¥4,500
兵頭正義
、南江堂
、1982-5(9版)
、199p
序文
ペインクリニックという言葉は、アメリカの有名な麻酔医 Rovenstine によって使われ始め
たと聞いている。これを定義づければ「神経ブロックを主として、おもに疼痛性疾患の治療に
あたる特殊診療科」ということができる。
使われる神経ブロックの種類は多く、中には専門的技術を要するものもあるが、医師の常識
としての偶発症の処置さえ心得ていれば、手技自体はまことにやさしいプロックも少なくない。
とにかくペインクリニックの技術を導入すると、従来もてあましていた疼痛性疾患に対し, 常
識を破る驚異的な治効をあげることも可能である.この数年、わが国でペインクリニックが急
速に着目され普及してきたのも、その効果からみて当然のことと思われる.
ところが意外にも、さて勉強しようとなると, 発表文献は豊富であるにかかわらず,ペイン
クリニックとしてまとめられた書物はわが国で皆無に等しい。 本書はそのような背景で書かれ
たペインクリニックの「教科書」である。
したがって,常識化した知識の再整理にも重点がおかれ、とくにペインクリニック面で偉大
な先駆者であり、著者自身も師事した J.J. Bonica に負うところが大である.
本書の対象は,麻酔医はもちろんであるが,むしろ各科の一般臨床医家である。ありふれた
疼痛性疾患,たとえば頭痛,肩こり,腰痛,あるいはむちうち損傷などに対し,どのようにペ
インクリニックを生かすかに焦点をあわせてある. ペインクリニックは、すべてのブロック手
技を身につけないと始められないというものではない. trigger point や圧痛点に対する局所
麻酔剤の浸潤注射法の適応と手技のコツを会得しただけでも、明日から,取り扱う患者の治療
効果は驚くほど前進する. このような趣旨のもとに, ガッセリー神経節やアルコールのくも膜
下ブロックなど, 専門医が行なうべきブロック手技の詳細は他書にゆずった.
本書がいろいろな点でなお不備であることは著者自身よく認識している. ペインクリニック
に興味を持つかたがたにとって, その入門にほんの少しでもお役に立てば、著者にとって幸甚
これに過ぐるものはない.
昭和43年1月脱稿
兵頭正義
蔵書印 状態:良い