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沙羅書房 創業50周年記念誌 『古書の道』について

沙羅書房 創業50周年記念誌 『古書の道』について

沙羅書房 初谷康夫


 私ども沙羅書房は、江戸、明治期に出版または書き写された和本や古地図が専門の古書店です。歴史、地誌、伝記、書誌、民俗学などの学術書も取り扱っており、とくにアイヌや北方、琉球関係資料を充実させています。平成29年4月18日に創業50周年を迎えることができました。創業20周年の折には『蝦夷紀行』影印本を、30、40周年には目録の記念号を発行しましたが、50年の節目として、これまでに支えてくださった皆様方への感謝を表し、『古書の道 沙羅書房 五十年誌』を刊行しました。創業者が長年記していた手帳をもとに資料を整理し、さらに写真を織り交ぜて編集し、約4年間の準備期間をかけて刊行に至りました。

 創業者の初谷康夫は、昭和31年2月に神田神保町にある古書店・一誠堂書店へ入社し、11年間の修業を経て、昭和42年4月に沙羅書房を創業しました。本書では、「沙羅書房五十年の歩み」として、「創業者誕生~高校時代」、「一誠堂書店 店員時代」、「沙羅書房 創業」、「沙羅書房 新社屋へ」の4期にわけて年表にまとめています。各年表ごとに読み物として、「恩師の支え」、「一誠堂書店での修業」、「和本の魅力」、「作家との交流」を付し、創業者が古書業界に入るきっかけとなった高校時代の恩師とのエピソード、仕事を覚えるまでの苦労や店員同士の交流といった修業中のエピソード、和本や古地図の世界の奥深さや商売上の心構え、松本清張先生や井上靖先生をはじめとした著名な作家たちとの交流などについて書いています。また巻末には、50年間に目録に掲載した品々の中から147点を選び、解説とともに図版を収載しています。

 50年の間には、オイルショックやバブル、バブル崩壊後の不況といった時代の変化がありました。今日のインターネットの普及によっても、古書を取り巻く環境は大きな影響を受けています。こうした変化に対応しつつ、知識や経験を重ねて良古書の収集に努め、ときには稀少本との出会いといった、古書店としての醍醐味を味わう機会にも恵まれています。また、お客様や同業者から学ばせていただくことも多く、ありがたい経験となっています。一古書店の記録ではありますが、古書の世界のおもしろさを感じていただければ幸いです。



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沙羅書房 創業50周年記念誌 『古書の道』
1冊 2,500円 送料込
http://www.sara-shobo.com/news/20170623.html

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『人と会う力』について

『人と会う力』について

岡崎武志


 昨年(二〇一七年)に出したのが『人生散歩術』(芸術新聞社)で、 年が変わって今年初めて出た本が『人と会う力』(新講社)である。こ れまで、本、読書、古本に関する著作が多かったが、還暦を迎えた去年から、出た本のどちらのタイトルにも「人」がついている。これは意識せずにそうなったのた。そういうお年頃、ということであろうか。

「まえがき」にも書いたが、今回の本は、昨年に神保町の酒場で、作家で編集者の坂崎重盛さんとお酒を飲んでいる際、いろんな話になって、「私はいろんな人と出会うことで自分を作ってきた。人と会うことで今がある」というようなことを言ったらしい。それを聞き逃さず、坂崎さんが「それで、一冊本が書けるんじゃないですか」と絶妙の振りをした。酔いにまかせて私が「このテーマなら一カ月あれば書けます」と豪語したらしい。「らしい」というのはよく覚えていないからである。覚えていた坂崎さんが担当編集者になってくれて、「一カ月」どころか「一年」かかって、どうにか書き下ろしたのである。

 街を歩いていても、駅前のカフェへ入っても、多くの人がスマホに向い、あるいはイヤホンをしたまま小型端末に没頭している姿をよく見かける。「公」の場に出ても、閉じられた「個」の空間で、周囲とバリアを張っているようだ。人と会う、接する、話すことが苦手な若者が増えている、とも聞いた。もちろん、人と会うことは、基本おっくうであり、いいことばかりとは限らない。不快な目に遭ったり、うまく話が通じず困ったなんてこともある。しかし、それは例外で、私の経験に照らし合わせれば、会って話せてよかったし、そこから人間関係が広がったり、また仕事につながったこともあった。
 まず、会うことからすべてが始まるのである。そんな体験を、自伝風に気が弱かった幼少期から、転校が多い学生時代、夜間大学で出会った友人たちの話を中心に前半は書いた。夏目漱石『坊っちゃん』の主人公は、「人と会う力」のない人間であると批判した文章は、書く過程で思い付いたことである。
 自分の体験だけでも一冊書く分ぐらいはあったが、なにしろ私が成功者とは言えない。「人と出会う力」を発揮して、なんだそれだけのことかと言われても困るので、さまざまな先人の例も引いた。「男はつらいよ」の寅さん、ディック・フランシス「競馬シリーズ」の主人公たち、苦労人の井伏鱒二による交遊術などは、おそらく参考になるはずだ。北山修、澁澤龍彦、鮎川信夫と田村隆一、花森安治と大橋鎮子なども登場させたのは、ある程度、私の読者なら好みそうな話題も必要かと思ったからである。

 一例を挙げれば、のち「フォーク・クルセダーズ」で世を席巻することになる北山修と加藤和彦が、雑誌の投稿で知り合い、初対面の時「互いのその大きさが気に入った」という。二人とも当時の成人男子の平均より、とびぬけて身長が高かった。そんなことでも、情報のない初対面の場合、距離を縮める要因となるのだ。

 六〇年代末から七〇年代初頭、まだ情報誌もネット環境も、独り者の個人宅の電話も整わない中、見知らぬ若者同士が出会う場として、町の喫茶店が大いに機能した、という話も書いた。大阪・ナンバにあった小さな喫茶店「ディラン」など、関西フォークのほとんどの主要人物がここで顔を合わせ、友だちになって行った。大阪名物の野外フェスティバル「春一番」も、この喫茶店での交遊関係から組織されていった。

 現在でも、地方の古民家カフェや、音楽バーなどが、情報発信と人が出会う広場的役割を果している同様の例はたくさんあると思われる。最初はちょっと顔を出しにくい。しかし友人に連れられて行ったり、何かのイベントに参加したり、きっかけがあれば、人は「人と出会う」ことはできる。出会うべきなのである。

 最後の方に、トークショーなどでよく披露して受ける、鉄板ネタの「小沢昭一さんに会えてよかった」も、今回文字化した。これを読めば、全員、小沢昭一さんを尊敬し、好きになるはずだ。

 もし、万が一、この本がベストセラーとなり、第二弾という運びになってもぜんぜんだいじょうぶ。書き終わって気づいたのは、あの話、この人について書き漏らしたことがたくさんあったことだ。なんなら「人と会う」評論家になってもいい。そう思っている。



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『人と会う力』 岡崎武志 著 
新講社 価格1,600円+税 好評発売中!
http://www.shinkosha-jp.com/details.jsp?goods_id=2775

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『保守と立憲』ついて

『保守と立憲』ついて

中島岳志


 『保守と立憲』(スタンドブックス)を出版しました。この本は主に「保守」や「立憲」、「リベラル」などの概念を整理しながら、現実の政治を批評した内容です。「リベラルな保守」を掲げて結成された立憲民主党の枝野幸男代表との対談も収録しました。

 この本の発端は2011年の東日本大震災にあります。
 震災の直後、私は共同通信配信の連載で「死者と共に生きる」という文章を書きました(『保守と立憲』に収録されています)。大切な人の死(2人称の死)に直面した被災地に向けて、死者との出会い直しの重要性を論じました。
 大切な人が死ぬと、私たちは喪失感を味わいます。いつも「その人」がいた場所の空白に落ち込み、呆然と立ち尽くしてしまいます。
しかし、一定の期間が過ぎると、私たちは死者と出会いなおします。生きているときには言えなかったことが墓前で言えたり、ふと死者のまなざしを感じたりしながら、生きるようになっていきます。
死者はいなくなったのではありません。死者となって存在しているのです。

私たちは死者の存在を思い、死者から照らされて生きることで、倫理や規範を獲得します。大切なのは、死者と共に前向きに生きることである。そう考えて、被災地に向けた文章を書きました。
それから、死者について考えることが多くなり、自分が専門とする政治学の分野でも、死者という問題が重要な意味を持つのではないかと考えるようになりました。

例えば、立憲主義です。
立憲主義とは、過去の様々な失敗を繰り返さないよう、そこで得られた経験知や教訓をルール化し、憲法によって国家権力を制約するものです。立憲主義は、国民が権力を縛るためのルールと言われたりしますが、その「国民」は現在の国民だけではありません。むしろ主役は、死者たちです。死者たちが過去に蓄積してきた苦難の歴史の産物が憲法であり、死者の経験の総体が、現在の権力を縛っているのです。
立憲主義の重要なポイントは「死者の立憲主義」であることです。この死者からの拘束を嫌い、憲法を足蹴にしているのが、安倍内閣です。安倍首相は自ら「保守」であることを掲げながら、死者に対する謙虚さを著しく欠いています。

 憲法は条文だけでなく、付随する不文律の慣習や解釈によって成立しています。しかし、安倍内閣は、「書かれていないもの」は存在しないものとして扱い、勝手な解釈によって憲法をめぐる常識を破壊しています。
 私は、このような政権を「保守」とみなすことはできないと考えています。
 『保守と立憲』では、保守の原点を確認することで、「立憲」や「リベラル」という概念との有機的な関係性の再生を目指しています。
 森友問題や加計問題など、安倍内閣の手法が問題視される中、政治の在り方を再考するために読んでいただければ幸いです。



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『保守と立憲』 中島岳志 著
スタンド・ブックス刊 本体1,800円(税別) 好評発売中!
http://stand-books.com/

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フローとストック

フローとストック

月刊「望星」編集長・石井靖彦


月刊「望星」3月号では「古書・品切れ・絶版に宝物あり!」と題した特集を組みました。本屋さんに行けば、新書をはじめとした新刊本の大洪水にめまいを起こし倒れる人がいます。アマゾンユーザーや、目当ての本を即購入という効率重視派なら洪水は気にならないでしょうが、面白そうな本はないかな? とブラつくヒマ人にとっても、もはやあの洪水状態は困ります。あらゆる商品はそもそも玉石混淆なのですが、量的拡大を続ける出版の世界は、玉が見つかりづらい代表格かもしれません。

いい本は常に新しく生み出されていますが(何をもっていい本というかはさておき)、一方で、編集者たちの時代の空気を読む力で過去の本が掘り起こされ、装いも新たにして、多くの読者を獲得することもあります。『蟹工船』『思考の整理学』『君たちはどう生きるか』などなど。多くのストックの中に、いまの人にも受ける魅力ある本が潜んでいたわけです。そもそもフローにつき従うのはもう疲れたという気分もあります。

――と、そんなことを考えて特集を組んだといいたいところですが、実はそんなわけではなく、特集のいつもの路線にすぎないといえばすぎない。「ガリ版」「四畳半」「紙の地図」「銭湯」「辞書」「墓めぐり」「句読点」「歌謡曲」といった、スマホ万能時代にあってはどうでもいいテーマばかりをやっているわけで、図書館で1回も貸し出しされていない本の特集も考えたりもしました。フローにつき従うのはもう疲れたという気分が横溢した特集が基本コンセプトというか、スタッフの気質が自然とそうさせているのかもしれません。

古書・品切れ・絶版などは出版界の裏道に存在するストックの王道、フローの対極でしょう。ここに潜行すると楽しいのでは? 絶版の復刻を望む人たちの声とは? 人気のある絶版にはどんな本があるのか? といった要素でと思っていましたが、さして実現せず。でも素晴らしい復刊を手がける夏葉社の島田潤一郎さんの本への愛情、「出版ニュース」清田義昭編集長が指摘する、戦後の新刊総点数約276万の3分の1はいまでも手に入るといったオドロキの事実、名うての文芸編集者である石井紀男さんと、随文家・坂崎重盛さんの古書店と古書をめぐる話などを紹介することができました。古書店の世界が想像以上に忙しいこともお伝えしています。

                         (雑誌の発売元は東海大学出版部)



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『望星』3月号 古書・品切れ・絶版に宝物あり!
株式会社東海教育研究所 本体556円+税 好評発売中!
http://www.tokaiedu.co.jp/bosei/

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2018年3月9日 第246号

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 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
古書市&古本まつり 第61号
      。.☆.:* 通巻246・3月9日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛け下さい。
なお、1月から「シリーズ古書の世界」を連載しております。



次回メールマガジンは3月下旬に発行です。

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このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国935書店参加、データ約630万点掲載
の古書籍データベースです。


━━━━━━━━━━【シリーズ古書の世界】━━━━━━━━━


変っていく古書店のかたち3


                 樽見博(日本古書通信編集長)


 これまで紹介してきた古書店は、文学系の店が中心だが、古書業
界全体から見ればそれは一部に過ぎない。恐らく理系を含む学術書
・研究雑誌などを主とする資料系の古書店が、古書業界のかなりの
部分を担っている筈である。資料系の古書店は、一般的な古書店よ
りも、はるかに早くから無店舗で古書目録やネット販売に移行して
いる。既に紙の目録は廃止している店も多い。



続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3734


日本古書通信社
http://www.kosho.co.jp/kotsu/


━━━━━【3月9日~4月15日までの全国即売展情報】━━━━━


/event/list.php?mode=init


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イービーンズ古本まつり(宮城県)

期間:2018/02/07~2018/03/12
場所:イービーンズ 9F杜のイベントホール
仙台市青葉区中央4丁目1-1


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有隣堂藤沢店4階古書フェア★古書まつりプレ開催(神奈川県)

期間:2018/03/01~2018/03/14
場所:有隣堂藤沢店4階ミニ催事場
神奈川県藤沢市南藤沢2-1-1フジサワ名店ビル7F


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第85回 彩の国 所沢古本まつり(埼玉県)


期間:2018/03/07~2018/03/13
場所:くすのきホール
西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場
http://furuhon.wix.com/tokorozawafuruhon


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東京愛書会

期間:2018/03/09~2018/03/10
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
http://aisyokai.blog.fc2.com/

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古書愛好会


期間:2018/03/10~2018/03/11
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9


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第20回フジサワ湘南古書まつり(神奈川県)


期間:2018/03/15~2018/03/18
場所:有隣堂藤沢店イベントホール
   神奈川県藤沢市南藤沢2-1-1フジサワ 名店ビル6階


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紙魚之會


期間:2018/03/16~2018/03/17
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22


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五反田遊古会


期間:2018/03/16~2018/03/17
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4 


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第126回 倉庫会(名古屋)


期間:2018/03/16~2018/03/18
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12
https://ameblo.jp/nagoyakosyo/


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たにまち月いち古書即売会(大阪府)


期間:2018/03/16~2018/03/18
場所:阪古書会館 大阪市中央区粉川町4-1


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第41回 鬼子母神通りみちくさ市


期間:2018/03/18
場所:雑司が谷・鬼子母神通り
http://kmstreet.exblog.jp/


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浦和宿古本いち


期間:2018/03/22~2018/03/25
場所:JR浦和駅西口徒歩5分 マツモトキヨシ前


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趣味の古書展


期間:2018/03/23~2018/03/24
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22


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3 days Book store


期間:2018/03/23~2018/03/25
場所:EDiTORS 調布市下石原2-6-14 ラ・メゾン2階


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ABAJ 国際稀覯本フェア 2018 -日本の古書 世界の古書-


期間:2018/03/23~2018/03/25
場所:東京交通会館展示会場 12階 カトレアサロンA・B
東京都千代田区有楽町2-10-1
http://www.abaj.gr.jp/special/vol002/index.php


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中央線古書展


期間:2018/03/24~2018/03/25
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9


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新橋古本まつり


期間:2018/03/26~2018/03/31
場所:新橋駅前SL広場


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BOOK & A(ブック&エー)


期間:2018/03/29~2018/04/01
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9


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和洋会古書展


期間:2018/03/30~2018/03/31
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22


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第13回 サンボーホール ひょうご大古本市(兵庫県)


期間:2018/03/30~2018/04/01
場所:神戸三宮サンボーホール1F大ホール 
神戸市中央区浜辺通5-1-32


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第13回 サンボーホール ひょうご大古本市(兵庫県)


期間:2018/03/30~2018/04/01
場所:神戸三宮サンボーホール1F大ホール 
神戸市中央区浜辺通5-1-32


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五台山 春のふるほんまつり(高知県)


期間:2018/03/31~2018/04/01
場所:五台山公園展望台 高知市吸江210-1


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有隣堂イセザキ本店チャリティーワゴンセール(神奈川県)


期間:2018/04/01~2018/04/08
場所:有隣堂伊勢佐木町本店 横浜市中区伊勢佐木町1-4-1


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青札古本市


期間:2018/04/05~2018/04/08
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9


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書窓展(マド展)


期間:2018/04/06~2018/04/07
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22


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第33回 古本浪漫洲 Part1


期間:2018/04/10~2018/04/12
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場) 
新宿区歌舞伎町1-2-2
http://www.kosho.co.jp/furuhon_romansu/


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立川フロム古書市


期間:2018/04/13~2018/04/29
場所:フロム中武 3階バッシュルーム(北階段際)
立川駅北口徒歩5分(ビッグカメラ隣)


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第33回 古本浪漫洲 Part2


期間:2018/04/13~2018/04/15
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場) 
新宿区歌舞伎町1-2-2
http://www.kosho.co.jp/furuhon_romansu/


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大均一祭


期間:2018/04/14~2018/04/15
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9


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 【バックナンバーコーナー】
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┌─────────────────────────┐
 次回は2018年3月下旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*゜*.:*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の古書店で ☆*.:*゜*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner


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日本の古本屋メールマガジンその246 2018.3.9

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/


【発行者】
 広報部:小野祥之

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変っていく古書店のかたち 3   (シリーズ古書の世界第3回)

変っていく古書店のかたち 3

樽見博(日本古書通信編集長)

 これまで紹介してきた古書店は、文学系の店が中心だが、古書業界全体から見ればそれは一部に過ぎない。恐らく理系を含む学術書・研究雑誌などを主とする資料系の古書店が、古書業界のかなりの部分を担っている筈である。資料系の古書店は、一般的な古書店よりも、はるかに早くから無店舗で古書目録やネット販売に移行している。既に紙の目録は廃止している店も多い。先進的な店ではネットが普及する以前に、大学図書館などとオンラインで在庫確認ができるようになっていた。ただ、ここ30年の間に、資料専門店の数は激減し、例えば、昭和59年版『全国古本屋地図』の専門店案内で、東京の「社会科学」専門店を20軒あげているが、現在も続くのは7軒である。勿論新しい資料系の古書店も誕生していて、『全国古本屋地図』21世紀版(平成13)では、土木建築・都市資料の港や書店、医学史・産業史の泰成堂書店、在日朝鮮・アイヌ関係の水平書館が追加されている。新規の店は、特定の分野に絞って営業しているケースが殆どで、分野を狭く絞るのは社会科学系ばかりでなく全分野に及ぶ。

 古書店への蔵書処分の依頼は全分野に及ぶから、本来はあらゆる書物の知識が必要とされるのだが、現在のように書籍の数が膨大かつ推移が早くなると、現実的には無理な話である。そんな中で、文科系に限れば、和本から漫画本まで精通していたのが、中野書店の中野智之さんだった。古書店主としては二代目だが、えびな書店、稲垣書店、石神井書林、けやき書店などと同じ世代である。しかし惜しくも2014年に亡くなってしまわれた。(古書店は奥様が継続)

 中野さんは、「古本倶楽部」という文学書を中心にした分厚な在庫古書目録のほかに、『お喋りカタログ』というA4判アート紙カラー印刷20頁ほどの目録を出していた。そこでは、金額や著名度とは別に自分で面白いと思う古書を取り上げ、長短様々なコメントを施している。中野さんは、HPに掲載するので、長い解説を付けることで、検索の網に掛かるケースが増えるからと言っていたが、根底にあったのは扱う書物への愛情、その本の価値や面白さを見つけて適正な価格を決めて売るのが古本屋でしょうという、強い矜持があったように思う。ユーモラスな方だったから「お喋り」と照れて見せたのである。今手元に、2009年3月に出た3号がある。以下、中村草田男の句集『火の島』毛筆句署名入り特製本(昭和14)に添えたコメントである。

  「父となりしか蜉蝣と共に立ち止まる」 別に草樹会御案内の草田男ペン書メモ付。
   余談ながら、集中に「大学生冬のペリカンに待ち待つ」の句を見つけました。
   予備知識がないとわかりにくい句ですが、これ、東大前の落第横丁にあった、
   品川力さんのランチルーム・ペリカンのことでしょうね。
   若き日の太宰治や織田作らも出入りしていました。この句は昭和13年のものですが、
   翌年、ペリカン食堂は古本屋ペリカン書房へと変身。大先輩のお一人です。
   古本屋となった品川さんは、自らも『内村鑑三研究文献目録』他の著作を持っていますが、
   研究者に文献資料を提供するため、名物のテンガロンハットを被って自転車に跨っている姿は、
   今でも目に燒ついています。

さらっと書いているが、本を読み、ペリカン書房の開店時など調べねば書けぬことであるし、さりげなく古本屋の在り方にも触れている。こんな風に古典籍から、童謡「夕焼け小焼け」の作曲者草川信の自筆楽譜、立原道造私家版『萱草に寄す』、発禁本の林礼子著『男』(昭和3)などまで144点を取り上げている。HPに掲載していたので、印刷目録は広くは配布しなかったようだ。13号まで刊行した。

 この目録を見て、私は中野さんに、取り上げた中で殊に気になるものに加筆して「日本古書通信」に連載しませんかとお願いしてみたのである。中野さんは病気治療をして退院後程なかったのだが、二つ返事で承諾してくれ、それが2012年1月号から14年10月号まで32回に及んだ。14年12月に亡くなられたので死の直前まで連載してくれたのである。訃報を聞き、偲ぶ会が開かれるとのことで、急遽、連載をまとめ刊行したのが、『古本はこんなに面白い 「お喋りカタログ」番外編』(初版500部)である。書名は私が独断で付けたが、中野さんは反対しなかったと思っている。知識、行動力、人望、どれをとっても惜しい方を亡くしたとの思いが、今でも強い。

 「日本古書通信」で、2011年2月号から、テレビの人気番組「情熱大陸」にあやかり「古本屋大陸」と題して気になる方に、古書店としての日常を書いて頂く企画を立てた。毎号2名づつ基本的に3回の連載で頼んだ。好評で14年7月号まで続いたが、東日本大震災の直前、中野さんの連載とも重なっていた。取り上げた書店・書店主を順にあげる。
金井書店・花井敏夫、サッポロ堂書店・石原誠、九蓬書店・椛沢賢司、山猫館書房・水野真由美、かげろう文庫・佐藤龍、イマジンスペース真理・石黒敏彦、よみた屋・澄田喜広、舒文堂河島書店・河島一夫、じゃんがら堂(現在の阿武隈書房)・太田史人、版画堂・樋口良一、矢野書房・矢野龍二、近八書房・篠田直隆、弘南堂書店・高木庄一、古書日月堂・佐藤真砂、キクオ書店・前田智、@ワンダー・鈴木宏、火星の庭・前野久美子、徳尾書店・高畠裕幸、かぴぱら堂・露久保健二、モダンクラッシック・古賀加代、ビブリオ・小野祥之、古書わらべ・榎本弘紀、盛林堂書房・小野純一、書肆つづらや・原智子、追分コロニー・佐藤尚弘、股旅堂・吉岡誠、黒沢書店・黒沢宏直、澤口書店・西坂彩(店員)、八勝堂書店・近藤英人(店員)

 基本的にベテランよりは若手を取り上げようと努めたが、漏らしたか、断られたか覚えていないが、他にも取り上げるべきだった古書店は何軒もありそうである。店舗重視の店、目録中心の店、即売に主力を注ぐ方いろいろだが、どなたも、今も熱意をもって励んでいる姿を見て頼もしく思う。

 毎日、東京古書会館へ持ち込まれる古書の量は膨大である。相場が下落するなかで、現実的には一冊一冊を丁寧に見ていく事には困難があるが、あまりにも大雑把な扱いと感じることもなくはない。需要の少ない古本をより分けて廃棄することも古書店に許された使命ではあるが、前提に書物に対する敬意を忘れてはいけないと思う。
今や、古書店の営業形態は多様化し、ネット販売の率も大きくなった。客の顔を見ることも少なく、何を販売したか強く意識することも稀かもしれない。しかし、三回に分けて紹介してきた古書店を見ても、書物探求にかける熱意が商売の核となっている。古書店と客をつなぐものは古本である。繰り返すが書物への敬意、それが古書店としての成長と喜びを必ず与えると思うからだ。



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日本古書通信
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☆INDEX☆
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1.『近世読者とそのゆくえ ―読書と書籍流通の近世・近代』
                        鈴木俊幸

2. (公財)たましん地域文化財団の季刊郷土誌『多摩のあゆみ』
   第169号「デジタル地図でみる多摩の歴史」のご紹介
    (公財)たましん地域文化財団 歴史資料室 坂田 宏之

3.『日本メディア史年表』について
                吉田則昭(立教大学兼任講師)

4.古本屋ツアー・イン・ジャパンの2017年総決算報告
                古本屋ツーリスト 小山力也

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━━━━━━━━━━━【自著を語る(201)】━━━━━━━━━━

『近世読者とそのゆくえ ―読書と書籍流通の近世・近代』

                        鈴木俊幸



旧著『江戸の読書熱』(2007年、平凡社)で触れたが、書籍その
もの、それを生み出し流通させていくシステム、また大方の書籍へ
の接し方は、江戸時代の後期、19世紀になって大きな変化を見せる。
それは、民間における知の底上げに根ざすものであった。


続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3695


『近世読者とそのゆくえ 読書と書籍流通の近世・近代』 鈴木俊幸 著
 平凡社 本体 : 7,400円+税 好評発売中!
 http://www.heibonsha.co.jp/book/b325541.html



━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━━

(公財)たましん地域文化財団の季刊郷土誌『多摩のあゆみ』
第169号「デジタル地図でみる多摩の歴史」のご紹介


      (公財)たましん地域文化財団 歴史資料室 坂田 宏之



私ども(公財)たましん地域文化財団の郷土誌『多摩のあゆみ』は、
昭和50年(1975)11月、当財団の設立母体である多摩中央信用金庫
(現・多摩信用金庫)が店頭で無償配布する「茶の間の郷土誌」と
して創刊されました。以来、2・5・8・11月の各15日発行の季刊誌と
して、東京都の西部に位置する多摩地域の歴史・民俗・地理・自然
などをテーマに、論考や情報などを掲載しています(A5判、毎号120
頁前後、発行部数14,000部)。現在も多摩地域に82店舗ある多摩信
用金庫各店で、無料で入手できます。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3706


公益財団法人 たましん地域文化財団
http://www.tamashin.or.jp/index.html


『多摩のあゆみ』ホームページ
http://www.tamashin.or.jp/ayumi/index.html


━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━

『日本メディア史年表』について


                吉田則昭(立教大学兼任講師)



 今日、新聞・テレビなど従来のマスメディアに加え、インターネ
ット・SNSなど、新旧メディアが入り乱れて、メディア大激変の
時代となっている。メディア史は近現代史の一部でもあるが、独自
の領域を持っている。しかし、この自明のことが正面から取り上げ
られることは少なかった。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3702


『日本メディア史年表』 著者 土屋礼子 編
吉川弘文館 定価:本体6,500円+税 好評発売中!
http://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b329681.html

━━━━━━━━━【古本屋ツアーインジャパン】━━━━━━━



古本屋ツアー・イン・ジャパンの2017年総決算報告


                古本屋ツーリスト 小山力也



 すでに2018年がスタートして二ヶ月が経ってしまったが、遅れば
せながら2017年を一言で言い表すと、『どうにか乗り切った一年』
が相応しいだろう。結局上半期にボヤいていた『遠出が出来ない状
況』が、ズルズルと一年間続いてしまった。恐ろしいことに地方に
行けたのは、十一月に目黒考二氏とのトークイベント開催に便乗し
て乗り込んだ、愛知・中京競馬場前「安藤書店」(夕方に早くも沈
み込む街の駅前で輝く、深い棚造りに長けた良店であった)の一店
だけであった。その他のおよそ364日は、東京周辺の古本屋さんを巡
りまくり、ウダウダダラダラと古本を買って過ごしていたのである。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3714


小山力也
2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売ってい
る場所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ『古本屋ツアー・イン
・ジャパン』管理人。「フォニャルフ」の屋号で古本販売に従事す
ることも。古本屋に関する著書ばかりを出し続けており、それらの
出版社や形状は違えど、全部を並べたらいつしか“日本古本屋大全
集”となってしまうよう、秘かに画策している。「本の雑誌」にて
『毎日でも通いたい古本屋さん』連載中。
 http://furuhonya-tour.seesaa.net/

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

沙羅書房 創業50周年記念誌 『古書の道』
1冊 2,500円 送料込
http://www.sara-shobo.com/news/20170623.html


『望星』3月号 古書・品切れ・絶版に宝物あり!
株式会社東海教育研究所 本体556円+税 好評発売中!
http://www.tokaiedu.co.jp/bosei/


━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━


2月~3月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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 次回は2018年3月中旬頃発行です。お楽しみに!
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日本の古本屋メールマガジンその245 2018.2.23

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/


【発行者】
 広報部:小野祥之
編集長:藤原栄志郎

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yukue

『近世読者とそのゆくえ ―読書と書籍流通の近世・近代』

『近世読者とそのゆくえ ―読書と書籍流通の近世・近代』

鈴木俊幸


 旧著『江戸の読書熱』(2007年、平凡社)で触れたが、書籍そのもの、それを生み出し流通させていくシステム、また大方の書籍への接し方は、江戸時代の後期、19世紀になって大きな変化を見せる。それは、民間における知の底上げに根ざすものであった。

 それが、明治という時代を迎えてどのように変化していったのか、あるいは存続していったのか。歴史に名を残すような、また自らの文化的営為を記録するような特殊な個人ではなく、個々の記録を期待できないような、ごく普通に生活していた圧倒的多数の普通の人々の営為、その総体がどのように時代の流れを形成していったのか。これがもっぱらの関心事であったのだが、普通を捉えることは、けっこう難しい。

 どのレベルのどういう資料で捉えるかで、描き出される時代の様相は大きく違うものになるであろう。このたびの拙著で用いた資料のほとんどは安いものである。大半が、古書会館を起点としての神保町歩きで拾い集めたものである。よく見かけるものは安い。そしてよく見かける安いものの多くは、当時において大事にされていたものの今では見向きもされなくなったものか、たくさん出回って多くの人間の日常を普通に満たしていたものであることが多い。これら当時の人間が実際に手に取った現物の集積が自ずと語りはじめるものは、時代を貫いて誰しも保持していたものの今では忘れ去られている心性であったり、生活とともにあったささやかな文化的営為であったりする。安い和本を買い集めて触りながら、普通の人々の生活のなかでどのように学問と文芸が位置づけられ、それが時代の推移とともにどういう変化を見せたり見せなかったりしたのか、書籍流通の変化との相関をにらみながら考えてみたのが今回の拙著であった。

 資料の長々しい引用やしつこい書誌が多く、読みやすい本ではないかもしれない。架蔵のものを含めて、簡単に接することの難しいものが多いので生に近いままで掲出した次第である。拙論はいずれ古びていくであろうが、資料は古びない。私にしても架蔵の資料をいつまで保持、管理していられるか分かったものではない。資料は観点を変えれば、別の面を見せたりする。今後の再利用の可能性のための掲載であると割り切っていただいて、面倒くさいところは端折って読み進めるのが時間の節約かもしれない。

 それにしても歩けばまだまだ面白い本に出くわせるものと思いながら、神保町帰りの電車の中で本稿を仕上げた次第である。



yukue
『近世読者とそのゆくえ 読書と書籍流通の近世・近代』 鈴木俊幸 著
 平凡社 本体 : 7,400円+税 好評発売中!
http://www.heibonsha.co.jp/book/b325541.html

Copyright (c) 2018 東京都古書籍商業協同組合

tama

(公財)たましん地域文化財団の季刊郷土誌『多摩のあゆみ』 第169号「デジタル地図でみる多摩の歴史」のご紹介

(公財)たましん地域文化財団の季刊郷土誌『多摩のあゆみ』
第169号「デジタル地図でみる多摩の歴史」のご紹介

(公財)たましん地域文化財団 歴史資料室 坂田 宏之


 私ども(公財)たましん地域文化財団の郷土誌『多摩のあゆみ』は、昭和50年(1975)11月、当財団の設立母体である多摩中央信用金庫(現・多摩信用金庫)が店頭で無償配布する「茶の間の郷土誌」として創刊されました。以来、2・5・8・11月の各15日発行の季刊誌として、東京都の西部に位置する多摩地域の歴史・民俗・地理・自然などをテーマに、論考や情報などを掲載しています(A5判、毎号120頁前後、発行部数14,000部)。現在も多摩地域に82店舗ある多摩信用金庫各店で、無料で入手できます。またご希望の方には、お近くの郵便局からのお振り込みで1年間600円・3年間1800円の送料をお預かりして、全国にお送りもいたしております。

平成30年2月15日発行の第169号の特集は「デジタル地図でみる多摩の歴史」です。この20年ほどで地図の電子情報化やGPSなどの「地理情報システム(GIS)」のインフラ整備がすすみました。グーグルマップだけでなく国土地理院の地図もインターネットで見ることが可能になり、「地図を使う」行為は大変身近になりました。グーグルマップなどには美味しいお店や素適な風景の写真、情報を貼り付けて、インターネット上で公開することなどもよく行なわれています。こうした技術革新を背景に「地理学のお家芸」であった「ある事象の分布を地図に落とした図(主題図)をいくつも作り、それを重ね合わせて見える事柄を考察する」は、様々な学問分野でポピュラーに行われるようになりました。本特集では、ポピュラーになったデジタル地図(地理情報システム、GIS)で多摩地域や関東地方の歴史をどのように読み解けるのか、インターネット上で閲覧できるさまざまな歴史地理データベースをご紹介しています。

特集のほかにも「洋風建築への誘い」「建物雑想記」「多摩の食文化誌」「多摩の金融史」「多摩のみほとけ」の連載論考、そして多摩地域の博物館の図録や市民の長年にわたる研究成果など、一般の流通にはなかなか乗らない書籍を中心に紹介する「本の紹介」コーナーがあります。

本誌は多摩地域の博物館・図書館には毎号お送りし、地域資料コーナーなどに配架していただいています。また、創刊号から100号までは、当財団ホームページからデジタルアーカイブとしてインターネット上でご覧いただくことも可能です。本誌をとおして、東京近郊、多摩地域の歴史・文化に、ひとつひとつ触れていただけましたら、この上ない幸せです。

(公財)たましん地域文化財団ホームページ
http://www.tamashin.or.jp/index.html
当財団ホームページ内『多摩のあゆみ』ホームページ
http://www.tamashin.or.jp/ayumi/index.html



tama
『多摩のあゆみ169号 デジタル地図でみる多摩の歴史』』
公益財団法人 たましん地域文化財団
http://www.tamashin.or.jp/ayumi/index.html

Copyright (c) 2018 東京都古書籍商業協同組合

nihon

『日本メディア史年表』について

『日本メディア史年表』について

吉田則昭(立教大学兼任講師)


 今日、新聞・テレビなど従来のマスメディアに加え、インターネット・SNSなど、新旧メディアが入り乱れて、メディア大激変の時代となっている。メディア史は近現代史の一部でもあるが、独自の領域を持っている。しかし、この自明のことが正面から取り上げられることは少なかった。

 1960年代以降の活字メディアから音声・映像メディアへの移行ということだけでも、先行するメディア形態が新しいテクノロジーによって代わられることであり、それまでのコミュニケーションの配置や連関が変わってくることにもなる。メディア史を貫く方法論は困難を極めるので、この点こそ、「年表」という形式でなければ表現できなかったことである。

 本書は、「はじめに」にもあるように、「史上初めてのメディア史年表」である。放送史、新聞史など時系列のメディアの歴史というのは、これまでも描かれてきたが、それらを横断した形でのメディア史というものは、これまでもないのではないかという問題意識から、各執筆者は執筆にあたった。計8名の各執筆者が、新聞、出版、通信、放送、映画、広告、ニューメディア、写真を、それぞれ分担執筆した。その中で、筆者は「出版」の分野を担当した。「出版」に即していえば、その発展過程も当然ながら一筋縄ではない。

 一例として、講談社は、学生弁論を活字化したことで成功を収めた大正期の大出版社であるが、それだけでなく栄養剤「どりこの」製造販売を開始し商事部を設けたり、レコード事業界に進出し、レコード部を新設、キング・レコードの発売を開始するなど、当時の新動向を積極的に取り入れ、事業拡大にも打って出ている。また、当時のレコードも内務省は出版法で納付義務をカバーしようとしていたように、事業者と統制者のせめぎ合いも興味深い。こうした多々ある出版の「場」の変わり方の追及も、年表という形式でなければ表現しきれなかったと思う。

 今年は明治150周年でもあるが、本書の記述は明治以前の1837年からのスタートし、2015年までの180年間に及ぶ。本書に収めた参考文献も、明治百年の書が1968年に多く出版されたが、明治元年を起点にしたものも多い。そこからも様々な問いも生まれる。明治100周年から150年周年までの「50年間」も、その後の空白の期間としてどう記述すべきか。特に80年代から90年代の「出版バブル」や、2000年以降、出版物の発行点数、売上などの右肩下がりの傾向をどう描き、評価するかも今日的な課題である。



nihon
『日本メディア史年表』 著者 土屋礼子 編
吉川弘文館 定価:本体6,500円+税 好評発売中!
http://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b329681.html

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