古本乙女の独り言②
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幸運なことに相方の実家が北関東方面ということもあり、この絶好のチャンスを逃してはならんと昨年末に念願叶って茨城県はつちうら古書倶楽部に訪問することが出来た。土浦駅から歩いて数十秒もしないうちに、あの、およそ古書店に似つかわしく無いポップな巨大建物が遠巻きに目に入った瞬間、思わず小走りしてしまった童のような私であった。 (勿論、浮き足立つ私の背後には何かを諦めたような無表情の相方がズルズルとした足取りでついて来ているのであった・・・。義理の両親に年末のご挨拶という厳かな一年の締めくくりの道中に「こ、これはッ古本納めだからッ・・」と真っ直ぐな目で訳の分からぬ道理を言い張り己の私利私欲の為に何のためらいもなく旦那の実家に向かう電車を途中下車した嫁の姿、一体彼の瞳にはどのように映ったのだろう。) これまで携帯の画面越しに眺めていたあの古本屋が眼前に佇んでいる・・・・この喜びと感動をしっかりと噛み締めなければッと入店するまでに五分はかかった。建物の奥へと進むと自動ドアがお出迎え、その透明な扉の向こうには雄大な古本大海原の風景が広がっていた。入店後はもう竜宮城に招待された浦島太郎状態となり、ひたすらに古本漁りに酔いしれたのであった。(つちうら古書倶楽部店内の一角には休憩用のテーブルと椅子が置かれており、これには大変助けられた。相方をそこに座らせモバゲーに興じらせている間に漁書に打ち込めたからである。同伴者、ことに古本趣味に難色を示す同行人がいる場合、座れる待機スペースがあるのは大変有り難い。付近に喫茶店があったりすると尚良し。) やはり、整然としていない混沌とした古本屋さんはとりわけ楽しい。ズラリと並ぶ背表紙を見て回るのもワクワクするが、平積みになった本の塊を意を決して丁寧に崩しながら下に隠れている本をチェックする最中も口元がニヤけたりする。最も恍惚としたのが無我夢中に古本浴に没頭し心地良い疲弊感に包まれた時点で未だ自分が店内の中間地点に居る事に気付いた瞬間であった。「わ!!どうしよう!!見る棚、掘る場所がまだあんなにある!!」その先にまだまだ続く古本窟を目にし喜びのあまり天井を仰いでしまった。つちうら古書倶楽部は私の乙女心を手玉に取るカリスマホストのような倉庫的古本屋さんであった。そして、クレジットカードが使えるとわかった途端に歯止めがかからぬ状態になったのは無論言うまでもない。(古本に貢ぐこの快感・・・・あぁ、やめられない。)
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