miraitetugaku

『未来哲学』の創刊

『未来哲学』の創刊

末木文美士

 この度、未来哲学研究所の機関誌として『未来哲学』が創刊の運びとなった。未来哲学研究所は、現代という困難な時代を超えて、未来にどのような希望を紡ぐことができるか、という切実な課題へ向けて、新しい哲学の創造を志す研究者が集まり、2019年に創設された。所長の末木文美士、副所長の山内志朗・中島隆博を始め、従来の西洋近代中心の枠にとらわれず、古代・中世、そして東洋・日本に及ぶ広い領域の哲学・思想の研究者によって、異質の思考がぶつかり合い、火花を散らしながら、次の世代につながるものが生まれてくる、そのようなエネルギーに満ちた場の形成を目指している。特定のオフィスを持たず、ゲリラ的、流動的であろうとする。事務局長のぷねうま舎の中川和夫氏が取りまとめ役に当たり、カクイチ研究所の後援を得ている。

 ところが、本格的な活動にかかろうとした矢先に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって出鼻をくじかれた。しかし、この危機的な事態こそ、むしろ新しい哲学の確立を一層強く要請するものである。2020年8月にオンラインで行われた創設記念シンポジウム「未来哲学とは何か」では、まさしくその船出に相応しい熱い討論が交わされた。現在、シンポジウムの他、セミナー、水曜哲学会、青年哲学会などの企画が進行中、あるいは準備中である。その活動の状況は、ホームページhttps://miraitetsugaku.com/でご覧いただきたい。

 『未来哲学』の刊行は、研究所の中核的な事業の一つであり、年2回程度の刊行を意図している。創刊号は2020年11月に刊行されたが、所長の末木による「創刊のことば」の後、特集・コラム・論考・書評と対話の4本の柱を設定した。「特集」は、シンポジウムの提題(山内志朗・永井晋・中島隆博)とコメント(佐藤麻貴)、ならびに中島隆博・納富信留の対談により、過去の叡知の再発見を通して、どのように未来を切り開くかが論じられている。「コラム」は、周辺分野の研究者による興味深いエッセーによって、視野を広げようというもので、辻誠一郎(縄文学)、三津間康幸(古代バビロン文化史)、細川瑠璃(ロシア思想)の三氏により、常識を打ち破る新鮮な知見が披露されている。

 「論考」は、中堅・若手の研究者による力の籠もった論文であり、仏教に関して護山真也・師茂樹、イスラームに関して小村優太・法貴遊、田辺元に関して田島樹里奈が執筆した。専門的な問題がスリリングに今日の課題に直結して論じられている。最後に「書評と対話」は、末木『日本思想史』に対する葛兆光の書評をもとに、葛・末木の対談で深めている。

 以上のように、本誌は研究所の活動を反映して、水準を落とすことなく、しかし、狭い専門の枠にとらわれず、未来へ向けて哲学のエネルギーを結集することを目指している。人文系の学問の不要論がかまびすしいが、そんな時代だからこそ、世界や人間についてもっとも深く根源から捉え直す真の哲学が生まれなければならない。広く関心を持っていただけることを期待したい。

miraitetugaku

『未来哲学 創刊号』未来哲学研究所編
ぷねうま舎 本体:1500円  好評発売中!
https://www.pneumasha.com/

Copyright (c) 2020 東京都古書籍商業協同組合

wakagenji

『和歌でみる源氏物語~おばあさん的~』

『和歌でみる源氏物語~おばあさん的~』 
おばあさんなら(お姉さんも)わかる女性たちの心 
(おじいさん、お兄さんもわかる親子の情)

たなべ書店・田辺真知子

 この本を刊行して、多くの日本人に『源氏物語』体験といったものがあるのだと気づかされました。学生のときにちらっと勉強しただけだけれど、いつか、ゆっくり読んでみたいとか、現代語訳を読んだことがある、原文は「須磨」の巻で挫折してしまった、などなど。世界に冠たる日本文学『源氏物語』はどんなお話なのだろうか、いつかどこかで触れてみたいという思いは、日本人の心のどこか片隅に巣くっているようです。

 『源氏物語』の読み方も人さまざまです。あの雅な世界へ憧れる人もあれば、あんな女たらしの光源氏の話なんか敬遠したいという人もあるでしょう。読み方はそれぞれでいいのですが、今回私は、光源氏の恋愛遍歴よりは、彼を巡る女性たちの生き方や交流、子や孫を思う親の情、千年前と同じ普遍的な心に惹かれる読み方になったようです。「おばあさん的」の副題はそんな意味合いがあります。おばあさんなら、いや、これからおばあさんになる人にも、はたまたおじいさんたちにも共感して読んでいただけるのではないでしょうか。

 そして、何といっても『源氏物語』を「和歌」を芯にして読みたいと思いました。私はずっとフリーライターの仕事をしてきましたが、能に関わるようになって二十数年。能は源氏物語や平家物語、伊勢物語など古典を題材にするものも多く、ために、原典や関連する本を読むようになり、すっかり古典の魅力に取りつかれました。そして、能の詞章(台本のようなもの)に和歌や漢詩が織り込まれていて、物語を引き立てていることに気づかされます。詞章のなかの和歌が気になり出したら、和歌の系譜をたどりたくなり、万葉集から古今和歌集、新古今和歌集と読んでいくなかで、源氏物語が浮き上がってきました。
「古今集は源氏物語に流れ込み、新古今集は源氏物語から流れ出ている」(岩波古典文学大系・古今和歌集)といった解説を読み、これは源氏物語の和歌を見てみなければ・・と。

 和歌の系譜をたどる中での源氏物語。ちょっと読む動機が不純ですが、読みだしたら面白く、書き留めておきたいことが山ほどになりました。やはり、源氏物語という物語の偉大さでしょうか。和歌だけでなく地の文章も魅力的です。
『源氏物語』には800首弱の和歌があります。本書ではその中から、源氏が最愛の伴侶・紫上を亡くし出家するまでの間の200首を超える和歌をセレクトしました。
いくつか和歌を紹介します。
「かぎりとて別るる道のかなしきに いかまほしきは命なりけり」
 この歌は、光源氏の母・桐壺更衣が亡くなるときに、生きていたいと苦しい息で絞り出した、まさに絶唱です。光源氏が3歳のときのことでした。
「人の親の心は闇にあらねども 子を思ふ道にまどひぬるかな」
 これは源氏物語に最も多く引き歌(有名な古歌を引いて、文章の味わいを深くする)として登場した歌で、紫式部の曽祖父・藤原兼輔の歌です。普遍的な親の思いを詠っています。
「五月(さつき)まつ花橘(はなたちばな)の香をかげば 昔の人の袖の香ぞする」
これも引き歌ですが、伊勢物語や古今和歌集の夏歌に登場する読み人しらずの歌です。花橘の夏歌ですが、昔の恋人を思い出す風情によく合います。

 このような、四季をめでる心、人を愛する心、それらを詠った和歌の伝統は、今の日本人の心の底に静かに眠っていて、どこか感性の源になっていると思うのです。
 好き勝手に楽しく書き進めたこの『和歌でみる源氏物語~おばあさん的~』(304ページ)。専門家でもないのに、源氏物語を題材にするなんて、大それていると思い、
 恐れ多いのですが、こんな読み方をしている人もいるのかと、手に取っていただければ嬉しく思います。

wakagenji

『和歌でみる源氏物語~おばあさん的~』
田辺真知子著
たなべ書店刊
価格:1400円+税

注文は「日本の古本屋」のサイトか
メールで:order@tanabeshoten.co.jp
電話でも:03-3640-0564 たなべ書店

Copyright (c) 2020 東京都古書籍商業協同組合

porutore

『路上のポルトレ──憶いだす人びと』

『路上のポルトレ──憶いだす人びと』

森まゆみ

 この本を出して嬉しかったことは三つある。
四半世紀前、新潮社で『明治東京畸人傳』を出すとき、実は登場人物はかつて私の住む谷根千にふいと姿を現した人たちなので、「路上のポルトレ」という題を思いついた。しかし、おしゃれすぎて地味すぎると実現しなかった。
 もう一つは、谷中に生まれ育ち、上野の藝大で学んだ有元利夫さんのフレスコ画が私は好きだった。あるとき私は編集者に提案してみたが却下された。しかしその編集者は私に紹介されて初めて知った画家の絵を別の著者の装丁に使ったのである。とても悔しい思いをした。今回、妻の容子さんのご快諾を得て内容にあった絵を使わせていただけた(「夜のカーテン」1980年)。
 三つ目に、長年の友、南陀楼綾繁さんが、集英社『すばる』に連載した「こぼれ落ちる記憶」が本になっていないのを見つけ、森さんが出会った人に関する思い出を本にしましょうよ、と言ってくれたことである。本になることに協力してくれた集英社の横山さん、瀧川さんにも感謝する。

 いつもその座で私だけ飛び抜けて若い、という時代があった。ところが気がつけばあれあれ、自分が一番年長者になっている。還暦を過ぎると今考えたことも、昨日あった人も、お昼に食べたものもみんな忘れてしまう。それでいいのかもしれない。ただ今書き留めておかないとどこかへ行ってしまう、という大事な記憶をそっとすくって文字にしてみた。とても私一人のものにしてはもったいないという気持ちがあった。
 かと思うと、何十年も前のことなのに鮮やかに覚えているシーンもある。

 例えば、古書店、本郷ペリカン書房の品川力さんが、白いシャツにテンガロンハットをかぶって、私たちの工房に現れ、暑い暑いと照れたように扇子を出してバタバタ仰ぐ姿などは、その声とともにはっきり覚えている。
 大学一年生の時、谷中の朝倉彫塑館でアルバイトをするようになって、その並びの初音小路の入口の古本屋、鶉屋のご主人が暗い店の奥で目を光らせていたのも、吉本隆明へのため書きがある古本の山も覚えている。
 これは20年くらい前だけどなないろ文庫ふしぎ堂の田村さんが、イガグリ頭でちょっとつっかえながら、「無錫旅情」をカラオケでがなっていたのも懐かしい。お酒を飲まない石神井さん、元気な月の輪さんは相変わらず本の話をし、そして坪内さんはすでに酩酊して、その周りで踊っていた。そんな人たちも大半空の向こうにお引越しだ。

 私は20代の終わりに地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊し、爾来40年ほどの間に、どんなにたくさんの人と出会ってきたことか。雑誌というものは単行本よりも読者が参加しやすく、磁石のように人を引きつけてしまう。そのうち会ってみたいという人にはどうしても会えてしまうことになる。
 町の中にはあと50年したらあんなおばあちゃんになりたいと思った人も何人かいた。そして吉村昭さんも木下順二さんも、サイデンステッカーさんも私にとっては偉い人ではなくて、同じ地域に生きている人であった。今も谷中墓地を歩けば、明治の自由民権家、馬場辰猪のオベリスク型の墓に出くわし、そこで萩原延壽さんとツーショットを撮ったのを思い出す。三崎坂を降りれば、大円寺の奥の借家をアメリカ人ジョルダン・サンドさんと直した日々を思い出す。「アメリカ人の僕が米軍の空襲に備えて作られた防空壕のある家に住むのは不思議な気分です」と言っていた青年は今はジョージタウン大学教授である。根津には私たちが雑誌を置いてもらいたい一心と、編集費稼ぎに仲居を務めた居酒屋「甚八」があった。千駄木の丘に登れば、山本安英さんと木下順二さんが散歩しておられた逆光の夕日を思い出す。そんなことを書き留めてみた。

 私は小学校の時から郷土史クラブで、お年寄りの話を聞くのが好きだった。半世紀たってもその癖が抜けない。私は上の世代の記憶を下の世代に手渡すリングのようなものに過ぎない。
 もう一つあった。団子坂上、千駄木にあっていつもいい本を出しているなあ、と憧れていた羽鳥書店で本を出していただけたことも嬉しいことだ。

porutore

『路上のポルトレ 憶いだす人びと』森まゆみ 著
羽鳥書店 本体価格2,200円+税 好評発売中!
https://www.hatorishoten.co.jp/items/35418111

Copyright (c) 2020 東京都古書籍商業協同組合

2020年12月10日号 第312号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第95号
      。.☆.:* 通巻312・12月10日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

古書組合の役割と古書業界の仕組み その3

             東京古書組合前事務局長 高橋秀行

 これまで二回のお話で、古書組合の中では一番の肝は市場(交換
会)であることがお分かりいただけたと思います。また、古書業者
が古書籍に関わる知識を日々蓄積、研鑽していることもご理解され
たと思います。今回は最終回となりますので、古書組合にとっても
う一つの肝であるインターネット「日本の古本屋」についてお話し
したいと思います。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=6515

━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

第23回 村田亮太さん アルバイトと趣味を両立するひと

                       南陀楼綾繁

「最近、うちにアルバイトに来ている大学生がかなりの古本好きな
んですよ」
 この連載の編集を担当している皓星社の晴山さんからそう云われ
て会った村田亮太さんは、温厚そうな青年だった。
「古書会館や池袋〈三省堂書店〉など、東京で開催される古書市は
ぜんぶ通っています。だから、新型コロナウイルスの影響で即売会
が中止になったときは辛かったです。東京古書会館の即売会が再開
した7月6日には、もちろん駆けつけました」
 さっきも即売会に行ってましたと、収穫物の入った袋を見せてく
れる。その下からもう一袋が出てきた。計4900円なり。とにかく即
売会に通うのが楽しくて仕方ないらしい。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=6522

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━【12月10日~1月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

-------------------------------
赤札古本市

期間:2020/12/10~2020/12/13
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

-------------------------------
浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2020/12/10~2020/12/13
場所:さくら草通り
JR浦和駅西口下車 徒歩5分 マツモトキヨシ前

https://twitter.com/urawajuku

-------------------------------
富山の魅力を発信する古本市 BOOK DAY とやま駅(富山県)

期間:2020/12/10~2020/12/10
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)

-------------------------------
新興古書大即売展

期間:2020/12/11~2020/12/12
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

-------------------------------
第18回 つちうら古書倶楽部古本市(茨城県)

期間:2020/12/12~2020/12/20
場所:つちうら古書倶楽部 
〒300-0036 茨城県土浦市大和町2-1 パティオビル1階
TEL&FAX 029-824-5401

-------------------------------
第18回 つちうら古書倶楽部 師走の古本まつり(茨城県)

期間:2020/12/12~2020/12/20
場所:土浦市大和町2-1 パティオビル1階

-------------------------------
12月反町古書会館(神奈川県)

期間:2020/12/12~2020/12/13
場所:神奈川古書会館1階特設会場

http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

-------------------------------
港北古書フェア(神奈川県)

期間:2020/12/16~2020/12/25
場所:横浜市営地下鉄 センター南駅

-------------------------------
ぐろりや会

期間:2020/12/18~2020/12/19
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

http://www.gloriakai.jp/

-------------------------------
五反田古書展

期間:2020/12/18~2020/12/19
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4

-------------------------------
アクロスモール新鎌ヶ谷古本市(千葉県)

期間:2020/12/19~2021/01/06
場所:アクロスモール新鎌ヶ谷 1F 中央エレベーター前
千葉県鎌ケ谷市新鎌ヶ谷2-12-1

-------------------------------
下町書友会

期間:2020/12/25~2020/12/26
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

-------------------------------
2020 歳末阪神古書ノ市(大阪府)

期間:2020/12/26~2020/12/28
場所:阪神百貨店 梅田本店 8階催場
大阪市北区梅田一丁目13番13号

-------------------------------
好書会

期間:2020/12/26~2020/12/27
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

-------------------------------
アクロスモール新鎌ヶ谷古本市(千葉県)

期間:2020/12/19~2021/01/06
場所:アクロスモール新鎌ヶ谷 1F 中央エレベーター前
千葉県鎌ケ谷市新鎌ヶ谷2-12-1

-------------------------------
立川フロム古書市

期間:2021/01/05~2021/01/19
場所:立川駅北口徒歩5分フロム中武

http://mineruba.webcrow.jp/saiji.htm

-------------------------------
第41回古本浪漫洲 Part.1

期間:2021/01/07~2021/01/09
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2 TEL03-3354-6111

https://www.kosho.co.jp/furuhon_romansu/

-------------------------------
東京愛書会

期間:2021/01/08~2021/01/09
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

http://aisyokai.blog.fc2.com/

-------------------------------
杉並書友会

期間:2021/01/09~2021/01/10
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

-------------------------------
第41回古本浪漫洲 Part.2

期間:2021/01/10~2021/01/12
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2 TEL03-3354-6111

https://www.kosho.co.jp/furuhon_romansu/

-------------------------------
第19回 上野広小路亭古本まつり

期間:2021/01/11~2021/01/17
場所:谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36

-------------------------------
第41回古本浪漫洲 Part.3

期間:2021/01/13~2021/01/15
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2 TEL03-3354-6111

https://www.kosho.co.jp/furuhon_romansu/

-------------------------------
さんちか古書大即売会(兵庫県)

期間:2021/01/14~2021/01/19
場所:神戸さんちか3番街さんちかホール

http://www.hyogo-kosho.net/

-------------------------------
フィールズ南柏 古本市(千葉県)

期間:2021/01/14~2021/02/03
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場  柏市南柏中央6-7

-------------------------------
富山の魅力を発信する古本市 BOOK DAY とやま駅(富山県)

期間:2021/01/14~2021/01/14
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国950書店参加、データ約600万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

見逃したメールマガジンはここからチェック!
 【バックナンバーコーナー】

https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=33

┌─────────────────────────┐
 次回は2020年12月下旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*゜*.:*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の古書店で ☆*.:*゜*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

==============================

日本の古本屋メールマガジンその312 2020.12.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:志賀浩二
 編集長:藤原栄志郎

==============================

古書組合の役割と古書業界の仕組み その3

古書組合の役割と古書業界の仕組み その3

高橋秀行 (前 東京古書組合事務局長)

 これまで二回のお話で、古書組合の中では一番の肝は市場(交換会)であることがお分かりいただけたと思います。また、古書業者が古書籍に関わる知識を日々蓄積、研鑽していることもご理解されたと思います。今回は東京古書組合にとってもう一つの肝であるインターネット「日本の古本屋」についてお話ししたいと思います。

 メルマガ読者の皆さんは、すでにインターネットが元々はアメリカ軍の軍事技術が民間に開放されたものであることはご存じだと思います。1990年当時の日本ではインターネットはまだまだ一般に認知されていませんでしたが、古書業界の中でいち早く関心を向けたのは京都組合と東京組合でした。1996年に東京組合は東京都の支援を受け、古書業界の将来像を見据えた活性化ビジョン調査事業を行うことが決まり、実施されました。この調査事業は結果的に古書業界にとって非常に大きなエポックをもたらすものとなったのですが、その中で将来的にインターネット事業への参画が示唆されました。当時の東京組合理事の一部には、ドメイン名を取得するのに約200万円かかることに理解が及ばないこともあったのですが、将来への投資として承認された経緯があります。

1997年に全国の古書組合組織の会合で、インターネット事業の将来像について報告がなされ、着々と方向性を探っていた時、翌1998年になって大日本印刷と三菱商事から共同でインターネットの共同実験事業を開始するお誘いを受けることになります。この実験事業を実質的に行ったのは東京組合ですが、全国の組合ではインターネット事業の成果を東京組合に独占されるという疑心暗鬼があったのは事実で、各地組合は全古書連事業として行うことに固執していた時期もありました。しかしながら、実質的に資金を拠出できるのは東京組合でしたし、組合員の認知度も高く、理解も得やすい環境にありました。また、東京組合は全組合の本部でもあり、参加も全国公平に実施するべく、全組合の同意を得て実験事業を行うことになります。

1999年1月に全古書連のインターネット事業「日本の古本屋」として、三者共同による実験事業が開始されます。当初は参加組合員も少なく、登録書籍数もあまり多くなく、発注を受けた後の対応や決済方法も不便で、あまり使い勝手のよいものではありませんでした。
この共同実験事業は曲がりなりにも3年ほど継続し、その間様々な改良点や設備の改善も行いましたが、事業の採算性は当初の見込みより悪く、思いのほか利潤をもたらすものではありませんでした。そのような経過の中で、最初の熱意も徐々に薄れていくと、新たな改革や設備投資も難しくなっていきます。東京組合では抜本的な改革をしなければ現状を打開できないと考えた末、大日本印刷と三菱商事に共同事業の解消と古書組合の独自事業として継続する旨の提案を行います。
交渉は投資資金の回収など難しい問題もありましたが、結果的に両社から好意的な回答が得られ、共同実験事業は解消されます。このインターネット共同実験事業で蓄積された様々な知識や運営形態とシステム開発等は、今日に至る古書組合のネット事業の基礎を築いたものだと言え、大日本印刷と三菱商事には感謝しなければなりません。

2002年1月、東京古書組合の単独事業としてインターネット「新・日本の古本屋」は再出発を果たします。この事業は、東京組合の「インターネット運営委員会」という部内の組織が運営管理しており、構成員も東京の組合員です。無論、職員も従事しております。当運営委員会では、様々な運営上の改善と改修を行い、「日本の古本屋」のトップ画面に買い入れ広告を掲載する件やサイトにバナー広告を掲載する件等も討議され、2009年にはクレジット決済が導入されました。近年では検索エンジンの上位表示のための改修やスマホ対応も行ってリニューアルしていますが、ご利用される皆様の利便性の向上とニーズにお応えするため一層の努力をしております。
このような変遷の中で、メルマガ読者の皆様に現在もご利用いただいている古本検索システム、インターネット「日本の古本屋」は存在しているのです。

これまで述べてきたように、古書業界にとって1995年からの10年ほどは大きな転換点であり、東京組合の活性化ビジョン調査事業の実施、阪神淡路大震災、インターネット事業の開始、非組合員大型店(ブックオフ等)の台頭、組合員の即売展開催に関わる規制の撤廃、東京組合の本部会館新築完成等々、様々な出来事が起こっておりました。それらの個別の問題については、少し説明も必要なのですが、今回は紙数がつきましたので、またの機会にさせていただきます。このような時流の中で、インターネット事業が古書流通の一大転換をもたらし、営業基盤の一助となっていることは古書業界にとって大きな成果であると思っています。
これまで3回の記述から、メルマガ読者の皆様には古書業界の内実を少しでも知っていただき、古書と古書業者、古書業界に興味を持って下されば、とても嬉しく存じます。

takahashi1

Copyright (c) 2020 東京都古書籍商業協同組合

第23回 村田亮太さん アルバイトと趣味を両立するひと

第23回 村田亮太さん アルバイトと趣味を両立するひと

南陀楼綾繁

「最近、うちにアルバイトに来ている大学生がかなりの古本好きなんですよ」
 この連載の編集を担当している皓星社の晴山さんからそう云われて会った村田亮太さんは、温厚そうな青年だった。
「古書会館や池袋〈三省堂書店〉など、東京で開催される古書市はぜんぶ通っています。だから、新型コロナウイルスの影響で即売会が中止になったときは辛かったです。東京古書会館の即売会が再開した7月6日には、もちろん駆けつけました」
 さっきも即売会に行ってましたと、収穫物の入った袋を見せてくれる。その下からもう一袋が出てきた。計4900円なり。とにかく即売会に通うのが楽しくて仕方ないらしい。
「僕、除籍本が好きなんです」とも云う。図書館の蔵書から廃棄された本のことで、ラベルが貼られたまま売られている。
「あれは、まさにこの世に一冊だけの本でしょう。『日本の古本屋』で除籍本を探して買うこともあります」
 恐るべき21歳である。

 村田さんは1999年、群馬県伊勢崎市生まれ。両親と姉との4人家族。両親の年齢を聞いたら、私よりも年下だった。二人とも公務員として働く。
小さい頃、母に『おしいれのぼうけん』や『モモ』を読んでもらった記憶がある。また、父は青年マンガが好きで、その本棚から引っ張り出して読んだりした。
小学校に入ると学校の図書室に通い、学年で一番多い冊数を借りた。
「学習マンガを読み尽くし、ライトノベルを読むようになりました。『キノの旅』などのファンタジーに触れて、こんな世界があるんだと思いました。同級生にやはりファンタジー好きの男の子がいて、作品を教えてもらっていました。その子はサイト『小説家になろう』に小説を投稿していましたね」

小学5年生になると、近所にある〈TSUTAYA〉で本を買うように。中学3年までには、ラノベを500冊以上買っていた。ゲームも好きだったが、それ以上に本が好きで、つねに何かを読んでいたという。
高校に入ると、授業で新書の感想文を書かせられたことから、さまざまな新書を読むようになる。2年生のときに、日本史の授業で先生から網野善彦のことを聞き、『日本の歴史をよみなおす』(ちくま学芸文庫)を読む。「サンカ」に興味を持って、五木寛之の『風の王国』を読んだという。
 その後、上野誠の『折口信夫 魂の古代学』(角川ソフィア文庫)で折口信夫のことを知り、そのマレビト論に衝撃を受けた。上野氏の出身校ということもあり、村田さんは國學院大学を受験して合格。上京して、姉と一緒に住む。2年生から民俗学を専攻し、現在3年生だ。
 
古本との出会いは、大学の授業だった。
「法制史の先生が法制史研究者の本の話をされているのに興味を持って、神保町の古本屋で瀧川政次郎の文庫を買いました。それでもちょっと敷居が高かったんですが、その年の秋、神保町古本まつりのときにいろんな古本屋に入ったことから、ときどき通うようになりました」
 その後、自宅の近くにある豪徳寺の古本屋で、店主から目録をもらい、五反田の南部古書会館の即売会にはじめて行く。知らない本に囲まれているのが面白かった。
 即売会って面白いなと思った頃、大学の司書過程で新藤透さんに図書館学を教わる。『戦国の図書館』(東京堂出版)などの著書があり、古本好きでもある。
「古本の話で気が合って、研究室に遊びに行くようになりました。新藤先生から谷沢永一のことを教えてもらい、書誌学の本を読むようになりました。本自体への興味が高まり、本を集めることが楽しくなりました」

 専攻の民俗学でも、最初は折口信夫の研究書を集めていたが、次第に折口本人の著作を集めるように。2年生のとき、神保町の〈三茶書房〉で、『古代研究 民俗学篇』(大岡山書店)を買う。
「4500円でした。それまでに買った最高額でした。それが、いまでは高い本でも躊躇せずに買うようになってしまいました(笑)。新刊書店のアルバイトで入ったお金を、2、3回の即売会で使い果たしたり」
 いまは月に5、6万円を古本に使っているそうだ。当然、自室は本で埋まり、実家にも同じぐらいの量の本があるという。
 最近では、戦前のエロ・グロ・ナンセンスに関する本を集めている。
「斎藤昌三『変態蒐癖志』、藤沢衛彦『変態伝説史』などの変態十二支シリーズとか、梅原北明の『明治性的珍聞史』とかです。『変態』と『伝説』が結びつくセンスが面白いです」
 卒論では、田中緑紅が主宰し斎藤昌三らが寄稿した大正時代の雑誌『郷土趣味』について、書くつもりだという。
「エロ・グロ・ナンセンスの時代の空気感もあわせて描ければと思っています」

 文献を調べているうちに、皓星社の雑誌記事索引データベース「ざっさくプラス」の存在を知る。
「コロナの自粛期間中、無料公開していたので使ってみたら、戦前の民俗学雑誌がヒットしたりして面白かったので、『皓星社友の会』に入会しました。それがきっかけで、週1回アルバイトするようになったんです」
 毎週金曜日、資料のスキャンやデータ入力などの作業の合間に、古書会館に行かせてもらう。そこで買ってきた雑誌が面白そうだと、「ざっさくプラス」に入れたりしている。趣味と実益が一致していて楽しそうだ。
 アルバイトとは別に、戦前の古書目録からあるデータを入力する作業も行っている。たしかに、まとまれば利用価値がありそうだ。
 コロナで就職活動ができないこともあり、いまのところ、将来は白紙だという。
「自分なりに好きな研究ができればいいんです」と村田さんは云う。
 
 好きな本に囲まれて充実した生活に見えるが、社会との接点はちゃんとあるのか。若い頃、それで悩んだ私はつい気になってします。
「大学には古本好きの友人が二人いて、よく話をしています」
 それと最近、幼なじみの女の子を神保町の古本屋に案内したという。
「もともと本が好きな子なので、古本好きにしてしまおうと思っています(笑)」
 なんだ、ちゃんと青春しているのだった。 

ツイッター
https://twitter.com/huruhongunma

南陀楼綾繁
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、共著『本のリストの本』(創元社)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

susumeru
『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

Copyright (c) 2020 東京都古書籍商業協同組合

2020年11月25日号 第311号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
     。.☆.:* その311・11月25日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国930書店参加、データ約600万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

☆INDEX☆
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1.『近代出版史探索4』 小田光雄
2.『ワイズ出版 30周年記念目録』 ワイズ出版編集部・編
3.『日本印刷文化史』 印刷博物館

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

━━━━━━━━━━━【自著を語る(252)】━━━━━━━━━

『近代出版史探索4』

                       小田光雄

 『近代出版史探索』シリーズの各編はそれぞれが2千字から3千字
の短い論稿の集積ではあるけれど、続けて第4巻目を刊行すること
になった。
 この12年間に及ぶ『近代出版史探索』の長編連作の試みの目的と
して、第1巻から3巻の本文や「あとがき」、及び本メールマガジン
への寄稿でもさまざまにふれてきている。
 だがこの『近代出版史探索Ⅳ』に至って、中国社会と経済地理学
研究者ウィットフォーゲルの『東洋的社会の理論』を取り上げた際
に、ようやく吉本隆明の『共同幻想論』に言及することができた。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=6449

『近代出版史探索4』 小田光雄 著
論創社 6,000円+税 好評発売中!
http://ronso.co.jp/

━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━

「ワイズ出版30周年記念目録」――思い出すままに

                       岡田博

 ワイズ出版30周年記念目録の刊行を期に、宣伝のための文章でも
なんでも(?)良いので、と、この場をいただいたので、とりとめ
のない話になるとは思いますが、目録の解説がてら思い出話をさせ
ていただきます。

 目録は1990年から2020年までに出版した403点の書影(カラー)
と奥付など収録した資料(モノクロ)で構成、部数は1000部の限定。
その内の大半は著者や装丁家など関係者へ献本、残り少しを販売し
ています(すみません、本来はお金をいただくものではないとは思
いますが、カンパと思ってよろしくお願いします。資料篇は別刷で
無料配布用があります。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=6426

『ワイズ出版 30周年記念目録』 ワイズ出版編集部・編
ワイズ出版 1,000円+税 好評発売中!
http://www.wides-web.com/

━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━

『日本印刷文化史』

              印刷博物館 学芸員 川井昌太郎

印刷博物館は2020年10月に開館20周年を迎えたことを記念し、3点
の書籍を刊行しました。『日本印刷文化史』と『HISTORY OF JAPAN
ESE PRINTING CULTURE』(『日本印刷文化史』英語版)、そして、
『印刷博物館コレクション』です。その内『日本印刷文化史』は、
講談社さんに出版していただきました。全国の本屋さんにてお買い
求めいただけます。本書はリニューアルした印刷博物館の常設展と
密接に関連する「コンセプト・ブック」にあたります。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=6463

『日本印刷文化史』 印刷博物館 編
講談社 2,000円+税 好評発売中!
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000343750

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『未来哲学 創刊号』未来哲学研究所編
ぷねうま舎 本体:1500円  2020年11月下旬刊行
https://www.pneumasha.com/

『路上のポルトレ 憶いだす人びと』森まゆみ 著
羽鳥書店 本体価格2,200円+税 2020年11月下旬刊行
https://www.hatorishoten.co.jp/items/35418111

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

11月~12月の即売展情報

※新型コロナウイルスの影響により、今後、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

見逃したメールマガジンはここからチェック!
 【バックナンバーコーナー】

https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=33

┌─────────────────────────┐
 次回は2020年12月中旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の全国の古書店に ☆*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

==============================

日本の古本屋メールマガジンその311 2020.11.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:志賀浩二
編集長:藤原栄志郎

==============================

sukida

『神保町が好きだ! 2020 第14号』

『神保町が好きだ! 2020 第14号 特集 現代マンガは神保町から始まった!?』

本の街・神保町を元気にする会

 江戸時代、旗本「神保長治」の屋敷があったことから名付けられた神田神保町。本の街として、日本のみならず海外にもその名は知られています。神保町は、デパートのような大型新刊書店や約150軒という”世界一”の軒数を誇る古書店、多くの出版社や編集制作会社、デザイン会社、印刷会社などもある「知の集積地」です。
 加えて、カレー・喫茶・和食・洋食・中華など、古くからの老舗店やニューウェーブの店まで、魅力ある一大グルメタウンでもあります。
 そして少し足を延ばせば、御茶ノ水は「音楽と楽器の街」、小川町は「スポーツの街」として多くの老若男女が訪れ、また、界隈には大学や専門学校もひしめき、今も昔も「学生の街」であることに変わりはありません。
 今号の特集では、「現代マンガは神保町から始まった!?」と題して、『漫画少年』『ガロ』『少年サンデー』等の創刊秘話から発行部数600万部超えを記録した『少年ジャンプ』に至るまで、神保町とマンガの歴史・関わりを紐解きました。

sukida

この『神保町が好きだ! 2020 第14号 特集 現代マンガは神保町から始まった!?』を抽選で30名様にプレゼントいたします。

応募申込は下記ページにてお願い致します。
 締切日 11月27日(金)午前10時
http://www.kosho.ne.jp/oubo2020/202011-2.html

Copyright (c) 2020 東京都古書籍商業協同組合

waizu

「ワイズ出版30周年記念目録」――思い出すままに

「ワイズ出版30周年記念目録」――思い出すままに

岡田博

 ワイズ出版30周年記念目録の刊行を期に、宣伝のための文章でもなんでも(?)良いので、と、この場をいただいたので、とりとめのない話になるとは思いますが、目録の解説がてら思い出話をさせていただきます。

 目録は1990年から2020年までに出版した403点の書影(カラー)と奥付など収録した資料(モノクロ)で構成、部数は1000部の限定。その内の大半は著者や装丁家など関係者へ献本、残り少しを販売しています(すみません、本来はお金をいただくものではないとは思いますが、カンパと思ってよろしくお願いします。資料篇は別刷で無料配布用があります。申し訳ありませんがこちらも少部数です。と、まあ、古書店のメールマガジンで、希少価値をあおっているようで心苦しいのですが、実情のみです)。

 今年、惜しまれつつ閉店した、京都三月書店の名物ブログはその昔は、情報をミニコミ紙、紙媒体で出版社などに発信していた。そこに「到底頭の良さそうとは思えないが、骨のありそうな出版社があらわれた」(もう30年も前のことで、現物もないので、文面が違っているかもしれない)と記された。『石井輝男映画魂』や『西河克己映画修業』を出版した頃だと思う。三月書店といえば、個性的な棚揃えで勇名を馳せていた書店だったので、とても嬉しかったのを思い出す。
 その「頭の……」の「ワイズ」という名であるが、これは単純に「ワイズ出版」という知人が持っていた取次口座を譲り受けたからにすぎない。この頃はトーハン、日販を代表する取次が流通の要で、今では想像もつかないような力をもっていて、新しく口座を作ること自体が苦労の多いことだった――このことは別の機会にして――その名のことであるが、口座を引き継いだ時、多くの出版社がそうであるように、それらしい凝った名を考えたりもしたのだが、思いついて、ロバート・ワイズ監督にあやかることにした。ロバート・ワイズは、小品『罠』『拳銃の報酬』から大作『ウェスト・サイド物語』『サウンド・オブ・ミュージック』まで様々なジャンルの映画を作り上げた職人監督である。ワイズ出版の向かうところを示しているようで、勝手に彼にあやかった。

 ワイズ出版を昭和の終わった年、1989年に映画専門出版として立ち上げた。世に多く出版されている黒澤明、小津安二郎監督らの巨匠たちの本ではなく、娯楽映画の職人監督たちの仕事にこだわった。私の職人監督へのファン気質からささやかにスタートした後、様々な人の映画愛が徐々に結集して目録にある出版物を作り上げていくことになるのである。

 はじめに『石井輝男映画魂』ありきだった(出版第一作は『前売券シネマグラフィティ』になっているが、『石井輝男映画魂』の製作に時間がかかったためである)。『地帯(ライン)』シリーズや『網走番外地』シリーズや『異常性愛』路線など、奇想に満ちた石井ワールドに私は魅せられていた。
 全く実績のない出版社が新しく企画をもって著者に会いに行くことは、こちらのことをどう思うかなど気になって躊躇われるものがある。石井監督のもとにも、そういう思いで訪れた。ところがこちらの素性も確認するでもなく、「僕のインタビューをずっとやってくれている人がいるので、その人を入れてくれないかな」と、条件はそれのみで了解を得た。紹介された詩人で映画監督の福間健二氏と石井ワールドファン魂を共有して本を作り上げた。

 出来上がった本は大好評だった。職人監督の一作品ごとのインタビューでフィルモグラフィーも網羅した本は画期的(自画自賛ですみません)だったので、大変な評判を得た(もちろん大変な評判と言っても、我々の周りだけかもしれませんが……)。売行きも良く、今だにワイズ出版単行本売行のトップである。  
ところが、大きな誤植があった。石井監督の著者紹介で生年を間違った。本人は「急に若返って良かった」とあくまでおおらかだったが、以来ワイズ出版は、こういう誤植との戦いが長く長く続くことになる(「誤植の思い出」と称して一冊の本ができるほどである。著者の方、編者の方、読者の方にここでもまた、お詫び申し上げます)。
この後『西河克己映画修業』『市川崑の映画たち』が続いて、一作品ごとのインタビューとフィルモグラフィー形式の本がワイズ出版の基盤となっていくのである・・・。
と、このようにワイズ出版の歴史はまだ始まったばかりだが、ここで紙面がつきたので、最後に、皆さんのお仲間の古書店店主の方の本のことを。大場啓志氏の『三島由紀夫 古本屋の書誌学』、中山信如氏の『古本屋「シネブック」漫歩』の二冊を出版しました。どちらも無事再販、相対的に映画本より売れていることをお伝えして、「完」とさせていただきます。

waizu
『ワイズ出版 30周年記念目録』 ワイズ出版編集部・編
ワイズ出版 1,000円+税 好評発売中!
http://www.wides-web.com/

Copyright (c) 2020 東京都古書籍商業協同組合

tansaku4

『近代出版史探索Ⅳ』

『近代出版史探索Ⅳ』

小田光雄

 『近代出版史探索』シリーズの各編はそれぞれが2千字から3千字の短い論稿の集積ではあるけれど、続けて第4巻目を刊行することになった。
 この12年間に及ぶ『近代出版史探索』の長編連作の試みの目的として、第1巻から3巻の本文や「あとがき」、及び本メールマガジンへの寄稿でもさまざまにふれてきている。
 だがこの『近代出版史探索Ⅳ』に至って、中国社会と経済地理学研究者ウィットフォーゲルの『東洋的社会の理論』を取り上げた際に、ようやく吉本隆明の『共同幻想論』に言及することができた。吉本は同書でウィットフォーゲルの「東洋的専制主義」の日本論に異議を発し、日本の場合、大規模な灌漑工事や運河開削は必要としなかったが、日本の初期国家の首領たちにとって文化と文明は大陸からの輸入品で、それを分布させるために財力や権力として、専制力は発揮されたと述べている。
 それは「〈観念のアジア〉的専制」というべきもので、また初期国家においては地理的条件から考えても、海部民、農耕民、狩猟民が多層的に混住していた。それが共同観念の構造を複雑化し、大陸とは異なる「〈アジア〉的特性のひとつの典型」を生みだしたのである。そして吉本はいっている。

  “わが初期国家の専制的首領たちは、大規模な灌漑工事や、運河の開削工事をやる代りに、共同観念に属するすべてのものに大規模で複合された〈観念の運河〉を掘りすすめざるを得なかった。その〈観念の運河〉は、錯綜していて、〈法〉的国家へゆく通路と、〈政治〉的国家へとゆく通路と、〈宗教〉的イデオロギーへゆく通路と、〈経済〉的な収奪への通路とは、よほど巧くたどらなければ、つながらなかった。〈名目〉や〈象徴〉としての権力と、じっさいの政治的権力と、〈宗教〉的なイデオロギーの強制力とは別個のものであるかのように装置されていて、よほど、秘された迷路に精通しないかぎり、迷路に陥むように構成された。そこには、現実の〈アジア〉的特性は存在しないかのようにみえるが、共同幻想の〈アジア〉的特性は存在したのだ、と……。”

 これは『共同幻想論』のエッセンスともいうべき重要な部分であり、省略して引用できず、長くなってしまった。実はここで吉本が述べている初期国家ならぬ、近代の「〈観念〉の運河」がどのように生成されていったのかを追求することも、『近代出版史探索』の目的のひとつなのである。
 近代日本のイメージは「〈アジア〉的特性」の上に「西洋」の文化と文明が出版物を通じて接木され、成立したと見なせるからだし、『近代出版史探索』連作はその複雑な「迷路」をたどっている。しかし吉本にならっていえば、近代出版業界という共同観念の構造は複雑な「迷路」そのもので、すでに5巻の続刊も控え、千編を超えているけれども、まだ「迷路」のとば口で、さまよっている思いにも捉われる。

 日本の近代出版業界の始まりは生産、流通、販売、つまり出版社・取次・書店という出版流通システムの誕生ととともにあった。それは何よりもまず社会経済問題として論じられるべきだったが、たまたまそれに併走するようにして近代文学の発生を見たこともあって、出版物が単なる商品ではなく、作品だというコンセプトと同時に、作者と読者も召喚されることになった。それに教科書出版、アカデミズムと立身出世の物語も重なる。

 そして明治後半からの出版業界の成長に合わせ、特価本、造り本、赤本などのもうひとつの出版業界も台頭し、さらには古書業界の隆盛へともつながっていく。こうした複雑な「出版の運河」が生産、流通、販売をコアとして、それらをリサイクル、リバリューするバックヤードとしての特価本、古書業界を生み出した。これらは吉本の言葉を借りれば、「よほど、秘された迷路に精通しないかぎり、迷路に陥むように構成され」、そこに日本の出版の共同幻想の特性が生じたと考えられる。そのような近代出版の迷路の一端を読者に伝えられれば幸いに思う。

tansaku4

『近代出版史探索Ⅳ』 小田光雄 著
論創社 定価:6,000円+税 好評発売中!
http://ronso.co.jp/

Copyright (c) 2020 東京都古書籍商業協同組合

Just another WordPress site