日本浮世絵協会、1972.1、158p、24cm
「在外浮世繪名作展」開催にあたって
浮世繪版は、 元來, 低廉安直な民衆娯楽品であり, 女子供のおもちゃ
に過ぎないものだった。 この安直な商品の埃にまみれた積み重ねの中か
ら,香氣の高い藝術品を見つけ出してくれたものは實に歐米人だった。
そうして, 日本版畫の藝術品としての價値が歐米で認められるようにな
ると、國内で,これらのものを買い集めて海外に輸出しようとする利に
さとい商人の活動が始まった。 そうして, 浮世繪版畫の優秀な作品の殆
んど總べては、ことごとく海外に拉し去られてしまったといっても、あ
えて過言ではあるまい。 私どもは、いつも永井荷風氏とともに「浮世繪
の生命は實に日本の風土と共に永劫なるべし。 而して, 其の傑出せる製
作品は, 擧げて盡く日本になし。 悲しからずや」 と歎じたくなる。
これら海外に流出した數多くの浮世繪の中から錦繪時代にはいってか
らの六大畫家の優秀な作品を、海外の博物館もしくは美術館から借用し
て,東京,静岡,福岡,名古屋,大阪の各地で展觀を行い,日本におけ
る浮世繪愛好者の渇を癒せしめようとするものが, 日本浮世繪協會が
立十周年を記念し, 各地新聞社の協力を得ての企画である。
日本浮世繪協會會長
浮世繪世界大會總裁
少ヤケ