山本敏行 著、南江堂、1974、380p、27cm
序
何らかの方法で観察の解像力を高めることにより, 肉眼ではきわめることの
できない生物体の微細な構造を明らかにしようとするこころみが功を奏しはじ
めてから,すでに長い歴史が経過している. その間に人間が集積し得た知識量
は莫大であり,とくに今世紀の後半に入って, 自然科学が急激に進歩の度を加
えるに伴い,生物体の微細構造に関する知識量の増加も、ますます加速される
にいたっている.これらの膨大な知識の集積のなかから、医学の道に入ろうと
する人たちのために,何を選び,何を教えるかということは、医学の研究・教
育を職とするわれわれにとって最大の課題の一つであり,また絶えず教育の
実践においていやおうなしに解答を求められる具体的な設問である。本書は,
この設問に対する私なりの答案である.と同時に、私の組織学観ともいってよ
い。もしも、今日の組織学はどのようであるかと尋ねられるならば、私は黙っ
て本書を差し出すのである.
1970年7月
著者
第4版 ビニールカバー 函 少ヤケ 蔵印