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メールマガジン記事 日本の古本屋メールマガジン2009

日本の古本屋メールマガジン その84 10月26日号

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☆INDEX☆
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  1. まだまだ蒐集は終わらない  田中 栞
  2. 新鋭評論(4) 『堀内薫「水晶散歩」をめぐって』 小野塚 力
  3. 日本の古本屋即売展情報

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━━━━━━━【「書肆ユリイカの本」展を開催して】━━━━━

まだまだ蒐集は終わらない

                田中 栞

 『書肆ユリイカの本』(青土社、2009年9月発行、定価 2520円(
税込))の発行記念として、「古書の日」にあわせて、書肆ユリイ
カの出版物などを東京古書会館2階で展示しました。
  展示したのは、書肆ユリイカの本に魅せられた私が、10年かけて
蒐集してきた本や雑誌です。展示にあたっては『書肆ユリイカ出版
総目録』第2版(増補改訂版)を作成、配布しました。
  著作ができあがってからも、目録作成のために実物を確認したい、
展示したいなどの理由をつけては、引き続き蒐集に励みました。
  まず、トークショーの出演をお願いしに田村書店へ行き、以前か
ら気になっていた安東次男『死者の書』特製版を見せてもらいまし
た。普及版は持っていますが、特製版は高嶺の花と思っていたので
す。総革装貼函入りの高級仕様。
  ジャケットはありませんが、稗田一穂のオリジナル石版画が1枚
挿入……と思ったら、この本にはなんと2枚、異なる版画が入ってい
ました。版画は綴じ込みでなく、途中頁に挟み込まれているだけ。
20万を切る古書価に、えいやっと購入。
  一週間後、できあがった本を届けるために再び田村書店を訪れ、
今度は稲垣足穂の『ヰタ・マキニカリス』たれつきジャケットと帯
つき完本をお買い上げ。裸本は持っていましたが、帯までついた状
態に、もうたまらなくなって。
  その3日後には、就寝前の日課であるサイト「日本の古本屋」の
チェックで、真鍋博『動物園』を見つけました。光芒書店で11000円。
状態はよくないけれど花田清輝宛献呈署名入りはすごく貴重。なに
より、同じ真鍋の『寝台と十字架』はサイトにもたくさん出ている
のに、こちらの本はとんと出現しないのだから。
  トムズボックス発行の、よくできた複製版と並べて展示しよう、
とためらわずに注文。
  「書肆ユリイカの本」展は、途中、台風の襲来もあったものの、
おかげさまで盛況で、期間中、約500名の方々にご来場いただきま
した。予想通りご年配の愛書家の方が多く、書肆ユリイカの本を、
発行当時購入していたという先輩も珍しくありません。なかには、
「たくさん持っていたけど、妻に反対されて泣く泣く処分した」と
話しながら銅版画入りの拙著をお求めになり、こっそりお持ち帰り
になるおじさまも。
  しかし、ブックデザインや手製本に興味のある若い女性もたくさ
ん来て下さったのは、実に喜ばしいことでした。おりに触れて展示
解説などをいたしました。
  さて、最後にご報告。トークショーの中で、入沢康夫『倖せそれ
とも不倖せ』は、ビニール袋つき完本の入手が難しいという話をし
たのですが、展示が終わって1週間後に届いた石神井書林目録に、
おお、このビニール袋つき本が登場! 価格は189000円です。
  ビニール袋のない本を3年前に加藤京文堂で7万円で購入していま
したが、いつかその、著者手ずから制作に携わったという、伝説の
ビニール袋つき本が欲しいと願っていたのです。しかし、その「い
つか」がこんなにも早くやってくるとは。
3度目の購入であるという経緯をご存じの内堀さんが、電話の向こ
うでなんとなく「やっぱり買うのね」と笑った気がしましたが、は
い、やっぱり買います。著者のカワイイ署名(*マーク入り)もあ
るし!
  というわけで、我が家に無事やってきたビニール袋。じゃなかっ
た『倖せそれとも不倖せ』完本。大事に愛でます。ありがとうござ
いました。

田中栞『書肆ユリイカの本』青土社、2009年9月15
日発行、定価2520円(税込)、
A5判丸背上製(糸かがり)ジャケット装、本文・カラー4頁+モ
ノクロ270頁(図版370点掲載)

━━━━━━━━━━━【新鋭評論(4)】━━━━━━━━━

~ 堀内薫「水晶散歩」をめぐって

                    小野塚 力

騙されたと思って、このURLをクリックしてほしい。

http://www5b.biglobe.ne.jp/~suishyou/

このホームページで紹介されている人形と絵画作品は、驚くべき精
緻さと繊細さとに支えられている。ことに、絵画作品はCGではな
く、鉛筆画である。「魔方陣」連作の原画をみた鑑賞者は、その存
在感に圧倒されること請け合いだ。人形作品は、木製と陶器作品の
二種類があり、か細さの中にかいまみえる強靭な存在感が特徴的で
ある。人形作品は、猫妖精(キャトランドーレ)と妖精(フェアリ
ドーレ)の二つに分かれる。
堀内薫氏の創造する、作品群の背後には、未だ完結しないある巨大
な物語が流れている。その名を「水晶散歩」という。人形作品と絵
画作品それぞれを貫くもの。共通の屋台骨で作品世界を統御してゆ
くというやり方は、作品―作家―鑑賞者という関係性を強固なもの
にし、より濃密な関係性構築を期待させる。
「水晶散歩」は、前掲のホームページでの部分掲載の後、同人誌
「某」創刊号(二〇〇六年十二月刊行)に増補・改稿される形で巻
頭に掲載された。限定一五〇部の同人誌のうえ、刊行日即日で完売
したために、目にした人は極めて少ない。ここに簡単な概要を記し
たい。
物語は、一人の若い猫人ボウ・ポーが、見知らぬ遺跡を訪れるとこ
ろからはじまる。そして、遺跡に仕掛けられた謎、絵画作品「魔方
陣」連作に秘められた謎を解くための冒険にふみこんでいく。
  猫がもつ異界性に、刺戟された文芸作品は多い。朔太郎「猫街」、
ますむらひろし「アタゴオル」連作などがよくしられたところだろ
う。堀内薫氏の猫人もこうした猫のもつ異界性を意識した節がある。
ただし、先行作品との決定的な差異が存在している。それは、妖精
物語としての作品群の定位への意志だ。日本における妖精物語の構
築は、おそらく、佐藤さとるのコロボックル物語シリーズ以外に、
正面から取り組んだものはないと思うが、堀内薫氏のとりくみは、
佐藤さとる氏以来のものではないだろうか。佐藤氏と堀内氏のアプ
ローチの差異は、スクナヒコからアイヌのコロボックル伝説にいき
つき、小人の造形をあくまで、日本の素材に拠った佐藤氏に対し、
堀内氏のそれは徹底した西洋志向を感じさせるところにある。堀内
氏の特徴はこれだけに留まらない。やはり、可視化された人形作品、
鉛筆画を含めた作品全般を一定の世界観のもとに収斂させようとす
る強固な意志そのものにある。準世界創造の意志という点において、
堀内氏の視座は動くことがないように感じられる。
仮に物語を作者の世界解釈のツールとして創造されるものとして定
義するのであれば、「水晶散歩」は、いまだ完結をみない世界解釈
の物語という相でもってとらえることもできるだろう。開示されざ
る物語としてありつづける「水晶散歩」の本格的な開幕を願うのは、
私だけだろうか。いずれ、きちんとした形で世に問われんことを願
う。

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

10月~11月の即売展情報
⇒ http://www.kosho.or.jp/servlet/sokubai.ksB001

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    ┌───────────────┐
    ◇第50回東京名物神田古本まつり◇
    └───────────────┘

会期:10月27日(火)~11月3日(火)
会場:神田神保町古書店街 *終了いたしました*

100万冊の大バーゲン! 駿河台下から専大前交差点まで、
靖国通り沿いに古書店街と書棚に囲まれた「本の回廊」が出現します。
期間中には何度も本を入れ替えるので「悩んだら買う」
これが鉄則です!
ぜひ御来場ください。

 ◎併催イベント
   特選古書即売展 稀書・珍本・良書がいっぱい!
    会 期 :10月30日(金)~11月1日(日)
    時 間 :午前10時~午後6時(最終日午後5時まで)
    会 場 :東京古書会館 地下ホール

  第50回スペシャル-水道橋博士の御茶ノ水古書店!
    会 期:10月27日(火)~11月3日(火)
    時 間:午前10時30分~午後5時 入場無料
    会 場:東京古書会館2階 情報コーナー(展示室)

 
今年の公式目録「古本」の巻頭特集は、水道橋博士さんの
ロングインタビュー。
博士さんの愛読書やオススメ本をおまつり期間中、
御茶ノ水の古書会館2階に展示します。
ここでしか見られない「水道橋博士の御茶ノ水古書店」。
ぜひお立ち寄りください!

他にもイベントが色々あります。
詳しくは下記サイトまで

BOOK TOWN じんぼう
→ http://jimbou.info/

ナビブラ神保町
→ http://www.navi-bura.com/index.html

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見逃したメールマガジンはここからチェック!
【バックナンバーコーナー】
⇒ http://www.kosho.ne.jp/melma/

┌─────────────────────────┐
  次回は2009年11月下旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*゜*.:*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の古書店で ☆*.:*゜*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,300店加盟)の略称です

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日本の古本屋メールマガジンその84 2009.10.26

【発行】東京都古書籍商業協同組合:広報部・TKI
     東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
     E-Mail melma@kosho.ne.jp (メールマガジン専用)
     URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
     広報部:早川多摩雄
     TKI:河野高孝

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