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国会図書館秘伝?――ネットと本での調べものに『調べる技術』をどうぞ

国会図書館秘伝?――ネットと本での調べものに『調べる技術』をどうぞ

小林昌樹(近代出版研究所)

 去年から今年にかけて、懇意の出版社、皓星社さんのメルマガで「在野研究者のレファレンス・チップス」なる連載をしました。それを今回、同社から『調べる技術』という本にまとめて出したのでご紹介します。

 前職場――国立国会図書館(NDL)――でレファレンス(調べもの)担当司書を15年ほど体験したのですが、その時のノウハウを書き出したのが本書です。意外と書かれていないコツや予備知識などを書きました。

 この本は、当初の連載タイトルにあるように在野研究者をはじめ、趣味人、校正者、編集者、ライターなどの方々向けを意識して書いたのですが、卒論を書く学生さん、それを指導する大学の先生にも役立つと思います。

■本書の内容:Googleの先へ行くには
 調べもので「ググる」のは当然としても、他にどんな専門的データベースがあるのか、1990年代に話題になった「アリアドネ」のようなリンク集があるとよいなぁ。今はないの?→ある。それも国営で。

 本を読んでいたら知らない人物が出てきたんだけれど、あまり有名な人でないみたい。人名事典に載っていない人がわかるようなデータベースはないの?→ある。WhoPlusといい、大きな大学の図書館でなら検索できる。

 でも契約大学/図書館経由でしか見られないんしょう。ただで引けるデータベースはないの? →ある。それも国営で。

 こんな予備知識やちょっとした検索テクニックまで、レファレンスにはそれなりのノウハウがあります。それらをまとめて書きました。本書目次は出版社サイトにありますが、列挙すると、調べものの基本的考え方、実際に役立つデータベースに行けるリンク集の紹介、新聞や雑誌の記事の探し方といった一般的手法から、ちょっとした小ネタ集、といったものです。ベテラン司書の暗黙知だった日本語「ドキュバース」にも言及しました。

■ホントにNDL秘伝なの?
 サブタイトルを「国会図書館秘伝のレファレンス・チップス」としました。これは販売戦略でもありますが、図書館史上の事実でもあります。

 敗戦後、アメリカから図書館使節が呼ばれ、彼らが国立国会図書館の基本コンセプトをイチから作ってくれました。その際、「国会図書館はレファレンス局を筆頭に編成せよ」と言われたので、とにもかくにも74年間、200人ほどのレファレンス司書や調査員がレファレンス事業を実行してきました。そういう意味では「伝承」。

 けれど、どうやったら情報参照できるのか、適切なレベルでノウハウを本にした職員はいなかったのです。そういう意味では「秘密」。

 伝承されてきたのに秘密状態だったから「秘+伝」というわけです。

 正確には、外見的に見えやすい部分だけ本になっていました。図書館界でこれまで作られてきた参照ツールの解説リストがそれです(『日本の参考図書』といったもの)。けれど、そこには個々のタイトルごとにスペック(何万語収録とか)が書かれるだけで、類似の本を使う順番や、関連する違う分野の本をセットどう使うか、といったメタな「考え方」は書かれてこなかったのでした。

■ノウハウは司書にたまるが、その「見える」化は?
 そんな本がいままでなかったのは、司書自身が、お客の代わりにやってあげればよい、と誤解してきた側面もあったからでした。代行業なら結果だけをお客に教えればよく、ノウハウまで教える必要はありません。実際、国会図書館では議員さん向けレファレンスを、ほぼ代行業でやってきました(もちろんNDLにはセルフ・レファレンス用の議員閲覧室もありますが)。

 また、紙メディアしかない時代なら、司書の調べを見ていれば利用者も自然にマネできる、という事情もありました。かつては新人司書も、徒弟奉公よろしく、職人のレファレンス術を見様見真似で身につけたものでした。コツが言語化されるキッカケはありません。

■コロナ禍で可視化された調べるニーズ
 しかし、司書に貯まるスキルは本に書いて一般人に公開すべきと私は思ったのでした。きっかけは、2020年コロナ禍で、当時勤めていた国会図書館が閉館し、論文書きの学生さんや院生、調べもので通っていたライターさん、校正者さんたちの「仕事ができない」という声がネットで顕在化したことです。

 彼らの悲痛な声に押されて、国会図書館が10年間ネットに出してこなかった分の「デジタル・コレクション」(通称「デジコレ」)が、部分的ですが登録利用者にネット公開されたのは今年5月のことでした。

■本とネットの複合効果が広まらないといけない
 前述の国会のデジコレを私は「本」だと思っていて、だからこそ、公開がさらにすすめば、かなりいろいろなことが家にいながら分かるようになると思っています。というのも、従来の紙メディア(=本)とネット情報源をセットで使うと、どちらかだけでは絶対出ないことも、わりとすぐ出る傾向になったからです。

 けれど、司書がネット情報源を使ってもお客さんからは「見え」ません。同僚にすら「見え」ない。つまり「見様見真似」ができないのです。本とネットのあわせ技で新しい調べの構造ができつつあるのに、ネット情報源の使い方を可視化しなければ、それが広まるわけはありません。そこで、私は「本好き」ではありますが、今回の本では特に、ネット情報源について力点を置いて発想法や使う順番などを可視化しています。

 調べものというのは結局、各人が自分で納得しなければ終わらないものなので、本書を使っていただき、自分なりの調べものを展開していただければ幸いです

■「ただ検索しただけで求めるものに手が届くとは限らない」とようやく気づいた?
 なぜだか本書は前評判がとても良く、アマゾンも楽天もそうそうに「カート落ち」(品切れ)となりました。

 広く学際的な啓蒙活動をなさっている山本貴光さんにはご自身のユーチューブで紹介いただき有り難く思ったことでした。
哲学の劇場 #134 注目の新刊

 はてなブロガーさんに、次の書評を挙げている方がいました。私も「そうそう」と膝を打つ的確なツッコミでした。
調べる技術: 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス /小林 昌樹 (著) – dtk’s blog(71B)

 ブックファースト新宿店さんが発売日(12月9日)に何十冊も平台角に置いてくれたり(これも14日現在売り切れ)、私もよく通う東京堂神保町店さんでベストセラー週刊3位になったり、大変好評です。初刷も発売前2刷も、客注やネット書店で溶けてしまい、年末進行で3刷をかけることになりました。戦前なら「忽ち三版!」とでも言うところでしょう。

 なんでこんなに当たったのか、著者の私もわかりませんが、前記の山本貴光さんは、「ただ検索しただけで求めるものに手が届くとは限らないと、ようやく分かり始めた我々に時宜を得た本。ありそうでなかった」と指摘しています。

■謝辞
 サブタイトルは、Yutaro KTR(育休中)さんの、次のツイートからヒントを得ました。感謝です。
・「図書館レファレンスの秘伝のたれ、みたいな感じでためになる

 
 
 
小林昌樹(こばやし・まさき)
 1967年東京生まれ。1992年慶應義塾大学文学部卒。2021年国立国会図書館を早期退官し、慶應義塾大学でレファレンス論を教える。近代出版研究所主宰。近代書誌懇話会代表。専門は図書館史、近代出版史、読書史。
執筆リスト

 
 
 
 


『調べる技術――国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』
小林昌樹 著
発行元:皓星社
ISBN:978-4-7744-0776-0
定価:2,000円+税
好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407760/

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ようこそ、大学出版の世界へ  【大学出版へのいざない1】

ようこそ、大学出版の世界へ 【大学出版へのいざない1】

山田秀樹(東京大学出版会)

 大学出版部――このメルマガを読むほどの知識欲あふれる人にとっても、この言葉は堅苦しく響くかもしれない。

 学術研究と大学教育の成果を刊行する大学出版部は、「大学」という最高学府が生み出す学知をネタにしている点では、硬派にちがいない。しかしながら、その学知を「出版」として不特定の人向けに分かりやすく伝えるという点では、軟派たらんとしている。「むつかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく……」と続く井上ひさしの寸言は、なるほど、我らの活動にも当てはまるのでないか。

 その大学出版部のヨコの繋がりが、大学出版部協会である。北は北海道大学出版会から南は九州大学出版会まで、全国25の大学出版部が集い、書店での共同フェアや海外の大学出版部との交流などを通じ、学術出版の活性化を図っている。「大学と社会を結ぶ 知のネットワーク」という協会のキャッチフレーズが、我らの何たるかを端的に言い表していよう。

 そして“大学と社会を結ぶ”ため更に一歩踏み出すのが、協会のPR誌『大学出版』。大学―学問―出版をめぐる話題を深掘りし、併せて私たちの自慢の新刊を広く紹介するリトルマガジンだ。

 誌面の前半は、時流を読み解く特集記事。編集・流通・販売など出版に関する話題を中心に、大学の変化や学生の動向、さらには最新の学問状況などもクローズアップし、テーマに即し多様な論者が自説を展開する。「研究評価と〈本にすること〉」「コロナ禍のなかで知を届ける」「印刷文化と印刷博物館」「大学とスポーツ」「アカデミアの多様なかたち」「現代中国の学術と出版」――最近の特集テーマを並べただけでも、また、苅谷剛彦、樺山紘一、中澤史、読書猿、江草貞治、石井剛、などそれらの書き手を並べただけでも、どうです? ワクワクするでしょう。ちなみに、最新号(132号、11月30日発行)の特集テーマは「学術書を読み継ぐ――オンデマンド出版・デジタル送信・古書」。文庫化、古書、電子化に見られるように、ひとたび刊行された学術書が時の経過のなかでどのような価値を帯び、いかにして新しい読者を獲得するかを、出版流通(柴野京子・上智大)、ロングセラー(園部雅一・講談社)、デジタル送信(福林靖博・国会図書館)、古書(河野高孝・河野書店)の視角から迫ったものだ。

 誌面の後半は、各出版部の新刊紹介。解説やカバー写真なども交えて紹介される作品の総数は毎号約50点にのぼり、大学出版部の充実ぶりがおのずと窺える。日本の学術出版のトレンドを把握するうえで、うってつけのブックガイドと言えよう。

 そしてこのメルマガでも、次号から、それら新刊のなかからイチオシの一冊を、その著者や編集者が語ることになる。内容紹介はもちろんのこと、作品に込めた思いやエピソードなども散りばめ、魅力的な記事になること請け合いだ。

 ますます近視眼的に、短絡的になりがちな世知辛い世の中にあって、ホンモノの学術や出版は、物事を俯瞰的に、複眼的にみる視点を養い、日々の生活を何と豊かにしてくれることか。かのパスカルも、「人間は考える葦である」のくだりに続けて、かく宣(のたも)うている。

 「われわれの尊厳のすべては、考えることのなかにある。われわれはそこから立ち上がらなければならないのであって、われわれが満たすことのできない空間や時間からではない。だから、よく考えることを努めよう。」(『パンセ』)

 そのためにも、大学出版部の刊行物と『大学出版』は、みなさまの人生を支えるものになるはずだ。

 
 
 
 
 


書名:季刊「大学出版」132号
出版社名:一般社団法人大学出版部協会
判型/製本形式/ページ数:A5判/中綴じ冊子/32ページ
税込価格:100円
https://www.ajup-net.com/daigakushuppan

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2022年12月9日号 第360号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第119号
      。.☆.:* 通巻360・12月9日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━━【東京古書会館 展示のお知らせ】━━━━━━━

『地下出版のメディア史』展——珍書屋から辿る軟派出版の世界

【日時】11月30日(水)〜12月14日(水)
【休館日】日曜・祝日 
【開館時間】10:00~18;00 ※土曜17:00 まで 
【会場】東京古書会館 2階情報コーナー
【料金】無料

【主催】慶應義塾大学出版会
【共催】東京都古書籍商業協同組合

詳細はホームページをご覧ください。
https://www.kosho.ne.jp/?p=531
https://note.com/keioup/n/n69402fbbfd22

━━━━━━【古本屋でつなぐ東北(みちのく)2】━━━━━━

帯に込めた推薦文―想いをつなぐ古本屋として

                 (岩手県・盛高書店)工藤 尚

 古本販売で独立をして今年の四月で一〇期目となりました。震災後、
これからの日本には、地方でも未来に夢と希望をもって生きていける会
社を作る事が必要だと考え、全国に販路を持てるビジネスを模索し、ネッ
トで古本を売る仕事を選び独立しました。

 ビジネス書などは好きで買っていましたが、古本に対する想い入れは
薄く、古本販売はあくまでもビジネスの手法でした。本について素人の
私にとって、仕事を通して出会った人達との関わりは学びの連続で、
「古本屋」という仕事の意義を知るきっかけを沢山頂きました。

(「日本古書通信」2022年9月号より転載)

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10525

━━━━━━━━━【シリーズ書庫拝見8】━━━━━━━━━

長島愛生園 神谷書庫 バトンは受け継がれる

                         南陀楼綾繁

 8月31日の朝、赤穂線の車内は通学の中高生で満員だった。邑久駅
で降りると、強い日差しが照りつけてくる。すさまじい暑さだ。

 改札口で編集者の晴山さんと落ち合い、駅前に停まっている愛生園
行きのバスに乗り込む。乗客はほかに2人ほどだ。

 のどかな風景の中をしばらく走ると、山の中に入っていく。このとき
は見過ごしてしまったが、その先に30メートルほどの小さな橋があり、
それを渡ると長島なのだった。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10537

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

国立療養所長島愛生園
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/hansen/aiseien/

神谷書庫
http://www.aisei-rekishikan.jp/pursuer.php

━━━━━━━━━━━━━【お知らせ】━━━━━━━━━━━━

◆自主映画『ボラン』上映のお知らせ◆

東京ドキュメンタリー映画祭2022
【長編部門9】
2022年12月15日(木)10時~
2022年12月18日(日)16時15分〜
新宿ケイズシネマにて上映
https://tdff-neoneo.com/lineup/lineup-2955/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「コショなひと」始めました

東京古書組合広報部では「コショなひと」というタイトルで動画
配信をスタート。
古書はもちろん面白いものがいっぱいですが、それを探し出して
売っている古書店主の面々も面白い!
こんなご時世だからお店で直接話が出来ない。だから動画で古書
店主たちの声を届けられればとの思いで始めました。
お店を閉めてやりきったという店主、売り上げに一喜一憂しない
店主、古本屋が使っている道具等々、普段店主同士でも話さない
ことも・・・
古書店の最強のコンテンツは古書店主だった!
是非、肩の力を入れ、覚悟の上ご覧ください(笑)

※今月の新コンテンツはありません。

YouTube 東京古書組合
https://www.youtube.com/channel/UCDxjayto922YYOe5VdOKu9w

━━━━━【12月9日~1月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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Vintage Book Lab(ヴィンテージ・ブック・ラボ) ※会場販売ありません

期間:2022/12/01~2022/12/20
場所:※会場販売ありません

https://www.vintagebooklab.com/

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第104回彩の国所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2022/12/07~2022/12/13
場所:くすのきホール (西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場)

https://tokorozawahuruhon.com/

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歳末赤札古本市

期間:2022/12/08~2022/12/11
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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新興古書大即売展

期間:2022/12/09~2022/12/10
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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east TOKYO BOOK PARK

期間:2022/12/09~2022/12/25
場所:錦糸町パルコ 3階特設会場  墨田区江東橋4-27-14号

http://tokyobookpark.com/

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フォーラス古本市 仙台古本倶楽部(宮城県)

期間:2022/12/10~2023/01/09
場所:仙台フォーラス8階特設会場
   〒980-8546 宮城県仙台市青葉区一番町3丁目11-15

https://www.forus.co.jp/sendai/shop/5897

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港北古書フェア(神奈川県)

期間:2022/12/13~2022/12/25
場所:有隣堂センター南駅店店頭ワゴン販売
最寄駅:横浜市営地下鉄 センター南駅
    市営地下鉄センター南駅の改札を出て直進、右前方。※駅構内

http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2022/12/15~2022/12/18
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)

https://twitter.com/urawajuku

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ぐろりや会

期間:2022/12/16~2022/12/17
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

http://www.gloriakai.jp/

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五反田古書展

期間:2022/12/16~2022/12/17
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
   JR山手線、東急池上線、都営浅草線五反田駅より徒歩5分

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第143回 倉庫会 古書即売会(愛知県)

期間:2022/12/16~2022/12/18
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12

https://hon-ya.net/

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フィールズ南柏 古本市(千葉県)

期間:2022/12/17~2022/12/28
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場  柏市南柏中央6-7

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つちうら古書俱楽部 師走の古本市(茨城県)

期間:2022/12/17~2022/12/25
場所:茨城県土浦市大和町2-1(パティオビル1F)

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下町書友会

期間:2022/12/23~2022/12/24
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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好書会

期間:2022/12/24~2022/12/25
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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♭立川フロム古書市ご案内♭

期間:2023/01/05~2023/01/16
場所:立川駅北口徒歩5分フロム中武(ビッグカメラ隣)3階バッシュルーム(北階段際)

http://mineruba.bookmarks.jp/saiji.htm

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オールデイズクラブ古書即売会(愛知県)

期間:2023/01/06~2023/01/08
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12

https://hon-ya.net/

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第47回古本浪漫洲 Part1

期間:2023/01/06~2023/01/09
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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東京愛書会

期間:2023/01/06~2023/01/07
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

http://aisyokai.blog.fc2.com/

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杉並書友会

期間:2023/01/07~2023/01/08
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第47回古本浪漫洲 Part2

期間:2023/01/10~2023/01/13
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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『BOOK DAY とやま駅』(富山県)

期間:2023/01/12~2023/01/12
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)

https://bookdaytoyama.net/

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趣味の古書展

期間:2023/01/13~2023/01/14
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

https://www.kosho.tokyo

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大均一祭

期間:2023/01/14~2023/01/16
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第47回古本浪漫洲 Part3

期間:2023/01/14~2023/01/17
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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日本の古本屋メールマガジンその360 2022.12.9

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長島愛生園 神谷書庫 バトンは受け継がれる 【書庫拝見8】

長島愛生園 神谷書庫 バトンは受け継がれる 【書庫拝見8】

南陀楼綾繁

 8月31日の朝、赤穂線の車内は通学の中高生で満員だった。邑久駅で降りると、強い日差しが照りつけてくる。すさまじい暑さだ。

 改札口で編集者の晴山さんと落ち合い、駅前に停まっている愛生園行きのバスに乗り込む。乗客はほかに2人ほどだ。

 のどかな風景の中をしばらく走ると、山の中に入っていく。このときは見過ごしてしまったが、その先に30メートルほどの小さな橋があり、それを渡ると長島なのだった。

 この邑久長島大橋が架かったのは1988年。それまで長島に行くには、船で渡るしかなかった。

 長島には、長島愛生園と邑久光明園という二つのハンセン病療養所がある。両施設の関係者以外は居住しておらず、いわば閉ざされた島だった。この島に橋を架けることは入居者の悲願であり、開通したこの橋は「人間回復の橋」と呼ばれている。

 邑久光明園の敷地を抜けて、もうひとつ小さな橋を渡る。すぐ先のバス停で降りる。ここが長島愛生園なのだ。目の前には瀬戸内海がきらめいている。

 さっそく汗をかきながら歩くが、目的地が見当たらない。電話を掛けると、女性が迎えに出てくれる。愛生編集部の駒林明代さんだ。
「ようこそ。ここが神谷書庫です」と案内されたのは、コンクリート造り平屋の小さな建物だった。

神谷書庫外観

瀬戸内海の二つの療養所

 先日、国立ハンセン病資料館の図書室を取材し、国内に14か所のハンセン病療養所があることを知った。そのなかには、貴重な資料を収めた書庫を持つ療養所もあるという。

 そのひとつとして紹介されたのが、長島愛生園の神谷書庫だった。

 書庫の話に入る前に、なぜ長島に二つのハンセン病療養所があるのかを簡単にまとめておこう。

 1907年(明治40)に「癩予防ニ関スル件」が公布され、全国5か所に公立療養所が設置された。前回触れた東京の全生病院(のち多磨全生園)もそのひとつだ。

 その後、1920年ごろからは患者の隔離を強化するようになった。その流れを推進したのが、当時全生病院の院長だった光田健輔である。光田は公立療養所の現状を批判し、入居者が「逃走不能な場所に懲罰的な性格を持たせた国立療養所の設置を求めた」(以下、松岡弘之『ハンセン病療養所と自治の歴史』みすず書房 を参照)。

 国立癩療養所長を兼務することになった光田が、候補地として挙げたのが長島だった。そして1930年(昭和5)に初の国立療養所として長島愛生園が誕生したのだ。

 光田は初代の園長となり、全生病院から一部の患者を愛生園に移転させた。彼らは「開拓患者」と呼ばれ、「いわば模範的な患者として新入園者を導」く立場を期待された。そのひとりに、全生病院の機関誌『山桜』の創刊に関わった栗下信策がいたのは興味深い。

 一方、公立療養所のひとつで、第三区(近畿2府10県)として大阪府に設置されたのが外島保養院だった。同院は1934年(昭和9)の室戸台風で、死者187名という被害を出した。その移転先となったのが長島で、1938年(昭和13)に第三区府県立光明園として復興した。これが現在の邑久光明園である。

 松岡弘之は両園を比較し、外島保養院(邑久光明園)は「自治会が最も早く成立」しており、「自治の起点となった療養所」であるのに対し、長島愛生園は「隔離を強化するために設置された施設」で、1936年(昭和11)に発生した長島事件(待遇改善を求めた入所者の抗議運動)後に自治会が発足した療養所だと位置づけている。

愛生図書館のおこり

 愛生園には、開園と同時に礼拝堂の一隅に図書館が設置された。
「収納図書はいずれも篤志家による寄贈であって、収納から利用までの系統的な配慮はなく、入園者の図書館への期待もまた主に娯楽であったとみられる」(『隔絶の里程 長島愛生園入園者五十年史』長島愛生園入園者自治会)

 1934年(昭和9)10月の機関誌『愛生』には、図書係の川口清による「愛生図書館報告」によると、蔵書は書籍1600冊、雑誌3000冊であり、朝8時から夜8時まで開館していた。「心の糧に飢へた入園者は或は不自由なる身を杖にすがり或は作業後のつかれた身をもかいりみず図書室へ詰めかけてくる状態である」とあり、読書を心の支えとした入所者が多かったことがうかがえる。

 しかし、入所者は自由に何でも読めるわけではなかった。『改造』を購入しようとした患者は「そんな本を読むより『キング』か『富士』を読め」と施設職員に云われたという(『隔絶の里程』)。入所者が社会問題に関心を持つことは、園側にとっては迷惑だったのだ。

 その後、1940年(昭和15)には患者事務所だった桃源寮が図書館となった。

 戦後、1951年には司書の資格を持つ村田弘が着任した。村田は1952年10月の『愛生』に「病院図書館のABC」を寄稿。見学に行った病院で、「何処にも『図書館』(Library)と呼ばれるべきものが見当たらなくて、ただ僅かに『書庫』が極めて無責任な状態で放置されていたに過ぎなかつた」と批判している。

 村田は愛生図書館を、第一図書室(医学図書部及び職員厚生図書部)、第二図書室(患者図書部)、第三図書室(保育所及び分校)、病歴記録室(医事記録部)の4つのセンターに分けた。さらに「病床へのブツク・トラツクにより巡回文庫、点訳奉仕、患者文芸作品集の出版、等実施を計画しており、一方『らい関係文献総合目録』作成と愛生園の紹介写真集作成、らい病学々術書出版にも着手中」とある(『愛生』1955年1月)。このうち、どれぐらいが実現したのかは判らないが、村田の熱心さが感じられる。

 なお、村田弘は愛生園着任以前、奈良刑務所などに勤務し、「行刑図書館研究会」を組織している(立谷衣都子「日本の刑務所図書館史」東京大学大学院 修士論文)。

 1955年、愛生会館の前に新図書館が完成、園内作業として2〜3人の入所者が働いていた。モルタル平屋30坪だった。1963年にはハンセン病関係の図書を集めたコーナーが設けられた。また、『愛生』編集部が同居した時期がある。1996年に取り壊しが決まり、蔵書約2万冊は旧事務本館(現在の歴史館)に移され、紆余曲折を経て現在でも園内に保管されている。

愛生歴史館外観

神谷美恵子とハンセン病

 ようやく、神谷書庫の話に戻ってくることができた。

 神谷書庫は精神医学者・神谷美恵子の名前を冠している。神谷は19歳の時、叔父と一緒に多磨全生園に行き、患者の姿に衝撃を受け、医学を志す。1943年(昭和18)に長島愛生園に滞在し、診療などの実習を行うも、父の反対により、精神医学の道へと進む。

 しかし、ハンセン病への思いは消えず、43歳で長島愛生園の非常勤職員となる。芦屋の自宅から5時間かけて通い、診療や調査を行う。1965年には愛生園の精神科医長となる。

 神谷とともに愛生園で精神医療に携わった高橋幸彦は、療養所での神谷をこう描く。
「先生の外来診療は、昼過ぎから夜の八時頃まで続き、十時頃に食事をされることもしばしばであった。さらに常勤医師の激務が少しでも軽減されたらと自ら宿直を引き受け、ハンセン病特有の激痛に呻吟する人があれば、厳寒の夜、海を渡る凍てつく強風の中を、歩いて遠くまで往診に行かれ、男性でも過酷な臨床活動を続けられた」(「神谷美恵子先生との邂逅」、『神谷美恵子の世界』みすず書房)

 そこまで神谷を動かしたものは、なんだったのだろう?

 神谷の「癩者に」という詩には、「何故私たちでなくてあなたが?/あなたは代って下さったのだ」という一節がある。
「べつに理屈ではない。ただ、あまりにもむざんな姿に接するとき、心のどこかが切なさと申訳なさで一杯になる。おそらくこれは医師としての、また人間としての、原体験のようなものなのだろう。心の病にせよ、からだの病にせよ、すべて病んでいる人に対する、この負い目の感情は、一生つきまとってはなれないのかもしれない」(「らいと私」、『神谷美恵子著作集2 人間をみつめて』みすず書房)

 神谷は1979年、65歳で亡くなる。その後、遺族が愛生園に贈った基金をもとに建設されたのが、神谷書庫だった。

神谷書庫の設立趣旨

全国の療養所の機関誌を収集

 「ここにあるものは。神谷先生の蔵書の一部と、各地の療養所の機関誌をはじめとするハンセン病関係の資料です」と、駒林さんは云う。

 神谷蔵書は5年ほど前に遺族から寄贈されたもので、約400冊。和書は精神医学、心理学のほか、哲学や文学に関する本が多く、フランス語、ラテン語などの洋書もある。神谷の書き込みが多くあるものを選んだという(神谷蔵書とその書き込みについては、山本貴光『マルジナリアでつかまえて2』本の雑誌社、に詳しい)。別の棚には、神谷の著作や関連本、記事のファイルもあった。

 しかし、この書庫の主役はハンセン病関係の資料だ。機関誌は療養所ごとに整然と並べられている。もちろん、1931年(昭和6)創刊の『愛生』は全号揃っている。

 長島愛生園歴史館の学芸員である田村朋久さんは、「機関誌については国立ハンセン病資料館以外ではここが一番揃っていると思います」と話す。「この書庫を整理した双見美智子さんは『機関誌にはその時その時の心情が表れていて、格好をつけない文章が多い』とおっしゃっていました」と、『愛生』を編集する駒林さんも云う。

 また、愛生園に関わった人物の棚もある。初代園長の光田健輔と、その後を継いだ高島重孝、医師として勤務し『小島の春』がベストセラーとなった小川正子らについての本が多い。

 入所者が書いた詩集や句集、小説などの作品を並べた棚もある。その一角には『ハンセン病文学全集』全10巻(皓星社)もあった。

機関誌をはじめとする資料群。療養所ごとに排架されている

神谷美恵子関連資料の棚。ファイルのラベルにも敬称がある

『愛生』編集部の人びと

 一通り見終えてから、駒林さんに話を聞くために隣にある『愛生』編集部へと向かう。

 すると、ここにも多くの本や資料が並んでいるではないか。

 書籍も多いが、資料をまとめたファイルが多く目につく。新聞や雑誌に掲載された記事の切り抜き、園内の施設に関する資料、名簿、会計記録、入所者が撮影した写真アルバム……。

 愛生園内に設置された邑久高等学校新良田(にいらだ)教室についての資料や、愛生園に入所していた歌人の明石海人の生原稿類も保管されている。
「これらを整理されたのは私の先輩たちです」と、駒林さんは云う。

 駒林さんは岡山県生まれだが、ハンセン病療養所についてはまったく知らなかった。
「義理の兄が勤めていた縁から愛生園で働くことになりました。それまで印刷会社に勤務していたことから、1997年に『愛生』の編集部に配属されました」
 
 編集長は双見美智子さん、ほかに和公梵字さん、上原糸枝さん、森茂雄さんがいた。
「双見さんは小柄なおばあさんでした。愛生園に収容されたときに娘さんと別れるという体験をされていますが、『人生何があってもクヨクヨしたってしょうがない』とさっぱりした性格でした」と駒林さんは話す。

 双見さんは資料収集について、次のように書く。
「(神谷書庫には)編集部の先人、秋山老人が誰かの死亡か転宅があれば、早速フゴ(藁製のモッコ)をもって出かけて、捨てられた紙屑の中から、らいに関わる資料を執念に近い収集のおかげで、書庫の基礎になっている蔵書が茶箱に十数杯も集められていたのです」(「神谷書庫のこと」、『ハンセン病文学全集』第4巻月報、皓星社)

 双見さん自身も園が書類を整理したと聞くと、ゴミ捨て場に急行し、めぼしいものを拾い集めたという。歴史館で見ることができる双見さんのインタビュー映像では、いろんな資料を分類・整理したことから「引き出しばばあ」というあだ名がついたと笑って話していた。

 双見さんは47年間、『愛生』の編集に携わり、節目節目で同誌掲載の執筆者一覧、年表、神谷書庫収蔵書一覧などを作成した。2007年、90歳で逝去。駒林さんは、双見さんが『愛生』に書いた記事をまとめ、『土に還る』(2009)として刊行した。

 一方、和公梵字さんは資料整理を担当。双見さんが見つけてきた資料を、和公さんが分類し、ファイリングした。
「目が悪かったので、特殊なメガネを掛けて作業をされていました。きれいな文字でファイルの背表紙に書き入れていました。俳句が好きで禅宗を信仰されていました。いつも愉快な人でした」と、駒林さんは回想する。2019年、96歳で逝去。

 編集部以外でも資料集めに尽力した人がいる。編集部の棚には自治会の宇佐美治さん、詩人の島田等さん(いずれも故人)が集めた資料が並んでいる。

 また、各所からの通信をまとめた「来簡集」というファイルもある。その一冊に「皓星社」という見出しのあるものがあり、中を開くと、『ハンセン病文学全集』や『海人全集』を編集した同社の能登恵美子からの手紙・葉書が入れられていた。

 能登さんは、明石海人の作品を収集することを目的に、『愛生』のバックナンバーを読むうちに、同誌に掲載された子どもの綴り方に惹かれる。その結果、『ハンセン病文学全集』の10巻が「児童編」となる。

 全集完結の翌年、能登さんは49歳の若さで亡くなる。『増補 射こまれた矢 能登恵美子遺稿集』(皓星社)には、愛生園で資料を収集し、後世に残した双見さん、宇佐美さん、島田さんらとのやりとりが、敬意をもって記されている。

明石海人関連資料。ラベルの字は和公梵字さんのもの

書簡の類、相手毎に分類・保管してある

バトンを受け継いで

 愛生園の入所者は現在111人。高齢化が進み、年々その数は減少している。

 『愛生』は以前は年10冊発行されていたが、現在は隔月刊である。かつて盛んに行なわれていた文芸活動も停止したため、入所者からの寄稿は少ない。そのひとりが宮﨑かづゑさんだ。80歳ごろからワープロで文章を書きはじめ、『長い道』『私は一本の木』(ともにみすず書房)などを出した。

 現在、ひとりで同誌を編集する駒林さんは、今年定年の予定だったが、「宮﨑さんの作品を載せ終わるまでは続けたい」と、再任用してもらう予定だ。

 愛生園で暮らす人が誰もいなくなる日が、そこまで来ているようだ。

 最新号の『愛生』を手にして驚いたのは、愛生園をテーマにした漫画が掲載されていたことだ。

 歴史館では長島愛生園見学ツアーを実施。また、船で長島を一周する見学クルーズツアーも行なっている。2021年11・12月号に掲載された「こんにちは、愛生園」という漫画は、
そのクルーズツアーに参加した体験を描いたものだ。

 船から見ると島と本土との距離の近さ、入所者の穏やかな風貌、園内の施設から受けた印象などが、柔らかいタッチで描かれている。
「ハンセン病については以前から関心がありました。自分が子どもを産んでからは、子どもと別れて療養所に入った母親に共感するようになりました」と、作者のあさののいさんは話す。2012年に千葉県から岡山県に移住した。

 その後、愛生園を訪れ、園内の〈喫茶さざなみハウス〉へ。2019年に空き施設にオープンした入所者も一般客も利用できるカフェだ。あさのさんは、店主の鑓屋(やりや)翔子さんに「入所者の方のお話を聴きたい」と相談した。ちょうど開催されたクルーズツアーに参加し、入所者に会うことができた。
「『愛生』に連載している鑓屋さんの紹介で、駒林さんにお会いして、漫画を掲載してもらうことになったんです」

 あさのさんは、鑓屋さんが開催した「愛生ヲ読ム会」に参加する。テーブルに並んだ『愛生』を参加者が思い思いに読む会だ。
「ハンセン病というと差別とか人権問題という側面しか知りませんでした。でも、誌面には友達との会話とかペットのことなど日常的な話が多く、ここには自分と同じ人たちがいるんだと感じました。文章を読むことで、いなくなった人が目の前にいるような気持ちになります」

 あさのさんは『愛生』や『点字愛生』に掲載された文章を漫画化し、サイトに載せている。(https://note.com/asanonoi
「読者に身近なこととして感じてもらうにはどうしたらいいか、悩みながら描いています」と、あさのさんは云う。

あさののいさんの漫画は『愛生』に連載中。第3回(2022年7・8月号)は神谷書庫をとりあげた

 愛生園の歴史を伝える資料を発見し、神谷書庫に収めた双見さん。その思いを継いで、『愛生』を発行してきた駒林さん。同誌に書かれた入所者の思いを読者に伝えようとするあさのさん。資料をめぐって、バトンが受け渡されている。
 多くの人の手によって、神谷書庫は守られてきた。今後もそうあってほしいと願う。

 
 
 
 
 
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

ツイッター
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国立療養所長島愛生園
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神谷書庫
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帯に込めた推薦文―想いをつなぐ古本屋として 【古本屋でつなぐ東北(みちのく)2】

帯に込めた推薦文―想いをつなぐ古本屋として 【古本屋でつなぐ東北(みちのく)2】

(岩手県・盛高書店)工藤 尚

 古本販売で独立をして今年の四月で一〇期目となりました。震災後、これからの日本には、地方でも未来に夢と希望をもって生きていける会社を作る事が必要だと考え、全国に販路を持てるビジネスを模索し、ネットで古本を売る仕事を選び独立しました。

 ビジネス書などは好きで買っていましたが、古本に対する想い入れは薄く、古本販売はあくまでもビジネスの手法でした。本について素人の私にとって、仕事を通して出会った人達との関わりは学びの連続で、「古本屋」という仕事の意義を知るきっかけを沢山頂きました。

 一番大きな出来事は古書籍商組合へ加入した事で、沢山の古本屋の先輩や同世代の仲間と出会う事が出来た事です。その出会いが古本屋として成長する糧となりました。特に市会に参加出来る事は刺激的で、そこで多くの本の売買に関わる事が出来、様々な本の価値を知る事が出来ました。

 二〇二一年一月に店舗をオープンして以降は、お店にご来店頂いたお客様からの気付きもありました。『岩手のスポーツ人』という本をご購入されたお客様から、「この本を長い間探し続けていたが見つけられなかった。やっと見つけられて嬉しい。大好きだったおじいさんの事が書かれている本なんです。本当にありがとうございます。」と涙ながらに話して頂きました。長年ネット販売しか行っていなかったので、お客様から直接感謝の言葉を頂ける事がとても嬉しく、古本屋としてのやりがいを感じました。また、ネット販売の先にも同じようにお客様がいて、ご購入者様の想いに応えているという事にも気付きました。

 店舗は、お陰様でほぼ毎日来られる常連さんも増え、お客様からスタッフへ差し入れを頂けるような交流が生まれるお店になってきました。一〇〇円本だけではなく、高額な郷土史などもご購入頂いており、幅広い客層の地元のお客様から支持されるお店に近づいていると実感します。

 まだまだ勉強しなければならない事は沢山ありますが、これからも古本屋の先輩や仲間、お客様と向き合いながら地元から愛される古本屋を目指していきたいと思います。

 そんな中、店舗の新たな取り組みとして、お売り頂くお客様に「帯に込めた推薦文」を書いて頂き、それを付加価値として買取させて頂くサービスをスタートさせる事にしました。推薦文を書いた帯が本を選んでいる方への新たな提案や気付きとなり、売り買い双方の付加価値となると考えます。お客様自身が商品に付加価値を付ける新しい取り組みとなります。

 同じ本を読んでも、心に残る文章は人それぞれです。新たな視点を知ることによって「また読み返してみようかな?」というきっかけにもつながるかも知れませんし、この人の帯の他の本を読んでみたい、となるかも知れません。帯が本と人とのつながりを生み、更に本を介して人と人がつながる古本屋になれたらと思います。

 誰かに読んで欲しいという想いと、欲しい本を探し求めている人をつなぐ事が古本屋の大切な仕事の一つだと思います。手放す人にとっては役目を終えた本かも知れませんが、誰かにとっては探し求めているたった一つの本かも知れません。最後に、そんな想いに気付かせて頂いたお客様からのメッセージをご紹介します。「この本をずっと探していました。子供の頃に月一で幼稚園から配られた本の一冊で、大人になってから度々思い出しては探していましたが、図書館にも無く諦めていたところ、こちらに出品されていて感動しました。先程届きましてドキドキしながら開封しました。早速読み、再びこの本に巡り合えた喜びをかみ締めています。幼い頃には読めなかったあとがきも読むことが出来ました。本当に本当にありがとうございました。一生の宝物にします。」

 
 

 
 
(「日本古書通信」2022年9月号より転載)

 
 
 
 


『増補新版 東北の古本屋』 折付桂子著
文学通信刊
ISBN978-4-909658-88-3
四六判・並製・312頁(フルカラー)
定価:本体1,800円(税別)好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-88-3.html

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2022年11月25日号 第359号

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☆INDEX☆
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1.古書店が翻訳した「台湾書店百年の物語」。

                   フォルモサ書院 永井一広

2.前近代の日本を理解するために、漢籍を知る

          中央大学兼任講師・青山学院大学非常勤講師・
                 埼玉大学非常勤講師 髙田宗平

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━━━━━━━━━━【自著を語る(301)】━━━━━━━━━━

古書店が翻訳した「台湾書店百年の物語」。

                   フォルモサ書院 永井一広

 古書店が、なぜか翻訳をすることになった。
 フォルモサ書院という古書店を大阪で開いてもう4年が過ぎた。店名
を見て判る人にはすぐに判る。この書店が何を専門にしているのか。
フォルモサとは、ポルトガル語で美しいという意味。何も雑居ビルの二
階で営業している当店が美しい訳ではない。大航海時代にポルトガル人
が台湾の島影の美しさから思わず叫んだ言葉が「フォルモサ」だったと
言われている。以来、西洋の地図では台湾のことをフォルモサと記した。
そして当店の専門はまさしく台湾の古本だ。当店が開業してまもなく、
この「台湾書店百年の物語」の翻訳のお話しをいただいた。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10434

フォルモサ書院
https://formosa8.webnode.jp/

『台湾書店 百年の物語〜書店から見える台湾』
台湾独立書店文化協会 著/郭雅暉・永井一広 翻訳
発行元:エイチアンドエスカンパニー
ISBN:978-4-9907596-9-8
定価:2200円+税
好評発売中!
https://www.habookstore.com/

━━━━━━━━━【自著を語る(302)】━━━━━━━━━━━

前近代の日本を理解するために、漢籍を知る

          中央大学兼任講師・青山学院大学非常勤講師・
                 埼玉大学非常勤講師 髙田宗平

【漢籍とは何か】
 古来、日本人にとって、漢籍は中国文化を知り、これを学ぶ上で重要
な道具であり手段であったことは周知の事実である。漢籍を読むことに
よって知識を取得できたのであり、あらゆる文化は漢籍から読み解く知
識がベースとなって生み出された、といっても過言ではない。
 漢籍はいかにして日本にもたらされたのか。古代から近世に至るまで、
日本が漢籍を受容した歴史を概観していきたい。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10426

【著者】髙田宗平(たかだそうへい)
1977年生。
総合研究大学院大学文化科学研究科日本歴史研究専攻博士後期課程修了。
博士(文学)。専門分野は日本古代中世漢籍受容史・漢学史、漢籍書誌学。
〔主な著作〕
『日本漢籍受容史―日本文化の基層―』(編、八木書店、2022年)
『日本古代『論語義疏』受容史の研究』(単著、塙書房、2015年)

日本漢籍受容史―日本文化の基層―
髙田宗平編
本体9,000円+税
A5判・上製・カバー装・698頁+口絵16頁
ISBN 978-4-8406-2260-8 C3021
好評発売中!
https://catalogue.books-yagi.co.jp/books/view/2364

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

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『調べる技術――国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』
小林昌樹 著
皓星社 発行
定価 2,000円(税別)
ISBN:978-4-7744-0776-0
12月9日 発売
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407760/
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【特別コラボ企画 日本の古本屋×大学出版部協会】
          「大学出版へのいざない」シリーズ 第1回

季刊『大学出版』132号 [特集]学術書を読み継ぐ
執筆者:山田秀樹(東京大学出版会第一編集部長、季刊『大学出版』編集担当)

大学出版部協会
https://www.ajup-net.com/
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━━━━━━━【東京古書会館 展示のお知らせ】━━━━━━━

『地下出版のメディア史』展——珍書屋から辿る軟派出版の世界

【日時】11月30日(水)〜12月14日(水)
【休館日】日曜・祝日 
【開館時間】10:00~18;00 ※土曜17:00 まで 
【会場】東京古書会館 2階情報コーナー
【料金】無料

【主催】慶應義塾大学出版会
【共催】東京都古書籍商業協同組合

詳細はホームページをご覧ください。
https://www.kosho.ne.jp/?p=531
https://note.com/keioup/n/n69402fbbfd22

━━━━━━━━━━━━【お知らせ】━━━━━━━━━━━

◆自主映画『ボラン』上映のお知らせ◆

東京ドキュメンタリー映画祭2022
【長編部門9】
2022年12月15日(木)10時~
2022年12月18日(日)16時15分〜
新宿ケイズシネマにて上映
https://tdff-neoneo.com/lineup/lineup-2955/

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

11月~12月の即売展情報

※新型コロナウイルスの影響により、今後、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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日本の古本屋メールマガジン その359・11月25日

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古書店が翻訳した「台湾書店百年の物語」。

古書店が翻訳した「台湾書店百年の物語」。

フォルモサ書院 永井一広

 古書店が、なぜか翻訳をすることになった。 
 フォルモサ書院という古書店を大阪で開いてもう4年が過ぎた。店名を見て判る人にはすぐに判る。この書店が何を専門にしているのか。フォルモサとは、ポルトガル語で美しいという意味。何も雑居ビルの二階で営業している当店が美しい訳ではない。大航海時代にポルトガル人が台湾の島影の美しさから思わず叫んだ言葉が「フォルモサ」だったと言われている。以来、西洋の地図では台湾のことをフォルモサと記した。そして当店の専門はまさしく台湾の古本だ。当店が開業してまもなく、この「台湾書店百年の物語」の翻訳のお話しをいただいた。会社を辞めていきなり入った古本の世界。当時は右も左も分からないままに店を運営していた。古書組合での入札は修行経験のない私にとって、まさしく徒手空拳で、老舗の店主たちと入札という戦いに挑んでいた。もし一冊も落札できなければ、新たな入荷が全くできないのだ。やみくもに入札し、「絶対に落札してやる」と気合を入れすぎて高く入札して大赤字を出したり、逆にその反動でせこい入札をし、全く落札できず、手ぶらで空しく店にトボトボと帰ることもしばしば。正直、翻訳どころではない。ましてや私の中国語能力は甚だ怪しい。もう習って30年近くが経っていたからだ。だが、幸い私の妻が台湾人で本が好きときた。日本語も堪能だ。二人での共同翻訳ならなんとかできるのではないか。古本業の他に、何か別のチャンネルを持っておきたいと思っていた矢先だったこともあり、無謀を承知で翻訳をさせていただくことにしたのだ。そうして約三年の年月を要して翻訳を終えた。その間、なんとか店の方はつぶれずに済んでいる。

 日本に限らないことだろうけれど、インターネットが普及し、人々に浸透するにつれ、出版・書店業界というのは年々活気が薄れていっている。それはある意味、時代の流れで仕方のないことだろうと誰しもが薄々は気づいている。新刊書店もそうだろうけれど、実は古本屋も気づいている。それでも台湾の書店にはまだ活気があるような気がする。特に独立書店と言われている個人で営業する書店は、どこか日本の書店とはひと味違う活気があるのだ。その違いをひと言で言えば、社会との繋がりを大切にし、書店なりの社会貢献を行おうとしている書店が多いと言えるかも知れない。言い換えれば社会運動を、書店を通じて行っているともいえる。本書でも紹介している台湾e店や南天書局は、中華民国としての台湾ではなく、「台湾」そのものがテーマの書店だ。特に南天書局は、日本時代の古い文献を後世に残すため、採算度外視で復刻版を作成し出版、販売することを使命としている。台湾では暑さと湿気で日本時代の古書の保存状態が甚だよくないからだ。また女書店はフェミニズムをテーマにした書店で、女性をテーマにした書籍の販売のほか、講演会や座談会を開催している。日本の感覚では、このような書店が経営的に利益を出して存続できるのだろうかと心配になるが、実際、女書店は何度か閉業の危機を迎え、今も決して経営は楽ではないだろう。まさしく人生を賭して書店を経営しているのだ。台湾の独立書店はこのように、何か社会的な使命を自ら負った書店が多いのも特徴だ。

 また台湾映画「クー嶺街リンジエ少年殺人事件」で有名な台北市にある「牯嶺街」は戦後、古本屋が多く集まった古書街として発展したが、今は周辺に何店舗が残っているのみで、往時の面影はすっかり影を潜めている。
これら台湾の独立書店の原点や、「牯嶺街」の古書街の形成などは、いずれも日本時代の台湾と大きな関わりがあることが本書には書かれているが、当の日本人はあまり知らない。
私も台湾に行く前は何も知らなかった。今でもよく覚えている。初めて台湾に行った時、台北の町中のガジュマルの樹の下に、ひっそりと佇む木造の古い日本家屋があったことを。日本時代に生まれた妻の祖母と初めて会った時、たどたどしい日本語で「こんにちは」と嬉しそうに自己紹介をしてくれたことを。台湾と日本は切っても切れない関係にあることを改めて実感したものだった。

 日本の学校では教えない、かつての日本がひょっこり顔を出し、昔の台湾から現在の台湾を、「書店」という物語を通じて様々なことを教えてくれる本書が、これからの書店・出版業界の在り方について、何か小さなヒントにでもなれば翻訳者としては嬉しい限りだ。もちろん、古書業界の未来についても。

 
 
 
 
フォルモサ書院
https://formosa8.webnode.jp/
 
 
 
 


『台湾書店 百年の物語〜書店から見える台湾』
台湾独立書店文化協会 著/郭雅暉・永井一広 翻訳
発行元:エイチアンドエスカンパニー
ISBN:978-4-9907596-9-8
定価:2200円+税
好評発売中!
https://www.habookstore.com/

Copyright (c) 2022 東京都古書籍商業協同組合

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前近代の日本を理解するために、漢籍を知る

前近代の日本を理解するために、漢籍を知る

髙田宗平(中央大学兼任講師・青山学院大学非常勤講師・埼玉大学非常勤講師)

漢籍とは何か

 古来、日本人にとって、漢籍は中国文化を知り、これを学ぶ上で重要な道具であり手段であったことは周知の事実である。漢籍を読むことによって知識を取得できたのであり、あらゆる文化は漢籍から読み解く知識がベースとなって生み出された、といっても過言ではない。
 漢籍はいかにして日本にもたらされたのか。古代から近世に至るまで、日本が漢籍を受容した歴史を概観していきたい。

 本書『日本漢籍受容史―日本文化の基層―』は、日本漢籍受容史を日本文化の基層の一つとして捉え、その具体相を明らかにしようとするものである。ここで言う日本漢籍受容史とは、日本「漢籍受容史」、即ち日本における漢籍の受容の歴史であり、その時代範囲は古代から近世(一部論考、近現代に及ぶ)までとする。
 「漢籍」とは、どのような概念か、一言しておきたい。
 漢籍とは、清朝以前に中国人が漢文(漢語)で撰した書物を言う。この原則に合致していれば、日本・朝鮮半島・ベトナムで書写・刊行されたものも漢籍である。ただし、中国人以外が漢文で撰した書物は漢籍とは言わない。清朝以前に中国人が漢文で撰した書物に江戸時代以前の日本人が注釈や評を附したもの、清朝以前に中国人が漢文で撰した書物を江戸時代以前の日本人が翻訳したものは、準漢籍として扱うこともある。なお、和刻本漢籍において訓点が附されたものは、通常、漢籍として扱い、準漢籍には含めない。
 古来日本人にとって、漢籍は中国文化を知り、これを学ぶ上で重要な道具であり手段であった。日本人が古代から近世において、漢籍をどのように受け容れ、伝え、日本独自の文化としていったかを明らかにすることは、日本文化の基層の一斑を明らかにすることであり、中国文化との相違も見えてくるだろう。
 ただ、漢籍受容は、時代により多様な様相を呈しており、本課題を解明するには、日本古代から近世における漢籍受容の歴史に多角的にアプローチする必要がある。そのため、本書の出版を企画する際に、次の三点を念頭に置いた。(一)多分野の研究者に執筆を依頼し、学際的・横断的なものとすること、(二)日本人以外に中国と台湾の研究者に執筆を依頼し、国際的な視点を入れること、(三)第一人者から新進気鋭まで、最前線で活躍する研究者に執筆を依頼し、執筆者に幅広い年齢層を排すること、である。こうした点を踏まえ、第一部古代、第二部中世、第三部近世のように通史的に排置し、そして文献学的テーマを第四部文献研究に排置した。
 

他分野との協業

 日本の漢籍受容史は各時代の受容層、漢籍の形態など密接に聯関しており、これらを看過していては各時代相や文化を精確に把握できないであろう。ただ、このような課題は、単一の研究分野だけでは解明することは難しく、多分野との協業が必要不可欠であると思量される。それは本書の執筆者の研究分野の多彩さからも看取される。
 多分野との協業と言う視点から見れば、本書の執筆者の研究分野は、中国思想・哲学、中国科学思想史、中国天文学史、中国文学、中国書誌学、中国古典文献学、日本古代史、日本中世史、日本中世文学、日本近世文学、日本漢学、日本書誌学、日本思想史、日本古代・中世文化史、国語学、医史学などであり、幅広い領域をカバーしている。本書は、今後、日本の古代から近世の漢籍受容史のテーマで協業を行う上で一つのモデルケースとなるだろう。

 本書出版により、日本前近代の漢籍受容史研究の新たな地平を切り拓くことに繫がれば幸いである。

 
 
 
 
【著者】髙田宗平(たかだそうへい)
1977年生。総合研究大学院大学文化科学研究科日本歴史研究専攻博士後期課程修了。博士(文学)。専門分野は日本古代中世漢籍受容史・漢学史、漢籍書誌学。
〔主な著作〕
『日本漢籍受容史―日本文化の基層―』(編、八木書店、2022年)
『日本古代『論語義疏』受容史の研究』(単著、塙書房、2015年)

 
 
 
 


日本漢籍受容史―日本文化の基層―
髙田宗平編
本体9,000円+税
A5判・上製・カバー装・698頁+口絵16頁
ISBN 978-4-8406-2260-8 C3021
好評発売中!
https://catalogue.books-yagi.co.jp/books/view/2364

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2022年11月10日号 第358号

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 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第118号
      。.☆.:* 通巻358・11月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━━【東京古書会館 展示のお知らせ】━━━━━━━

『地下出版のメディア史』展——珍書屋から辿る軟派出版の世界

【日時】11月30日(水)〜12月14日(水)
【休館日】日曜・祝日 
【開館時間】10:00~18;00 ※土曜17:00 まで 
【会場】東京古書会館 2階情報コーナー
【料金】無料

【主催】慶應義塾大学出版会
【共催】東京都古書籍商業協同組合

詳細はホームページをご覧ください。
https://www.kosho.ne.jp/?p=531
https://note.com/keioup/n/n69402fbbfd22

━━━━━━━━【トークイベントのお知らせ】━━━━━━━━

『島村輝先生・大尾侑子先生 トークイベント
「地下出版のなかの珍書・奇書を語る!――自由の探求/抑圧への叛逆 」』

戦前の日本の地下出版文化において、梅原北明を中心とするさまざまな「裏」
知識人たちが珍書・奇書を世に送り出し、全国の読者に届けようとしました。
そのエネルギーの源は何だったのでしょうか。そしてその珍書・奇書はどの
ようなもので、現代のわたしたちにとってどんな意味をもつのでしょうか。
『地下出版のメディア史』著者の大尾侑子さんと、プロレタリア文学研究を中
心に、エロ・グロ関連雑誌『変態・資料』『グロテスク』『談奇党/猟奇資料』
等の復刻を監修した島村輝さんのお二人に濃厚な地下出版トークを繰り広げて
いただきます!乞うご期待!

12月10日(土) 13時30分開場 / 14時開演
会場:東京古書会館 7階会議室 入場料:無料
定員:50名(応募申込み多数の場合は抽選)

応募申込みは下記ページにて(11月14日 午前10時まで)

https://www.kosho.ne.jp/talkevent2022/entry1210.html

※マスク着用、手洗い、手指消毒、検温と感染防止対策に
 ご理解・ご協力をお願い申し上げます。

━━━━━━【古本屋でつなぐ東北(みちのく)1】━━━━━━

石巻にあった古本屋「三十五反」を追って

               (宮城県・ゆずりは書房)猪股 剛

 私が生まれ育った所は、宮城県石巻市の牡鹿半島付け根にある渡波
(わたのは)という街である。石巻の中心街から橋を渡って北上川を
越えると、そこから渡波を経由して女川町に至るまでの一帯は水産業
の街になる。私は水産業の街が持つ独特の気風に子供の頃から馴染め
ず、早々に東京へ飛び出してしまった。東北で津波を伴う大きな地震
があった時も、地元に戻ろうという気概など起こらず、そのまま神奈
川県で古本屋を続けた。生まれ育った家の問題があって石巻に戻り、
宮城県古書籍商組合に移転した時には、地元を離れてから既に三十年
近くが経っていた。

(「日本古書通信」2022年8月号より転載)

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10392

━━━━━━━━━━━━【学芸員登場】━━━━━━━━━━━━

五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」

            公益財団法人五島美術館 大東急記念文庫
                       学芸員 長田和也

 西行(一一一八~一一九〇)は『新古今和歌集』に全歌人のうち最
多の九十四首入集し、『百人一首』にも「嘆けとて月やは物を思はす
るかこちがほなるわが涙かな」という歌が採られている、日本を代表
する歌人の一人。西行の特色は、歌のみならず、種々の伝説や、それ
を表現した美術品の数々も含めて愛好されている点にある。このたび
五島美術館では特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」を開催し、
西行にゆかりのある作品を約百点展示する(会期中、一部展示替えあ
り)。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10405

五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」
会期:令和四年十月二十二日(土)~十二月四日(日)
その他、詳細はホームページをご覧ください。
https://www.gotoh-museum.or.jp/

━━━━━━━━━━━【プレゼント企画】━━━━━━━━━━━

今月号でご紹介した「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」の
ご招待チケットを10名様にプレゼントいたします。

応募申込みは下記ページにて(11月14日 午前10時まで)

https://www.kosho.ne.jp/entry2022/1110.html

━━━━━━━━━━━━━【お知らせ】━━━━━━━━━━━━

◆自主映画『ボラン』上映のお知らせ◆

第44回ぴあフィルムフェスティバル in 京都2022
【Aプログラム】
2022年11月19日(土) 12時~
京都文化博物館にて上映
(宇治田峻監督『the Memory Lane』と併映)
https://pff.jp/44th/award/competition-kyoto.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「コショなひと」始めました

東京古書組合広報部では「コショなひと」というタイトルで動画
配信をスタート。
古書はもちろん面白いものがいっぱいですが、それを探し出して
売っている古書店主の面々も面白い!
こんなご時世だからお店で直接話が出来ない。だから動画で古書
店主たちの声を届けられればとの思いで始めました。
お店を閉めてやりきったという店主、売り上げに一喜一憂しない
店主、古本屋が使っている道具等々、普段店主同士でも話さない
ことも・・・
古書店の最強のコンテンツは古書店主だった!
是非、肩の力を入れ、覚悟の上ご覧ください(笑)

※今月の新コンテンツはありません。

YouTube 東京古書組合
https://www.youtube.com/channel/UCDxjayto922YYOe5VdOKu9w

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都合により、今回掲載予定の『シリーズ書庫拝見8』はお休みします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━【11月10日~12月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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新橋古本市

期間:2022/11/07~2022/11/12
場所:新橋駅前SL広場

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2022/11/10~2022/11/13
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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趣味の古書展

期間:2022/11/11~2022/11/12
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

https://www.kosho.tokyo/

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第186回神戸古書即売会(兵庫県)

期間:2022/11/11~2022/11/13
場所:兵庫県古書会館 神戸市中央区北長狭通6-4-5

https://hyogo-kosho.com/kamei/

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TOKYO BOOK PARK × ハンズ

期間:2022/11/11~2022/11/24
場所:ハンズ新宿店2階イベントスペース
   渋谷区千駄ヶ谷5-24-2タイムズスクエアビル

https://twitter.com/TOKYOBOOKPARK

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西武本川越PePeのペペ古本まつり(埼玉県)

期間:2022/11/14~2022/11/22
場所:西武鉄道新宿線 本川越駅前ペペ広場

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第27回 紙屋町シャレオ古本まつり(広島県)

期間:2022/11/15~2022/11/24
場所:紙屋町シャレオ中央広場 広島県広島市中区基町地下街100号

https://twitter.com/koshohiroshima

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第5回南大沢古本まつり

期間:2022/11/18~2022/11/24
場所:京王相模原線南大沢駅前~ペデストリアンデッキ~三井アウトレット前特 設テント

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歳末古本掘り出し市(岡山県)

期間:2022/11/23~2022/11/28
場所:岡山シンフォニービル1F  自由空間ガレリア

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2022/11/24~2022/11/27
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)

https://twitter.com/urawajuku

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和洋会古書展

期間:2022/11/25~2022/11/26
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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五反田遊古会

期間:2022/11/25~2022/11/26
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
   JR山手線、東急池上線、都営浅草線五反田駅より徒歩5分

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第63回 名鯱会(愛知県)

期間:2022/11/25~2022/11/27
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12

https://hon-ya.net/

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中央線古書展

期間:2022/11/26~2022/11/27
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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Vintage Book Lab(ヴィンテージ・ブック・ラボ) ※会場販売ありません

期間:2022/12/01~2022/12/20
場所:※会場販売ありません

https://www.vintagebooklab.com/

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書窓展(マド展)

期間:2022/12/02~2022/12/03
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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西部古書展書心会

期間:2022/12/02~2022/12/04
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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ゼスト御池 冬の古書市(京都府)

期間:2022/12/03~2022/12/04
場所:ゼスト御池地下街 河原町広場

https://twitter.com/terra0505/status/1588721179954937856/photo/1

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第104回彩の国所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2022/12/07~2022/12/13
場所:くすのきホール (西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場)

https://tokorozawahuruhon.com/

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歳末赤札古本市

期間:2022/12/08~2022/12/11
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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新興古書大即売展

期間:2022/12/09~2022/12/10
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2022/12/15~2022/12/18
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)

https://twitter.com/urawajuku

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 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
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【発行者】
 広報部・編集長:藤原栄志郎

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五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」

五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」

公益財団法人五島美術館 大東急記念文庫 学芸員  長田和也

 西行(一一一八~一一九〇)は『新古今和歌集』に全歌人のうち最多の九十四首入集し、『百人一首』にも「嘆けとて月やは物を思はするかこちがほなるわが涙かな」という歌が採られている、日本を代表する歌人の一人。西行の特色は、歌のみならず、種々の伝説や、それを表現した美術品の数々も含めて愛好されている点にある。このたび五島美術館では特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」を開催し、西行にゆかりのある作品を約百点展示する(会期中、一部展示替えあり)。

 展示は四部構成。第一部「西行とその時代」は、「一品経和歌懐紙」(国宝 京都国立博物館蔵)をはじめとする、数少ない西行自筆とされる資料や、肖像画、歌集、系図等によって西行に迫りつつ、西行の生きた時代を描いた延慶本『平家物語』(重要文化財 大東急記念文庫蔵)等の作品や後鳥羽院、藤原俊成、定家という同時代の重要人物に関する品々も展示する。

 第二部「西行と古筆」では特別展の柱の一つである古筆を展示する。伝来や鑑定に基づく筆者を伝称筆者といい、「伝○○筆」と表記する。伝西行筆の古筆切(古写本の一部を切裁したもの)は、江戸時代には「白河切」「落葉切」「出雲切」等と名付けられ、愛好されてきた。展示室では現在ばらばらに所蔵されている同種の古筆切が並んで掛けられているのを楽しんでも良し、同じ伝西行筆でも多彩な筆跡のあることを楽しんでも良し。また今回は俊成、定家も系譜に連なる御子左家の流れを汲む冷泉家蔵の古筆切、古写本も展示する。その中にも、冷泉家の伝来をもって伝西行筆とされているものがある。後世における伝西行筆の古筆愛好については、図録の解説や各論も参照されたい。

 第三部「西行物語絵巻の世界」ではもう一つの柱、「西行物語絵巻」を展示する。西行没後に編まれた『西行物語』は武士の家に生まれた西行が出家し、その後各地を訪れながら歌を詠み、「願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月の頃」と詠じた通りに入寂するまでを描いた物語。絵巻の題材となった。今回は精緻を極める鎌倉時代の絵巻から色彩豊かな俵屋宗達らによる江戸時代の絵巻まで、「西行物語絵巻」の諸本を集めた。こちらも、かつては一つだったが現在では各所に分蔵されている絵巻が展示室内で再び揃う感動的な光景を目にすることが出来る。なお図録には、現存する「西行物語絵巻」諸本の全容をうかがうべく、各絵巻の場面一覧表を掲載した。

 第四部「語り継がれる西行」では、主に江戸時代に作られた書物、工藝、絵画の各分野における西行を題材とした作品を展示する。こうした作品が作られた背景として、出版文化の隆盛による西行伝説の浸透が挙げられる。室町時代までに形成された西行像が江戸時代の人々によって享受され、伝統を受け継ぎつつも新たな西行の姿が生み出された。そして西行は明治時代には橋本雅邦「西行法師図」(東京大学駒場博物館蔵)が制作される等、歴史画の題材になった。西行が現代に至るまで脈々と語り継がれ、日本文化の通奏低音となっていることを展示室で実感していただけるものと思う。

 成程、伝称筆者はあくまでも古筆家の鑑定や状況証拠に基づくものであって、結局のところ西行自筆ではないという見方や、絵巻に描かれた物語は所詮作り話であり、西行の「実像」を伝えるものではないという見方もあろう。しかし、書物によって伝えられた種々の伝説が伝記的事実の素朴な実証以上に西行の歌を鑑賞する助けとなることもあるだろう。絵巻に描かれている西行の姿に惹かれて、その歌や伝西行筆の筆跡を愛好し、心の支えとしてきた数多の日本人がいたという事実が、今回展示する作品たちによって裏付けられている。

 現代は、過去の積み重ねの中にある。現在「正しい」とされている価値観は絶対的なものなのか、果たして我々は「進歩」の道を歩んできたのか。展示室の名品の数々は、過去の人々が大切にしてきたものに敬意を持って向き合うことの必要性をも教えてくれるだろう。まずは五島美術館ホームーページで主な展示予定作品をご確認いただきたい。

 
 
 
 


五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」
会期:令和四年十月二十二日(土)~十二月四日(日)
その他、詳細はホームページをご覧ください。
https://www.gotoh-museum.or.jp/

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