「ワイズ出版30周年記念目録」――思い出すままに岡田博 |
ワイズ出版30周年記念目録の刊行を期に、宣伝のための文章でもなんでも(?)良いので、と、この場をいただいたので、とりとめのない話になるとは思いますが、目録の解説がてら思い出話をさせていただきます。
目録は1990年から2020年までに出版した403点の書影(カラー)と奥付など収録した資料(モノクロ)で構成、部数は1000部の限定。その内の大半は著者や装丁家など関係者へ献本、残り少しを販売しています(すみません、本来はお金をいただくものではないとは思いますが、カンパと思ってよろしくお願いします。資料篇は別刷で無料配布用があります。申し訳ありませんがこちらも少部数です。と、まあ、古書店のメールマガジンで、希少価値をあおっているようで心苦しいのですが、実情のみです)。 今年、惜しまれつつ閉店した、京都三月書店の名物ブログはその昔は、情報をミニコミ紙、紙媒体で出版社などに発信していた。そこに「到底頭の良さそうとは思えないが、骨のありそうな出版社があらわれた」(もう30年も前のことで、現物もないので、文面が違っているかもしれない)と記された。『石井輝男映画魂』や『西河克己映画修業』を出版した頃だと思う。三月書店といえば、個性的な棚揃えで勇名を馳せていた書店だったので、とても嬉しかったのを思い出す。 ワイズ出版を昭和の終わった年、1989年に映画専門出版として立ち上げた。世に多く出版されている黒澤明、小津安二郎監督らの巨匠たちの本ではなく、娯楽映画の職人監督たちの仕事にこだわった。私の職人監督へのファン気質からささやかにスタートした後、様々な人の映画愛が徐々に結集して目録にある出版物を作り上げていくことになるのである。 はじめに『石井輝男映画魂』ありきだった(出版第一作は『前売券シネマグラフィティ』になっているが、『石井輝男映画魂』の製作に時間がかかったためである)。『地帯(ライン)』シリーズや『網走番外地』シリーズや『異常性愛』路線など、奇想に満ちた石井ワールドに私は魅せられていた。 出来上がった本は大好評だった。職人監督の一作品ごとのインタビューでフィルモグラフィーも網羅した本は画期的(自画自賛ですみません)だったので、大変な評判を得た(もちろん大変な評判と言っても、我々の周りだけかもしれませんが……)。売行きも良く、今だにワイズ出版単行本売行のトップである。
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