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古書を探す

古書市場の基本知識

  • 市場の特徴

    古本屋の市場というと、青果市場のように卸業者がいるように誤解されることがありますが、実際には古本屋同士が品物を持ち寄り、自店でいらないものを売って必要なものを買って行く「相互交換方式」です。正式には「交換会」と呼ばれています。

    東京には4カ所の古書会館があって、それぞれに交換会が開かれています。最大の会場は神田にある「東京古書会館」で週5日6回の市場が開かれています。

  • 市場では、ひとくくりにされた本が多い。

    市場では、高額な本は一冊でも出品されますが、同傾向の何冊かをまとめて取引することが一般的です。一冊ではたいした値段にならないので、ある程度まとめて取引しようということですが、まとめることでバラバラより価値が出る場合もあります。

    短時間で何万冊という本がやりとりされるので、一冊ずつ評価して積算するにしても、その価格は一瞬で判断できなければなりません。全部調べていたらとても間に合いませんから、多くの本の価値を記憶しておくことが古本屋にとってなによりの武器になります

  • 交換会について

    古書の市場は正式には「交換会」といいます。全古書連傘下の古書組合に加盟の業者だけが参加できます。自店で不要の品を持ち寄り、他店が出品した品を持ち帰るので「交換」会です。

    東京で行われている交換会の方法は、「置き入札」「廻し入札」「振り市」の3種類です。

  • 置き入札

    置き入札では品物はテーブルのような台の上に載せられていて、会員が歩いて見て回ります。各出品物は入札単位ごとに紐で括られ、封筒が添えられています。この封筒の中に買いたい金額と名前を書いた紙を折りたたんで入れていきます。(これが入札)。

    開札の時間が来ると開札担当者(「経営員」といいいます)が、封筒から札を取り出して、落札者と落札金額を決めます。多くの市会で、この落札情報を読み上げて発表します。これを「発声」といっています。

    入札金額には端数をつけることが多い。これを「ヒゲ」といいます。ヒゲは10円単位までです。24620円vs.24660円のように、ほとんど同じ金額で、端数の勝負になると、「ヒゲの差で勝った」などといいます。

  • 廻し入札

    廻し入札は火曜日の「東京古典会」でだけ実施されています。テーブルをロの字型に置いて入札する人は椅子に座って待ちます。お盆の上に載せた本が回ってきて、見終わったら隣の人に回します。一周回ったら終わりです。

    封筒に入札する点では置き入札と同じですが、一つ一つの品物をじっくり見られる方法です。ただし、重量のあるものや嵩のある本は回せないので、軽い和本などを扱う市場でしか実施できません。

  • 振り市

    「振り」は声を出すオークションです。

    今は神田の東京古書会館では模擬的に行われる程度ですが、神田以外の3つの地区会館では主要な方法です。

    品物は出品者(店)ごとに山にされていて、ここから少しずつ切り出して、床に敷いた板の前に座った「振り手」に渡されます。振り手は本の書名や特徴を読み上げて、「こーれーがー、500円!」と最初の金額(ハナゴエ)を出します。買い手は振り手を囲むように車座に座って、「1000円!」「1500円!」と、威勢よく声を出していきます。声が止まると、振り手は最後に声を出した落札者に品物を滑らせるように投げてよこします。それと同時に記録担当者が、金額と店名を書き留めていく(この帳面を山帳という)。

    品物の組み合わせは、振り手の横で荷出しする人が決めます。どの本とどの本を一緒にするか、出す順番などは全部この荷出し人と振り手とあうんの呼吸がものをいうので、ここが一番の要になります。かつてはこの時の助手を務めるのが新参古書店の修行だったそうです。また、振り手の声の出し方で、品物の魅力が増減するので、値段を高くするのは振り手の技になります。山帳は正確さと俊敏さが要求されます。

  • 東京古書会館の市会

    東京古書会館(神田)では毎平日交換会(市場)がおこなわれています。

    月曜日:中央市会
    一般書の市会。マンガや文庫から学術書まで、広い分野の本が扱われています。最近ではサブカルチャー関係のプレミアもの、70年代の雑誌なども活発に取引されています。
    出品点数は他の市会よりも多く、他県の古本屋もたくさん来場します。
    火曜日:東京古典会
    主に古典籍から明治初期以前の和本を扱う市です。廻し入札を中心におこなっています。
    秋に行われる大市では、一般客が入場できる下見展観があります。(一般の方も古書店を通して入札できます。全古書連加盟店へご相談ください。)
    火曜日:東京洋書会
    洋書の市会。15世紀のインキュナブラから最近の海外文学研究まで。
    水曜日:東京資料会
    学術雑誌、地方史、社史類、行政資料、一次資料など、資料ものを扱う市会。文京支部(本郷=東大周辺の古書店街を中心とした支部)の市会が源流です。学術書や、一般書、美術書も出品されています。
    木曜日:一新会
    神田支部の市会。神田の老舗の力を背景に、地方からの出品も多く集まります。
    金曜日:明治古典会(明古)
    明治から最近までの初版本、限定版、版画刷りもの、書画、肉筆もの、原稿など、コレクターズアイテムの市会。
    毎年7月に開催される明古の大市会「七夕大市」は、東京古典会の大市と並んで業界最大規模の大市です。一般のお客さんも下見会場に入ることができ、古書店を通して入札できるようになっています。(全古書連加盟店へご相談ください。)

    各々の交換会の主催団体を「市会」といいます。神田で交換会を持つ市会は毎年一度の「大市」を開催しています。

    大市は他には「全古書連」主催のものや、各県の古書組合が開催するものもあります。


澄田喜広著『古本屋になろう!』青弓社、2014、から転載。

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