昭54、24x25cm
開催のことば
わが国近代洋画史のなかで,短い生命ではありましたが, 画期的な足
跡をのこした1930年協会の中心となり、将来に期待を寄せられた前田寛
治が, 33歳の若さで世を去ってから50年の歳月が流れました。
日本近代画人の誰にもまして,ヨーロッパ近代レアリスム芸術の本質
を理解し, 東洋の写生と西洋の写実の混同が続く日本洋画界に、真の写
実主義絵画を樹立しようと, 若い生命を燃焼しつくした前田寛治のすべ
てを再現するため,ここに代表作80余点とデッサン20余点を公開して没
後50年記念 「前田寛治展」を開催いたします。
詩人の魂を内に秘め、故郷の土の匂いをただよわせながら, クールベ,
セザンヌら先人のあとを慕いつつ完成への道を志した前田芸術は,再び
混迷の様相を深めている現代洋画界に多くの問題を投げかけてやみませ
ん。 「前田寛治展」の今日的意義は、まことに深いものがあります。
ここに本展開催のため協力を惜しまれなかった御遺族をはじめ、公私
の所蔵家各位、ならびに実行委員会諸氏, および関係各方面の御芳情に
厚く感謝を申しあげます。
昭和54年11月
兵庫県立近代美術館
神戸新聞社
日本経済新聞社
小田急グランドギャラリー
(薄ヤケ)