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今、見るべき!「五文庫連携展示 特殊文庫の古典籍—知の宝庫をめぐり珠玉の名品と出会う」

今、見るべき!「五文庫連携展示 特殊文庫の古典籍—知の宝庫をめぐり珠玉の名品と出会う」

公益財団法人五島美術館 大東急記念文庫 学芸課長 村木敬子

 ある分野に特化した書物を所蔵する図書館「特殊文庫」。今、東アジアの古典籍を収蔵する東京近郊の五つの文庫で標記のような連携展示が行われている。その五文庫とは三菱財閥の創業者岩崎彌太郎の弟彌之助が設立し、嗣子小彌太が岩崎家の霊廟に建てた静嘉堂文庫、三菱第3代目社長の岩崎久彌が設立した東洋文庫、九州の実業家麻生太賀吉の収書を礎とする慶應義塾大学附属研究所斯道文庫、東急電鉄の元会長五島慶太が創設した大東急記念文庫、そして歴代の蔵書家達の垂涎の的である鎌倉時代の金沢北条氏の文庫を受け継ぐ神奈川県立金沢文庫である。

本企画は各文庫が独自のテーマで展示を行いつつ、そこに他文庫の展示と関連のある作品を織り込み、回遊すると理解が深まり古典籍を見る楽しみが増幅する仕掛けとなっている。各展覧会の会期や資料の展示期間についてはそれぞれのHP等でご確認いただくとして、ここでは3つのキーワードで本企画を紹介したい。

【海外交流】海を隔てて古くから漢字文化圏と、また近世以降は西洋と交流を持ち、異文化を咀嚼し吸収してきた日本。その営みは書物の中にどのように表れているか。東洋文庫ミュージアム「漢字展ー4000年の旅」では『甲骨卜辞片』(紀元前14~前11世紀)、『科挙答案(殿試策)』(1772年写)など、漢字文化圏の広がりや日本の漢字文化に関連する資料が展示され、また静嘉堂文庫美術館「書物にみる海外交流の歴史~本が開いた異国の扉~」展では蘭学の大槻家旧蔵資料や『和漢三才図会』(1711~35年刊)等が出陳される。さらに大東急記念文庫創立70周年記念特別展示の第2部「海外との交流」(五島美術館展示室2)では、渡海して活躍した禅僧の肖像画や墨跡、近世の外交資料などを展示し、金沢文庫「特別展 東京大学東洋文化研究所×金沢文庫 東洋学への誘い」は、キジル石窟壁画、敦煌遺書など西域の文物を含め近代日本の東洋学の高まりを示す資料を紹介する。

【特殊文庫の漢籍】大東急記念文庫特別展示第3部は、江戸時代後期の学者狩谷棭斎らの研究から生まれた漢籍目録『経籍訪古志』がテーマ。国宝『史記 孝景本紀』(1073年写)や重要文化財『金沢文庫本白氏文集』(1231~33年写)等を展示する。これに関連し各文庫で『史記』『文選集注』『論語集解』『爾雅』『毛詩』など漢籍の名品が連携期間中に出陳される。日本文化に浸透した漢籍の蒐集が、蔵書家にとっていかに重要であったかが再認識されよう。

【蒐書の鬼】 特殊文庫を創設した財閥の総帥のみならず、研究者にも蒐集に取り憑かれる人々がいる。善本の情報を収集しライヴァルを出し抜き、戦利品に蔵書印を捺すという行為も古くからおこなわれてきた。斯道文庫『本の虫 本の鬼展』(慶應義塾大学三田キャンパス)は本と蔵書家との関係を探るユニークな企画。江戸時代の考証学者や川瀬一馬、横山 重など近・現代の研究者の旧蔵書や出版物なども展示される。大東急記念文庫展示第4部でも川瀬の研究を「五山版」「嵯峨本」「古辞書」などで跡付ける。

連携展示期間が最も重なるのは6月。この時期古典籍とじっくり向き合い、書物を蒐集した人々にも思いを馳せていただければ幸いである。ちなみに各会場にはオリジナル蔵書印を設置、連携展のチラシに捺せば次の会場で入館料が割り引かれる特典もある。愛書家ならスタンプラリーにも参加せずにはいられないだろう。
他国の文化を尊重し、書も絵も器物も宝の庫「ふみくら」に納め守ってきた日本文化。急速な国際化の中、何を誇りにし世界と共有すべきかを考える時期にある私たちが今、見るべき展示と自負している。



五文庫連携展示
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五島美術館 大東急記念文庫
https://www.gotoh-museum.or.jp/

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古書目録「堀紫山伝」のこと(二)

古書目録「堀紫山伝」のこと(二)

高橋 徹(月の輪書林)

 表紙につかおうと心に決めている一枚の写真がある。
その写真は、今から百十二年前、明治39年7月22日、芝公園の浄運院というお寺の前庭で撮影された。
 堀紫山が人物の名をすべて裏書きしてくれているので、とても助かる。集合写真には、名前の分からない人が必ず何人か出て来るからだ。
 集まりの名は、「陶友会」。
 メンバーは、堀紫山を含めて15名。
 主だった人物をあげる。

堀 紫山(二六新報記者/42歳)
堀 今子(堀紫山の妻)
加藤眠柳(新聞記者)
堺 為子(堺利彦の妻/34歳)
堀 保子(堀紫山の妹/23歳)
深尾 韶(社会主義者/25歳)
上司小剣(読売新聞記者/31歳)
大杉 栄(社会主義者/21歳)

 一目みて、社会主義者の集まりだと思った。
 皆、不敵な面構えをしている。
 この中に堺利彦の姿がないのが、ちょっと不思議な気がしたが、主義者の結社で陶友会とは、初耳。これは新発見ではないかと内心小躍りした。

 明治の社会主義者は、自分自身をさほど危険人物と思っていなかったのか、あるいは明治という時代がおおらかで牧歌的だったのか、皆身なりをととのえ写真館におもむき、堂々と入獄記念写真や出獄記念写真をのこしている。
 陶友会を撮影したのは、筒井年峰で、月岡芳年門下の明治の浮世絵師だ。堀紫山と年峰は共に大阪にいた明治26年、堺利彦や加藤眠柳らの文学仲間の結社「落葉社」で一緒に青春を謳歌した仲だ。
 それはさて、この写真は、見れば見るほどホロ苦くも味わい深い。
 堀保子をめぐって、恋のさやあてをくりひろげた二人、大杉栄と深尾韶が仲良く並んでうつっているからだ。

 陶友会から2週間後の8月6日、堀保子は、深尾韶とその妹・けんと共に富士山に登った。下山の後、静岡にとどまった保子は、深尾韶の両親に結婚相手として紹介されたらしい。その折に深尾韶と一緒に地元の写真館でとった記念写真が、『大逆事件の周辺 平民社地方同志のの人びと』(論創社/昭和55年)に掲載されている。

 堀保子の表情はとてもおだやかで、二人は仲の良い恋人同志に見える。
 日付は、8月16日。それなのに、その一週間後、堀保子は、深尾韶ではなく、大杉栄と結婚した。
 静岡の深尾韶研究者・市原正恵は、「大杉栄は自分の着ている浴衣の裾に火をつけて口説き、保子を妻としてしまった」(『日本アナキズム運動人名辞典』ぱる出版)と記している。
 深尾韶は、その翌年、社会主義運動から離れ静岡に帰郷、日本ボーイスカウト運動の先駆者の一人として活躍していくことになる。

 さて、主義者の結社、陶友会だが、同じ日に撮影された別の写真がひょっこり出て来た。写真の中央で陶器をあつかう老人を取り囲み、なごやかに見つめる紫山や大杉栄たち。陶友会とは、その字の通り、陶器を愛する者たちの同好会だったようだ。
 しかし、そう頭では分かっても、国家転覆をもくろむ革命家の集まりにしかどうしても見えない。
 写真にただよう不穏な空気を強く感じさせるのは、写真師・筒井年峰の研鑽をつみ重ねた技術のなせる技なのだろう。

 写真の後方で背筋を伸ばし、すっくと立つ堀紫山。写真中央、カンカン帽をかぶり、髭をたくわえ、伏目勝ちだが眼光するどく大物感ただようまだ21歳の大杉栄。二人が滅法かっこういいのだ。
 古書目録は、表紙という顔で全てが決まる。表紙につかいたいゆえんだ。

高橋 徹(たかはしとおる)
1958年、岡山県の山奥、柵原鉱山に生まれる。日本大学芸術学部文芸学科を2か月で中退。鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」の美術助手として映画製作に関わるも挫折、87年に大田区蒲田の古本屋・龍生書林の店員となる。
3年半の修業の後、90年、東急池上線の蓮沼駅近くに「月の輪書林」を開く。
特集古書目録に「私家版 安田武」、「古河三樹松散歩」、「美的浮浪者・竹中労」、「寺島珠雄私記」、「李奉昌不敬事件予審訊問調書」、「三田平凡寺」、「太宰治伝」などがある。著書には『古本屋 月の輪書林』(1998年/晶文社)がある。

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『古本屋 月の輪書林』
晶文社 定価:本体1900円+税 好評発売中!
https://www.shobunsha.co.jp/?p=1459

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第5回 村上博美さん 幻想文学に魅せられたひと

第5回 村上博美さん 幻想文学に魅せられたひと

南陀楼綾繁

 鳥取市に行ったことがなくても本好きなら、〈定有堂書店〉という名前を耳にしたことがあるかもしれない。1980年創業で商店街の中にある小さな本屋だが、ミニコミを発行したり、店内で映画愛好者のサークルや読書会を開催したりしている。いわば鳥取の文化の交差点のような店なのだ。

 15年ほど前だったか、店主の奈良敏行さんに誘われて、定有堂でトークをした。この店の常連であり、さまざまな活動に関わっている人たちが多く集まってくれた。そのとき、奈良さんから村上博美さんを紹介されたのだと思う。すらりと細い体型で物静かな男性だった。県立図書館に司書として勤めながら、古本にも精通しているという。『幻想書誌学序説』(青弓社)という著書があると聞いて、あとで入手して読んだが、その該博な知識と柔らかい文章に驚いた。
 今年のはじめ、久しぶりに鳥取市に行き、定有堂を訪れると、奈良さんから『音信不通』というフリーペーパーを手渡された。そこに「ムラカミヒロミ」という人が少年時代の思い出を綴っている。あの村上さんである。なんだか久しぶりに、この人に会って話を聞きたくなった。

 
村上さんは1959年、鳥取市生まれ。父が国鉄に勤めており転勤が多かったことから、倉吉市(鳥取県)や木次町(島根県)で暮らしたこともある。「小学校の低学年までは、とにかくマンガ漬けでしたね。私が生まれた年に『少年サンデー』と『少年マガジン』が創刊されています。テレビのアニメもよく見ていました」と、村上さんは云う。

 小学4年ごろ、〈富士書店〉の鳥取駅前店で、父から江戸川乱歩の「怪人二十面相シリーズ」を勧められる。ポプラ社からの刊行が始まった時期で、最初に読んだのは『怪奇四十面相』だった。「戦後の乱歩作品ではベストだと思います。これを最初に読んだので、すっかりハマって、学校図書館や県立図書館で探してシリーズ全作を読みました」。当時は市立図書館はなく、県立図書館は新刊を1か月間は館外貸し出ししなかったので、館に通って読んだという。並行して、同じくポプラ社から出た南洋一郎翻案の「怪盗ルパン」シリーズや、山中峯太郎翻案の『名探偵ホームズ全集』を全巻制覇した。

 中学に入ると、筒井康隆、星新一、遠藤周作、北杜夫などを文庫で読む。小林信彦の『オヨヨ島の冒険』に衝撃を受け、本屋を探しまくってシリーズを揃えたという。「この頃は、本屋で『出版年鑑』を見せてもらって、店頭にない本を注文するということもやってましたね(笑)。トーハンが発行していた『新刊ニュース』も毎月チェックしていました」というからすごい。
 当時、鳥取市内には古本屋が2軒あった。そのうち〈西谷敬文堂〉には、中学に入って父と一緒に小学校で読んだ本を売りに行った。「学校の卒業と同時に、幼年時代の読み物を卒業する、という意識があったんでしょうか」。また、〈岡垣書店〉は本の量が多く、積んだ本で通路がふさがっていたという。

 
ミステリやSFだけでなく、少女マンガも好きだった村上さんは、ある少女マンガ家が近況欄に最近読んだ作家として挙げたことで、澁澤龍彦の名を知る。澁澤との出会いは、世界がひっくり返るくらいの衝撃だった。
その後、本屋で雑誌『牧神』(牧神社)の創刊号を見つける。特集は「ゴシック・ロマンス 暗黒小説の系譜」だった。

「これはただごとじゃない雑誌だと感じましたね。こんな世界があるとは知らなかった。こんなものを読んでも構わないんだと、お墨付きをもらったような気分になったんです」
 さらに、西谷敬文堂で平井呈一訳のブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』(創元推理文庫)を入手したことから、吸血鬼ものへの興味が高まる。
「牧神社から日夏耿之介の『吸血妖魅考』の復刻版が出るという予告を見て、版元に手紙を書いたんです。すると編集者から『英語の勉強をしておくと、原書で読めるようになるから』という返事をいただきました」

 高校に入ると、文芸部に属し、部誌などに小説を書く。学校図書館の司書と図書館担当の教諭らから、桃源社、創土社などのマイナー版元を教えてもらったり、雑誌『幻想と怪奇』を貸してもらった。ダンセイニ、ブラックウッド、ビアズリー、夢野久作、小栗虫太郎など異端・傍流の作家を教わる一方、スタンダードな名作を読むことで自分の立ち位置を知ることの重要性も教わった。

 村上さんは高校を卒業して、県庁に。勤めを続けるうち「やはり本を扱う仕事をしたい」と、異動希望を出した。スクーリングで司書の資格を取り、県立図書館に勤務する。
「社会人になって自分の金が使えるようになると、集める本の範囲も広がっていきました。新刊は定有堂書店や富士書店で買い、古本は『日本古書通信』に載っている目録から注文しました。地方に住んでいると、なかなか古本屋の店舗には行けないので。取引ができると新たな目録が送られてくるようになり、機会がどんどん広がっていきました。帯やカバーの有無、函の状態など、目録に書かれていること、いないことにも注意するようになりました」
 村上さんが当時から集めていたのが、1970年前後に活動し、種村季弘の『吸血鬼幻想』などを刊行した「薔薇十字社」の本だ。

「造本がきれいで、持っているだけで嬉しくなります。全36点を10年かけて集めました。なかでも、バルベイ-ドールヴィリ『妻帯司祭』は配本途中に会社が倒産し、急遽回収されたという説もあって、入手困難でした。のちに判ったのですが、同書は回収されてから、改装されて「出帆社」から新たに刊行されたんです。そのため、薔薇十字社版はゾッキにも出ずに残らなかった」
 村上さんによると、幻想文学に関する本はもともと刊行点数が少なく、時間をかけるうちにかなり集まってきたという。周辺部分へも手を広げ、画家の挿絵本なども集めるようになる。神田小川町の〈崇文荘書店〉の目録から、エドガー・アラン・ポーの挿絵で有名なイギリスの画家ハリー・クラーク、『フランケンシュタイン』の挿絵を描いたリンド・ウォードの本を注文した。持っていない本があると、先方から連絡してくれる関係になった。最近は、インターネットで海外の古書店に注文することも多い。
「すでに持っている本でも、帯や函などがいい状態ものが出ればもう一冊買うことはあります。洋書は日本に持ってくると、紙にシミが出てしまうので、管理に気を遣います」

 
 50歳を過ぎてから、「あと何冊読めるのか」と考えるようになった。コレクションは市場に還流させるべきだと考え、死ぬまでに処分したいのだが、「そのタイミングがむずかしいですね」と笑う。
 しかし、ひとつのコレクションが形になったとしても、村上さんの本との付き合いはまだまだ終わらない。

 乱歩の少年探偵団シリーズの初出雑誌から挿絵画家の変遷をたどること、少女マンガの中のゴシック・ロマンスの系譜を考察すること、角川文庫の赤版やカッパ・ノベルスを集めることなどなど。定有堂のサイトでも、「黄色い部屋の片隅で」と題するミステリ本収集についてのエッセイを連載している。調べたいこと、書きたいことが、いくらでも出てくるようだ。
最後に、「これまで本につぎ込んだ金を足したら、家の1、2軒は買えたかもしれない。でも、本を集めることが楽しかったし、読むことで自分の世界が格段に広がった。仕事の役にも立ちました。だから後悔はしていませんね」と、村上さんは静かに断言した。

南陀楼綾繁
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
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『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

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2019年4月25日 第273号

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☆INDEX☆
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1.『明治出版史上の金港堂』    稲岡 勝
2. 『古書古書話』        荻原魚雷
3.増補改訂版『日本アナキズム運動人名事典』 川口秀彦

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━━━━━━━━━━━【自著を語る(221)】━━━━━━━━━

『明治出版史上の金港堂』

                        稲岡 勝

金港堂と聞いて明治時代の巨大出版社と言える人は何人いるだろう
か。相当な出版通でも《最古最大の教科書肆》と知る人は余りいな
いだろう。それもその筈金港堂は完全に忘れ去られた存在で、従来
の近代出版史では業界伝説の対象でしかなかったのである。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4806

稲岡勝(いなおか・まさる)

1943年、上海生まれ。すぐ近くに商務印書館があった。早稲田大学
政治学科および図書館短期大学別科卒業、1972年から東京都立図書
館勤務。1999年から都留文科大学国文学科教授情報文化担当、専攻
は明治の出版文化史。10年勤めて退職後は図書館、文書館、古書展
に通い埋もれた出版者を手掘り中。執筆予定としては「教科書トラ
スト帝国書籍の成立と崩壊」、また山梨県の地方新聞『甲陽新報』
(印刷は内藤伝右衛門)も取りあげたいテーマである。

『明治出版史上の金港堂 社史のない出版社「史」の試み』
著者・編者 稲岡 勝 皓星社刊 価格 8,000円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/kinkodo/

━━━━━━━━━━━【自著を語る(222)】━━━━━━━━━

『古書古書話』

                       荻原魚雷

『小説すばる』二〇〇八年一月号から二〇一八年三月号まで十年ち
ょっと「古書古書話」という見開き二頁のエッセイを連載していた。
十年ちょっと分なので、四百六十頁超??わたしがこれまで出した本
の中ではいちばん分厚いです。ただし一篇一篇は短い文章なのでパ
ラパラ読むには適しているのではないでしょうか。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4812

荻原 魚雷(おぎはら ぎょらい)

1969年、三重県鈴鹿市(東海道庄野宿)生まれ。1989年秋から高円
寺(青梅街道)に在住。著書に『古本暮らし』『閑な読書人』(晶文社)、
『活字と自活』『書生の処世』『日常学事始』(本の雑誌社)、
『本と怠け者』(ちくま文庫)。編著に梅崎春夫著『怠惰の美徳』など。
町の歴史と文学館を二本柱に街道をたどる「街道文学館」を連載中。
http://www.webdoku.jp/column/gyorai_kaidou/

『古書古書話』 荻原魚雷 著
本の雑誌社 定価:2,376円(税込)好評発売中!
http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860114275.html

━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━

増補改訂版『日本アナキズム運動人名事典』

                  同書編集委員 川口秀彦
                   (古書 りぶる・りべろ)

 2004年に本事典の元版を刊行した時の立項者数は三千余名。それ
でもジャンルを絞った人名事典としては少なくないのだろうが、今
回の増補改訂版の立項者数は六千余名。これがまず本書の特長であ
る。 とはいえ、日本にアナキストが三千ないし六千人いたという
ことを主張している事典ではない。書名を「アナキスト」ではなく
「アナキズム運動」としているからなしえた幅広く多彩な人名の収
録、これが本事典の特色である。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4819

『増補改訂 日本アナキズム運動人名事典』
日本アナキズム運動人名事典編集委員会編
ぱる出版  定価:32,000円+税 好評発売中!
http://pal-pub.jp/?p=5131

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『雑誌渉猟日録 関西ふるほん探検』 高橋輝次
皓星社 価格:2,000円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/zassisyouryou/

『新・よくわかる出版流通のしくみ 2019-20年版』
メディアパル発行 頒価540円(本体500円+税) 好評発売中!
https://www.mediapal.co.jp/book/519/index.html

古本乙女の独り言③
愛しの古本との共同生活、その喜びと葛藤
カラサキ・アユミ

古本乙女の独り言② はこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4681

五文庫連携展示

東京・神奈川の五つの特殊文庫で東洋の叡智に触れる千年の旅
──知の宝庫をめぐり、珠玉の名品と出会う 特殊文庫の古典籍

大東急記念文庫(五島美術館)・慶應義塾大学三田キャンパス
(斯道文庫)・東洋文庫・静嘉堂文庫・金沢文庫と「五文庫連携
展示 特殊文庫の古典籍」と題して、同時期に書物に関する展覧会
を連携して開催します。

詳しくは
https://www.gotoh-museum.or.jp/classic.html  をご覧下さい。

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

4月~5月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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 次回は2019年5月中旬頃発行です。お楽しみに!
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日本の古本屋メールマガジンその273 2019.4.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
編集長:藤原栄志郎

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増補改訂版『日本アナキズム運動人名事典』

増補改訂版『日本アナキズム運動人名事典』

同書編集委員 川口秀彦
(古書 りぶる・りべろ)

 2004年に本事典の元版を刊行した時の立項者数は三千余名。それでもジャンルを絞った人名事典としては少なくないのだろうが、今回の増補改訂版の立項者数は六千余名。これがまず本書の特長である。

 とはいえ、日本にアナキストが三千ないし六千人いたということを主張している事典ではない。書名を「アナキスト」ではなく「アナキズム運動」としているからなしえた幅広く多彩な人名の収録、これが本事典の特色である。運動に直接関わった人、アナキズム的な生き方を志向し発信した人、文学者や芸術家などでもアナキズム的な思想や運動に影響を与えた人、影響を受けた人など、アナキズム周辺の人々まで含め、アナキズムとの関わりという視点で捉え、事実に基づく基礎情報を重視して立項しているのである。

たとえば俳句関係では西東三鬼、鈴木六林男、高柳重信、富澤赤黄男、永田耕衣、平畑静塔らがいる。その他では、高橋和巳、谷川雁、花田清輝、埴谷雄高、吉本隆明らだけでなく、赤瀬川原平、大島渚、澁澤龍彦、寺山修司、中西悟堂、前川國男、前田夕暮、マキノ雅弘、水木しげる、若松孝二等々、さらには大前田英五郎や国定忠治も収録立項しているのだ。

 もちろん収録人名の多くは日本でのアナキズム的な労働運動や社会運動に関わった人のものだが、朝鮮、台湾、中国などの活動家へも目配り収録し、運動と思想に影響を持った欧米系の人名もあるという、日本限定でないところも本書の特色として強調できる。

 増補改訂版のみの特色として、1920年設立の社会主義者同盟の加盟者名簿を巻末資料として収録したことがあげられる。未公刊だったこの名簿を附録としたのは大きな特色といえる。また元版でも好評だった関連機関誌紙リストを、1941年まで対象だったものを1968年まで収録とし、誌紙名索引を加えたことも増補改訂版の特色である。人名索引については、元版同様立項人名だけでなく本文記載の人名を収録し利用者の便を計っている。

 本事典元版の企画が成立し編集委員会が動き出してから元版刊行まで6年かかった。その刊行時に資料が乏しく立項できなかった人物が多数存在するという認識を共有していた編集委員会は、一層の内容の充実を図って10年後に改訂版を出すことを期し、そのための研究・発表の場として年2回刊の雑誌『トスキナア』(皓星社、2004-2014)を発行した。ちょうど10年20号で終刊した同誌は埋もれていた人物や資料発掘の原動力となった。加えて読者カードや元版執筆者へのアンケートなどを参考に増補改訂版の編集に取り組んできた。

「近代日本の歴史の中で自由と平等を求めて闘った有名・無名の活動家の足跡発掘と業績の顕彰にこの増補改訂版が役立つことを願うばかりである。(刊行にあたって・末尾)」というのは、編集委員共通の思いである。さらには”自由と平等を求める”新しい動きの糧としていただければ望外の喜びである。


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『増補改訂 日本アナキズム運動人名事典』
編:日本アナキズム運動人名事典編集委員会
ぱる出版  定価:32000円+税 好評発売中!
http://pal-pub.jp/?p=5131

Copyright (c) 2019 東京都古書籍商業協同組合

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古書古書話(本の雑誌社)

古書古書話

荻原魚雷

 『小説すばる』二〇〇八年一月号から二〇一八年三月号まで十年ちょっと「古書古書話」という見開き二頁のエッセイを連載していた。十年ちょっと分なので、四百六十頁超??わたしがこれまで出した本の中ではいちばん分厚いです。ただし一篇一篇は短い文章なのでパラパラ読むには適しているのではないでしょうか。
 横井庄一、平野威馬雄、辻潤、トキワ荘、野球、将棋、音楽、予言の本、家事の本、実用書、日記。登場する本がバラバラなのは、そのときどきの自分の興味、関心に抗わなかった結果である。

 一九八九年の春、十九歳で上京。その年の六月からライターの仕事をはじめた。その後、大学を中退し、定職につくことなく、四十九歳まで、平日の昼間に古本屋をまわり本を読んで原稿を書いて酒を飲んで寝て……という日々を送ってきた。
「趣味を仕事にする」のが夢だった。「趣味が仕事になると楽しくなくなる」という意見はたくさん聞いた。その意見に半信半疑だった。「古書古書話」の連載中はずっと楽しかった(今も『小説すばる』で「自伝の事典」という連載を続けている)。

 JR中央線沿線の高円寺に暮らし、三十年ちかく西部古書会館にも通っている。古書会館に並ぶ本の雑多さは、まちがいなくわたしの思考にも反映されている。
『古書古書話』は中央線の「古本屋濃度」の高い「古本本」といえるだろう。「古本屋通いの楽しみは、単に目当ての本を早く安く見つけることではない。
 自分の知らないおもしろそうな本を探すこと。本そのものが醸し出している雰囲気や時代性を感じとること」

 そんなことも書いた。わたしは本を探す時間が好きだ。本を読むことよりも好きかもしれない。本そのものについて調べるのも好きだ。
 本の内容はどうでもいいとはいわないが、どんな本でも作者の横のつながり、縦のつながり、その本の刊行時の時代背景などを探っているうちに、いろんなことが見えてくる。点と点がいつの間にか知らないうちに線になるように関係ないとおもっていた本と本がつながっていく。

『古書古書話』の中には、漫画の中に出てくる架空の古本について調べた回がある。藤子不二雄の『まんが道』で主人公のふたりが神保町ではじめて買った古本(のモデル)を探したのだ(「ヒマラヤ謎の雪男」の回)。
 寄り道と脱線も古本趣味の醍醐味である。行き当たりばったりに読み耽ってきた本について書いたエッセイ集だが、古書の世界の渾沌とした雰囲気は味わえる本になっているのではないかとおもう。

荻原 魚雷(おぎはら ぎょらい)
1969年、三重県鈴鹿市(東海道庄野宿)生まれ。1989年秋から高円寺(青梅街道)に在住。
著書に『古本暮らし』『閑な読書人』(晶文社)、『活字と自活』『書生の処世』『日常学事始』(本の雑誌社)、
『本と怠け者』(ちくま文庫)。編著に梅崎春夫著『怠惰の美徳』など。町の歴史と文学館を二本柱に街道をたどる
「街道文学館」を連載中。http://www.webdoku.jp/column/gyorai_kaidou/

koshokosho
『古書古書話』 荻原魚雷 著
本の雑誌社 定価:2,376円(税込)好評発売中!
http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860114275.html

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『明治出版史上の金港堂』

『明治出版史上の金港堂』

稲岡 勝

 金港堂と聞いて明治時代の巨大出版社と言える人は何人いるだろうか。相当な出版通でも《最古最大の教科書肆》と知る人は余りいないだろう。それもその筈金港堂は完全に忘れ去られた存在で、従来の近代出版史では業界伝説の対象でしかなかったのである。せいぜい文学好きなら文芸雑誌の嚆矢『都の花』、二葉亭四迷『浮雲』、永井荷風『地獄の花』の版元と答えるか、教育学者なら教科書疑獄事件の主役を連想する程度であろう。それらは確かに金港堂の一面を語ってはいるが、全体像からすればごく小さなパーツに過ぎない。一世を風靡したと言われる巨大教科書出版社は長く顧みられることなく放置されてきた。

誰もやる人がいないという単純な動機から、社史のない出版社「史」の解明に取り組んだのはもう40年も昔のことになる。明治8年岐阜の人原亮三郎が横浜に創業した金港堂は翌年東京日本橋に移転するが、その後どのように出版活動を展開し、社業を発展させていったのだろうか。参考になる先行研究は皆無なのだから、まず散在する関係史料の発掘から始めるより手段はなかった。

金港堂発行の書籍雑誌の観察と記録を手始めに、同時代の新聞雑誌記事や広告類を広く捜した。しかし活字文献だけでは出版の実態解明には限界がある。出版者の私文書は理想的な実証史料であろうが、その出現入手は僥倖を俟つに等しい。それに代わるものとして公文書とくに学事文書の活用を思いついて、新事実の発見や論証に厚みを加えることができた。本書は全て原史料を用いて金港堂の歴史を論述したものだが、偶然にも同時に明治出版文化史の核心を明らかにする結果にもなった。

史実とお話の区別もつかず、また現代の事情を過去に投影して少しも怪しまない俗流出版史の蔓延は一向に止む気配がない。既存の活字文献を無批判に切り貼りした出版物の羅列史、出版者の興亡史に留まっている限り、新しい近代出版史は生まれようがない。

たとえば伊藤整『日本文壇史』には、文壇史の遠景として各時代の出版事情が点綴されている。このため俗流出版史家は今も同書を引用して得々としているようだ。確かに第2巻には金港堂が登場するが、残念ながらその記述は全く不正確である。これは伊藤整の責任というよりは、執筆当時に参照し得た出版史文献にロクなものがなかったことの反映と見るべきであろう。滑稽にも彼らは高名作家の作品を引用すれば箔が付くと錯覚し、史料批判の必要性には気付きもしない。何の根拠もない俗説をあたかも通説としてきた近代出版史は、このようにして無自覚のままに今日までひたすら砂上の楼閣を築いてきたのである。

こうした弊風を打破するためには、若くて意欲溢れる研究者の出現を俟つよりほかはなさそうだ。先行者としての拙著が後進たちへの良きガイドとなり、近代出版史の再構築に向けて多少お役に立つならばこれ以上の喜びはない。 

 

稲岡勝(いなおか・まさる)
1943年、上海生まれ。すぐ近くに商務印書館があった。早稲田大学政治学科および図書館短期大学別科卒業、1972年から東京都立図書館勤務。1999年から都留文科大学国文学科教授情報文化担当、専攻は明治の出版文化史。10年勤めて退職後は図書館、文書館、古書展に通い埋もれた出版者を手掘り中。執筆予定としては「教科書トラスト帝国書籍の成立と崩壊」、また山梨県の地方新聞『甲陽新報』(印刷は内藤伝右衛門)も取りあげたいテーマである。

kinko
『明治出版史上の金港堂 社史のない出版社「史」の試み』
著者・編者 稲岡 勝 皓星社刊 価格 8,000円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/kinkodo/

 

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2019年4月10日 第272号

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 古書市&古本まつり 第74号
      。.☆.:* 通巻272・4月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛け下さい。

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━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

古書目録「堀紫山伝」のこと(一)

                  高橋 徹(月の輪書林)

 二年前、古本屋の大先輩の身にあまる好意で、明治時代の新聞記
者・堀紫山(文久3年~昭和15年)宛の書簡・ハガキ200通を
手に入れることが出来た。
 うれしくて手紙の束を胸にだきしめると、「堀紫山伝」というタ
イトルが浮かんだ。
 紫山宛に届いた手紙を写真に撮り、解説を書き、値段をつけてし
まえば小粒だが、ぴりりと光る素敵な古書目録がすぐにでも発行で
きると思ったのだが、二年がたつのに未だ書簡の「解読」もままな
らぬていたらく、一体どこで道を迷ってしまったのか?

続きはこちら
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高橋 徹(たかはしとおる)
1958年、岡山県の山奥、柵原鉱山に生まれる。日本大学芸術学部文
芸学科を2か月で中退。鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」
の美術助手として映画製作に関わるも挫折、87年に大田区蒲田の古
本屋・龍生書林の店員となる。
3年半の修業の後、90年、東急池上線の蓮沼駅近くに「月の輪書林」
を開く。
特集古書目録に「私家版 安田武」、「古河三樹松散歩」、
「美的浮浪者・竹中労」、「寺島珠雄私記」、「李奉昌不敬事件予
審訊問調書」、「三田平凡寺」、「太宰治伝」などがある。
著書には『古本屋 月の輪書林』(1998年/晶文社)がある。

━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

古本マニア採集帖
第4回 松﨑貴之さん 噴水の歴史に魅せられたひと

                      南陀楼綾繁

 世の中には、普通の人の目に入っていながら見過ごされているも
のがある。そういったものに執着し、調べたり集めたりするのがマ
ニアという存在だ。今回紹介する松﨑貴之さんは、「噴水」に関す
る資料を集めている人である。
 松﨑さんは1979年に長崎市に生まれる。父は長崎駅近くで酒屋を
営んでおり、店内の立ち飲みスペースには多くの客が入りびたって
いた。

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南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━【4月10日~5月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

立川フロム古書市ご案内

期間:2019/04/11~2019/04/27
場所:立川駅北口徒歩5分フロム中武(ビッグカメラ隣)
   3階バッシュルーム(北階段際)

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書窓展(マド展)

期間:2019/04/12~2019/04/13
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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大均一祭

期間:2019/04/13~2019/04/14
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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平成31年 五台山古本まつり(高知県)

期間:2019/04/13~2019/04/14
場所:高知市五台山展望台1階イベントスペース
   高知市吸江210-1

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第36回 古本浪漫洲 Part 4

期間:2019/04/13~2019/04/15
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2 TEL03-3354-6111

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第36回 古本浪漫洲 Part 5(300円均一)

期間:2019/04/16~2019/04/18
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2 TEL03-3354-6111

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MM駅ナカ古本&ワインフェスタ(神奈川県)

期間:2019/04/18~2019/04/24
場所:横浜高速鉄道みなとみらい線みなとみらい駅構内催事

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京都マルイ春の大古本市(京都府)

期間:2019/04/18~2019/04/21
場所:京都マルイ1階店頭

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フリーダム展

期間:2019/04/19~2019/04/20
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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本の散歩展

期間:2019/04/19~2019/04/20
場所:南部古書会館  品川区東五反田1-4-4

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春の古本掘り出し市(岡山県)

期間:2019/04/24~2019/04/29
場所:岡山シンフォニービル1F 自由空間ガレリア

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2019/04/25~2019/04/28
場所:JR浦和駅西口さくら草通り徒歩5分マツモトキヨシ前

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ぐろりや会

期間:2019/04/26~2019/04/27
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第17回 「四天王寺春の大古本り」(大阪府)

期間:2019/04/26~2019/05/05
場所:四天王寺 大阪市天王寺区四天王寺1-11-18

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有隣堂イセザキ本店ワゴンセール(神奈川県)

期間:2019/04/27~2019/05/26
場所:有隣堂伊勢佐木町本店

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第37回 春の古書大即売会(京都府)

期間:2019/05/01~2019/05/05
場所:京都市勧業館「みやこめっせ」1F第二展示場
   京都市左京区岡崎成勝寺町9-1

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「名古屋骨董祭」 第1回 古書即売会(愛知県)

期間:2019/05/02~2019/05/04
場所:吹上ホール
   愛知県名古屋市千種区吹上2丁目6-3

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反町古書会館展(神奈川県)

期間:2019/05/04~2019/05/05
場所:神奈川古書会館1階特設会場
   横浜市神奈川区反町2-16-10

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早稲田大学青空古本祭

期間:2019/05/06~2019/05/11
場所:早稲田大学10号館前=大隈重信候そば

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第4回 上野広小路古本祭り

期間:2019/05/06~2019/05/12
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36
   台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階

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城北古書展

期間:2019/05/10~2019/05/11
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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杉並書友会

期間:2019/05/11~2019/05/12
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第15回 東京蚤の市

期間:2019/05/11~2019/05/12
場所:大井競馬場 品川区勝島2-1-2

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新橋古本まつり

期間:2019/05/13~2019/05/18
場所:新橋駅前SL広場

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全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

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日本の古本屋メールマガジンその272 2019.4.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
 編集長:藤原栄志郎

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古書目録「堀紫山伝」のこと(一)

古書目録「堀紫山伝」のこと(一)

高橋 徹(月の輪書林)

 二年前、古本屋の大先輩の身にあまる好意で、明治時代の新聞記者・堀紫山(文久3年~昭和15年)宛の書簡・ハガキ200通を手に入れることが出来た。
 うれしくて手紙の束を胸にだきしめると、「堀紫山伝」というタイトルが浮かんだ。
 紫山宛に届いた手紙を写真に撮り、解説を書き、値段をつけてしまえば小粒だが、ぴりりと光る素敵な古書目録がすぐにでも発行できると思ったのだが、二年がたつのに未だ書簡の「解読」もままならぬていたらく、一体どこで道を迷ってしまったのか?

 解読とは大げさなようだが、流れるように書かれた達筆な毛筆の文字が、くやしいかな読めない。九十歳、百歳といった老人の手が読めないのならさほどくやしくはない気がするが、堀紫山宛の手紙の主(ぬし)のほとんどが二十代、三十代の若者なのだ。
 なかでも小栗風葉にいたっては十八歳、だけど惚れ惚れするような美しい字を書く。しかも酸いも甘いも知り抜いた大人(おとな)の字だ。どうしてこの若さでこんな字が書けるのかと、『評伝小栗風葉』(岡保生著/昭和50年/桜楓社刊)をひもとき、なるほどと感心する。一事が万事この調子で、ますますもって古書目録の発行が遠くにかすむ。
 堀紫山は、明治23年10月から数か月、尾崎紅葉と本郷区森川町一番地で共同生活をしたことがある、「紅葉第一の門人」(徳田秋聲)とも言われた男。だから、硯友社周辺の凄玉の男たちからの手紙が多い。

  小栗風葉 18歳(明治26年/封書5通 葉書3枚)
  巌谷小波 26歳(明治29年/封書9通 葉書3枚)
  川上眉山 27歳(明治30年/封書3通 葉書1枚)
  石橋思案 30歳(明治30年/封書10通 葉書3枚)
  柳川春葉 20歳(明治31年/封書3通)
  長田秋濤 26歳(明治31年/封書3通)
  尾崎紅葉 31歳(明治33年/葉書2枚)
  斎藤松洲 33歳(明治36年/封書2通 葉書3枚)
  徳田秋聲 31歳(明治36年/封書3通)
  後藤宙外 36歳(明治37年/封書3通)
  江見水蔭 34歳(明治37年/封書5通 葉書1枚)
  泉 鏡花 31歳(明治38年/年賀状2枚)

 ちなみにこの中で読みやすかったのは江見水蔭と泉鏡花の二人だけ。
 それはさて、今、堀紫山の名を聞いてピンとくる人が一体何人いるだろうか?
 百二十年前には新聞界きっての美文家とうたわれた紫山の名は一体いつ忘れ去られてしまったのか?
 堀紫山とはそもそもどんな男なのか?
 そう問われたらこう答えたい。

 堀紫山には妹が二人いて、一人は美知といい、堺利彦と結ばれ、もう一人の妹は、保子といい、明治39年8月24日、大杉栄の熱烈な求愛をうけ結婚した。
 つまり、堀紫山は、初期社会主義者の巨頭の一人と無政府主義者のスーパースタアの二人を「義弟」に持つ極めて稀な男なのだと。
 古書目録「堀紫山伝」の目玉は、堺利彦と大杉栄をおいて他にない。

高橋 徹(たかはしとおる)
1958年、岡山県の山奥、柵原鉱山に生まれる。日本大学芸術学部文芸学科を2か月で中退。鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」の美術助手として映画製作に関わるも挫折、87年に大田区蒲田の古本屋・龍生書林の店員となる。
3年半の修業の後、90年、東急池上線の蓮沼駅近くに「月の輪書林」を開く。
特集古書目録に「私家版 安田武」、「古河三樹松散歩」、「美的浮浪者・竹中労」、「寺島珠雄私記」、「李奉昌不敬事件予審訊問調書」、「三田平凡寺」、「太宰治伝」などがある。著書には『古本屋 月の輪書林』(1998年/晶文社)がある。

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『古本屋 月の輪書林』
晶文社 定価:本体1900円+税 好評発売中!
https://www.shobunsha.co.jp/?p=1459

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第4回 松﨑貴之さん 噴水の歴史に魅せられたひと

第4回 松﨑貴之さん 噴水の歴史に魅せられたひと

南陀楼綾繁

  世の中には、普通の人の目に入っていながら見過ごされているものがある。そういったものに執着し、調べたり集めたりするのがマニアという存在だ。今回紹介する松﨑貴之さんは、「噴水」に関する資料を集めている人である。
 松﨑さんは1979年に長崎市に生まれる。父は長崎駅近くで酒屋を営んでおり、店内の立ち飲みスペースには多くの客が入りびたっていた。
「ぼくが子どもの頃はまだ三公社(専売公社、電電公社、国鉄)の時代で、そこの職員がよく来ていました。店のお客さんによく遊んでもらいました」
 祖母と両親と妹の5人家族。亡くなっていた祖父、それに母も父も本好きで、家の中には本がたくさんあった。当時全盛だったファミコンはなかなか買ってもらえなかったが、本なら買ってくれるので、近所の〈メトロ書店〉によく行っていた。

 小学4年生で、地方に残る珍説・奇説を集めた『歴史読本』の増刊号を買い、歴史に興味を持つ。長崎は少し歩くと古いものがいくらでもあるので、見て回った。
「石碑をインスタントカメラで撮影して、その写真や郷土史からのコピーをルーズリーフに貼り、数ページのコピー本をつくっていました。『カステラの由来』とか。それを店のお客さんに50円で売りつけた。3、4号は出したかな。もちろん友だちには判ってもらえませんでした(笑)」

 小学6年生のとき、クイズにハマる。1991年に長崎で日本テレビ系の放映が開始され、そこではじめて『アメリカ横断ウルトラクイズ』を観た。番組のクイズ本を買うにとどまらず、公務員試験の本をもとに自分で問題をつくるようになった。「新鮮な遊びでしたね。自分が調べることが好きなんだと気づきました」と元少年は当時を振り返る。
 高校1年のとき、『高校生クイズ』に出るも、予選で落ちる。しかし、クイズ熱はおさまらず、東京大学に入ると、クイズ研究会(クイ研)に属した。

 東京では大きな書店があり、どこでも本が買えることに興奮した。住んでいた自由が丘には〈西村文生堂〉〈東京書房〉の2軒の古本屋があり、毎日のように通っては歴史やサブカルチャーの本を買った。
クイ研のメンバーも本好きで、面白い本を教えてもらった。
「当時のクイ研は、クイズ大会に出場するヤツより、面白い問題をつくるヤツの方がえらいという風潮がありました。誰がどんな話題を振っても、かならず乗っかってくれる人ばかりなので、毎日が楽しかったです。後輩の結婚式では二次会がクイズ大会で、新郎が新婦をほっといて出場してました(笑)」
 2年留年するが、最後の年に聴いた美術史家の木下直之教授の授業が、その後の松﨑さんに決定的な影響を与えた。

「日比谷公園にあるものから、何かを取り上げてレポートをするという課題があって、ぼくは鶴の噴水を選んだんです。子どもの頃からなんとなく噴水を見るのが好きでした」
日比谷公園は1903年(明治36)に開園するが、2年前の新聞記事に「蝦蟇仙人の噴水ができる」という予告を見つけた。
「これはなんだ! と驚きましたね。その時は調べきれず、レポートも出せませんでしたが、あとになって中国の仙人だと判りました」

 卒業後、就職してしばらくして、ヤフーオークションを見ていたら、噴水の絵葉書を見つけた。気になって、「噴水」で検索するとぞろぞろ見つかった。社会人になり、自分の金が使えるようになったこともあり、片っ端から買った。ヤフオクで買いつくすと、古本市や骨董市に通う。絵葉書を扱う店に名刺を渡し、「噴水ものがあったら取っておいてください」と頼んだ。噴水だけの絵葉書の束をのけておいてくれた店もあるという。これまでに集まった噴水の絵葉書は約5000枚。

 そして、集まってきた絵葉書がいつ撮影されたものか、手さぐりで調べはじめた。キャプションと一緒に写っている建物がわずかな手がかりだ。国会図書館で、明治から昭和の読売新聞のCD-ROMを検索して、噴水に関する記事を一件ずつ調べた。噴水の歴史に関しては唯一、佐藤昌『噴水史研究』(環境緑化新聞社)という本があるが、そこに書かれていないことが多かった。

「2010年から『ずっと噴水が好きだった』というブログをはじめ、調べて分かったことを書いていきました。それを見たテレビ局から依頼され、噴水をテーマにした番組にも出演しました。調べると知らないことが次々に出てきて、それについての資料を古本屋で探し、そこで入手した本をもとに図書館で調べるというように、探し物のアンテナにしたがってぐるぐる回って隙間を埋めていくということを繰り返しています。欠けていたピースがピタッと埋まったときは快感ですね。調べ物についてはクイ研時代の経験が生きていて、ウラをとることの大切さを実感しています」

 のちにツイッターをはじめ、生き人形の研究家である伊藤加奈子さんや観覧車を研究している福井優子さんらと知り合いになった。恩師である木下直之さんの研究会にも参加する。噴水は建築、美術、企業史などさまざまなジャンルにまたがるので、調べていくうちにいろんな方向に興味が飛び火していくのだと、松﨑さんは笑う。
「いまは戦後のキャバレーに設けられた噴水のことを調べています。昭和30年代の〈ミカド〉のパンフレットには、ロビーやステージにあった噴水が載っています。また、当時はキャバレーを回るバスツアーもあり、バス会社のパンフレットにキャバレーの噴水が見つかることもあるんです。それらの噴水はドイツのキャバレーを参考につくられたもので、今度は海外のパンフレットも探しています」

 そうやって調べていくうちに、噴水とは直接関係ないヘンなネタも集まってくる。
「上野の西郷隆盛像に紙くずが貼りついている絵葉書を見つけて調べてみると、昭和20年代の新聞小説に、西郷像に紙をぶつけると英雄にあやかれるということが書かれていました。これは仁王像への信仰と関係があったのではないかと考えています。ところが、浅草寺にある社会事業家の瓜生岩子の像が紙くずまみれになっている絵葉書も見つけたんです。こちらは裁縫がうまくなると言われていたそうです。仁王像とは関係なさそうですが(笑)」
 平日は会社勤務のため、土曜日は朝から国会図書館に行き調べ物をしたり、神保町の古本屋を巡ったりするのが楽しいと松﨑さんは云う。

 ちなみに、最近できた噴水のことも調べているのだろうか?
「いや、そっちはあんまり詳しいわけじゃないですね。旅行で行ったら立ち寄るぐらいです。僕は時間が経って鮮度が落ちて、歴史の範囲に収まったぐらいの対象が好きみたいです」
 そう謙遜するが、それでも一通りの知識や見聞はあるに違いない。いろんな方向に興味が飛び火していく一方で、本拠地である噴水については発言する範囲を明確にするというのが、噴水史マニアたる松﨑さんの真骨頂なのだろう。
 このひとが書いた噴水史の本は、絶対面白いに違いない。それが世に出るのを楽しみに待とう。

松﨑貴之 ツイッター
https://twitter.com/gelcyz

南陀楼綾繁
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)などがある。

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『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
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