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古本用語集 古本

★古書店の在庫カタログ等によく使われる用語です。

【付属品の用語】

カバ

カバーのこと。洋書ではカバーは表紙のことを表す場合が多い。いわゆるカバーはダストジャケットと称する。

腰巻とも。本の下の方に巻いて、販売用のコピーなどを付けるための販促物。同じ本でも時期により内容が変わることがある。著者ではなく出版社が付けるものだが、初版本コレクターにとっては重要。ときには、本体より高値になる。

サック。普通、差し込み式のものを「函」、重箱式のものを「箱」として区別している。かつては学術書はたいてい函に入っているものだったが、昨今は書店の店頭で売れにくいのでカバー装に変えられることが多い。

夫婦箱

蓋と本体が一方で繋がった箱。

輸送箱

本来の装丁とは別に、輸送用につけられた段ボールの箱。カバーなどの外装品は書店の店頭でいたんだ場合、出版社に代わりものを要求できるが、輸送箱は商品自体ではなく、商品を保護するための箱という扱いなので、交換に応じない。

ビニカ

透明のカバー、正確にはプラスチックなどの場合もあり。

元パラ

元来ついていたグラシン(パラフィン)紙やセロファン。痛みやすいので貴重。と言っても本当に元からのものかわからない場合もある。地模様などが付いている場合は珍重される。

和本を保護するための覆い。厚紙を芯にして布を貼ったもの。左右だけではなく上下にもあるものを四方帙、箱形に整形してあるものを箱帙という。

たとう

折り目をつけた和紙でつくった包み。畳紙。

題箋

和本で、表紙に貼り付けてある題名の紙。

月報

全集などで、各巻に入っている小冊子の付録。配本順に付いてくるため、雑誌のような形式になっている。増刷のときには、合本になって付属する場合もある。

【状態に関する用語】

美本

刊行後年月の浅い本では、一見して古本とわからないような本。古い本では、年月の割りによく保存されている本。

極美

古い本で、他にないぐらいきれいに保存されているもの。新品同様と言うことではない。較べてみても新本と区別の付かない最新刊の新古品を言う場合もある。

書込

主に本文に、所有者による線引や書込のあるもの。

少書込

書込の程度の少ないもの。少々の意だが、主観的な面もあり、惜しくもちょっと書き込みがありましたという古書店主の気持ちが伝わってくる。反対は書き込み多し。多しとなっていたら、ほぼ読むに耐えないほど書き込んである。

線引

書込の一種。文字ではなく線が引いてるだけのもの。朱線は赤ペンや赤鉛筆の線。

記名

所有者を示す名前が書いてあるもの。たいていは見返しにある。表紙など、本の外側にある場合は場所を表示する。

蔵印

蔵書印を捺してあるもの。

ムレ

湿気や水分で本文の紙が波打っているもの。

シミ

湿気や液体が表紙やカバーに浸透して、変色しているもの。本文の場合は「本文シミ」

切れ

カバー、帯などが、一部切断されているが、欠落した部分のないもの。

本来あるべきものが失われていること。「帯少欠」は帯の一部が欠落していること。

ヤケ

光に当たって退色していること。または、経年変化によって茶色く変色しているような場合も指すことがある。

ワレ

開きすぎで、ノドに隙間ができたり、製本の一部が痛んでいるもの。

開き癖

ワレまでいかない状態で、特定のページが開きやすくなっているもの。

コワレ

製本の一部が壊れて、ページが外れているもの。

ツカレ

全体に古びてピンとしていないこと。用紙に柔らかさや、綴じにゆるみがあるもの。「くたびれ」ともいう。

ラミネート

透明のフィルムを全体にかけてあるもの。図書館などが保護のために行うので、これがあるものはもともと図書館の蔵書だったことが分かる。

貸本上がり

貸し本店による補強加工がなされているもの。綴じ部を強化するために大型のホッチキスを打ったり、ラミネート加工してあったりする。

イタミ

その他の難点。

経年劣化

外部から特別な刺激を加えなくても、時間とともに自然に変化すること。空気による化学変化。普通書かない。

落丁

一部のページが欠落しているもの。製本時の場合と、製本後の場合とあり。製本時の場合は、32ページぐらい抜けていることが多い。一枚の大きな紙を印刷後に折って製本するので、その紙一枚分が抜けるのである。和本の場合は、一二葉の抜けが多い。

乱丁

製本時の失敗で、ページの順番や向きなどが間違っているもの。欠落しているページがないので、読むことはできる。

★プラスの特徴

初版

二つの意味がある。狭義には、その作品が最初に本になったときの最初の版の最初の刷り。広義には、出版形態を変えた(文庫化など)初版初刷や、他の出版社から出た初版初刷なども含めて初版という。広義の場合はその本の奥付を見れば判断できるが、狭義は出版史を知らなければ判定できない。文芸書の初版などは、たいてい狭義の方を指す。なお古書店では初版二刷は初版とは言わない。反対語は重版、重刷。

署名

著者などが記念に書いたサイン。署名をあまりしない著者で、コレクターがいる場合は高額化することがある。

献呈署名

贈った相手の名前が記されている署名。相手も有名人の場合、貴重な場合もある。

識語

署名に添えた詞書き。短歌などを記す人もいる。

落款

署名に添えた印影。

オリジナル

印刷ではないもの。版画・写真プリントなど。

書影

本の写真のこと。表紙を正面から撮ったものを使用することが多いが、最近は斜めから立体的に撮影したものが好評。在庫カタログでは、署名などの特徴や、痛みのある部分を強調して見せることもある。

【古本屋の符牒】

即売会

複数の書店が同一の会場に集まって、一般顧客相手に本を売る催事。展覧会とも。神保町、高円寺、五反田などの古書会館では定期的に開かれている。デパートで大規模にやるときには「古本まつり」といわれる。

クロッポイ本

時代がかかった古書。反対はシロッポイ本。

キキメ

全集などの揃もので、とくに流通量が少なく、古書価も高価な巻。そこだけ持っていれば、あとは自然に集まる。

マンジュウボン

法事のときに配られるような故人の業績を偲ぶための本。有名人でなければ、関係者以外は興味がないので古書価が付かない。企業が発行する記念誌もこれに含めることがある。

宅買

出張買取のこと。買い物、とも。

ガラ

本の大きさや体裁のこと。立派な本なのに低価格なら、ガラの割りに安いと言う。

ボー

古書市場で、最低価格に届かず取引が成立しないこと。

ツブシ

本を破棄すること。または、その本。

ナタ

半額のこと。

カズモノ

出版社の見切り品などで、同じ本をたくさん市場に出すとき、競争入札にせずに、あらかじめ価格を決めて購入者を募るが、その本をカズモノ、またはガイモノという。

ノリ

複数の業者で共同して買い取ること。

【古書組合】

古書組合

だいたい各県ごとにある。東京は「東京都古書籍商業協同組合」約630名が加入。各地の古書組合が連合して、全国古書籍商業連合会(全古書連)を結成している。全古書連傘下の古書組合員を、全古書連加盟古書店と言っている。約2300名が加入。

市場(イチバ)

古書業者の交換会。古書組合に入っている人しか立ち入れない。神保町の古書会館では毎平日開催している。不得意分野の本を持ち込み、得意分野の本と交換して帰るという仕組みだが、実際にはお金で換算する。

フリ

声を出して値を上げていくオークション。振り市。

入札

おいてある品物に付いている封筒に買値を入れていく競争入札。決まった時間に開札して、最も高値の人に落札される。それまで、誰がいくら入れているかわからない。

廻し入札

座っている人のところに、盆に載せた品物が回ってくる。神田では東京古典会だけがやっている。

【その他】

新本(シンポン)

古書ではない新品の本。「新書」は新書判の本のことだから使わない。

古書・古本

古書と古本の違いは曖昧である。古本が新本より安く売られる中古品のことで、古書はプレミアムなもの、という説もあるが、実際には必ずしもそうではない。

古本屋・古書店

同じように、この違いもあまりない。役者と俳優、百姓と農家と同じように、古本屋と言うといくらか軽いニュアンスがあるので、他人に使うときは古書店と言った方が無難。ただし、古本屋は個人にも使えるが、古書店はお店全体を指すことになる。従業員の多い書店人に対して、古書店人はあまり使わないが、今後は言ってみたい。

【書店用語】

和本

明治初期以前の日本で作られた和綴じの本。紐で綴じられている。書道の手本に多い折り本や、巻物はあまり和本とは言わない。糊で綴じられた本は、よほど古いものでないとほとんどない。

和綴じ本

明治以降の洋本の時代にあえて和本の装幀の仕方で作られた本。

洋本

和本、和綴じ本に対して、洋装の本。つまり、普通の本。西洋で作られた本は「洋書」。

文庫本

古書店ではA6判のシリーズものの本を指す。岩波文庫、新潮文庫など。文庫と付いても、大きさが違うものは「文庫本」とは言わない。

新書

文庫の幅にB6程度の高さを持つシリーズもの。岩波新書、講談社現代新書など。コミックスもこのサイズだが新書とは言わない。サイズだけ指すときには「新書判」。

ムック

雑誌のような体裁の書籍。「別冊太陽」など。

全集

文学全集、美術全集のような一般的な全集と、「夏目漱石全集」のような個人全集がある。前者は一般的に古書価が安いとされる。「岩波講座世界歴史」のように、まとまったシリーズものも全集の一種とされることがある。

叢書

同一のデザインで、同一の読者層を想定して企画されるシリーズものの出版物。「筑摩叢書」「角川選書」など。内容は、書き下ろしもあれば、収録や翻訳もある。企画が終了するまで長期にわたって刊行が続き、揃で商品の単位になる事はない。全部買うことが想定される全集と、そこが違う。

雑誌

逐次的に刊行されるもの。週刊誌、月刊誌、季刊誌など、定期的に発行されるのが普通だが、編集の都合で不定期になるものもある。たいていはソフトカバーである。内容は、編集長を中心にして複数の著者が分担して執筆していることが多い。新刊書店では、書籍(雑誌でないもの)と雑誌では、返品期間などの流通上の扱いが違う。一部の雑誌は書籍のとしてのコードを持っていて、書籍のような流通上の扱いを受けている。

単行本

文庫や新書でも雑誌でもないもの。シリーズものではなく、単独で刊行される本。広義には叢書類も含める。漫画においては、雑誌でないものを言うので、「サンデーコミックス」などのシリーズに収録されていても単行本。

重版・増刷

かつては活字から紙型という型を取って印刷に使っていたので、この紙型を作り直すのが二版だった。同じ紙型から刷り増すのは二刷りである。しかし、今は活版印刷ではなく電子データから印刷されるので、その違いは曖昧。二版以降を重版という。そのままなら重刷、内容に変更があれば重版とするべきだが、誤植の訂正など軽微な場合は重刷ですましている。本はたくさん売れれば売れるほど低価格にできる。しかし、最初にたくさん作って売れ残ると赤字になる。だから、通常は、初版で損益分岐点ぐらいまで売って、増刷できたら黒字になる。一方、科学書などでは「改訂版」「第3版」などの文字が表題と一緒に表紙に書いてあることがある。この場合、別の本と考えるべきである。大抵ISBNも違っている。

限定版

発行する部数をあらかじめ決めてそれ以上作らない約束の本。多くの場合、凝った装幀の本になっている。同じ内容の通常版を同時に作ることもある。

私家版

市販の分とは別に、著者が知人に配るために特殊な体裁で作った本。通常の普及版と平行して作られる場合と、私家版だけの場合がある。そのような本は私家本ともいう。

澄田喜広著『古本屋になろう!』、青弓社、2014より引用

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