本とエフェメラ⑥
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■四番目の古本街は?――高円寺? それとも…… 東京に三大古本屋街がある。神保町、本郷、早稲田である。それはよいのだが、では「4番目は」と言ったらどこだろう? 4番目はないのだろうか。以前、私は高円寺が4番目なのではないかと思ってきたが、いま古本エフェメラを見て思うに「不忍ブックストリート」が4番目かもしれないと気づいた。 ■「不忍ブックストリートMAP この団体の主要事業は一箱古本市とMAPの制作の2つだという。【図1】はその地図。この地図が古書店を星座のごとくまとめたものである。2005年から毎年出されて現在も継続刊行中だが、私が持っているのは2006年版からである。
【図2】『不忍ブックストリートMAP〔2005〕』部分 全体として洒落ているのは、これはデザイナー等がかかわった地図だからで、今は違うが、古書組合系の案内図に欠けがちな要素だったと思う。 一箱古本市では古書店前に限らず、喫茶店そのたの店頭がスポットとなっており、古本ラリーが楽しめた。【図3】はそのスタンプラリー用の集印紙。 ![]() 【図3】「一箱古本市開催スポット」集印紙 【図4】は2006年の一箱古本市に参加した際の参加マニュアルと一箱古本用の短冊。マニュアルは古本屋でない素人が本を売るには必須だし、短冊はマニュアルで事前に準備するよう求められた新刊書店っぽいものだが、これもまた一箱古本市ならではの工夫だろう。 これらも広い意味で古本エフェメラと呼べるだろう。
【図4】一箱古本市参加マニュアルと短冊 実際、いま残された短冊を見ると、当時自分が絶版文庫を中心に品出しをしていたことや、1冊700円前後と現在よりも強気の値段をつけていたこと、さらにまたそれらが結構売れたことなどが思い出される。いまブログの記録を見ると半分も売れたとある。 ![]() 【参考図2】一箱古本市(2006年4月29日) この時に買いに来てくれた人々のいくたりかは、後に古本フレンズになったことだった。のち古本ドキュメンタリー作家みたいになった黒岩比佐子さんも来てくれた。これはよく近代出版研究所員に指摘されるのだが、2000年代はブログ全盛期で現在の殺伐としたSNSとはかなりちがう環境にあったため、古本趣味といったノンビリした趣味の友人がネット経由で作りやすかった。自分がネットで多少注目されていたのもこの頃のことである。 【図5】は『不忍ブックストリートMAP 2007-08』。前年まで別刷りだったスタンプ用紙がマップと一体化されていることに気づく。継続は力なりだなぁ。
【図5】『不忍ブックストリートMAP 2007-08』
一箱古本市はその後、全国的な流行りとなった。また、現在流行っている「シェア型書店」の先祖でもあろう。初期のころは古書業界界隈に素人が古本を扱うことへの反感もあったようだが、すでに新古書店的な趨勢が全面化していた中で、市民、ふつうの読書人に古めの古本の価値を再発見してもらう意義があったように、私には思われる。 ■【余談】読者から古本マップ一式を送らる なんと、この連載「古本エフェメラ」に呼応してくれた読者がおられた! その方は某古書店を経営なさっておられるのだが、手持ちの古本屋マップを送ってくれた。もともと他業種から参入した方らしく、現役時代には古本屋のユーザーだったらしい。だからこそ古本屋地図が手元に残ったものだろうか。
【図7】『わが街ほんの街:神田神保町』部分「〔三省堂書店〕館内ごあんない」
B2判をB5に折りたたんだものでかなり大判。こういった古本地図には気をつけているのだが、今まで見たことのなかったもの。御茶の水など一帯の地図をいくつか併載している。 「神田神保町」【図8】にはロシア料理店バラライカや、予備校の研数学館がプロットされていて、往時の神保町を思い出させてくれる。イラストが1970年代ポップ風なのもGood。いまはなき古本屋・東京泰文社(1996年閉店)の写真も見える(地図にはプロットされていない)。1986年ごろ、ここで米国版『プレイボーイ』を立ち読みしたことがある(泰文社は米軍流れのペーパーバックで名を成した)を。 ![]() 【図8】『わが街ほんの街:神田神保町』部分 『わが街ほんの街』は裏の全面が「千代田周辺観光図」になっているのだが、付図として「昭和期の神保町(部分)」が載っていて驚いた。これはいわゆる「火災保険地図」だ。 ![]() 【図9】『わが街ほんの街:神田神保町』裏面「千代田周辺観光図」 火災保険地図は戦後の「住宅地図」と同様に、1棟ごとの情報がわかる戦前唯一の地図で、柏書房が復刻した1冊13万円、全28巻の『戦前期東京火災保険特殊地図集成』がようやく2026年9月に完結したばかりだ。私も復刻に少しだけ協力している。 『わが街ほんの街』に使われているのはおそらく千代田図書館員だった鈴木理生から教えられたものだろう。火災保険地図の再発見は1981年前後なので、極めて早い段階での利用といえる。私も前職で同僚にいやがられながらも(当時、国会図書館にはほとんど無かった)再評価にいそしんだことだった。『近代出版研究』第3号(2024)に復刻の話などが載っている。 ■次回は… 神保町の古本エフェメラはたくさんありすぎるので、意外とみんなが集めていない国内各地の古本エフェメラを紹介しようと思う。 |
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