長足の進歩に伴い, 臨床医学の各分野においても, 医学生が学習すべき内容が
極めて膨大なものになってきた。 このために, 思考し、 自習する余裕がなく, 十分に理解し
ないまま暗記に努めるというような状態がみられる。 従って, 医学生に臨床医学をどのように
教育すべきか, 効果的に履習させるにはどうすべきかが,臨床医学教育上の差し迫った重要な
問題である.
そのためには,内科学教科書に関しても、従来の内科書にみるように, 膨大な内容を一様に
羅列するのではなく, 何が重要であるのかを明示し, かつその内容をよく理解しながら記憶で
きるような教科書が必要である.
この度, 医学書院で企画された NIM Lecture Series は,従来の教科書とは全く異なり, 内
科学の広範な領域における重要な主題を整理し、その目的に沿うように編成されたものである。
Lecture Series の消化器病学においても,まず各疾患の病態生理を理解し, その上で診断・
治療へと進めるよう配慮した。これは,診断や治療などの臨床の実際は,病態生理の理解の上
に立って,初めて納得のいく学習が可能であるからである。また, 1Lecture はおよそ1時間半
の講義を想定して,教えるべき内容を整理して頂いた。従って,各Lecture は消化器病学の講
義の要点を記載し,これを補足したものであり、講義のプリントとしての役を果たすものでも
ある.さらに,わかりやすい図や表をできるだけ多く盛り込むことによって,講義内容を一層
印象的なものとするよう努めた。 これは暗くなった教室で見にくい講義のスライドを,ノート
に書き写すような苦労を排除するのにも役立つと思われる。
この新しい構想になる教科書によって, 医学生が思索の余裕と一層の興味とをもって、臨床
医学を学習することができるよう期待するものである。
1978年6月
編者
薄ヤケ