文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大

古書を探す

メールマガジン記事 日本の古本屋メールマガジン2011

2011年4月25日 第102号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
  。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
      。.☆.:* その102・4月25日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国900書店参加、データ約600万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

☆INDEX☆
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  1. 『再販/グーグル問題と流対協』論創社刊 高須次郎
  2. 『草森紳一が、いた。』 東海晴美
  3. ミネルヴァ書房『究』(きわめる)編集長 杉田啓三

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

━━━━━━━━━━【自著を語る(53)】━━━━━━━━━━━

『再販/グーグル問題と流対協』(論創社)

    高須次郎

 私が会長を務める出版流通対策協議会(流対協)は、中小零細出
版社97社で組織する出版業界団体である。1997年に公正取引委員会
が本の定価販売制度=再販売価格維持契約制度(再販制度)の見直
し発言を機に再販制度の擁護を掲げて発足した。大手取次店による
中小零細出版社に対する差別的取引の撤廃や言論出版の自由の課題
を加え、この3つの課題を中心に活動を続けてきた。

 発足以来33年以上が経つのに、その時々の業界紙誌での論文はあ
るもののまとまった本がなく、大手出版社の団体である日本書籍出
版協会(書協)とは立場を異にすることも多く、その辺も含め説明
をする必要があるとも考えていた。そんな矢先、論創社の森下さん
から「出版人シリーズ」の企画の話があって、良い機会と思ってこ
の本になった。インタビューアーの小田光雄さんは私の好きな著名
な出版評論家で、再販制度については全く見解を異にする点が、む
しろ刺激的でもあった。

 この本のポイントは、つぎの諸点にある。まず昔は本には奥付に
定価が記されていたが、なぜいつの間になくなってしまったのか、
また新刊書籍などはなぜ定価販売でなければならないのかを分かり
やすく説明した。また本の定価表示が外税表示になっているのは、
内税表示を推進した書協に対し、流対協が外税表示を主張、公取委
を訴えた消費税定価訴訟と消費税の値上げで流対協の主張通りの外
税表示となった顛末も明らかにした。

 再販制についてはコンパクトに歴史を辿った。オイルショックの
インフレで、出版社がシール張りによる定価の値上げや奥付定価を
止めたりしたため、公取委が定価販売の特権を濫用し消費者利益に
反すると批判し、これに対し流対協の結成などを含め出版界の再販
擁護の運動がおき、現行再販制度が成立するまでを第Ⅰ部で取り上
げた。皮肉にも消費税の導入により、奥付定価が事実上なくなって
しまった経緯なども明らかにした。

 その後、日米経済摩擦により、米国が再販制の廃止を要求、医薬
品などの指定再販制度が廃止されるだけでなく、著作物法定再販制
そのものの期限を区切っての廃止の要求がなされたため、新聞、出
版などの業界による再販制擁護運動が展開される。なんとか3年間
のモラトリアムになったが、その間に出版界では書協などが再販制
度を守るためとしてバーゲンブックなどの弾力運用を展開、内部か
ら崩れ始めるが、流対協は再販制度の擁護の姿勢を崩さなかった
(第Ⅱ部)。

 出版界では流対協そして新聞業界の再販制擁護の意思が堅く、20
01年に同制度の当面存置が決まるが、逆に再販制度の擁護の名目で
弾力運用が行われる。昨年になって、流対協の申入れに対し公取委
は再販制の見直しは行わないことを表明し、ようやく一件落着とな
る(第Ⅲ部)。

 グーグル問題についても書協は参加が得策としたが、流対協は出
版社の自殺行為としてこれに反対、グーグルに勝利するまでの顛末
が明らかにされる(第Ⅳ部)。
  小さな出版社団体が、さまざまな出版流通問題で決定的かつ重要
な役割を果たしていたことが分かっていただければと思う。

高須次郎(緑風出版代表)
    『再販制/グーグル問題と流対協』論創社刊
      http://www.ronso.co.jp
  緑風出版
     http://www.ryokufu.com/top.html

━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━━

『草森紳一が、いた。 友人と仕事仲間たちによる回想集』  

  編集人 東海晴美

2008年3月末、自らを物書きと称した草森紳一が門前仲町の自宅マ
ンションで、蔵書の山の中で亡くなっているのが発見された。
数日前から、締め切りなのに連絡が取れないことを心配した編集者
たちが草森を探しまわっていた。電話は通じず、郵便受けをのぞい
ても取り出した様子はない。マンション7階の外階段に座ってじっ
と隅田川を眺めながら帰りを待っていた彼らが、ともに動き出した
のは何日からだったか。
草森の行きつけのコンビニや喫茶店で聞き込みを始め、行き倒れの
老人を見かけなかったかまで、尋ねたという。マンションの中は?
  本の洞窟と化した部屋の中は暗いばかりで見つからない。交代で
草森さんの帰宅を待とうと当番を決めた翌日、懐中電灯を持って入
った編集者に発見されたのだった。

死因は心不全で、本人も予期しないほど突然の出来事だったと思わ
れる。『本が崩れる』(文春新書)で予言されたかのような死。
4~5万冊と言われていた蔵書の山を前に呆然とするばかりの日々が
過ぎて、少しずつ少しずつ、遺族と有志たちによって本の整理と目
録の入力が行われていった。
その過程でみんなを驚嘆させたのは、マンガ本から和とじ本、漢籍、
豪華な美術書に至るまで細かい書き込みやチェックが入っていたこ
とだ。あらゆる本が、草森さんの血肉となっているのだった。

草森紳一の生きる凄みを知って、草森の人間像と仕事をもっと知り
たいと本書の制作を思い立った。歴代の担当編集者はもとより、居
酒屋の女将に至るまで78名もの人たちから愛にあふれた!回想文を
いただくことができた。
武田泰淳が草森の文章をほめた(村松友視)というけれど、サブカ
ルのみならず幕末、ナチス、文革など多岐にわたる仕事の全貌も伝
えたいと、全著作と連載リストも掲載した。
書物の受難の時代に、存分に読み、書いて、筆一本で生きた草森紳
一という物書きがいたことを、ぜひ知って下さい。

*取り扱い書店は、草森関連ブログで紹介しています。
晴美制作室 info@harumi-inc.comでも受付中です。

<草森紳一関連ブログ>
崩れた本の山の中から http://d.hatena.ne.jp/kusamori_lib/
その先は永代橋 http://d.hatena.ne.jp/s-kusamori/

━━━━━━━━━━━【編集長登場(2)】━━━━━━━━━━━

「『ミネルヴァ通信「究」』の創刊」

ミネルヴァ書房 代表取締役社長 杉田啓三 

 人文・社会科学の専門書を刊行する日本一の出版社になりたい。
そう思って30年間、編集者を続けてきた。
  入社したての昭和51年のわが社の新刊は60点余、それが今では年
間300点を超す。そのうち半分以上が専門書である。売れない本を出
してよくつぶれないでやっているネ、と周りの人から言われること
がある。

 しかし、専門書は儲からないのか?。そんなことはない。もとも
と小ロットの専門書は、不況と無縁であり、目に見える読者を対象
とすることで最も効率が良い。時代が変わっても研究者を主体とす
る読者は絶えず再生産されるのである。少なくとも、ベストセラー
と違って手堅くやれば出版社の土台をゆるぎなくする、そう確信し
て作りつづけてきた。

 東京では、出版不況のもと、益々本を読まない若い人が増えた、
と会えば口について出るのが、そういったグチである。確かに、数
字の上では、出版界全体としての「パイ」は年々小さくなってきた
が、果して「活字離れ」は進んでいるのか。
  私には、この業界が自分たちのよって立つ基盤である、若い読者
を本気で育ててきたのか疑問だ。高度成長の右肩上がりのときには、
浮かれ騒ぎ、不況の波に洗われると読者のせいにする。縮小再生産
の現状は地道に畑を耕すことを忘れたツケが回ってきた、としか考
えられない。

 昨年は「国民読書年」といわれながら、「電子書籍元年」の乱痴気
騒ぎに、主役の座を奪われてしまった。改めて「本」とは何かを問
い直してみる必要を痛感する。

 今度、小社では『ミネルヴァ通信「究」(きわめる)』を創刊し
た。小さな冊子だが、大切に育てていきたい。京都はわが国出版の
ルーツの地である。本づくりの原点に立ち帰って、今一度じっくり
と読者の掘り起こしを行っていこうと思う。
  是非、『究』を手に取って、ミネルヴァ書房の長年の専門書づく
りの「魂」を感じていただきたい。

『ミネルヴァ通信「究」』
   http://www.minervashobo.co.jp/book/b88376.html
   毎月1日発行/A5判64頁
   定価315円(税・送料共)/年間購読料3780円(税・送料共)
*定期購読のお申し込みは、小社営業部へお願いいたします
  TEL075-581-0296 FAX075-581-0589
  E-mail eigyo@minervashobo.co.jp

  ミネルヴァ書房  http://www.minervashobo.co.jp/

━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━━

『筑摩書房 それからの四十年 1970-2010』 永江朗著 
   (筑摩書房刊、定価(税込)1,890円)好評発売中
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480015174/

『12人の優しい「書店人」』 山本明文著
   (商業界刊、定価(税込)1,470円)好評発売中
  http://www.shogyokai.co.jp/shopping/

『古本屋慕情』青梅多摩書房 中村靖則著
(平安工房刊、定価(税込み) 1,575円)好評発売中

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

 4月~5月の即売展情報
⇒ http://www.kosho.or.jp/servlet/sokubai.ksB001

携帯電話からも見られるようになりました。。
⇒ http://www.kosho.or.jp/public/spotsale/mobileList.do

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

見逃したメールマガジンはここからチェック!
  【バックナンバーコーナー】
  ⇒ http://www.kosho.ne.jp/melma/

┌─────────────────────────┐
  次回は2011年5月下旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*゜*.:*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の古書店で ☆*.:*゜*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,300店加盟)の略称です

http://www.kosho.or.jp/public/buyer/search.do

==============================

日本の古本屋メールマガジンその102 2011.4.25

【発行】東京都古書籍商業協同組合:広報部・TKI
     東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
     E-Mail melma@kosho.ne.jp (メールマガジン専用)
     URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
     広報部:西村康樹
編集長:藤原栄志郎

==============================

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  • コショな人
  • 日本の古本屋 メールマガジン バックナンバー
  • 特集アーカイブ
  • 全古書連加盟店へ 本をお売り下さい
  • カテゴリ一覧
  • 画像から探せる写真集商品リスト

おすすめの特集ページ

  • 直木賞受賞作
  • 芥川賞受賞作
  • 古本屋に登録されている日本の小説家の上位100選 日本の小説家100選
  • 著者別ベストセラー
  • ベストセラー出版社

関連サイト

  • 東京の古本屋
  • 全国古書籍商組合連合会 古書組合一覧
  • 想 IMAGINE
  • 版元ドットコム
  • 近刊検索ベータ
  • 書評ニュース