土肥美夫・陰里鉄郎、他、1984、192p、25x24cm
第一次大戦勃発直前を頂点とするドイツ表現派の運動は, それこそ燎原の火
つように全世界に広がりました。 それは美術という一ジャンルにとどまらず,
文学,音楽,演劇,舞踊,建築,映画と, あらゆる芸術上のジャンルを乗り
越えていった運動でもあったのです。 「ブリュッケ」 に結集した画家たちが,
爆発する色彩、猛々しいタッチによって追い求めたのは, ドイツ帝国の旧態
依然たる倫理観によって縛られ, 窒息しようとしている原初の生命感を解放
することであり, まもなく 「青い騎士」 のグループが,なにものにも制約さ
れない 「精神的なもの」 の全面的表出を声高らかに要求します。そして, 大
戦末のドイツ革命の時期にあっては, 表現主義は革命の火種を伝える烽火と
なるのです。
時代の波に激しくもまれ, 悲劇的な展開を余儀なくされたこの表現主義とい
う運動は, 「表現」を操作することから, 「表現」そのものの問題に再び帰ろう
としている現代にあって, その歴史的意味の再考を切実に迫っていると言え
るでしょう。
今回の展示では, 膨大なブーフハイム・コレクションから, 「ブリュッケ」 の
作品を中心に460点余を選びだしました。 カンディンスキーとクレーが欠け
ていますが、従来 「青い騎士」 の紹介に偏り過ぎてあまり紹介されていない,
キルヒナー, ヘッケル、シュミット=ロットルフらの作品にまとめて触れる意
義は大きいと申せましょう。
今回の展覧会にあたり全面的協力を惜しまれなかった L.G.ブーフハイム氏な
らびに関係各位に心よりお礼申し上げます。
主催者
神奈川県立近代美術館(少ヤケ)