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即売展の魅力を語る その5 古書即売会の魅力を語る

古書即売会の魅力を語る

大貫伸樹

 かつては、朝早くからリュックを背負い神保町、五反田、高円寺と、古書市をはしごして回る、そんな週末が楽しみでたまらなかった。が、2年前に体調を崩してからはインターネットを利用することが多くなった。家にいながら欲しい本がすぐに手元に届き、本によっては1+250円(送料)で購入できる。牛丼の売り口上ではないが、早くて安くて出前までしてくれるので、交通費をかけて古書市に出かけ、重い本を背負ったりするリスクがなくなった。しかし、リスクと共に何かが消え、物足りなさがつのるようになった。

健康を取り戻した今、なぜか週末になるとリスクを背負ってまでもいそいそと古書市に出かけたくなる。一方には、稀覯本や高価な本は即売会にはないよ!と止めようとする自分がいて、葛藤に苦しむ。が、ネットではヒットしない掘り出し物や格安本があるかもしれない? そんな期待感と誘惑がついには即売会へと向かわせる。

 装丁や挿絵関連本を集めている私は、まさに面食い。若くて色白で美しいのが……あ、いや、古くて色黒がいいな。多少しわがあっても安いほうがいい。時代遅れの衣裳をまとい、背が破れているのを気にして隅の方で「おじさん私をお家に連れてって」と、恥ずかしげにしている君に胸キュンさせられる。こんな本にであった時こそが「今日も来た甲斐があった!」と思う至福の瞬間で、「お持ち帰りさせていただきま~す」と決断する。

 そんな古書即売展で出会った2冊の嬉しい本を紹介しよう。

 岡本歸一(1888~1930年):画『ガリバー旅行記』(冨山房、1910年)。33歳の岡本が描いた装画・挿絵は、岡本も見たと思われる1894年に24歳だったC.E.ブロック(1870~1938年)が描いたガリバーの絵に負けない迫力がある。当時は二人ともそれぞれの国を代表する若き挿絵画家で、何れの本にも見事な挿絵が沢山掲載されて魅力的だ。

 もう1冊は、小松崎茂:装画/武部本一郎:口絵・挿絵『八十日間世界一周』(岩崎書店、1964年)。ちょっと壊れているが価格が安いので帳消しだ。この本が本日最大の掘り出し物! 小松崎茂と武部本一郎という当時の最強コンビがタックを組んでいるのが魅力 だ。今まで何冊もの『八十日間世界一周』を集めてきたが、この挿絵が原書(エッツェル版)の挿絵に左右されず全く違う構図で描かれて一番躍動感に溢れている。オリジナリティ溢れたカラー口絵は本当にすばらしい! これこそが、本を手にとって見ることができる古書即売会だから見つけることができる掘り出し物であり、感動だ。

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