遅筆堂文庫 前編  小さな町に「本の海」が生まれるまで【書庫拝見10】

遅筆堂文庫 前編  小さな町に「本の海」が生まれるまで【書庫拝見10】

南陀楼綾繁

 山形県の小さな町に井上ひさしが蔵書を寄贈した図書館ができたというニュースを知ったのは、いつ頃だっただろうか。

 私は小学生で『ブンとフン』を読んでから、この作家に熱中した時期がある。小説も好きだったが、小説家の日常生活が垣間見られるエッセイを愛読した。本に対する偏愛ぶりにも共感した。

 75年の生涯で約280冊(共著、編著を含む)を著したこの作家のごく一部にしか接していないが、私も井上ファンのひとりと云えると思う。余談だが、雑誌編集者だったときに井上さんに原稿依頼をしたことがある。電話で一度は引き受けてもらったが、その後「やっぱり忙しくて……」と断られた。

 2014年、その図書館〈遅筆堂文庫〉が入っている川西町フレンドリープラザで、「Book! Book! Okitama」(BBO)というブックイベントが開催された。仙台にいたときにそのことを知り、BBOの一箱古本市に出店するという友人に便乗して、川西町を訪れた。

 フレンドリープラザは1994年に開館。遅筆堂文庫と町立図書館、文化ホールがある複合施設だ。一箱古本市は回廊状になったエントランスで行なわれ、とても雰囲気がよかった。運営の主体となっているのは『ほんきこ。』というグループで、読書会を開きミニコミを発行している。のちに触れるように、川西町にはミニコミの文化があり、遅筆堂文庫の誕生にも関連している。翌年の第2回からは毎年、一箱古本市の店主として参加するとともに、私が関わるトークイベントやワークショップを開催させてもらうようになったのだ。BBOは2018年に終わるが、翌年からはフレンドリープラザが運営を引き継ぎ、一箱古本市とトークイベントを開催している。

 川西町を訪れるたびに、一日1回は遅筆堂文庫に寄って時間を過ごす。おそらく、東京以外で最も多く訪れた図書館と云えるだろう。

川西フレンドリープラザ 外観

井上ひさしの頭の中を再現する

 図書館スペースは1階が井上蔵書を基にした遅筆堂文庫、2階が町立図書館になっている(児童書は1階)。蔵書数は、遅筆堂文庫の整理済みのものが約12万8000点。のちに見るように別の場所に10万点以上を収める。町立図書館は約5万9000点だ。手に取ってみられる分だけで12万冊ある。人口1万5千人ほどの町に、これだけ立派な図書館があることに驚く。

 入ってすぐのところにあるのは、井上ひさし展示室。正面に目に入ってくるのは、柱の周りに高く設置された書架だ。「本の樹」と名付けられたこの棚には、読者からのメッセージとともに寄贈された井上ひさしの著作を並べている。その周りに年譜や作品紹介、テーマごとの展示などがある。取材時には、中公文庫から再刊されてベストセラーとなった『十二人の手紙』にあわせて、「井上ひさしと手紙」という展示が行なわれていた。

 1階のカウンター横には「研究室」と呼ばれる小部屋があり、ここには付箋や書き込みのある本が多い。また、井上自身の著作も壁面にずらりと並んでいる。さらに貴重な本は閉架書庫に収められている。

 私はこの「研究室」がお気に入りで、いくらでも居られる。ある年には「図書館に泊まろう」というイベントがあり、この部屋の本棚の間に寝転がって、井上の作品を読みながら一夜を過ごした。

研究室への入り口

研究企画選定図書室内部

 遅筆堂文庫の蔵書は、一般的な分類であるNDC(日本十進分類法)を用いずに、A~Zの分類で配列されている。井上からの「自分の頭の中で整理しているように分類してほしい」という希望によるもので、Aは言語、Bは江戸、Cは地図、Dは演劇……となっている。

 大分類の下には細目がある。Lの社会で云えば、「アメリカ」「憲法・法律」「天皇」「風俗」「戦争」「都市論」といった具合だ。ひとつの細目には、研究書・ノンフィクション・小説などが一緒に並ぶ。たとえば「犯罪」の棚には、加賀乙彦『犯罪ノート』、カポーティ『冷血』、『近代犯罪科学全集』、重松一義編『日本刑罰史年表』が同居している。

 この雑多な、カオス感がたまらない。どこから切っても面白いので、棚から本を抜き出す手が止まらない。たとえば、大作『吉里吉里人』の資料となった研究書を手に取って、そこに書き込みを見つけたりするとなんとなく嬉しくなる。

 また、遅筆堂文庫では本の背表紙にラベルを貼らず、以前の図書館のように函やカバーもそのままにされている。それが、井上ひさしの蔵書に向き合っているという臨場感を高める。

 10年近くこの町に通って感じたのは、町の人が抱く井上ひさしへの敬意だ。彼らは井上のことを「作家」と呼ぶ。一般名詞ではなく、彼らにとっては井上こそが作家なのだ。

 昨年9月23日、今年もイベントに合わせて川西町を訪れた。今回はこれまで見たことのない部分まで含め、遅筆堂文庫をじっくり見ることができた。

『吉里吉里人』参考資料と思われる本(表紙)

『吉里吉里人』参考資料と思われる本(書き込み)

出発点になった本

 川西町は山形県南部の置賜地方に属し、米沢市に接している。置賜盆地の美しさを、1878年(明治11)にこの地を旅したイギリス人旅行家イザベラ・バードが「アジアのアルカディア(理想郷)」と評している。なお、フレンドリープラザの敷地の庭には、イザベラ・バード記念碑がある。碑文を書いたのは、バードの『日本奥地紀行』を初訳した英語学者の高梨健吉。高梨はこの川西町の出身で、川西町立図書館には高梨健吉文庫もある。

 井上ひさし(本名・廈)は、東置賜郡小松町中小松(現・川西町)に生まれた。父・修吉は作家志望だったが、ひさしが5歳のときに病死した。
「物心ついてハッとあたりを見回すと、家には父親というものがいなかった。いぶかしく思って母親に『なぜ』と問うと、母親は本のぎっしり詰まった、いくつもの書棚を指さして、『この本の山を父さんと思いなさい』と答えた。どうもこの瞬間に、本とわたしとの関係が決まったらしい」(「本とわたし」、『井上ひさしコレクション ことばの巻』岩波書店)

 井上少年は父の蔵書を読みまくり、主要な本には目を通してしまう。新しい本を読みたかったが、町の図書館には蔵書が96冊しかなかった。

 そんななかで、井上は初めて自分の本を手に入れる。中央公論社から出た宮沢賢治の『どんぐりと山猫』を、版元に直接注文したという。読み終えて感激した井上は、ハンコ屋の息子に頼んで蔵書印を彫ってもらい、それを本に押して「第1号」と書き込んだ(『本の運命』文藝春秋)。本とともに人生を歩んだ井上ひさしの出発点とも云えるこの本は、遅筆堂文庫に収められている。

 井上一家は1949年に小松を離れ、一関へと移る。その後、仙台、東京、釜石を経て、再上京。放送作家として活躍しながら、小説家としてデビューする。


井上がはじめて手に入れた「自分の本」、『どんぐりと山猫』(遅筆堂文庫提供)

作家が本を手放すとき

 井上ひさしの蔵書が、なぜ生まれ故郷の川西町に運ばれ、ついに図書館が生まれるに至ったかは、遠藤征広『遅筆堂文庫物語 小さな町に大きな図書館と劇場ができるまで』(日外アソシエーツ)に詳しい。同書は、本を愛する作家と作家を敬愛する青年たちの交流を描いた名著で、何度も読み返してきた。

 遅筆堂文庫設立の経緯を、同書と今回取材した遠藤勝則さん、阿部孝夫さん(NPO遅筆堂文庫プロジェクト前代表)の話をもとにたどってみる。

 1977年、農協に勤めていた遠藤征広さんらによって、『先知らぬこの道を』というミニコミが創刊された。郵便局勤務の阿部孝夫さんもそのメンバーだった。

 井上ひさしを愛読していた征広さんは、作家を故郷に呼ぶことを提案した。彼らの手紙が功を奏し、1982年に井上の講演会が実現する。締め切りに遅れた井上に直前に日程を変更させられるというハプニングはあったが、大成功を収める。

 翌年、井上は劇団「こまつ座」を結成。生まれ故郷の小松町にちなむ。『先知らぬ』のメンバーは「こまつ座応援会」を結成。征広さんは旗揚げまで井上宅に住み込んで手伝った。その後、『先知らぬ』は「山形こまつ座」に発展。阿部孝夫さんが代表を務め、米沢市や長井市でのこまつ座の公演を実現させた。

 1986年、井上は妻・好子と離婚。そのために市川市の自宅を出なければならなくなった。それを聞きつけた自治体と大学から「本を引き受けたい」という申し出があった。しかし、先方の必要な本だけを引き取るという方針に、雑本も含めての自分の蔵書だと井上は反発し、物別れに終わる。
「本と別れる」と題したインタビューで、井上はこう話している。
「こういう本は古本屋に売れば多少の金にはなるでしょうが、僕が集めたというエネルギーというのは売った瞬間なくなっちゃうわけです。集めた人の意志、エネルギーをきちっと残すためには、これはまとめてどっかへ移すほかはないと思いました」(『朝日ジャーナル』1987年臨時増刊「ブックガイド」)

 一方、川西町では井上宅にあふれる本を目にしていた征広さんが、その一部を引き取って小さな図書館をつくることを構想していた。企画書づくりには町役場の企画課に勤めていた遠藤勝則さんも加わった。
「当時、川西町では総合計画を策定しており、井上さんと関係を深めることで、地域づくりを進めたいという意思がありました」と、勝則さんは振り返る。

 そして企画書を読んだ井上から連絡があり、「全部の本を寄贈するので、図書館をつくってほしい」と申し出があった。横沢三男町長はこれを受け入れ、候補地の選定に入った。

「生きている図書館」を目指して

 1987年2月、農村環境改善センター(農改センター)の2階に図書館を設置することが決まる。同月、遠藤征広さん、阿部孝夫さん、遠藤勝則さんら4人は、市川の井上宅からの1回目の本運びを行なった。
「下見に行った際、どこまで見ても本があふれていました。本の重みで書庫のレールが歪んでいました」と勝則さんは話す。この時点で、何万冊かあるかはっきりと判っていなかったという。

 自宅に接した事務所の本は、こんな様子だった。
「ゆうに六人は使える会議用机の上は五十センチほどの高さに平積みにされた本で埋め尽くされ、書架は奥に単行本、手前が文庫本で二列に並べられています。書架の前の床にも幾重にも本の山があり、高い本の山は今にも崩れそうです。(略)事務所の片隅には二階の書庫に通じるら旋階段があります。その階段一段一段にも本が一メートルの高さで積み重ねられて、一人ずつ慎重に通らないと階段を昇れません。(略)まさに本の海の中で四人は泳いでいました」(『遅筆堂文庫物語』)

 このとき、彼らが川西町から持参したのは、菊の箱だった。征広さんが仕事で使っていたもので、本を詰めるのにちょうどよかったという。2泊3日で、部屋ごとにひたすら本を詰めていく。道路が狭いため、本の箱はいちど2トントラックに積み、別の場所に停めた11トントラックに積み替えねばならなかった。

 川西町にトラックが着くと、農改センターの2階まで階段で運び、仮置きする。

 本運びの作業は、3月と4月にも行なわれた。驚いたのは、前回すっかり空にした書架にまた本が詰まっていたことだ。さらに、予期しなかった場所からも本が出現する。
「建物の屋上に六坪ほどの大きさのプレハブ式の物置がぽつんとありました。ドアを開けると、中には本が隙間なく圧縮状態でびしっと詰まっています。まさに芸術的とも言える入れ方です」(『遅筆堂文庫物語』)

 3回にわたる作業を経て、井上の蔵書は川西町に運び込まれた。その数は当初の目算である4万冊を大きく上回り、7万冊に達した。

 気が遠くなるような作業だったが、遠藤さんらにとっては作家と接することができる貴重な機会となった。
「私たちが作業している間、井上先生は家の中で執筆されていました。昼食や夕食は一緒に取り、そこでいろんな話を聞きました」と阿部孝夫さんが云えば、「作家の内側に入ったような気持でしたね」と勝則さんも話す。

 このとき、井上は図書館の名前を「遅筆堂文庫」としたいと話した。「遅筆堂」はしばしば締め切りを破ることへの自嘲の念からつけた屋号だが、根底には「遅くてもいいから納得のいくものを書きたい」という思いがあった。その名前を図書館に冠するのは、遅筆の背景に無数の本があるからだと征広さんは推測している。また井上は、利用者優先でなるべく長い時間開館している図書館にしたいという希望を述べた。

 そして、4月29日には川西町民総合体育館で、井上ひさしの講演「世界の中の川西町」が開催された。井上はそこで遅筆堂文庫を「生きている図書館にしたい」と述べた。
「図書館は人が集まるところ、ある一冊の本をテーマに、書いた人も前にして、みんなで語り合う。東京でも組み合わせがなかなかできないような人にきてもらって、一週間ぐらいぶっつづけで、大学よりも程度が高くて、おもしろさは各種学校なみという講座ができないか。映画がきたり、芝居をもってきたり」

 96冊しか蔵書のなかった町で育った井上は、自分の蔵書による図書館を軸にして、故郷を文化的な町にしたいと考えたのだ。

展示室入り口

井上ひさし著作の棚

作家と町民の交流

 同年3月末からは遠藤征広さんが遅筆堂文庫の専従となり、ほかの3人の担当者とともに本の整理を開始した。このとき、征広さんはNDCではなく、件名での分類を提案した。井上の蔵書にあった『大宅壮一蔵書目録』を見て、大宅文庫に見学に行き、このほうが作家のこだわりを反映できるという確信を得た。

 それから4カ月間、ひたすら本を箱から出して並べる作業を行なった。整理用にパソコンも導入した。
「このときの運搬では手当たり次第に本を箱詰めしたので、井上家での本の並びを再現することができませんでした。その反省から、没後に鎌倉のご自宅から寄贈された本は、並んでいた通りに番号を振って管理しています」と、阿部孝夫さんは云う。

 8月15日、終戦記念日に遅筆堂文庫はオープンし、井上も出席する予定だった。しかし、体調不良で欠席することとなる。仮オープンしたのだが、このとき、娘でこまつ座代表(当時)の井上都さんが持参した原稿用紙には、井上自筆の「遅筆堂文庫堂則」が綴られていた。
「遅筆堂文庫は置賜盆地の中心にあり、置賜盆地はまた地球の中心に位す。我等はこの地球の中心より、人類の遺産であり先人の智恵の結晶でもある萬巻の書物を介して、宇宙の森羅萬象を観察し、人情の機微を察知し、あげて個人の自由の確立と共同体の充実という二兎を追わんとす。(略)町の有司、若人たちの尽力によりいまここに発足する当文庫は、有志の人びとの城砦、陣地、かくれ家、聖堂、そして憩いの館なり。我等は只今より書物の前に坐し、読書によって、過去を未来へ、よりよく繋げんと欲す」

 遅筆堂文庫は午前11時30分から午後8時30分まで開館。館外貸し出しはせず、閲覧のみだったが、全国から利用者が来館した。

 翌年3月、遅筆堂文庫シンポジウムを開催。井上の基調講演と図書館関係者とのディスカッションを行なった。このとき、遅筆堂文庫を見た井上は「自分のところにあったときは本が眠った状態だったけど、ここでは本が生き生きしている」と喜んだという。

 同年8月には遅筆堂文庫で、「生活者大学校」を開催。農業関係者を講師に迎え、3泊4日の手づくりの学校を開いた。校長はもちろん井上で、農民作家の山下惣一が教頭となった。その後、毎年開催されていく。

 1994年、川西町フレンドリープラザが開館。遅筆堂文庫が農改センターから移り、別の場所から町立図書館も移転する。また、劇場を併設し、こまつ座の演劇やコンサートなどさまざまな催しを行なう。生活者大学校の会場であり、2010年に井上が亡くなったあと、2015年から井上を偲ぶ「吉里吉里忌」も開催されている。

 まさに、井上が夢想したように、図書館を中心に「人が集まるところ」が生まれたのだ。
「フレンドリープラザができてからも、井上先生は遅筆堂文庫によく立ち寄られました。本が積まれたのを見て、整理されないままになっていると誤解して怒られたこともありました(笑)。それだけ、本に対する愛情が深かったのだと思います」と、阿部孝夫さんは振り返る。

 作家と町民の長い交流から生まれた、遅筆堂文庫の「本の海」。次回は、その心臓部とも云える書庫の中に分け入っていこう。

 
 
※参考文献 『ここが地球の中心 井上ひさしと遅筆堂文庫』山形県川西町。
※本連載中の写真の無断転載・拡散を禁じます。

 
 
 
 
 
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

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川西町フレンドリープラザ・遅筆堂文庫
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地方の古本屋三代目―店舗移転の先を見据えて 【古本屋でつなぐ東北(みちのく)4】

地方の古本屋三代目―店舗移転の先を見据えて 【古本屋でつなぐ東北(みちのく)4】

(秋田県・板澤書房)板澤吉将

 秋田県秋田市にある板澤書房の板澤吉将と申します。戦前に私の祖父が創業し、現在は父が現役の店主、私は次代ということになります。

 祖父の代では戦争を挟み、またあまり自らを語らない性格だったようで、六人兄弟の末っ子である父に聞いても店を始めた経緯などあまり詳しくはわからないようです。戦中戦後の本が少ない時代には短い間ですが貸本屋としても営業していました。手元には「新々堂 板澤書店」と見返しに印がある傷んだ本があります。私にとってはお菓子をねだると必ずくれる大甘な祖父でした。

 一九七〇年代後半に神保町で修業していた父が店に戻ります。そしてバブル期と崩壊、インターネットの隆盛があり、営業の重心も店売りと即売会からネット通販へと移ります。私が小さい頃の店頭には、雑誌や連載中の少年漫画の単行本、回転するスチール棚に並んだ絵本や切手にトランプなどがありましたが、今はどれも残っていません。

 私は二〇〇四年に東京の大学を卒業し、すぐに実家に戻りました。現在は出張買い取りやSNSを担当するなど、父に頭数に入れてもらえている実感があります。

 さて、近く、店の移転が控えています。当店は秋田市の繁華街・川反に程近い場所、通称横町商店街にあります。以前は文房具店やスーパー、床屋などがあり商店街然としていましたが、現在はほぼ飲食店街となっています。三〇年くらい前から、この横町を含む六五〇メートルほどの区間に道路拡幅の話があり、横町は最後の工事区間で既に信号一つ向こうの目と鼻の先まで拡幅工事が迫っています。スペース的に後ろに下がるという選択肢はなく、道路拡幅イコール移転となります。今のところ、具体的な時期等の話は来ていませんが、聞く所によると数年以内だろうとのことです。

 移転する際には店売りを続けるのか、店ではなく事務所にしてネット専売にするのではないかとお客様や同業者に問われることがあります。現在の実店舗とネット通販の両輪という営業スタイルは継続していくつもりです。地方の古本屋にとって、ネット通販は商売上避けられません。コロナ禍では尚更です。

 実店舗は買い取りの窓口の意味合いももちろんありますが、お客様の顔が見える、古本屋を体験していただける意義があります。店の人間が棚に並べ、入れ替え、それをお客様が手に取り、予想外の出会いに思わず小さな声を上げる。この光景は魅力的です。

 数年前にSNSを始め、それをご覧になったのか若いお客様も増えました。制服で来られていた方が少しの間見なくなり、また垢抜けてご来店された時などは、生活のステージが変わっても忘れないでいてくれたのかと感慨深い思いでした。言葉を交わしたわけではないので想像に過ぎませんが。

 また二〇一七年にはご近所であった松坂古書店さんが閉業されるなど古本屋が減る一方で、なんとか歯止めをかけたい思いもあります。

 祖父が創り、父が固めた店を、私がどうしていくか。一にも二にも生き残りです。レトロなイメージが強い職業ですが、加速し続ける時代の流れにしがみつかなければいけません。祖父も父も同様だったと思います。店の移転もあり、可能なところはデジタル化をするなど、今まで蓄積されてきた品物なり数字なりを再整理する時期に来ていると感じます。

 私事ですが、一昨年娘が生まれました。ぽこんと出たお腹で走り回りかわいい盛りです。以前は自分の後のことはおろか自分自身の先さえ想像できていませんでしたが、そうも言っていられなくなりました。眼前には創業以来初めての店舗移転という転機があり、その次までは今は見通せていませんが、存続することで何かしらを次の世代に渡せるものと考えています。

 

(写真は昨年冬の板澤書房外観)

 
 
(「日本古書通信」2022年11月号より転載)

 
 
 
 


『増補新版 東北の古本屋』 折付桂子著
文学通信刊
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☆INDEX☆
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1.神田・神保町は明治から賑わっていた

                    ノセ事務所 能勢 仁

2.『近代初期イギリス演劇選集』について

        鹿児島近代初期英国演劇研究会 代表 大和高行

3.古本屋ツアー・イン・ジャパン2022年総決算報告

                 古本屋ツーリスト 小山力也

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━━━━━━━━━━【自著を語る(304)】━━━━━━━━━━

神田・神保町は明治から賑わっていた

                    ノセ事務所 能勢 仁

 今回、日本書籍出版協会が1968年に編纂・発行した「日本出版百年
史年表」を底本として「明治・大正・昭和の出版が歩んだ道」を上梓
致しました。年表を編集して下さった布川角左衛門先生、他彌吉光長、
岡野他家夫、小田切進、鈴木敏夫氏等編集委員に、他協力者、編集者
17名の方々に敬意と感謝を申し上げます。

 本書は①明治の出版史探訪、②大正の出版史探訪、③昭和戦前の出
版史探訪、 ④昭和戦後の出版史探訪、⑤昭和後半の出版と再販制度、
⑥古書業界と神保町の150年、⑦明治・大正・昭和の出版創業記、⑧回
想“本と読者をつなぐ知恵”の8章で構成されています。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10949

『明治・大正・昭和の出版が歩んだ道』
  ―近代出版の誕生から現代までの150年の軌跡―
出版メディアパル刊
能勢仁・八木壯一共著
定価 1,980円(税込)
ISBN:978-4-7744-0776-0
好評発売中!
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784902251432

━━━━━━━━━【大学出版へのいざない2】━━━━━━━━━━━

『近代初期イギリス演劇選集』について

           鹿児島近代初期英国演劇研究会 代表 大和高行

 本書は、シェイクスピア以前のイギリス演劇で重要な4篇の作品の翻訳・
訳注・解説を収録したものですが、そもそも本書誕生のきっかけは1997年
6月にまでさかのぼります。当時、鹿児島の大学に赴任した同世代のシェイ
クスピア研究者が4人いて、授業の中でシェイクスピアの劇を原文で読むこ
とは多いけれども、それ以外の作家についてはなかなか読むことはない。
ならば、シェイクスピア以外の作家の演劇テクストで、じっくりと向き合う
べき重要なものを選んで、訳出をし、解説も付してみよう、ということにな
りました。そして、最初に選んだテクストが、『ゴーボダック』(1565年)
でした。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10957

書名:『近代初期イギリス演劇選集』
著者名:鹿児島近代初期英国演劇研究会/大和高行・小林潤司・山下孝子・
    丹羽佐紀・杉浦裕子[訳]
出版社名:九州大学出版会
判型/製本形式/ページ数:四六判/上製/608頁
税込価格:6600円
ISBNコード:978-4-7985-0344-8
Cコード:C1074
https://kup.or.jp/

━━━━━━━━━【古本屋ツアーインジャパン】━━━━━━━

古本屋ツアー・イン・ジャパン2022年総決算報告

                 古本屋ツーリスト 小山力也

 ついに新型コロナウィルス患者が日本で発見されてから、三年の
月日が経ってしまった。対策は色々講じられてきたが、未だ確実な
予防法も治療法もなく、感染は収束と拡大を繰り返している。だが
この三年は、我々に、我慢と辛抱と諦めとともに、パンデミック下
での生活様式の、土台を積み上げる方法を、手探りの遅いスピード
でありながらも、確立して行く時間でもあった。古本界にとっても、
それは例外ではない。おかげで、入場制限が行われることはあるが、
営業形態や催事開催は、コロナ前の状況に近いものとなってきたよ
うだ。だからお店に行き、古本もビシバシビシバシ買えるようになっ
た。古本好きには嬉しいことである。もちろん今まで通りに、個人
レベルでの感染対策は、きちんと継続しなければならないのだが。
そんな2022年の活動を、まずは上半期を簡単に振り返った後、総決
算報告に入って行こう。それにしても、もうコロナから文章を書き
出すのは、いい加減うんざりだ。早いとこ普通の風邪みたいなもの
になって欲しいと、切に願う2023年の初めである。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10976

小山力也
2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売っている場
所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ『古本屋ツアー・イン・ジャパ
ン』管理人。西荻窪「盛林堂書房」の『フォニャルフ』棚で、大阪「梅
田蔦屋書店」の古書棚で蔵書古本を販売中。「本の雑誌」にて『毎日で
も通いたい古本屋さん』、「日本古書通信」にて『ミステリ懐旧三面鏡』
連載中。
http://furuhonya-tour.seesaa.net/

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

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映画『丘の上の本屋さん』
2021年製作/84分/イタリア
原題:Il diritto alla felicita
配給:ミモザフィルムズ
3月3日公開
https://mimosafilms.com/honya/
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「大学出版へのいざない」シリーズ 第3回

関西学院大学出版会刊『張愛玲の映画史』
執筆者:九州大学・福岡大学非常勤講師 河本美紀
http://www.kgup.jp/book/b618396.html
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『「地下出版のメディア史」展・トークイベントを振り返って』(仮題)
大尾侑子(東京経済大学准教授)
https://www.kosho.ne.jp/?p=531
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━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

1月~2月の即売展情報

※新型コロナウイルスの影響により、今後、各地で予定されている
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日本の古本屋メールマガジン その363・1月25日

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋」事業部
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部・編集長:藤原栄志郎

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shuppan_ayunda

神田・神保町は明治から賑わっていた

神田・神保町は明治から賑わっていた

ノセ事務所 能勢 仁

 今回、日本書籍出版協会が1968年に編纂・発行した「日本出版百年史年表」を底本として「明治・大正・昭和の出版が歩んだ道」を上梓致しました。年表を編集して下さった布川角左衛門先生、他彌吉光長、岡野他家夫、小田切進、鈴木敏夫氏等編集委員に、他協力者、編集者17名の方々に敬意と感謝を申し上げます。

 本書は①明治の出版史探訪、②大正の出版史探訪、③昭和戦前の出版史探訪、 ④昭和戦後の出版史探訪、⑤昭和後半の出版と再販制度、⑥古書業界と神保町の150年、⑦明治・大正・昭和の出版創業記、⑧回想“本と読者をつなぐ知恵”の8章で構成されています。

 第6章は八木書店H.D社長、日本古書通信社社長の八木壮一氏が古書への思いを熱く語っています。古書業界の150年間を俯瞰できる本は、本邦初ではないでしょうか。

 内容は「古書業界と神保町の150年」と題し、4編に分かれています。1、明治時代の古書業界の歩み、2、大正時代の古書業界の歩み、3、昭和時代の古書業界の歩み、4、平成時代の古書業界の歩み、です。八木氏は反町茂雄の業績にも触れ、江戸から明治初めまでの古書店・古本店について詳述している。この中で“本の街神保町の誕生”が書かれている。明治36,37年頃の神田古本屋の地図は貴重であり、当時を彷彿とさせる。

 三省堂の創業家の亀井家は、江戸時代は現在の明治大学の場所に幕臣亀井家はあった。大久保彦左衛門の屋敷の前である。亀井家は幕府崩壊後は、一時江戸を離れたが、明治になって戻り、14年に古書店を開くとともに出版も始めた。18年には現在のすずらん通りで冨山房が創業している。創業時と現在地が変わらない稀有の例である。有斐閣も現在地に近い場所で10年に古書店を開業している。

 明治5年に国民皆学をめざして学制が公布され、大学、中学、小学の三段階の学校制度が設けられた。しかし小学校の建設は地元住民の負担であり、授業料も月額50銭(当時米10kg36銭)と高く、普及が遅れ寺子屋を改造する例が多かった。一方、八大学区の大学建設は国の負担で進められた。官立師範学校が各府県に設けられ、人材育成がなされたことが、教育立国の基礎となった。明治10年に開校した東京開成学校(場所は湯島、後の東京帝国大学)が発端となって、神保町は学生の街のスタートとなったといっても過言ではない。明治8年から22年までの14年間は神田周辺は大学創設のラッシュであった。明治8年商法講習所(神田一ツ橋・後の一橋大学)、13年東京法学所(靖国神社付近・後の法政大学)、14年法律学校(駿河台・明治大学)、18年英吉利法律学校(神田錦町・中央大学)、22年日本法律学校(飯田橋・日本大学)が誕生している。当時はまだ近代出版の時代になっていないので、本を必要とする学生は神田古書街に集まったのであろう。

 本書では明治20年、30年、40年代について、古書市場の成立と古書業界について祥述され、興味深い。古書店の老舗、一誠堂書店の創業は明治44年である。

 明治20年、博文館の創業によって、日本の出版界は一気に開眼した。明治を驀進した出版社は春陽堂と博文館である。文藝出版の春陽堂、総合出版社の博文館が業界をリードした。明治末年から大正にかけ雑誌ジャーナリズムに火が付いた。前二社も強力雑誌を発行していた。春陽堂は「新小説」、博文館は旗艦誌「太陽」「少年世界」他8誌を発刊している。

 大正の雑誌ジャーナリズムに点火した出版社は実業之日本社、婦人之友社、婦人画報社、ダイヤモンド社、研究社、主婦之友社、講談社等であった。大正は特化された雑誌の時代であった。書籍では岩波書店、新潮社の功績を忘れることはできない。書籍の個性派版元では平凡社、同文館、金星堂、古今書院等がユニークであった。本書の中では明治・大正の時代展望の中で書かれている。

 昭和は円本で始まった。リードした出版社は改造社、新潮社、平凡社であった。そして講談社の「キング」の発刊によって、国民の眼は講談社の18大雑誌に向けられた。社会背景としては国内の帝国主義化は発禁本を生んだ。世界史的にはロシア革命は日本の労働者に力を与えたが、出版にも弾圧が加えられ暗雲を残した。昭和戦前では出版(書籍)の立役者は改造社と岩波書店である。岩波文庫の創刊は出版の記念碑である。知られていないことでは三省堂の専門書活動である。辞書の出版を除いては学参色は全くない。戦前の書籍分野を岩波、新潮、と共に三省堂が担っていた。

 流通では組織化が早く、明治23年に東京堂が出来てから、昭和16年日配まで、東海堂、北隆館、大東館と四大取次が活躍、委託制度に協力的であった。書店の場合は大正8年に完成したと言ってよい。各県別全国書店組合が組織された。戦後は日書連(日本書店商業組合連合会)として歩んでいる。

 現在問われていることは再販制度である。再販意識が希薄になっていることを憂うものである。再販は空気ではない。出版業界の貴重な財産である。制作、流通、販売の各分野で
再販制度を大切に守ってゆきたい。アマゾンに利用され放しを反省したい。

以上

 
 
 
 


『明治・大正・昭和の出版が歩んだ道』
  ―近代出版の誕生から現代までの150年の軌跡―
出版メディアパル刊
能勢仁・八木壯一共著
定価 1,980円(税込)
ISBN:978-4-7744-0776-0
好評発売中!
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784902251432

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古本屋ツアー・イン・ジャパン2022年総決算報告

古本屋ツアー・イン・ジャパン2022年総決算報告

古本屋ツーリスト 小山力也

 
 ついに新型コロナウィルス患者が日本で発見されてから、三年の月日が経ってしまった。対策は色々講じられてきたが、未だ確実な予防法も治療法もなく、感染は収束と拡大を繰り返している。だがこの三年は、我々に、我慢と辛抱と諦めとともに、パンデミック下での生活様式の、土台を積み上げる方法を、手探りの遅いスピードでありながらも、確立して行く時間でもあった。古本界にとっても、それは例外ではない。おかげで、入場制限が行われることはあるが、営業形態や催事開催は、コロナ前の状況に近いものとなってきたようだ。だからお店に行き、古本もビシバシビシバシ買えるようになった。古本好きには嬉しいことである。もちろん今まで通りに、個人レベルでの感染対策は、きちんと継続しなければならないのだが。そんな2022年の活動を、まずは上半期を簡単に振り返った後、総決算報告に入って行こう。それにしても、もうコロナから文章を書き出すのは、いい加減うんざりだ。早いとこ普通の風邪みたいなものになって欲しいと、切に願う2023年の初めである。

 まず新たに開店&発見したお店を挙げてみると、東村山の「古本×古着ゆるや」、ひばりケ丘「古書きなり堂」、高根公団「はじっこブックス」などであろうか。逆に閉店では、豪徳寺「靖文堂書店」、西荻窪「TIMELESS」、高根公団「鷹山堂」、押上「イセ屋」、田園調布「田園書房りぶらりあ」、渋谷「古書サンエー」が挙げられ、こちらの方が数が多いのが気になるが、だが二年ぶりに神保町で『青空掘り出し市』が開かれたりと、明るい材料も存在する。

 さて、2022年後半戦であるが、六月は荻窪の「古書ワルツ荻窪店」がバックヤードを拡大し、店舗が以前の2/3ほどになるのを目撃。常設古本市的店内で、たくさんの棚が見られるのは魅力的だったが、その分かなりの時間を要してしまうのが辛い時もあったので(まぁのめりこんでしまう己の問題であるが)、程よい規模になったのではないだろうか。七月には長年続いて来た即売会『我楽多市』の最終回に立ち会う。即売会にはそれぞれの参加店による特色があり、その選択肢のひとつが消えるのは、誠に残念であった。荻窪では、駅北側の味のある商店街の小径に「古書かいた」が開店。昭和の店舗を改装したお店は洒落ているが、店内の空池に均一棚が立つ変わり種である。八月には目立った開店・閉店などはなかったが、高円寺「西部古書会館」で開かれた新タイプの即売展「Vintage Book Lab」に注目する。会場の半分が古本以外のグラビア雑誌・写真集・パネル・紙物で占められ、またその棚の様子をネットにアップし、web目録だけではなく、それを見ての注文を可能にするなど、色々新しい試みに挑戦していた。九月は経堂に「ゆうらん古書店」が開店。西荻窪「音羽館」出身の青年が、そのスピリットを受け継いだ店造りをし、古本屋の灯が消えてしまった経堂に、新たな力強い明かりを灯してくれた。荻窪では、線路から見える安値の雑本に魅力満載の「竹陽書房」が閉店。ご夫婦揃っての別れの挨拶には泣かされてしまう。十月は神保町で三年ぶりの「神田古本まつり」が開かれ話題を呼び、大変な人出&売り上げを記録する。古本好きも、通りすがりの人も、いかにこのまつりを待望していたかという、わかりやすい顕れであろう。人間には、祭りが必要なのである。新井薬師前駅前の「文林堂書店」が、駅前再開発を機にお店を閉店。ここではよくレアな創元推理文庫を買わせてもらったが、閉店セール中に二階から出て来たであろう古漫画類が目を惹き、何冊か我慢出来ずに購入してしまった。十月は、中野に古本も扱うカフェ「Chillaxin’ Book Shop」(お洒落な店構えだが、古本棚占有率はなかなか高い)を見つけ、千歳烏山では自宅の庭で雑貨や古本を売っているアナーキーな場所を発見。そして悲しみの十二月には、尾山台に殆ど外で古本を販売している「桜書店」の存在を確認するが、神保町で看板建築のお店がシンボルの「古賀書店」が閉店。最後のセールにたくさんの音楽家が駆け付け、楽譜を求めている様子が、本当に印象的であった。さらに祖師ケ谷大蔵では、ウルトラマン商店街の奥の奥にあり、たくさんの良書と児童文学を買わせてくれた「祖師谷書房」が閉店。これは足繁く通っていた私にとっては、衝撃の出来事であった。

 また閉店と言えば、ブログのコメント欄に数々の情報が寄せられるのだが、岡山県の象徴「万歩書店」の「津山店」の閉店と、今年の一月末には「中之町店」閉店を知り、うちひしがれている。…「本の雑誌」取材時に、車で全店舗を巡って、たちまちスタンプカードが一杯になったのが、もはや遠い昔である…。さらに横須賀の「港文堂書店」が、店主の逝去により九月に閉店。これは娘さんからのコメントで知ったのだが、行けばいつでも「おや、力也さん。いらっしゃい」と優しく出迎えてくれて、博識な高速面白伝法トークでもてなしてくれるご婦人店主を、知らぬ間に失っていたのは、大きな大きな痛手である。

 このように、近場の情報メインだが、開店より、少し閉店するお店の方が多かったのが、悲しいところである。だが、昭和・平成・令和と、古本を売り続けて来たお店たちに、とにかく多大なる感謝を捧げたい。ありがとうございます。そしてお疲れさまでした。

 そして古本者の業として、嬉しい掘出し物を列挙してみると、北代省三個展パンフレットが百円、國土社「たのしい舞臺装置/吉田謙吉」が百円、室町書房「火星の砂/アーサー・C・クラーク」が三百円、創元推理文庫「伯母殺人事件/リチャード・ハル」エラー本(カバーが小父さんマーク、背が時計マーク)が六百円、東京文藝社「黒魔王/高木彬光」が百十円、金の星社「火星地底の秘密/瀬川昌男」の帯付きが千円、春陽堂ヴエストポケツト傑作叢書「金色の死/谷崎潤一郎」が二千二百円、そして極め付けは白林館少年出版部「ドリトル先生「アフリカ行き」/ロフティング」の一万二千五百円である。

 このように、どうにかつつがなく、古本屋さんを巡り、古本を買いまくった一年となったが、変化の多い一年というか、いつまでもあるということが幻想である、と感じさせてくれた一年であった。馴染みの深かった「靖文堂書店」「竹陽書房」「祖師谷書房」「港文堂書店」「文林堂書店」の喪失が、そう思わせるのであろう。だがこれは、仕方のないことである。大役を果たしたお店が退場し、現在も奮闘するお店や、新しく出来たお店に、古本もその志も、バトンタッチされたのだ。だから今年もその受け継がれたお店たちに、古本を買いに行くのが私の使命でもある。というわけで、今年も何とぞよろしくお願いいたします。





小山力也
2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売っている場所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ『古本屋ツアー・イン・ジャパン』管理人。西荻窪「盛林堂書房」の『フォニャルフ』棚で、大阪「梅田蔦屋書店」の古書棚で蔵書古本を販売中。「本の雑誌」にて『毎日でも通いたい古本屋さん』、「日本古書通信」にて『ミステリ懐旧三面鏡』連載中。
http://furuhonya-tour.seesaa.net/

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『近代初期イギリス演劇選集』について  【大学出版へのいざない2】

『近代初期イギリス演劇選集』について  【大学出版へのいざない2】

鹿児島近代初期英国演劇研究会 代表  大和高行

 本書は、シェイクスピア以前のイギリス演劇で重要な4篇の作品の翻訳・訳注・解説を収録したものですが、そもそも本書誕生のきっかけは1997年6月にまでさかのぼります。当時、鹿児島の大学に赴任した同世代のシェイクスピア研究者が4人いて、授業の中でシェイクスピアの劇を原文で読むことは多いけれども、それ以外の作家についてはなかなか読むことはない。ならば、シェイクスピア以外の作家の演劇テクストで、じっくりと向き合うべき重要なものを選んで、訳出をし、解説も付してみよう、ということになりました。そして、最初に選んだテクストが、『ゴーボダック』(1565年) でした。

 『ゴーボダック』は、「ブランク・ヴァース」(blank verse)というシェイクスピアが得意とした詩型で書かれた英国初の本格的悲劇です。しかし、恥ずかしながら、そのような事実を知っていても実際にじっくり読んでみたことはなかったのです。

 本書に収録されている『ゴーボダック』(ノートン/サックヴィル)、『キャンバイシーズ』(トマス・プレストン)、『アーサー王の悲運』(トマス・ヒューズ)、『ダビデとバテシバ』(ジョージ・ピール) は一般に広く知られた作品ではありません。しかし、序章「シェイクスピアへの大いなる助走」が意味する通り、いずれも近代初期イギリス演劇の成立と発展に深くかかわり、演劇史的に重要で、シェイクスピア作品にも影響の大きい公衆劇場成立前後の時期の作品です。

 特に苦労したのは、450年以上前の近代初期の英語で書かれた戯曲を翻訳する際に、The Oxford English Dictionary (通称OED)という大辞典をひいて語義を決定しなければならないうえ、文脈に合った適切な日本語で訳さなければならなかったという点です。たとえば、『キャンバイシーズ』第5場38行の “relief”は、野球のリリーフでもなじみがあるとおり、現在では通常「安心」や「救援」の意味で使われますが、それを「生活の糧」と訳しました。これは OEDの “relief2” の語義3.†b. Sustenance. Obs. を採用した次第です。

 また、シェイクスピアとは違って注釈や特定作家の作品の語彙に関する辞典の類がきわめて少ない現状にあって、原文の意味が効果的に伝わる訳出になっているかどうか、台詞としての通りはよいかどうか、という点にまで気を配り、研究会メンバーで侃侃諤諤の議論を行いました。時には逐語訳を、時には意訳を選んで、最良の翻訳となるように心がけました。微妙なニュアンスをよりよい日本語表現で言い表すために、かなりの時間を要した箇所がたくさんあります。

 終章は英国ルネサンス期演劇の訳書刊行の状況を総括する書誌学的資料となっていますが、この分野の簡易目録としての価値に注目していただければ幸いです。これは、各大学図書館を渡り歩いて実際に現物を確認できたものだけを掲載したものですが、意外な古書と出会う幸運に恵まれてリスト化できたものがたくさんあります。ざっと眺めるだけでも、この時代にこの戯曲の翻訳が出ているというように、我が国における翻訳史を確認することができるものと期待されます。

 一例を挙げれば、『世界戯曲全集 第4巻 英吉利古典劇集』(世界戯曲刊行會、1930年) には、英国ルネサンス期の演劇三作品、ジョン・フォオド『絶望』竹友藻風訳、クリストファ・マーロウ『フオオスタス博士』岸弘訳、ベン・ジョンスン『十人十色』北村喜八訳が収められていますが、どれも古風な日本語とはいえ名訳ばかりで、このような早い時期に画期的な翻訳集が刊行されたことに驚嘆せざるをえません。

 屋上屋を重ねるがごとく出版が途切れないシェイクスピア劇の翻訳に比してマイナーといえる劇作品群の翻訳の存在意義を是非とも再確認してください。この巻末に置かれた文献書誌が、本書に収録されている劇同様に楽しい世界が広がっている、ルネサンス期演劇の訳書の数々をお読みいただく新たなきっかけとなれば幸いです。

 出版を出産にたとえるとすれば、1997年6月の本研究会による輪読会の開始から、本書は何と四半世紀という随分と長い年月を経てようやく産声を上げるに至ったわけです。文字通りの「難産」でした。それゆえ、研究会メンバーにとりまして、望外の喜びであることは言うまでもありません。

 最後になりますが、本書は本邦初訳となる『ダビデとバテシバ』(美しいカバーデザインは「バテシバの水浴」(Betsabea al bagno)という絵画からとったものです!) をはじめ、一般読者によるアクセスが容易とは言えない作品への入り口を提供しています。4篇とも翻訳の完成度は高く、演劇の専門家や大学の学部生・大学院生だけでなく、一般読者においても通読して楽しめる内容に仕上がっていると思います。本書は新聞各紙等で取り上げられ、また、全国の殆どの大学や公立図書館にも入れられて好評を博した『王政復古期シェイクスピア改作戯曲選集』(九州大学出版会、2018年)に次ぐ翻訳シリーズの第二弾です。前著ともども、是非手に取ってお読みいただければ幸いです。

 
 
 
 
 


書名:『近代初期イギリス演劇選集』
著者名:鹿児島近代初期英国演劇研究会/大和高行・小林潤司・山下孝子・丹羽佐紀・杉浦裕子[訳]
出版社名:九州大学出版会
判型/製本形式/ページ数:四六判/上製/608頁
税込価格:6600円
ISBNコード:978-4-7985-0344-8
Cコード:C1074
https://kup.or.jp/

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2023年1月10日号 第362号

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 古書市&古本まつり 第120号
      。.☆.:* 通巻362・1月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━【古本屋でつなぐ東北(みちのく)3】━━━━━━

古本屋の休日―東北古本屋バイク部ツーリング(秋田編)

              (青森県・古書思い出の歴史)今村拓志

 当店「古書 思い出の歴史」があるのは、本州最北端青森市です。現在
の人口は約二七万人、個人経営の古本屋は三店舗(内組合加入店は誠信
堂と当店)。売上げの大部分を占めるのは、ネット販売となります。毎
日の業務はパソコンを使っての入力作業がメインとなり、気がつくと丸
一日ほぼ会話が無いなんて日も少なくありません。

(「日本古書通信」2022年10月号より転載)

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10652

━━━━━━━━━【シリーズ書庫拝見9】━━━━━━━━━

大島青松園 島の読書生活をたどる

                         南陀楼綾繁

 数年前、高松港からフェリーで男木島を訪れた。その途中、小さ
な島のそばを通った。この島には寄らないんだなと思ったのだが、
あとで聞くとそれは大島だった。島全体がハンセン病療養所になっ
ているという。その頃は離島にそういう施設があることの意味に気
づかなかった。

 この島にハンセン病療養所が設置されたのは、1909年(明治42)
のこと。1907年(明治40)に公布された「癩予防ニ関スル件」を受
けてつくられた公立療養所のひとつだ。中国・四国8県の患者を収
容する第四区療養所として発足し、翌年に大島療養所と改称する。
1941年(昭和16)、国立に移管するのにあわせて、大島青松園となっ
た。現在、全国に14か所ある療養所のなかで、船でしか行けない場
所にあるのは、ここだけである。いわば、国の隔離政策を象徴する
島なのだ。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10870

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

国立療養所大島青松園
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/hansen/osima/

※大島青松園は、新型コロナウイルス感染症の対策のために、当分の間、
来園制限を行っています。
入所者を守るために、ご理解、ご協力をお願いたします。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「コショなひと」始めました

東京古書組合広報部では「コショなひと」というタイトルで動画
配信をスタート。
古書はもちろん面白いものがいっぱいですが、それを探し出して
売っている古書店主の面々も面白い!
こんなご時世だからお店で直接話が出来ない。だから動画で古書
店主たちの声を届けられればとの思いで始めました。
お店を閉めてやりきったという店主、売り上げに一喜一憂しない
店主、古本屋が使っている道具等々、普段店主同士でも話さない
ことも・・・
古書店の最強のコンテンツは古書店主だった!
是非、肩の力を入れ、覚悟の上ご覧ください(笑)

※今月の新コンテンツはありません。

YouTube 東京古書組合
https://www.youtube.com/channel/UCDxjayto922YYOe5VdOKu9w

━━━━━【1月10日~2月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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Title2Fの古本市 vol.7

期間:2022/12/24~2023/01/10
場所:本屋 Title  杉並区桃井1-5-2 八丁交差点すぐ セブンイレブン隣
  ◇八丁バス停(関東バス、西武バス)から徒歩1分)

https://www.title-books.com/event/10673

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♭立川フロム古書市ご案内♭

期間:2023/01/05~2023/01/16
場所:立川駅北口徒歩5分フロム中武(ビッグカメラ隣)
   3階バッシュルーム(北階段際)

http://mineruba.bookmarks.jp/saiji.htm

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第3回八王子オクトーレ古本まつり〈後半〉

期間:2023/01/06~2023/01/12
場所:JR八王子駅北口デッキ直結 八王子オクトーレ2階特設会場

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三省堂書店池袋本店 古本まつり

期間:2023/01/09~2023/01/16
場所:西武池袋本店 別館2F=特設会場(西武ギャラリー)
   東京都豊島区南池袋1-28-1

http://ikebukuro.books-sanseido.co.jp/events/6800

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第47回古本浪漫洲 Part2

期間:2023/01/10~2023/01/13
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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『BOOK DAY とやま駅』(富山県)

期間:2023/01/12~2023/01/12
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)

https://bookdaytoyama.net/

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趣味の古書展

期間:2023/01/13~2023/01/14
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

https://www.kosho.tokyo

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大均一祭

期間:2023/01/14~2023/01/16
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第47回古本浪漫洲 Part3

期間:2023/01/14~2023/01/17
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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第47回古本浪漫洲 Part4

期間:2023/01/18~2023/01/20
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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さんちか古書大即売会(兵庫県)

期間:2023/01/19~2023/01/24
場所:さんちか三番街 さんちかホール

https://hyogo-kosho.com/

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五反田遊古会

期間:2023/01/20~2023/01/21
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
   JR山手線、東急池上線、都営浅草線五反田駅より徒歩5分

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和洋会古書展

期間:2023/01/20~2023/01/21
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第28回 紙屋町シャレオ古本まつり(広島県)

期間:2023/01/21~2023/01/29
場所:広島市中区紙屋町シャレオ中央広場

https://twitter.com/koshohiroshima

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第47回古本浪漫洲 Part5 300円均一

期間:2023/01/21~2023/01/23
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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アクロスモール新鎌ヶ谷古本市(千葉県)

期間:2023/01/25~2023/02/06
場所:アクロスモール新鎌ヶ谷 1F 中央エレベーター前
   千葉県鎌ケ谷市新鎌ヶ谷2-12-1

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2023/01/26~2023/01/29
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)

https://twitter.com/urawajuku

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城南古書展

期間:2023/01/27~2023/01/28
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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中央線古書展

期間:2023/01/28~2023/01/29
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2023/02/02~2023/02/05
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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書窓展(マド展)

期間:2023/02/03~2023/02/04
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第9回 古書会館de古本まつり(京都府)

期間:2023/02/10~2023/02/12
場所:京都古書会館 京都市中京区高倉夷川上ル 福屋町723

https://kyoto-koshoken.com/event/sample-event2/

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杉並書友会

期間:2023/02/11~2023/02/12
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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反町古書会館展(神奈川県)

期間:2023/02/11~2023/02/12
場所:神奈川古書会館1階 横浜市神奈川区反町2-16-10

http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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日本の古本屋メールマガジンその362 2023.1.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

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 広報部・編集長:藤原栄志郎

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大島青松園 島の読書生活をたどる 【書庫拝見9】

大島青松園 島の読書生活をたどる 【書庫拝見9】

南陀楼綾繁

 数年前、高松港からフェリーで男木島を訪れた。その途中、小さな島のそばを通った。この島には寄らないんだなと思ったのだが、あとで聞くとそれは大島だった。島全体がハンセン病療養所になっているという。その頃は離島にそういう施設があることの意味に気づかなかった。

 この島にハンセン病療養所が設置されたのは、1909年(明治42)のこと。1907年(明治40)に公布された「癩予防ニ関スル件」を受けてつくられた公立療養所のひとつだ。中国・四国8県の患者を収容する第四区療養所として発足し、翌年に大島療養所と改称する。1941年(昭和16)、国立に移管するのにあわせて、大島青松園となった。現在、全国に14か所ある療養所のなかで、船でしか行けない場所にあるのは、ここだけである。いわば、国の隔離政策を象徴する島なのだ。

 昨年9月1日、その大島を訪れた。高松港から大島に向かうフェリーは国が運用する官有船で、以前は園の入所者と関係者しか乗ることができなかった。しかし、現在は一般旅客定期航路化し、誰でも無料で乗ることができる。

 この日は瀬戸内国際芸術祭2022夏会期中で、瀬戸芸の観客で満席になることが予想されたので、朝早くホテルを出る。高松駅近くのセルフうどんを食べて、高松港まで歩く。各方面への船が出るので、待合室はごった返している。大島行きの船「せいしょう」は定員50名とのことで乗れるか心配だったのだが、事前に取材の申請をしていたので先に乗船することができた。

 30分ほど乗るうちに、大島港に到着。この島はひょうたん形をしており、港は西側にある。

 桟橋では瀬戸芸のスタッフが出迎える。乗客の多くは、ここから島に点在する田島征三、鴻池朋子らのアート作品を見て回るのだが、我々にはその余裕がない。図書室のある社会交流会館へと急ぐ。

官有船「せいしょう」で大島青松園へ向かう


大島青松園社会交流会館 外観

閉ざされた島の図書館史

 大島青松園社会交流会館は2016年にプレオープンし、2019年に全面開館した。療養所の歴史を伝える展示やギャラリー、図書室、多目的ホールなどがあり、奥のカフェでは瀬戸芸関係の展示が開催されていた。

 図書室を案内してくれたのは、学芸員の池永禎子(さちこ)さん。子どもの頃から博物館や美術館を訪れるのが好きで、都内で5か所以上の博物館や資料館で働いてきた。
「ハンセン病については国家賠償請求訴訟(1996年に廃止されたらい予防法が違憲であるとして提起)を通して知りました。その後、ハンセン病の歴史と回復者の『生』の証しを伝えていきたいと思うようになったんです」

 池永さんは2018年に着任し、一年間かけて展示室と図書室を準備してきたという。池永さんは、青松園の機関誌『青松』の連載「学芸員のお仕事」で、蔵書整理の過程などを詳しく書かれていて、非常に参考になる。

 閲覧室は空間がゆったりと取られている。棚には青松園に関する資料があり、13歳で青松園に入所し、83歳で亡くなるまで詩を書き続けた塔和子さんの著作も揃っている。他の療養所に関する本も並べられている。


社会交流会館 図書室内観


青島詩人会が発行していた同人誌『海図』が展示されていた

 その奥の扉を開けると、閉架書庫になっている。蔵書数は閲覧室が約7000冊、書庫が約9000冊とのこと。

 ここで大島青松園の自治会が運営する図書室の歴史をざっとたどる。なお、自治会は1941年に「協和会」と改称している。
『閉ざされた島の昭和史 国立療養所大島青松園入園者自治会五十年史』(以下『自治会五十年史』)の年表によると、1927年(昭和2)に「図書室等増築」とある。また、『大島療養所二十五年史』には同年、「患者図書閲覧室」ができたとある。東の浜、浴場のそばにあったそうだ。
『青松』70号(1954年5月)の多田勇「図書室実相」では、次のように紹介されている。
「その図書室は小庭を挟んだ約二十畳敷きの建物が二棟であつて、周囲に灌木を廻らした明るい静隠な場所である。地理的に言つても病者区域のほぼ中央部に位してゐるし、専門的な環境の点から言つても、は入り【ママ】易い便利な場所である」

 当時の蔵書数は約5000冊。多田はここで図書係として働いていた。新刊書(主に娯楽雑誌)は園内ラジオで貸し出し時間を放送するが、熱心な読者の間では順番をめぐって不満も出たという。

 同じ文章で多田は、「村田弘氏(愛生園慰安会勤務)の『病院図書館試論』」というパンフレットに教えられたと書く。前回触れたように村田は長島愛生園の図書館を改革した人物である。療養所の図書館についての村田の論は、青松園以外の療養所にも影響があったのだろうか。
『自治会五十年史』には、1962年に「四国四県寄贈の図書館落成」とあるが、1976年に「旧図書室、住宅整備のため取りこわす」とあるように、十数年でなくなってしまう。

 そして1977年に今ある文化会館が完成し、この中に新たに図書室ができたのだ。
『青松』355号(1980年1月)で、図書係の橋田芳明が「図書室の一日」として紹介しているのは、この図書室のことだ。橋田は利用者の過ごし方を次のように書く。
「毎日、きまった時間に、何人かの者が新聞を読みに来る。時計を見るとほとんど毎日同じ時間である。各人、それぞれに、一日の時間帯があるようだ。(略)ただ、ここでは書籍の貸出しはしても、ここで読書をするということはない。持ち帰って自分の部屋で読んでいる。

 静かに入って来て、新聞や雑誌を読んで、それこそ音も立てずに帰ってゆく者もおるし、また、中には話題の多い者もおって、時には一転して社交と座談の場となることもある。何時の間にか、ただ何んとなく新聞を読むのをやめて、世間話しに発展をする」

 図書室は本と接するだけでなく、人と交流する空間でもあったのだ。

林記念文庫を再編成する

 池永さんによれば、文化会館の隣には小さな書庫があり、図書室とあわせると協和会蔵書は約1万冊だった。これらは点検、燻蒸、整理を経て、社会交流会館の図書室に移管された。
「ハンセン病に関する資料や入所者の出版物など、ここでしか読めないものや大島の特徴をあらわすものを中心に閲覧室に並べ、公共図書館でも読める一般書は書庫に納めました」と、池永さんは説明する。

 閲覧室に配架したうち、最も重要なものは「林記念文庫」だ。林文雄は全生病院(多磨全生園)、長島愛生園で医師として働き、星塚敬愛園では園長を務めた。1944年、結核の療養のために大島青松園に来る。林は文学やキリスト教の信仰を通じて、入所者と積極的に交流した。

 林は『青山荘だより』という手書き雑誌を発行し、入所者の間を回覧した。これがヒントになって、入所者の同人誌として『青松』が創刊されたという(おかのゆきお『林文雄の生涯』新教出版社)。青松園にはそれ以前に『藻汐草』という機関誌があったが、職員が編集するものだった。

 林は1947年に亡くなるが、自治会はその翌月に林記念文庫の設置を決定している。そして翌年の7月、記念会館の一室に開館したという。『青松』には同文庫への本の寄贈を呼びかける広告が掲載された。
「文庫の中核は、一九四〇年代後半から五〇年代に刊行された書籍」であり、「一九三〇年代など林博士の生前や来島前にもたらされた書籍を含む」と、「学芸員のお仕事」で池永さんは書いている。しかし、その事実が判明するまでには多くの苦労があった。
「林記念文庫は図書室の増改築や移転を経る中で再分類され、それぞれのジャンルの書棚に点在していきました。それを一冊ずつ抜き出して、林記念文庫を再編成したんです」と池永さん。

 手掛かりになるのは、本に押された「林記念文庫蔵書」という蔵書印だった。なかには「林児童文庫」の蔵書印がある本もあった。

 閲覧室には、ほかに「歌句詩文庫」「潮騒文庫」もある。
「歌句詩(かくし)文庫」は以前、「北海道書庫」と呼ばれていたもの。2013年・2016年の瀬戸内国際芸術祭で、北側の地区にある一般寮(12寮)にて公開していた。大島は南北に細長いので日本列島に見立て、北地区を「北海道」と呼んでいた。そこに入所者の蔵書を展示するコーナー「北海道書庫」を設置したのだ。
「この図書室に移す際に、ジャンルではなくあえて著者順に並べました。蔵書の中には電気工学、数学などの専門書から文学作品まであるので、その幅広さを感じてほしいという意図です」

 移されるにあたって、整理に関わった滋賀大学の阿部安成さんが「この蔵書のひとつの特徴が、歌人、俳人、詩人の営為にそった貯まりぐあいにある」として、「歌句詩文庫」と命名したという(阿部安成「書史を伝えること、書史から考えること 国立療養所大島青松園で蔵書目録をつくる」、『国立ハンセン病資料館研究紀要』第6号、2019)。

 また、「潮騒文庫」は島内にあった庵治第二小学校が休校する際に寄贈されたものだ。

 さまざまな来歴を経た本が、この部屋に集まってきたのだ。


再編成された林記念文庫と、潮騒文庫

療養所の読書史を

 書庫に足を踏み入れると、本以外にもさまざまな資料が集められていた。自治会の文化活動から生まれた作品なども保管されている。

 棚に並ぶのは、小説や随筆、教養などの一般書だ。小説でいうと、井上靖、柴田錬三郎、川上宗薫、水上勉、松本清張などいわゆる流行作家の本が多い。表の閲覧室に並んでいる本がハンセン病の歴史を学ぶために必要な資料であるのに対して、どこにでもある本が多い。状態も悪い。公共図書館であれば、廃棄の対象にされてしまうだろう。

 しかし、これらはひとつの塊として所蔵されていることが重要なのだ。
「旧協和会蔵書は入所者の中で図書係を務めた方が、丁寧に整理されています。傷んだ本に補修された跡があったり、背表紙を貼り直してタイトルを書き込んだりしています」と、池永さんは云う。

 一冊ごとに押された蔵書印には、「寄贈」「購入」の別、取得年月日、寄贈者名、類別(ジャンル)、整理番号などの情報が記されている。これを手掛かりに調べていくことで、所蔵の経緯や利用のされ方が明らかになるかもしれない。


松本清張など、人気作家の著書は多く読まれていたようだ


協和会(自治会)の蔵書印からさまざまなことが読み取れる

 先に挙げた1952年の「図書室実相」では、「昨年度のベストテン」が紹介されている。林芙美子『あはれ人妻』の27回をトップに、井上靖『その人の名は云えない』、大岡昇平『武蔵野夫人』、舟橋聖一『薔薇と椿の物語』、カミュ『異邦人』、高田保『河童ひょうろん』、尾崎一雄『なめくぢ横丁』、波多野勤子『少年期』などが挙げられている。

 池永さんに調べていただいたところ、このうち5冊は閲覧室にある林記念文庫にあるという。

 社会交流会館では現在、蔵書印を含む本のデータの入力を進めているという。
「そのデータを読み込むことによって、どのような個人や団体が本を寄贈したかという実態が判ってくると思います。本を通して、島の外の人と入所者が交流していた様子を明らかにしたいです」と、池永さんは語る。

 青松園には、自治会が運営してきた図書室のほか、盲人会が運営する点字図書室(1964年設立)やキリスト教信者による「霊交会教会堂」の図書室もある。それぞれの場で、どんな人たちがどのように本と接していたかを想像すると興味深い。

 自分なら、閉ざされた島での生活でどれだけ本を求め、渇きをいやすように読んだのではないか。そう考えながら、帰りの船に乗り込んだ。

追記
現在、大島青松園は、新型コロナウイルス感染症の対策のために、当分の間、来園制限が行われている。入所者を守るために、ご理解、ご協力をお願いしたい。

 
 
 
 
 
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

ツイッター
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国立療養所大島青松園
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古本屋の休日―東北古本屋バイク部ツーリング(秋田編) 【古本屋でつなぐ東北(みちのく)3】

古本屋の休日―東北古本屋バイク部ツーリング(秋田編) 【古本屋でつなぐ東北(みちのく)3】

(青森県・古書思い出の歴史)今村拓志

 当店「古書 思い出の歴史」があるのは、本州最北端青森市です。現在の人口は約二七万人、個人経営の古本屋は三店舗(内組合加入店は誠信堂と当店)。売上げの大部分を占めるのは、ネット販売となります。毎日の業務はパソコンを使っての入力作業がメインとなり、気がつくと丸一日ほぼ会話が無いなんて日も少なくありません。

 そんな引きこもり古本屋の唯一の楽しみが、休日のバイクツーリングとなります。ただ雨や強風の日、それと雪国の宿命で一年の半分は降雪の為乗れないので、年間の乗車率は少なめです。そんな中、二~三年前に宮城県のジェイルハウスブックさんがバイクを購入したとの噂を聞き、顔を合わせる度、いつか一緒にツーリングに行きましょうと話をしており、昨年は新型コロナ禍もあり断念したのですが、今年は二人のスケジュールが合ったので、お互いの中間地点と思われる秋田県への旅をする事となりました。

 一日目、当方は、東北自動車道~秋田自動車を使用。東北自動車道は前日の大雨で一部不通でしたが、手前で降りても大差はないようなので碇ヶ関ICで降り、再度大館北ICから秋田道を利用。

 待ち合わせ場所は「横手市増田まんが美術館」です。漫画原画の保存・展示に力を入れている美術館で、初代名誉館長は「釣りキチ三平」の矢口高雄氏。当方が到着後しばらくしてジェイルハウスさんと合流、ジェイルさんに漫画家の事などを色々聞いていたらあっという間に時間が過ぎついつい長居になり、この後とんでもない目に遭うとは想像もしていませんでした。

 この日は秋田市宿泊のため移動。雨が降ってきました。この時点では小雨のため、ジェイルハウスさんは下半身のみ雨具、当方は雨の日は乗らないので元から用意無し、着の身着のままです(若干厚着)。

 予定では一時間位で到着すると思い一般道(下道)経由・出羽グリーンロードを通って秋田市に向かったのですが、まんが美術館を出発後すぐ本降りの雨になり、少し進んだら大雨、そこから止むこと無く滝のような大雨、道路は川のようになり、全身ずぶ濡れ下着までグッショリでした。途中少し休憩したのですが、とても写真を撮るような状況ではありませんでした。何とか無事に到着、少しだけ 服を乾かし、夜は秋田市・板澤書房の若旦那と一献傾けさせて頂きました。板澤さんの店の周りの様相が変わった話や、再開発で移転しなければならない、毎日仕入れで忙しいことなど伺いました。

 二日目、予定では一緒に角館町に寄る予定でしたが、昨日に続き本日も朝から雨の為、ホテルで解散となりました。朝の天気予報では青森市・雨、仙台市・晴れ予報。

 出発、昨日より幾分マシでしたが、それでも上小阿仁村付近は道路に水が溜まる位の本降りでした。途中止むこと無く降っていたので走り続け、少し雨が弱まった大館市のコンビニで小休憩し青森市に向かいました。青森県に入ると雨もだいぶ弱まり、時折晴れ間も覗くようになり、弘前市に入った頃には雨は止んでいました。無事到着、青森市は少し風がありましたが、雨は完全に上がっていました。後ほどジェイルハウスさんに 聞いたら秋田~宮城(仙台)は強風と大雨だったそうです。 非常に大変な旅でしたが、こ んな経験もバイクならでは。無事終わってみると良い思い出かも!?来年は大船渡を予定しております。部員も随時募集中ですのでよろしくお願いします。

 

 

 

(※写真は上から東北道津軽SAで背景は岩木山、横手市増田まんが美術館、ずぶ濡れになった二台)

 
 
(「日本古書通信」2022年10月号より転載)

 
 
 
 


『増補新版 東北の古本屋』 折付桂子著
文学通信刊
ISBN978-4-909658-88-3
四六判・並製・312頁(フルカラー)
定価:本体1,800円(税別)好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-88-3.html

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2022年12月26日号 第361号

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☆INDEX☆
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1.国会図書館秘伝?――ネットと本での調べものに『調べる技術』をどうぞ

                  小林昌樹(近代出版研究所)

2.ようこそ、大学出版の世界へ

                  山田秀樹(東京大学出版会)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━━【自著を語る(303)】━━━━━━━━━━

国会図書館秘伝?――ネットと本での調べものに『調べる技術』をどうぞ

                   小林昌樹(近代出版研究所)

 去年から今年にかけて、懇意の出版社、皓星社さんのメルマガで「在
野研究者のレファレンス・チップス」なる連載をしました。それを今回、
同社から『調べる技術』という本にまとめて出したのでご紹介します。

 前職場――国立国会図書館(NDL)――でレファレンス(調べもの)担
当司書を15年ほど体験したのですが、その時のノウハウを書き出したのが
本書です。意外と書かれていないコツや予備知識などを書きました。

 この本は、当初の連載タイトルにあるように在野研究者をはじめ、趣味
人、校正者、編集者、ライターなどの方々向けを意識して書いたのですが、
卒論を書く学生さん、それを指導する大学の先生にも役立つと思います。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10575

小林昌樹(こばやし・まさき)
 1967年東京生まれ。1992年慶應義塾大学文学部卒。2021年国立国会図書館
を早期退官し、慶應義塾大学でレファレンス論を教える。近代出版研究所主
宰。近代書誌懇話会代表。専門は図書館史、近代出版史、読書史。

執筆リスト
https://researchmap.jp/shomotsu/

『調べる技術――国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』
小林昌樹 著
発行元:皓星社
ISBN:978-4-7744-0776-0
定価:2,000円+税
好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407760/

━━━━━━━━━【大学出版へのいざない1】━━━━━━━━━━━

ようこそ、大学出版の世界へ

                    山田秀樹(東京大学出版会)

 大学出版部――このメルマガを読むほどの知識欲あふれる人にとっても、
この言葉は堅苦しく響くかもしれない。

 学術研究と大学教育の成果を刊行する大学出版部は、「大学」という最
高学府が生み出す学知をネタにしている点では、硬派にちがいない。しか
しながら、その学知を「出版」として不特定の人向けに分かりやすく伝え
るという点では、軟派たらんとしている。「むつかしいことをやさしく、
やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく……」と続く井上ひさし
の寸言は、なるほど、我らの活動にも当てはまるのでないか。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10564

書名:『季刊「大学出版」132号』
出版社名:一般社団法人大学出版部協会
判型/製本形式/ページ数:A5判/中綴じ冊子/32ページ
税込価格:100円
https://www.ajup-net.com/daigakushuppan

━━━━━━━━━━━━【プレゼント企画】━━━━━━━━━━

『季刊「大学出版」132号』を、抽選で20名様にプレゼント致します。
ご応募お待ちしております。

応募申込は下記ページにてお願い致します。
 締切日 12月28日(水)午前10時

https://www.kosho.ne.jp/entry2022/1226.html

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
『明治・大正・昭和の出版が歩んだ道』
  ―近代出版の誕生から現代までの150年の軌跡―
出版メディアパル刊
能勢仁・八木壯一共著
定価 1,980円(税込)
ISBN:978-4-7744-0776-0
好評発売中!
https://www.murapal.com/books.html
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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「大学出版へのいざない」シリーズ 第2回

九州大学出版会刊『近代初期イギリス演劇選集』
執筆者:鹿児島近代初期英国演劇研究会 代表 大和高行
https://kup.or.jp/
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「2022年の古ツアをふり返る」(仮題) 
古本屋ツアーインジャパン 小山力也
http://furuhonya-tour.seesaa.net/
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━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

12月~1月の即売展情報

※新型コロナウイルスの影響により、今後、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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日本の古本屋メールマガジン その361・12月26日

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