第4回 松﨑貴之さん 噴水の歴史に魅せられたひと
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世の中には、普通の人の目に入っていながら見過ごされているものがある。そういったものに執着し、調べたり集めたりするのがマニアという存在だ。今回紹介する松﨑貴之さんは、「噴水」に関する資料を集めている人である。 松﨑さんは1979年に長崎市に生まれる。父は長崎駅近くで酒屋を営んでおり、店内の立ち飲みスペースには多くの客が入りびたっていた。 「ぼくが子どもの頃はまだ三公社(専売公社、電電公社、国鉄)の時代で、そこの職員がよく来ていました。店のお客さんによく遊んでもらいました」 祖母と両親と妹の5人家族。亡くなっていた祖父、それに母も父も本好きで、家の中には本がたくさんあった。当時全盛だったファミコンはなかなか買ってもらえなかったが、本なら買ってくれるので、近所の〈メトロ書店〉によく行っていた。 小学4年生で、地方に残る珍説・奇説を集めた『歴史読本』の増刊号を買い、歴史に興味を持つ。長崎は少し歩くと古いものがいくらでもあるので、見て回った。 「石碑をインスタントカメラで撮影して、その写真や郷土史からのコピーをルーズリーフに貼り、数ページのコピー本をつくっていました。『カステラの由来』とか。それを店のお客さんに50円で売りつけた。3、4号は出したかな。もちろん友だちには判ってもらえませんでした(笑)」 小学6年生のとき、クイズにハマる。1991年に長崎で日本テレビ系の放映が開始され、そこではじめて『アメリカ横断ウルトラクイズ』を観た。番組のクイズ本を買うにとどまらず、公務員試験の本をもとに自分で問題をつくるようになった。「新鮮な遊びでしたね。自分が調べることが好きなんだと気づきました」と元少年は当時を振り返る。 高校1年のとき、『高校生クイズ』に出るも、予選で落ちる。しかし、クイズ熱はおさまらず、東京大学に入ると、クイズ研究会(クイ研)に属した。 東京では大きな書店があり、どこでも本が買えることに興奮した。住んでいた自由が丘には〈西村文生堂〉〈東京書房〉の2軒の古本屋があり、毎日のように通っては歴史やサブカルチャーの本を買った。 クイ研のメンバーも本好きで、面白い本を教えてもらった。 「当時のクイ研は、クイズ大会に出場するヤツより、面白い問題をつくるヤツの方がえらいという風潮がありました。誰がどんな話題を振っても、かならず乗っかってくれる人ばかりなので、毎日が楽しかったです。後輩の結婚式では二次会がクイズ大会で、新郎が新婦をほっといて出場してました(笑)」 2年留年するが、最後の年に聴いた美術史家の木下直之教授の授業が、その後の松﨑さんに決定的な影響を与えた。 「日比谷公園にあるものから、何かを取り上げてレポートをするという課題があって、ぼくは鶴の噴水を選んだんです。子どもの頃からなんとなく噴水を見るのが好きでした」 日比谷公園は1903年(明治36)に開園するが、2年前の新聞記事に「蝦蟇仙人の噴水ができる」という予告を見つけた。 「これはなんだ! と驚きましたね。その時は調べきれず、レポートも出せませんでしたが、あとになって中国の仙人だと判りました」 卒業後、就職してしばらくして、ヤフーオークションを見ていたら、噴水の絵葉書を見つけた。気になって、「噴水」で検索するとぞろぞろ見つかった。社会人になり、自分の金が使えるようになったこともあり、片っ端から買った。ヤフオクで買いつくすと、古本市や骨董市に通う。絵葉書を扱う店に名刺を渡し、「噴水ものがあったら取っておいてください」と頼んだ。噴水だけの絵葉書の束をのけておいてくれた店もあるという。これまでに集まった噴水の絵葉書は約5000枚。 そして、集まってきた絵葉書がいつ撮影されたものか、手さぐりで調べはじめた。キャプションと一緒に写っている建物がわずかな手がかりだ。国会図書館で、明治から昭和の読売新聞のCD-ROMを検索して、噴水に関する記事を一件ずつ調べた。噴水の歴史に関しては唯一、佐藤昌『噴水史研究』(環境緑化新聞社)という本があるが、そこに書かれていないことが多かった。 「2010年から『ずっと噴水が好きだった』というブログをはじめ、調べて分かったことを書いていきました。それを見たテレビ局から依頼され、噴水をテーマにした番組にも出演しました。調べると知らないことが次々に出てきて、それについての資料を古本屋で探し、そこで入手した本をもとに図書館で調べるというように、探し物のアンテナにしたがってぐるぐる回って隙間を埋めていくということを繰り返しています。欠けていたピースがピタッと埋まったときは快感ですね。調べ物についてはクイ研時代の経験が生きていて、ウラをとることの大切さを実感しています」 のちにツイッターをはじめ、生き人形の研究家である伊藤加奈子さんや観覧車を研究している福井優子さんらと知り合いになった。恩師である木下直之さんの研究会にも参加する。噴水は建築、美術、企業史などさまざまなジャンルにまたがるので、調べていくうちにいろんな方向に興味が飛び火していくのだと、松﨑さんは笑う。 「いまは戦後のキャバレーに設けられた噴水のことを調べています。昭和30年代の〈ミカド〉のパンフレットには、ロビーやステージにあった噴水が載っています。また、当時はキャバレーを回るバスツアーもあり、バス会社のパンフレットにキャバレーの噴水が見つかることもあるんです。それらの噴水はドイツのキャバレーを参考につくられたもので、今度は海外のパンフレットも探しています」 そうやって調べていくうちに、噴水とは直接関係ないヘンなネタも集まってくる。 「上野の西郷隆盛像に紙くずが貼りついている絵葉書を見つけて調べてみると、昭和20年代の新聞小説に、西郷像に紙をぶつけると英雄にあやかれるということが書かれていました。これは仁王像への信仰と関係があったのではないかと考えています。ところが、浅草寺にある社会事業家の瓜生岩子の像が紙くずまみれになっている絵葉書も見つけたんです。こちらは裁縫がうまくなると言われていたそうです。仁王像とは関係なさそうですが(笑)」 平日は会社勤務のため、土曜日は朝から国会図書館に行き調べ物をしたり、神保町の古本屋を巡ったりするのが楽しいと松﨑さんは云う。 ちなみに、最近できた噴水のことも調べているのだろうか? 「いや、そっちはあんまり詳しいわけじゃないですね。旅行で行ったら立ち寄るぐらいです。僕は時間が経って鮮度が落ちて、歴史の範囲に収まったぐらいの対象が好きみたいです」 そう謙遜するが、それでも一通りの知識や見聞はあるに違いない。いろんな方向に興味が飛び火していく一方で、本拠地である噴水については発言する範囲を明確にするというのが、噴水史マニアたる松﨑さんの真骨頂なのだろう。 このひとが書いた噴水史の本は、絶対面白いに違いない。それが世に出るのを楽しみに待とう。
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南陀楼綾繁 ツイッター
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2019年3月25日 第271号
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☆INDEX☆
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1.『目録学の誕生 劉向が生んだ書物文化』 古勝 隆一
2. 古本乙女の独り言② カラサキ・アユミ
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━━━━━━━━━━━【自著を語る(220)】━━━━━━━━━
『目録学の誕生―劉向が生んだ書物文化』
古勝隆一
中国の伝統学術では書物が重視されるが、主に分類の面からそれ
ら書物を研究するのが目録学である。「目録の学は、学中第一の緊
要の事」(王鳴盛、18世紀の中国の古典学者)とまで言われ、近代
的な中国学においても基礎の学として強調されていて、日本の大学
で中国古典を学ぶ学生は、おそらく耳にタコができるほどその重み
だけは聞かされるはずだ。十分身につくまで学び続けるかどうかは、
人によるとしても。
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『目録学の誕生 劉向が生んだ書物文化』 古勝 隆一 著
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━━━━━━━━━━━【古本乙女の独り言②】━━━━━━━━
古本乙女の独り言②
見つけて小走り、漁って小躍り、楽しくって仕方がないのよ古本はッ
カラサキ・アユミ
幸運なことに相方の実家が北関東方面ということもあり、この絶好
のチャンスを逃してはならんと昨年末に念願叶って茨城県はつちう
ら古書倶楽部に訪問することが出来た。土浦駅から歩いて数十秒も
しないうちに、あの、およそ古書店に似つかわしく無いポップな巨
大建物が遠巻きに目に入った瞬間、思わず小走りしてしまった童の
ような私であった。
続きはこちら
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古本乙女の独り言① はこちら
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カラサキ・アユミ
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著者・編者 稲岡 勝 皓星社刊 価格 8,000円+税
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3月~4月の即売展情報
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日本の古本屋メールマガジンその271 2019.3.25
【発行】
東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
URL http://www.kosho.or.jp/
【発行者】
広報部:二見彰
編集長:藤原栄志郎
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2019年3月10日 第270号
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古書市&古本まつり 第73号
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イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
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━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━
古本マニア採集帖
第3回 佐藤正浩さん ネットに頼らず本屋を回るひと
南陀楼綾繁
新潟県長岡市。新潟市に次ぎ、県内2位の人口を擁する。江戸時
代は長岡藩の城下町で、戊辰戦争では奥羽越列藩同盟に加わって新
政府軍と戦ったが敗北。疲弊した長岡藩に贈られた百俵の米を、大
参事の小林虎三郎が学校設立の費用に充てた逸話は有名だ。
続きはこちら
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南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。
ツイッター
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『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/
━━━━━【3月11日~4月15日までの全国即売展情報】━━━━━
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イービーンズ古本まつり(宮城県)
期間:2019/02/08~2019/03/17
場所:仙台駅前 イービーンズ 9階特設会場
宮城県仙台市青葉区中央4-1-1
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フジサワ古書フェア(神奈川県)
期間:2019/02/28~2019/03/13
場所:有隣堂藤沢店4階ミニ催事場
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第2回 上野広小路古本祭り
期間:2019/03/04~2019/03/17
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36
台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階
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第2回 御茶ノ水ソラシティ古本市
期間:2019/03/11~2019/03/17
場所:御茶ノ水ソラシティプラザ
千代田区神田駿河台4-6 JR御茶ノ水駅 徒歩1分、
東京メトロ新御茶ノ水駅聖橋方面改札直通
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第10回 水の都の古本展(大阪府)
期間:2019/03/12~2019/03/15
場所:大阪市中央公会堂 3階 小集会室
大阪市北区中之島1丁目1番27号
URL:http://osaka-koshoken.com/
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第21回フジサワ湘南古書まつり(神奈川県)
期間:2019/03/14~2019/03/17
場所:有隣堂藤沢店イベントホール(フジサワ名店ビル6階)
神奈川県藤沢市南藤沢2-1-1
URL:http://www.yurindo.co.jp/store/fujisawa/
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紙魚之會
期間:2019/03/15~2019/03/16
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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五反田遊古会
期間:2019/03/15~2019/03/16
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
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第175回 神戸古書即売会(兵庫県)
期間:2019/03/15~2019/03/17
場所:兵庫県古書会館 一階・二階 神戸市中央区北長狭通6-4-5
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第46回 鬼子母神通りみちくさ市
期間:2019/03/17
場所:雑司が谷 鬼子母神通り
URL:https://kmstreet.exblog.jp/
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第87回シンフォニー古本まつり(岡山県)
期間:2019/03/20~2019/03/25
場所:岡山シンフォニービル1F 自由空間ガレリア
岡山市北区表町1-5-1
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趣味の古書展
期間:2019/03/22~2019/03/23
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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中央線古書展
期間:2019/03/23~2019/03/24
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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新橋大古本まつり
期間:2019/03/25~2019/03/30
場所:新橋駅前SL広場
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BOOK & A(ブック&エー)
期間:2019/03/28~2019/03/31
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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浦和宿古本いち(埼玉県)
期間:2019/03/28~2019/03/31
場所:JR浦和駅西口さくら草通り徒歩5分マツモトキヨシ前
URL:https://twitter.com/urawajuku
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和洋会古書展
期間:2019/03/29~2019/03/30
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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さくらみちフェスティバル 春の古本まつり
期間:2019/03/29~2019/03/31※雨天中止
場所:神田神保町古書店街 靖国通り歩道
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青札古本市
期間:2019/04/04~2019/04/07
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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小江戸川越 ぺぺ古本まつり(埼玉県)
期間:2019/04/04~2019/04/15
場所:西武新宿線本川越駅前ペペ広場
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第36回 古本浪漫洲 Part1~5
期間:2019/04/04~2019/04/18
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場) 新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/
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下町書友会 ※今回のみ目録発行しません(3/6 更新)
期間:2019/04/05~2019/04/06
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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第5回 小倉駅ナカ本の市(福岡県)
期間:2019/04/05~2019/04/14
場所:小倉駅ビル内・JAM広場 (JR小倉駅 3階 改札前)
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第3回 上野広小路古本祭り
期間:2019/04/08~2019/04/14
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36
台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階
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立川フロム古書市ご案内
期間:2019/04/11~2019/04/27
場所:フロム中武(ビッグカメラ隣) 3階バッシュルーム(北階段際)
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書窓展(マド展)
期間:2019/04/12~2019/04/13
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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大均一祭
期間:2019/04/13~2019/04/14
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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平成31年 五台山古本まつり(高知県)
期間:2019/04/13~2019/04/14
場所:高知市五台山展望台1階イベントスペース
高知市吸江210-1
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『目録学の誕生―劉向が生んだ書物文化』
『目録学の誕生―劉向が生んだ書物文化』古勝隆一 |
中国の伝統学術では書物が重視されるが、主に分類の面からそれら書物を研究するのが目録学である。「目録の学は、学中第一の緊要の事」(王鳴盛、18世紀の中国の古典学者)とまで言われ、近代的な中国学においても基礎の学として強調されていて、日本の大学で中国古典を学ぶ学生は、おそらく耳にタコができるほどその重みだけは聞かされるはずだ。十分身につくまで学び続けるかどうかは、人によるとしても。 しかし、この目録学、一般の読者にはやや馴染みが薄いのではないか。倉石武四郎氏『目録学』、井波陵一氏『知の座標』といった、十分な内容の手引きがすでにあるが、どうもそれほど広くは読まれていないようで、ビブリオフィルの諸氏も、目録学固有の理論やその歴史にまで精通しているとは限るまい。 私が勤務する京都大学人文科学研究所で、所員が一人一冊、東方学の一般書を執筆して叢書にしようと計画を立てたのが数年前のことで、お鉢が回ってきて、目録学のことを書くと決めたのだが、いまさら概説を書いても仕方ないという気もして、あれこれ考えた末、目録学の礎を築いたとされる前漢時代の人、劉向(りゅうきょう)に焦点を当てることにした。 劉向は、中国の書物史上、きわめて重要な人で、その人物と学問を日本の読書界に紹介しようではないか、というわけである。劉向は、漢の皇族の一員として生まれ、衰退してゆく前漢王朝を何とか立て直そうとした。国政の中枢に近い官僚であり、かつ経書に通じた大学者であった。重要な人物であるにもかかわらず、日本語で読めるこの人物の伝記はまだなかったから、なるべく詳しく書いたつもりである。 しかし、劉向の人物紹介だけではつまらない。伝えたいことの核心は、中国の書物史にどれほど大きなインパクトを劉向が与えたのか、という点であった。彼は皇帝の命令を受けて、同僚たちとともに、皇室図書館の全蔵書を系統的に整理し、すべての書の定本を作り、皇帝に向けて解題を書き、目録を作ったのであるが、この一大事業が後世の書物の歴史に大きな影響を与え、「目録学」と称される独特な学問分野の基礎とされた。その意味で、劉向は「目録学の祖」なのである。本書では、その事業の詳細と意義に関してある程度の紙幅を割いた。 中国の書物史は、その後さらに発展を遂げ、ついには四庫全書という大叢書を生み出したが、その基礎は劉向の「目録学」にある。そして、私の見るところ、この目録学は、歴史学やその他の方法論には回収も還元もできない、独自の視点と思想を持っている。その礎を置いたのが他ならぬ劉向、というわけである。本書を手にとっていただき、この目録学の世界に身をゆだねていただければ、というのが、著者の願望なのである。 なお、私は「学退筆談」と題するブログ記事を数年前から書いており、目録学を含む中国古典の話題を様々提供している。別に「オープン・サイエンス」を気取るわけではないが、学問的な興味を新鮮なうちに、考えを記事にして公開してきた。本書とあわせ、本を愛する多くの方に読んでいただきたい。
学退筆談(中国古典に親しむ) https://xuetui.wordpress.com/ |
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古本乙女の独り言② 見つけて小走り、漁って小躍り、楽しくって仕方がないのよ古本はッ
古本乙女の独り言②
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幸運なことに相方の実家が北関東方面ということもあり、この絶好のチャンスを逃してはならんと昨年末に念願叶って茨城県はつちうら古書倶楽部に訪問することが出来た。土浦駅から歩いて数十秒もしないうちに、あの、およそ古書店に似つかわしく無いポップな巨大建物が遠巻きに目に入った瞬間、思わず小走りしてしまった童のような私であった。 (勿論、浮き足立つ私の背後には何かを諦めたような無表情の相方がズルズルとした足取りでついて来ているのであった・・・。義理の両親に年末のご挨拶という厳かな一年の締めくくりの道中に「こ、これはッ古本納めだからッ・・」と真っ直ぐな目で訳の分からぬ道理を言い張り己の私利私欲の為に何のためらいもなく旦那の実家に向かう電車を途中下車した嫁の姿、一体彼の瞳にはどのように映ったのだろう。) これまで携帯の画面越しに眺めていたあの古本屋が眼前に佇んでいる・・・・この喜びと感動をしっかりと噛み締めなければッと入店するまでに五分はかかった。建物の奥へと進むと自動ドアがお出迎え、その透明な扉の向こうには雄大な古本大海原の風景が広がっていた。入店後はもう竜宮城に招待された浦島太郎状態となり、ひたすらに古本漁りに酔いしれたのであった。(つちうら古書倶楽部店内の一角には休憩用のテーブルと椅子が置かれており、これには大変助けられた。相方をそこに座らせモバゲーに興じらせている間に漁書に打ち込めたからである。同伴者、ことに古本趣味に難色を示す同行人がいる場合、座れる待機スペースがあるのは大変有り難い。付近に喫茶店があったりすると尚良し。) やはり、整然としていない混沌とした古本屋さんはとりわけ楽しい。ズラリと並ぶ背表紙を見て回るのもワクワクするが、平積みになった本の塊を意を決して丁寧に崩しながら下に隠れている本をチェックする最中も口元がニヤけたりする。最も恍惚としたのが無我夢中に古本浴に没頭し心地良い疲弊感に包まれた時点で未だ自分が店内の中間地点に居る事に気付いた瞬間であった。「わ!!どうしよう!!見る棚、掘る場所がまだあんなにある!!」その先にまだまだ続く古本窟を目にし喜びのあまり天井を仰いでしまった。つちうら古書倶楽部は私の乙女心を手玉に取るカリスマホストのような倉庫的古本屋さんであった。そして、クレジットカードが使えるとわかった途端に歯止めがかからぬ状態になったのは無論言うまでもない。(古本に貢ぐこの快感・・・・あぁ、やめられない。)
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第3回 佐藤正浩さん ネットに頼らず本屋を回るひと
第3回 佐藤正浩さん ネットに頼らず本屋を回るひと
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新潟県長岡市。新潟市に次ぎ、県内2位の人口を擁する。江戸時代は長岡藩の城下町で、戊辰戦争では奥羽越列藩同盟に加わって新政府軍と戦ったが敗北。疲弊した長岡藩に贈られた百俵の米を、大参事の小林虎三郎が学校設立の費用に充てた逸話は有名だ。 教育に力を入れただけあり、維新後には鳥屋十郎、覚張書店などの本屋があったという。この地で新聞社や本屋を開いた大橋佐平は、上京して出版社・博文館を創業。佐平の親族が神田神保町で東京堂をはじめたことが元になり、同じく長岡出身の酒井宇吉が神保町で一誠堂書店を興し、そこで働いたやはり長岡出身の反町茂雄は独立して本郷に弘文荘を開いた。現在の神保町古書店街の形成には、長岡の人脈が関係していたと云えるのだ。 そういった歴史があるだけに、現在の長岡市にも文化的な雰囲気が濃くある。新潟市では一時期、姿を消していた古書店が、この町には数軒健在だ。2014年からは、春と秋にJR長岡駅前の大手通が歩行者天国になるのに合わせて、「長岡一箱古本市」を開催している。主催は「長岡読書倶楽部」といい、〈雑本堂古書店〉や新刊の〈ブックスはせがわ〉の店主や、本好きの人たちが集まっている。 以前、この読書倶楽部の飲み会に参加したことがある。その場に、今回登場する佐藤正浩さんもいた。周りの話を黙って聴いているが、私が新潟の古本屋やマイナーな作家の話をすると、この人がまっさきに反応してくれた。同席者によると、パソコンやスマホを持たず、毎日のように古本屋や新刊書店に通って本を買い、そのほとんどを読んでいるという。 先日、取材で長岡を訪れた際、長岡市立中央図書館で佐藤さんと待ち合わせ、住宅街にある喫茶店で話を聴いた。 佐藤さんは1973年生まれ。実家は祖父の代から鋼材店を営んでいた。小学生の頃は、図書館のブックモービル(移動図書館)で本を借りて読んでいた。 「それと、叔父がSFやミステリが好きで、祖父母と住んでいた家に行くとたくさん本や雑誌があったので、『野性時代』や『SFアドベンチャー』を借りて読みました」 中学校では科学部に入ったが、「まあ、帰宅部みたいなもんでした」と笑う。その頃には中心部から離れたところに自宅があり、校則が厳しかったので、祖父母の家に行くときに駅前の本屋に立ち寄るぐらいしかできなかった。 「本好きの同級生に教えてもらって、はじめて〈新井堂〉という古本屋に行きました。駅ビルには〈ブックセンター長岡〉(現・文信堂書店)がありました。当時、角川スニーカー文庫が創刊し、ライトノベルが出はじめました。それらを買って、友達と回し読みしていました。また、海外ミステリや新本格、ファンタジーなどを片っ端から読んでいます。小遣いが少なかったので、図書館で借りて読むことが多かったですね」 大学は東京へ。「受験のときにはじめて神保町に行きました。たくさんの古本屋が入っている古書センターはパラダイスだと思いましたね(笑)」。国文学部で近代文学を学び、幻想文学研究会に属した。「自分より本に詳しい、濃ゆい人たちにあって刺激を受けました」。卒論は岡本綺堂の江戸・東京ものについて書いたという。 卒業後、実家に戻り、建築関係の会社に入るが、不景気で会社が傾いたこともあり、畑ちがいの看護助手となり、現在は介護福祉士として働いている。 「夜勤の仕事が多いのですが、朝9時に終わるとその足で新刊書店や古本屋を回ってから、家に帰って寝るという感じです(笑)。とくに家の近くにある新刊の〈戸田書店〉には一日も欠かさずに寄っています。最近では顔を覚えられて、本の注文書を代わりに書いてくれるようになりました。休みの日も車で古本屋を回っています。ヒマができると、本屋に行かないと落ち着かないんです」 佐藤さんが長岡に戻った1990年代終り頃から、新潟県でも新古書店の〈ブックオフ〉が増えはじめた。 「J・G・バラード『夢幻会社』(サンリオSF文庫)や森下雨村『謎の暗号』(少年倶楽部文庫)のように、これまで欲しくても高くて手が届かなかった本が、ブックオフをこまめに回ると100円で見つかることに興奮しました」 長岡から十日町や柏崎まで出かけ、ブックオフや古本屋を回った。本に詳しい人と知り合いになって、店の情報を教えてもらった。一箱古本市に出るようになってから、本好きの友人も増えた。 当時もいまも、パソコンを持たず、ネットで古本屋を探したり本を買ったりすることはしない。 「これまで買わなかったのでいまさらという気もしますし、ネットがあるとたくさん本を買ってしまいそうで怖いんです(笑)。行きつけの店に行ったり、新聞で一箱古本市の情報を見たりして出かける方が好きです。そういうところで、あまり高いものでなくて、変な本に出会うのが楽しいです」 最近の拾いものは、ブックオフで見つけた和本や、『ポスター集』と書かれた新聞や雑誌の題字を貼り込んだスクラップブックなど。実家の一部屋は本で埋まっている。 「2004年の中越地震のときは、長岡もかなり揺れました。そのときに本を二階から下に降ろしたりしたので、いまではどこに何があるか判らなくなっています。親から処分しろと云われて古本屋に売っても、同じぐらい買ってしまうんです(笑)。最近はミステリの復刻が多くて、『こんなものまで出るんだ!』という驚きと、見つけたときに買っておかないとという気持ちがあります」 買った本はだいたい読んできたが、以前ほど量は読めなくなっているという。 「これまで興味のままにバラバラに買ってきましたが、もう少し体系づけて本を集めたいと思うようになりました。いま気になっているのは、柏崎出身の石黒敬七。柔道家で随筆もたくさん書いています。この人の本を集めてみたい」 ぼそぼそとした話しぶりだが、本のことならいくらでも話せそうだ。喫茶店を出て、佐藤さんの車に乗せてもらうことになり、ドアを開けると、ドアの隙間から単行本や雑誌がドサドサ落ちてきた。家に持ち込めない本を乗せているのだろうか? 取材時には、つい最近買ったというスマホを持っていたが、検索には使っていないそうだ。勝手な希望ながら、佐藤さんには、できればずっとこのまま、自分の嗅覚だけで本屋を回ってほしい。彼のような本好きによって、リアルな本屋は支えられているのだから。
南陀楼綾繁 ツイッター
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2019年2月25日 第269号
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☆INDEX☆
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1.『図書館の日本史』 新藤 透(東北福祉大学)
2.『日本の漫画本300年』 清水 勲
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━━━━━━━━━━━【自著を語る(219)】━━━━━━━━━
『図書館の日本史』
新藤 透(東北福祉大学)
古代から近現代までの日本史を単独で執筆できる歴史家は数少ない、
というか現代ではいない。戦後、日本史学は社会経済史や民衆史で
発展してきた。研究が進展するにつれてさまざまな観点から論じら
れるようになり、現在では多種多様な視点から研究されるようにな
ってきた。環境問題やLGBTなどのきわめて「現代的」な論点でも日
本史は研究されているのだ。
続きはこちら
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『図書館の日本史』新藤透 著
勉誠出版刊 定価 3,888円 (本体3,600円) 好評発売中
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100962
━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━
『日本の漫画本300年』
清水 勲
現代のコミック本の出版状況を見れば、誰でも日本はマンガ大国で
あることを認めるだろう。日本の戯画・漫画の歴史は『鳥獣人物戯
画』などの肉筆戯画からは一千年、『鳥羽絵三国志』などの版画本
からでも三百年を数える。版画本という複製の商品となって漫画は
大衆化し、多くの人々の娯楽の一つとなった。
続きはこちら
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『日本の漫画本300年』清水勲・猪俣紀子著
ミネルヴァ書房刊 本体2800円+税 好評発売中
http://www.minervashobo.co.jp/book/b377515.html
━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━
『目録学の誕生 劉向が生んだ書物文化』 古勝 隆一 著
臨川書店 定価 3,000円+税 3月上旬発売予定
http://www.rinsen.com/linkbooks/ISBN978-4-653-04376-8.htm
『古書古書話』萩原 魚雷 著
本の雑誌社 予価 2,200円+税 3月中旬発売予定
http://www.webdoku.jp/
古本乙女の独り言②
これは無駄使いぢゃない、自分への投資なんだッ
カラサキ・アユミ
古本乙女の独り言① はこちら
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━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━
2月~3月の即売展情報
⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init
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日本の古本屋メールマガジンその269 2019.2.25
【発行】
東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
URL http://www.kosho.or.jp/
【発行者】
広報部:二見彰
編集長:藤原栄志郎
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『日本の漫画本300年』について
『日本の漫画本300年』について清水 勲 |
現代のコミック本の出版状況を見れば、誰でも日本はマンガ大国であることを認めるだろう。日本の戯画・漫画の歴史は『鳥獣人物戯画』などの肉筆戯画からは一千年、『鳥羽絵三国志』などの版画本からでも三百年を数える。版画本という複製の商品となって漫画は大衆化し、多くの人々の娯楽の一つとなった。 享保5年(1720)に出た『鳥羽絵欠(あく)び留(どめ)』などの「鳥羽絵」本は人気を博し、戯画のことを「鳥羽絵」と言うくらい社会に、そして日本漫画史に影響を与えた。その後も鳥山石燕『画図百鬼夜行』、鍬形蕙斎『人物略画式』、河村文鳳『文鳳麁画(そが)』、葛飾北斎『北斎漫画』などの傑作戯画本が次々と出版され、江戸時代の人々は「漫画」を楽しむようになる。それは近代に入っても受け継がれ、とくに新聞・雑誌などの発行部数が大量のジャーナリズムの中に漫画は掲載あるいは連載され、さらに人々の生活の中に入っていく。 漫画文化の底辺にあるのは出版文化である。江戸時代にはおよそ5000にのぼる版元が生まれ、様々な出版活動が展開されてきたが、その一つに戯画本の出版があった。近代に入ると版元にはさらに新聞社も加わる。そして、販売所は絵草紙屋から書店へと変わる。そして日本は、出版大国となり、同時に漫画大国になっていったのである。 江戸時代の出版文化を支えたのは木版画の技術である。木版画は浮世絵のような多色刷の美術も生んだが、同時に版本やその挿絵、さらには戯画本を生み出す。それらは近代に入ると印刷文化と結びついて、より多様なビジュアル文化を生み出していく。それは新聞・雑誌のビジュアル化を促進し、日本の出版文化をより豊かなものにしていく。 商品化は販売部数という数字で本の価値が示される。『北斎漫画』全15編も売れた編と売れなかった編に差が生じたはずである。たぶん、面白い戯画・諷刺画を満載した12編が最も売れたのではないか。5編は建物特集と著名人像だけで構成され、戯画・諷刺画が全く入っていないからそれほど部数が出なかったのではないか。もっとも『北斎漫画』は絵の教本の性格をもっているから、どの編も一定の需要があったと思われる。全集として全編揃えるというファンもいたはずである。 漫画本300年史は商品としての漫画の300年史である。そしてその半分の150年は江戸時代である。近世・近代・現代へと続く漫画本はコミック本と名を変えて、読者も世界へと拡大していく。「戯画」本から「ストーリー漫画」本と変化することで漫画本は多様化とさらなる大衆化を獲得していくのである。戦後、「MANGA」は世界で通用する国際語となった。「日本のストーリー漫画」から「ストーリー漫画」そのものを意味する言葉となった。そして、日本文化を象徴する言葉の一つとなった。本書はそうした経緯を紹介している。
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『図書館の日本史』
『図書館の日本史』新藤 透(東北福祉大学) |
古代から近現代までの日本史を単独で執筆できる歴史家は数少ない、というか現代ではいない。戦後、日本史学は社会経済史や民衆史で発展してきた。研究が進展するにつれてさまざまな観点から論じられるようになり、現在では多種多様な視点から研究されるようになってきた。環境問題やLGBTなどのきわめて「現代的」な論点でも日本史は研究されているのだ。 つまり、とても一人ではすべての観点に目配りをして通史を叙述することが困難になっている。日本史の通史概説書は今日でも出版されているが、各分野の執筆者数十人を総動員して著されているのが一般的だ。しかしそのような「概説書」であると、却って論点が散漫になってしまうので、一冊の書物として通読した場合歴史を学び始めた初学者には難解に映ってしまうのである。 それに比べて戦前の「国史学者」は、通史を単独で書けた。政治史を中心とし、史実を時系列で並べたオーソドックスな体裁のものが多いが、事実関係に拘って古代から近現代まで通して書いてあるので通読した場合スッと頭に入ってくる。観点もひとつに絞っているので、初学者には理解しやすいのだ。 それを専攻している図書館情報学の一領域である「日本図書館文化史」で出来ないのか――。無謀にもそう思ってしまい、ひといきに書き上げたのが本書『図書館の日本史』である。 日本図書館文化史の通史は、司書課程科目「図書・図書館史」の教科書として刊行されているものを除けば、そう多くはない。しかも戦時中に刊行された小野則秋『日本文庫史研究』上下巻を除けば、戦後出版された図書館史の本は近代史の記述が多く、前近代においては図書寮や金沢文庫、足利学校、紅葉山文庫などの発達の経緯が書かれているものばかりであった。これを「文庫史観」と筆者は勝手に名づけているが、あまり興味をそそられるような内容ではないのである。 文庫を中心に論じるにしても、単純にそれだけ切り取って設立と衰退の経緯を述べてもさほど面白くはない。そこに携わった人間の情熱や思惑、文庫を取り巻く政治情勢や時代性など、周辺情報にまでふれなければ「歴史」とはならないと私は考える。 例えば足利学校の附属文庫にしても、史料上の制約もあり詳細は不明な箇所も多々あるとはいえ、さまざまな「ドラマ」があった。関白豊臣秀次が奥州の九戸政実を討伐した帰途に古河に立ち寄り、挨拶に出向いていた足利学校の校長を拉致しさらに蔵書のほとんどを秀次の管理下においた事件などは、日本史学では有名な事件であるが図書館史の本で取り上げたことはなかったと思われる。 また江戸時代後期に各地の農村で見られた「蔵書の家」という活動は、庄屋の個人蔵書を村人に一般開放していたもので、書籍の貸出だけではなく読書会や講演会などの「イベント」も行っていた。これらは「〇〇文庫」という体裁ではなく、あくまで表面上は庄屋の私的活動にしか見られなかったので、小川徹氏の著作を除いては図書館史として取り上げられなかった事例である。 従来の図書館史の本は、図書館業界関係者を対象としたものが多く、一般向けの本はなかったと思われる。図書館を頻繁に利用している方は多い。普段利用している図書館がどのような歴史をたどってきたのか――。それを知ることで図書館自体に関する興味が高まり、もっと図書館が好きになって頂ければ著者としては本望である。
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2019年2月8日 第268号
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古書市&古本まつり 第72号
。.☆.:* 通巻268・2月8日号 *:.☆. 。
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━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━
第2回 書物蔵さん 「図書館絵葉書」を発見したひと
南陀楼綾繁
ブログが盛んだった2005年、何かのキーワードで検索したら、
「書物蔵」というブログにぶつかった。該博な知識と、顔文字を多
用したオタクっぽい文体のギャップが面白く、毎日チェックしてい
た。その年、私が自宅で開いた「一部屋古本市」にこのブログの主
が参加している。当時は「書物奉行」と名乗っていたはずだが、い
つのまにか、ブログの名前と同じ「書物蔵」が通り名となった。こ
こでもそう呼ぶ。
続きはこちら
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南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。
ツイッター
https://twitter.com/kawasusu
『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/
━━━━━【2月10日~3月15日までの全国即売展情報】━━━━━
⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init
2019 第2回 ジュンク堂 新春古書展(沖縄県)
期間:2019/01/11~2019/02/11
場所:ジュンク堂那覇店 1F特設売場
沖縄県那覇市牧志1-19-29
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フィールズ南柏 古本市(千葉県)
期間:2019/01/26~2019/02/19
場所:フィールズ南柏モール2 2階催事場 柏市南柏中央6-7
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三省堂書店池袋本店古本まつり
期間:2019/02/05~2019/02/12
場所:西武池袋本店別館2階=特設会場(西武ギャラリー)
東京都豊島区南池袋1-28-1
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港北古書フェア(神奈川県)
期間:2019/02/06~2019/02/15
場所:有隣堂センター南駅店店頭ワゴン販売
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書窓展(マド展)
期間:2019/02/08~2019/02/09
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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第5回古書会館de古本まつり(京都府)
期間:2019/02/08~2019/02/10
場所:京都古書会館3階 京都市中京区高倉通夷川上る
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イービーンズ古本まつり(宮城県)
期間:2019/02/08~2019/03/17
場所:仙台駅前 イービーンズ 9階特設会場
宮城県仙台市青葉区中央4-1-1
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杉並書友会
期間:2019/02/09~2019/02/10
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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オールデイズクラブ古書即売会(愛知県)
期間:2019/02/15~2019/02/17
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12
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有隣堂イセザキ本店・古書ワゴンセール(神奈川県)
期間:2019/02/16~2019/03/08
場所:有隣堂伊勢佐木町本店
横浜市中区伊勢佐木町1-4-1
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浦和宿古本いち(埼玉県)
期間:2019/02/21~2019/02/24
場所:JR浦和駅西口さくら草通り徒歩5分マツモトキヨシ前
URL:https://twitter.com/urawajuku
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ぐろりや会
期間:2019/02/22~2019/02/23
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://www.gloriakai.jp/
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好書会
期間:2019/02/23~2019/02/24
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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第89回 彩の国 所沢古本まつり(埼玉県)
期間:2019/02/27~2019/03/05
場所:くすのきホール
西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場
URL:http://furuhon.wix.com/tokorozawafuruhon
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フジサワ古書フェア(神奈川県)
期間:2019/02/28~2019/03/13
場所:有隣堂藤沢店4階ミニ催事場
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城南古書展
期間:2019/03/01~2019/03/02
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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西部展
期間:2019/03/01~2019/03/03
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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東京愛書会
期間:2019/03/08~2019/03/09
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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古書愛好会
期間:2019/03/09~2019/03/10
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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第2回 御茶ノ水ソラシティ古本市
期間:2019/03/11~2019/03/17
場所:御茶ノ水ソラシティプラザ 千代田区神田駿河台4-6
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第10回 水の都の古本展(大阪府)
期間:2019/03/12~2019/03/15
場所:大阪市中央公会堂 3階 小集会室
大阪市北区中之島1丁目1番27号
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第21回フジサワ湘南古書まつり(神奈川県)
期間:2019/03/14~2019/03/17
場所:有隣堂藤沢店イベントホール(フジサワ名店ビル6階)
藤沢市南藤沢2-1-1 フジサワ名店ビル
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紙魚之會
期間:2019/03/15~2019/03/16
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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五反田遊古会
期間:2019/03/15~2019/03/16
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
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第175回 神戸古書即売会(兵庫県)
期間:2019/03/15~2019/03/17
場所:兵庫県古書会館 一階・二階 神戸市中央区北長狭通6-4-5
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日本の古本屋メールマガジンその268 2019.2.8
【発行】
東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
URL http://www.kosho.or.jp/
【発行者】
広報部:二見彰
編集長:藤原栄志郎