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ネット文化資源を作るガイドたるべく

ネット文化資源を作るガイドたるべく

岡田一祐

『ネット文化資源の読み方・作り方 図書館・自治体・研究者必携ガイド』(文学通信)という本を刊行した。タイトルの「ネット文化資源」とは、インターネット上で公開される文化資源のコレクションを手短に言ってみたものである。 最近話題のデジタルアーカイブのほか、インターネット上で文化資源のコレクションを構築することに関わる内容について紹介しているものだ。

本書の元になったのは、メールマガジンに連載していた「デジタル日本研究」に関する時評である。デジタル日本研究とは聞きなれない分野だろうが、デジタル技術を積極的に活用した日本研究というほどの意味である。このような分野は、総体的に人文情報学ないしデジタル人文学という呼称が与えられ、目立たないながらも数十年の歴史を有している。国立国語研究所に大型コンピューターが入ったのは、1960年代の早きに属し、70年代にはいくつもの文系研究機関で計算機の導入が相次いだ。「デジタル日本研究」は、その日本研究への応用というほどの意味で、専門分野というよりは、デジタル技術の利活用をしたものを取り上げたということになる。本書をもともとのテーマでまとめずに、ネット文化資源の本としてまとめることになったのは、あたらしいサービスやコンテンツ、技術動向などをよくいえばひろく、じっさいのところをいえばかんがえもなしに取り上げたことによる。

書名に「読み方」と付けたのは、ネット文化資源をいわば文献学的に位置づけることを意図したからである。べつのところにも書いたが(「もっと記述のことばを、あるいは『ネット文化資源の読み方・作り方』の長い後書き」『人文情報学月報』97号、 https://w.bme.jp/bm/p/bn/htmlpreview.php?i=dhm&no=all&m=9&h=true )、 ネット上の情報資源は概して儚い。きょうあると思っていたものが突然サービスを停止することこそ最近は減ったものの、比較的長い告知期間はあったにせよ、Yahoo! Geocitiesはたくさんのすぐれたウェブサイトとともに消えていった——組織的保存もされずに(消えてしまったなつかしいサービスには@nifty omepage、Lycos Tripodなどもあった)。Internet Archiveなどの保存サービス はあるものの、収集し切れてはいないし、最近はやりの機能盛りだくさんのサイトにも対応できていない。そこでやはり残るのは言葉による記述である。そのため、紙幅の制限はありつつ、後世の資料となるような記述を心がけた。それを繰り返していたら一冊の本の長さになっていったというのが実感である(連載は上記の月報でまだ続いている)。

書名のもう一方の「作り方」のほうはもうすこし現実的で、そのような構築に携わる際の資源の扱い方、技術の取り入れ方について論じたからである。しかし本書を読んでも、直接的なガイドはなく、デジタルアーカイブは作れない。それでもなお「作り方」ということばを付け加えたのは、なにかを作るにあたって先行事例をどう読み解くかがけっきょく大きく関わるからである。読むことが作ることに先立つ、そのような意図が本書の題名には込められている。そのような意味で、本書が今後ネット文化資源を作るガイドたれば、それに優る幸いはない。

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『ネット文化資源の読み方・作り方 図書館・自治体・研究者必携ガイド』
岡田一祐 著 文学通信 刊 定価:本体2,400円(税別) 好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-14-2.html

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『戦時下の映画 日本・東アジア・ドイツ』について

『戦時下の映画 日本・東アジア・ドイツ』について

岩本憲児

 本書に関しては「編者の一人として語る」ことになるが、そのまえに、本書より先に刊行された森話社の「日本映画史叢書」についてふれておきたい。この叢書の企画と編纂にも私は関わっており、全15巻が完了したとき、書評紙で「戦争に関わるテーマが多い」と書かれたことがある。拾い出してみると、『日本映画とナショナリズム1931-1945』(第1巻)、『映画と〈大東亜共栄圏〉』(第2巻)、『映画のなかの天皇 禁断の肖像』(第9巻)、『映画と戦争 撮る欲望/見る欲望』(第10巻)、『占領下の映画 解放と検閲』(第11巻)があり、第10巻を除き他は私の編著である。

 叢書完結(2011年)のあと、『日本映画の海外進出 文化戦略の歴史』を編纂(2015年)、ここでも私は映画史初期から戦時下までを俯瞰して執筆した。このように、「日本映画史叢書」を機に、もともとモダニズム映画・芸術を研究テーマにしていた私の関心は「戦争の時代の日本」へ移ってきた。

 ところで、「戦時下の映画」という書名を一般読者が目にするとき、イメージとして真っ先に浮かぶのは映画作品のことだろう。ついで、監督の名前や俳優の顔が浮かんでくるだろう。すると、本書は一般読者のイメージとそれに伴う期待をはぐらすことになるかもしれない。とりわけ、日本映画に関する前半(第一部)の各論は、具体的な対象を中心に論じていないからである。

 書名の「戦時下」とは日中戦争に端を発し、太平洋戦争へと至る時期、広くは1931年の満洲事変から1945年の戦争終結期(いまでは「アジア・太平洋戦争」)までを対象とした。次に「映画」であるが、本書では、「あとがき」に記したように、「アジア・太平洋戦争期、映画はどのように時代と関わり、時代に対応してきたのだろうか」を大きな括りとした。国内の課題としては、戦時体制がもたらした「映画界」の変化と対応に重点を置き、これまで論じられることの少なかった領域へ眼を向けた。

 すなわち第一部「戦争の時代と映画」には6本を収録――順に「「映画戦」への遠い道程」(岩本)、「映画統制構想の展開と映画工作」(加藤厚子)、「戦ふ映画館」(近藤和都)、「日中戦争下の農村巡回映画の活動」(平賀明彦)、「教化映画か教材映画か」(渡邊大輔)、「戦時下の映画ジャーナリズム」(古賀太)など。戦時下では日本映画界が海外へ、とりわけ中国や東南アジアへ、国策に協力するかたちで否応なく対峙していくことになったため、後半の第二部「越境する映画」には8本を収録した――「初期満映について」(上田学)、満映の「『東遊記』論」(門間貴志)、「朝鮮映画の戦時体制」(鄭琮樺)、「越境する植民地劇場」(李相雨)、「映画と台湾総督府の南進政策」(李道明)、「占領下の上海映画と日本映画」(晏妮)、「”大東亜の歌姫“李香蘭の表象性」(秦剛)、「ドイツの銀幕における〈大東亜戦争〉」(ハラルト・ザーロモン)など。

 第二部の「越境性」は当時の映画界が担った大きな課題である。一方に<日本帝国の拡張と膨張>を抱え込み、片方に<プロパガンダと侵略>を背負い込んだ日本映画はどのように対応したのだろうか、そして周辺諸国はどのように反応したのだろうか。なお、戦時下の日本映画界は国策と厳しい検閲に縛られながら、海外で日本映画の普遍性とは何かという問題にも直面した。編者の一人、晏妮をはじめ、現代の中国・韓国・台湾・ドイツの研究者たちにも執筆の協力を仰ぎ、本書ができあがったのである。

senji

『戦時下の映画──日本・東アジア・ドイツ』岩本憲児・アン ニ編
森話社刊 本体:4500円+税 好評発売中!
http://www.shinwasha.com/

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☆古本乙女の独りごと⑤ 私的古本屋店主考

☆古本乙女の独りごと⑤ 私的古本屋店主考

カラサキ・アユミ

学生時代、当時複数通っていた古本屋の中でもとりわけ〝堅い独特な緊張感〟を漂わせる一軒があった。均一本が詰め込まれた底の浅い木箱等を地面にテトリスのように配置した店先、開け放たれた入り口をくぐると出迎えてくれたのは昼間でも薄暗い店内だった。コンクリートの地面に直に積まれたおびただしい量の雑誌やら図録、そう高くはない天井に向かって連なりそびえ立つ棚には下段から上段までぎっしりと文庫本、新書、ハードカバー本が詰め並べられていた。そして、店の奥の更に薄暗い帳場には微動だにせず椅子に座りこちらには一切目もくれない老店主。その店主の眼鏡が異様に存在感を放っていたのであった。お前さんのようなアマチュア古本好きはまだまだだ!と言わんばかりのオーラが放たれていて(完全に私の妄想だが。)そんな店主に対して私は畏敬の念を抱きながら棚を物色させてもらっていた。

 その古本屋に通い始めて二年ほど経ったある日、会計時に初めて店主に話しかけられた。釣銭を渡される時の「ありがとうございました…」の声、それも微かな声量しか聞いたことのなかった私にとって、アルプスの少女ハイジの車椅子のクララが立ち上がった際の〝クララが…クララが立った‼︎〟レベルに驚いた瞬間であった。他愛もない話をした後おもむろに店主は私に一冊の本を手渡してきた。どうやら店主が最近自費出版した本らしい。だがしかし私にはまるでチンプンカンプンな哲学的な難しい内容だった。だがここは知識の浅さを露呈せずに堂々とせねば、と「スゴイですねー‼︎」を私はひたすら連発した。そんな私の様子も見透かしたかの様に店主はさて本題に入ります、といった空気で話を続けた。「とにかくこの本はいいよ。我ながらいい本だよ。どう…?試しにさ。」

 店を出た私の手には先程の本が収められていた。買ったのだ。全く興味のない一冊の本を。なかなか高額な定価で。財布の中に残していた昼飯代も無くなってしまった。仕方ない、今日はコンビニの安いオニギリで済ませるか…と腹の虫を鳴かせながらも、不思議な高揚感に満ち満ちていた。結局買った本は読まずじまいのままだった。

 人には「いいカモだったんだよ、アンタ」と言われるかもしれないが、いや、現にカモにされたわけだが、それでも当時の私にはとても嬉しい出来事だった。あの寡黙な店主が私に笑いかけ話しかけてくれた、その感動に代金を支払ったわけである。そう思う程に私にとって〝古本屋店主〟という存在はなんだか特別な存在なのだ。昔も今もこれからも。

karasaki5
『全古書連ニュース』より転載

otome5
東京古書組合発行 『古書月報』より転載

hibi
『古本乙女の日々是口実』皓星社
価格1,000円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/furuhonotome/

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2019年10月10日 第284号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第81号
      。.☆.:* 通巻284・10月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛け下さい。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━【キャッシュレスポイント還元のお知らせ】━━━━━━

10月1日より「日本の古本屋」サイトにて、キャッシュレス決済で
ご購入頂くと、お客様に5%のポイントが還元されます。

これは、キャッシュレス化の推進を目的に、経済産業省が主体と
なって行う事業で、消費税率引き上げ後の2019年10月から2020年
6月までの間、日本の古本屋でキャッシュレス決済を行って頂くと
決済金額の5%が還元されます。

■実施期間
  2019年10月01日~2020年6月30日 まで

■対象の支払い手段
「日本の古本屋」でのキャッシュレス決済はクレジットカード
での決済になります。

※キャリア決済、Apple Payは対象外となります。

また、対象となるクレジットカードは6大国際ブランドです。
 (VISA、マスターカード、JCB、ダイナースクラブ、
      アメリカンエクスプレス、ディスカバーカード)

この機会にぜひご利用ください!

━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

第一回 古本屋稼業十年目の呟き

                    善行堂 山本善行

 仕入れてきた本を、何も考えず、そのまま店の棚に並べておくと、
いつの間にか、そのほとんどが売れて無くなっている。するとすぐ、
誰かが読み終わった本を、店に持って来てくれる。それを空いた棚
に入れると、たちどころにまた売れてしまう。もしこれが本当であ
ったなら、古本屋は最高の職業の一つだろう。実際は、少し大げさ
に言うと、百円の本を売るのにも、作戦を立て、知恵を絞り、本を
大量に動かして、やっと売れるという有様である。

続きはこちら
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山本善行

2009年、銀閣寺近くに「古書善行堂」を開店する。
著書に「古本泣き笑い日記」「関西赤貧古本道」「漱石全集を買
った日」など。
雑誌「APIED」と関西ジャズ情報誌「WAY OUT WEST」に連載中。

━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

第10回 山本幸二さん 集めて記録して手放すひと

                       南陀楼綾繁

 5月のある日、私は神戸・元町の喫茶店で人を待っていた。
〈チェリー〉というその店は、いまでは各地で姿を消しつつある普
通の喫茶店で、その時間はまだ空いていた。
「お待たせしましたか?」と入ってきたのは、物腰が丁寧で、温厚
そうな人だった。この喫茶店の近くにある〈花森書林〉の森本恵さ
んに、神戸で取材したら面白い古本好きを紹介してほしいと頼んだ
ら、紹介してくれたのがいま目の前にいる山本幸二さんだった。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5211

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━【10月10日~11月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2019/10/10~2019/10/13
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
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城南古書展

期間:2019/10/11
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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第21回 八王子古本まつり

期間:2019/10/11~2019/10/15
場所:八王子駅北口ユーロード
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京都マルイ秋の古本市(京都府)

期間:2019/10/11~2019/10/14
場所:京都マルイ(四条河原町)1階店頭 四条通側
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第11回横浜めっけもん古書展(神奈川県)

期間:2019/10/12~2019/10/13
場所:神奈川古書会館1階特設会場
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丸善秋の古書市(鹿児島県)

期間:2019/10/12~2019/11/20
場所:丸善天文館店 地下3階特設会場 鹿児島誌中町3-15
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第50回 鶴屋古書籍販売会(熊本県)

期間:2019/10/16~2019/10/22
場所:鶴屋百貨店本館 6階会場 熊本市中央区手取本町6-1
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ぐろりや会

期間:2019/10/18~2019/10/19
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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本の散歩展

期間:2019/10/18~2019/10/19
場所:南部古書会館  品川区東五反田1-4-4
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フィールズ南柏古本市(千葉県)

期間:2019/10/18~2019/10/31
場所:フィールズ南柏モール2 2階催事場 柏市南柏中央6-7
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秋の古本掘り出し市(岡山県)

期間:2019/10/23~2019/10/28
場所:岡山シンフォニービル1F 自由空間ガレリア
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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2019/10/24~2019/10/27
場所:JR浦和駅西口さくら草通り徒歩5分マツモトキヨシ前
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アモール古本市(北海道)

期間:2019/10/24~2019/10/29
場所:旭川市豊岡3条2丁目2-19
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イービーンズ古本まつり(レコード・CD市 併催)(宮城県)

期間:2019/10/24~2019/12/08
場所:宮城県仙台市青葉区中央4-1-1 9階 杜のイベントホール
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神田古本まつり特選古書即売展

期間:2019/10/25~2019/10/27
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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第60回 東京名物 神田古本まつり(青空古本市)

期間:2019/10/25~2019/11/04
場所:神田神保町古書店街(靖国通り沿い・神保町交差点ほか)
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好書会

期間:2019/10/26~2019/10/27
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
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第14回 にしお本まつり(愛知県)

期間:2019/10/26~2019/10/27
場所:愛知県西尾市立図書館/西尾市岩瀬文庫
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第43回 秋の古本まつり-古本供養と青空古本市-(京都府)

期間:2019/10/31~2019/11/04
場所:百萬遍知恩寺境内 京都府京都市左京区田中門前町103
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東京愛書会

期間:2019/11/01~2019/11/02
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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古書愛好会

期間:2019/11/02~2019/11/03
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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新橋古本まつり

期間:2019/11/04~2019/11/09
場所:新橋駅前SL広場
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洋書まつり

期間:2019/11/08~2019/11/09
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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第10回 上野広小路亭古本祭り

期間:2019/11/11~2019/11/17
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36
台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階
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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2019/11/14~2019/11/17
場所:JR浦和駅西口さくら草通り徒歩5分マツモトキヨシ前
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 次回は2019年10月下旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

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全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

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日本の古本屋メールマガジンその284 2019.10.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
 編集長:藤原栄志郎

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第10回 山本幸二さん 集めて記録して手放すひと

第10回 山本幸二さん 集めて記録して手放すひと

南陀楼綾繁

5月のある日、私は神戸・元町の喫茶店で人を待っていた。〈チェリー〉というその店は、いまでは各地で姿を消しつつある普通の喫茶店で、その時間はまだ空いていた。
「お待たせしましたか?」と入ってきたのは、物腰が丁寧で、温厚そうな人だった。この喫茶店の近くにある〈花森書林〉の森本恵さんに、神戸で取材したら面白い古本好きを紹介してほしいと頼んだら、紹介してくれたのがいま目の前にいる山本幸二さんだった。
 さぞや年季の入った古本コレクターなのだろうと思ったら、「私は2011年から本格的に古本屋をめぐりはじめたんです」と云う。けっこう最近じゃないか。しかし、山本さんのお話を聞いていくと、この人の人生は「集めること」と不可分なのだと判ってきた。

 山本幸二さんは、1951年に神戸市の中央区に生まれた。実家は光村印刷という会社を営んでいた。東京の光村印刷は神戸で創業したが、東京に移ったあと、神戸では別の人が経営し神戸光村印刷となり、その後、山本さんの祖父が引き継いだのだという。
 同社は主に宣伝物の印刷を手掛けており、私がこの前日に大阪の〈本は人生のおやつです!!〉でトークをしたジュンク堂難波店店長の福嶋聡さんが、神戸で俳優として所属していた劇団のチラシやパンフレットも印刷していたそうだ。

「母は本好きでしたが、子どもの頃の私はあまり本を読んでいません。小学生の時に『世界の国々』という本を読んで地理が好きになり、中学生の頃は貝殻を集めていました。兄が白川峠に化石採集に連れて行ってくれたことから、高校では地学部に入りました」
高校のときは、化石を集めたり、星の写真を撮りに行ったりした。学校の図書館で天文や鉱物の本ばかり読んでいた。当時購読していたのが、日本気象協会発行の『地球の科学 cosmos』。「世界の熱帯低気圧」などの特集を組んでいる。「自然科学系の本ばかり読んでいて、文学はウソだと思っていました(笑)」とおっしゃる。高校では小説やエッセイしか読んでいなかった私とは真逆だ。

 大学では経営学部に入る。クラブは地理研究会に属し、過疎地帯を調査して、報告書をつくった。
 この頃、はじめて古本屋に行き、岩波新書を買った。つくり話だと思っていた文学も読むようになり、高橋和巳、安部公房、野坂昭如などを読んだ。
「『妊婦たちの明日』(角川文庫)を読んでから、井上光晴を集めるようになりました。暗いところが好きでした。この頃は元町、三宮の古本屋と、〈コウベブックス〉〈日東館書林〉〈海文堂書店〉〈丸善〉などの新刊書店をめぐっていました」

 卒業後は、船舶用のエンジンメーカーである阪神内燃機工業に入社。一貫して、経理畑で仕事をしてきた。その頃から、野鳥の会に属し、山や川で野鳥の羽を集めた。それらを洗って分類し、クリアファイルに収める。
「なんでも分類して、記録することが好きなんですね。山に行った記録や、流れ星の観測記録なども付けています」

 この頃になると、純文学の単行本が古本屋で安く買えるようになった。山本さんは新潮社の「純文学書下ろし特別作品」シリーズを集めた。
「装丁が統一されているので、集めやすいです。最後の方に函入りでなくなったときは、がっかりしました」
 話を聞いていると、この頃からそれなりに古本も集めているように思えるが、当時の山本さんのなかでは他のコレクションほど古本に重きを置いてなかったのかもしれない。

 そして2011年、山本さんに転機が訪れる。転勤で元町の本社に通勤するようになった。会社はそれ以前しばらく経営的に厳しかったが、業績が上がって余裕もできた。
「古本も安くなったし、バンバン買えるようになったんです」と山本さんは笑う。
 直接のきっかけは、〈海文堂書店〉が常設していた古本の棚を見たことだ。そこに本を出していた元町の〈トンカ書店〉で井上光晴の本を買い、毎週通うようになった。そして、京都から姫路まで、阪神間にある古本屋を訪れ、大量に買った。
「文学では井上光晴をはじめ、井上荒野、梨木香歩、川上弘美、干刈あがた、鈴木いずみなど。他にも地理や民俗学、鉱物、映画本などいろいろ買います」
 これだけ買って、相当数の本を読むというからすごい。

 山本さんはインターネットでは本を買わず、古本屋に足を運ぶ。文庫は1000円までなど、価格の上限を決めている。
「〈ハニカムブックス〉では鳥の本を買うとか、自分でルールを決めています。それと、女性店主の古本屋は応援しています。昔の古本屋の店主は男が多くて、帳場の奥に座っていましたが、女性店主は立って接客している人が多いのがいいです。女性店主の古本屋が栄えると、本の幅が広がっていくと思います」

 とくに〈トンカ書店〉の森本さんは「客の分け隔てがなくて、楽しんで仕事をしているのがいい」そうで、開店10周年のときは、集めてきた「純文学書下ろし特別作品」を全冊放出し、店でフェアを行った。
 山本さんは、ひとつのコレクションがだいたい集まってきて、先が見えてくると、まとめて古本屋に売るのだという。それを「卒業」と呼んでいる。
「集めて、記録して、手放して卒業、というサイクルですね。それで次のコレクションに行くんです。古本屋で買った本は古本屋さんに戻すのが自然だと思うので」
 コンプリートに近い状態で処分するのだから、古本屋にとってこんなにありがたい客はいないだろう。
 しかも、山本さんは買った本の表紙をカラーコピーし、リストもつくっている。「いちど手元にあった証拠」だというが、処分するときにはそのリストも一緒に渡すそうだから、これもありがたい話だ。
 最近では、〈トンカ書店〉が移転して今年2月に〈花森書林〉として開店したのを祝して、これまで集めてきた福武文庫約400冊を放出するフェアを行った。取材時にはすでに半分売れてしたが、私も阿部昭編『葛西善蔵随想集』など何冊か買った。
 いまは、講談社文芸文庫を集めているそうだ。
「1000点以上あって、いまでも刊行中なので、全部集めるのは諦めて、ひとりの作家につき2冊までにしようかなどと悩んでいます」
 その様子は本当に楽しそうで、どっちでもいいから好きにすれば? と突き放す気も起きなかった。

 しかし、それだけ買っていれば、家のなかは大変だろう。
「たしかに本だらけですね(笑)。でも、置く場所はだいたい決まっていて、本棚にも岩波新書は番号順、文庫は作家別に並べています。入りきらない本は段ボール箱に入れています」
 また、各地方の観光パンフレットや映画のチラシも数千枚あり、若い頃から集めてきた化石や鉱物もある。山本さんはそれらをすぐに取り出せるようにしているようなのだ。
 私は部屋が狭いから、探している本が見つからないと弁明を重ねてきたが、本当はスペースの問題ではなく、整理することができるかどうかという性格の問題だったのだろう。うすうす気づいてはいたけれど……。

「買った本はその日のうちに、リストにつけて整理しないと忘れてしまいますね」と山本さんはおっしゃるが、それができる人がうらやましい。
 ダブって買った本は、会社の図書室に寄贈する。山本さんは会社の図書部にも属して、本の整理を行っているという。同社の社史(『阪神内燃機工業百年史』)は、山本さんの古本屋とのつながりから、神戸の出版社・苦楽堂が編集している。
「古本屋に通うようになって、店主やお客さんなどいろんな人たちと出会って、話ができるようになったのはとてもよかったです」と、山本さんは語る。

 取材を終えて〈花森書林〉に行くと、店主の森本さんが笑顔で迎えてくれた。福武文庫の本棚に立って、「あの本が売れた」などと話す二人を見ているとほのぼのとした気持ちになる。誰とも競わずに自分の好きな本を集めていって、古本屋さんにも愛される。素敵な古本人生だと思う。
「コレクションのテーマは次々に出てきますね。他に行くところもないので、これからも古本屋めぐりは続いていくでしょうね」と、山本さんは笑った。

南陀楼綾繁
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)などがある。

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『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
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第一回 古本屋稼業十年目の呟き

第一回 古本屋稼業十年目の呟き

山本善行

 仕入れてきた本を、何も考えず、そのまま店の棚に並べておくと、いつの間にか、そのほとんどが売れて無くなっている。するとすぐ、誰かが読み終わった本を、店に持って来てくれる。それを空いた棚に入れると、たちどころにまた売れてしまう。もしこれが本当であったなら、古本屋は最高の職業の一つだろう。実際は、少し大げさに言うと、百円の本を売るのにも、作戦を立て、知恵を絞り、本を大量に動かして、やっと売れるという有様である。皆さん、周りの古本屋を見てください、滅茶苦茶働いていますよ。私も定休日の火曜日に、業者の市場があるので、ほとんど休みなくこの十年、働いてきました。

 でも、そんな古本屋生活でも、楽しみはある。やせ我慢みたいな文章になるとは思うが、そのことを書いてみたい。私の場合、お客さんと話をしながら本を売るスタイルなので、本の内容を知っていた方がいいのだ。本を読むことが仕事につながるわけで、私にとって仕事が苦にならない。古本屋はあまり本を読まない方がいいという人もいるが、またそういう面も実際あると思うが、しかしこれは仕方のないことで、私は読むことを武器とするしかないのである。

 例えば、竹下彦一という作家の話をしよう。詩集や句集、エッセイ集など、著書は多いが、おそらく、その一冊を棚に差しておいても、なかなか売れないと思われる。でも竹下彦一という人物を明らかにしていけば、興味を持つお客さんがきっと現れると思う。

 私は最初、タバコの箱を綴じて本にしたのを見て、竹下彦一に興味を持った。ちょっと調べて見ると、この竹下彦一、なかなか面白い作家であった。日本大学工学部で柔道を教えていたこと(講道館八段)や、カルヴァドスの会会員でもあったことがわかる。

 こうなると調べることが面白く楽しくなってくる。そしてやはり一冊本が欲しくなります。こういうときには「日本の古本屋」が便利で、私が買ったのは「ロココ風な喫茶店」という詩集だった。

 二枚半の紙を折り、段ボールで挟んだ、という簡単なもので、装幀は池田勝之助、印刷は植田秀雄、昭和29年、カルヴァドスの会刊行、限定二百部の本であった。池田勝之助は小川未明の「生きぬく力」という童話の挿絵を書いた画家だったことも知る。

 さてこの『ロココ風な喫茶店』であるが、読んでみるとなかなか面白い。喫茶店と珈琲と詩集が好きな著者の姿がそのままストレートに語られている。あとがきでは、名古屋のカフェー「パウリスター」のことにも触れ、五銭で香高い珈琲を飲ませてくれたとか、詩を書くようになったのは珈琲のためだとか、書いている。「小さい幸福」という詩は、こんな短い詩なのだ。/わたしの膝の上には/新刊の詩集/わたしの卓には/一杯の熱い珈琲/

 心から好きなことを、次から次に並べて、分かりすぎるような詩は、現代詩からみると、物足りないようにも感じるが、新鮮でもあった。その後「喫茶店にて」という詩集も入手することになる。この詩集には、年譜がついていたので竹下彦一のことをさらに知ることになる。

 今は、カルヴァドスの会について調べているが、こうなると、竹下彦一の本もだんだんと光を放つようになってくる。ただ、もっと調べたくなってまだ売らなくてもいいか、などと思うので、結局、本はなかなか売れないということに変わりなく、ただ調べて遊んでいるとも言えるのである。

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『漱石全集を買った日』山本善行 清水裕也 著
夏葉社 刊 本体1300円+税 好評発売中!
http://natsuhasha.com/

山本善行
2009年、銀閣寺近くに「古書善行堂」を開店する。
著書に「古本泣き笑い日記」「関西赤貧古本道」「漱石全集を買った日」など。雑誌「APIED」と関西ジャズ情報誌「WAY OUT WEST」に連載中。

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2019年9月25日 第283号

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☆INDEX☆
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1.『街灯りとしての本屋 11書店に聞く、
      お店のはじめ方・つづけ方』について 田中佳祐
2.文化記録映画「春画と日本人」について    大墻 敦
3.俳句雑誌『ホトトギス』について     稲畑廣太郎

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━━━━━━━━━━━【自著を語る(231)】━━━━━━━━━

『街灯りとしての本屋 
     11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』について

                        田中佳祐

何年か前に、韓国を旅行した。航空券を取り、美術館をめぐり、
ローカルフードを食べ、目的も無く数日を過ごした。
どこかの街を歩いていた時に、一件の書店を見つける。おそらく
チェーン店ではなく、個人書店だと思う。店内は薄暗く、ドアに
は張り紙があった。書かれている韓国語をスマートフォンで読み
取り翻訳すると、こういうことが書いてあった。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5175

『街灯りとしての本屋 
    11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』
田中佳祐 著  竹田信弥 構成
雷鳥社刊 本体1600+税 好評発売中!
http://www.raichosha.co.jp/bcitylight/index

━━━━━━━【文化記録映画「春画と日本人」】━━━━━

文化記録映画「春画と日本人」について

                       大墻 敦

 私が監督をつとめた文化記録映画「春画と日本人」(87分)は、
数年前に感じたいくつかのWhy? から製作が始まりました。イギリ
スで高い評価を受けた大英博物館春画展の巡回展の実現が滞ってい
る?、書店でなんら修正がほどこされていない春画の本を立ち読み
できるのに、なぜ展覧会での展示に関係者は逡巡するのだろうか?
そして警察も神経質になっていると耳にした。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5169

「世界が、先に驚いた。」 あの春画展から4年
驚きの内幕を描くドキュメンタリー

文化記録映画「春画と日本人」
監督・撮影・編集・製作著作:大墻敦(2018年/87分/カラー/16:9)
2019年9月28日(土) ポレポレ東中野にてロードショー 

2019年秋 大阪・第七藝術劇場、京都シネマ、
名古屋・シネマスコーレ公開決定 順次全国公開

「春画と日本人」上映情報
https://www.shungamovie.com/showtimes

━━━━━━━━━━【編集長登場シリーズ】━━━━━━━━━

  ホトトギス

                   稲畑廣太郎

 中学か高校の教科書で「ホトトギス」という俳句雑誌が嘗て発行
されていた、ということを御存知の方は多いだろう。しかしその雑
誌が途切れることなく、現在令和の世になっても発行し続けられて
いる、ということを御存知の方は少ないのではないだろうか。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5182

俳句雑誌『ホトトギス』
合資会社 ホトトギス刊 定価:1,750円 好評発売中!
http://www.hototogisu.co.jp/

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『戦時下の映画──日本・東アジア・ドイツ』岩本憲児・アン ニ編
森話社刊 本体:4500円+税 好評発売中!
http://www.shinwasha.com/

『ネット文化資源の読み方・作り方 図書館・自治体・研究者必携ガイド』
岡田一祐 著 文学通信 刊 定価:本体2,400円(税別) 好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-14-2.html

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

9月~10月の即売展情報

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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日本の古本屋メールマガジンその283 2019.9.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
編集長:藤原栄志郎

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shunga

文化記録映画「春画と日本人」

文化記録映画「春画と日本人」

大墻 敦

 私が監督をつとめた文化記録映画「春画と日本人」(87分)は、数年前に感じたいくつかのWhy? から製作が始まりました。イギリスで高い評価を受けた大英博物館春画展の巡回展の実現が滞っている?、書店でなんら修正がほどこされていない春画の本を立ち読みできるのに、なぜ展覧会での展示に関係者は逡巡するのだろうか? そして警察も神経質になっていると耳にした。コンビニでも普通に春画に関するムック本が販売されている、もちろん無修正です。さらに、かつては学会でも春画を研究することは御法度だったと聞きました。20年ほど前までは「春画ありますか?」と尋ねる客に、古書店店主のなかには「うちではそんなものは扱わない!」と怒る方もいらっしゃったとか。Why? 日本人と日本の社会は、春画とどのように向き合ってきたのだろうかという謎を突き詰めて考えてみたいと思いました。

日本初の大規模な春画展が東京の小さな私立博物館「永青文庫」で開幕したのは2015年9月のことでした。国内外で秘蔵されてきた貴重な春画約120点を一堂に集めて展示する画期的な試みに、来場者の方々の顔はほころんでいるように感じました。それまで年間2万人の来館者だった永青文庫に、3ヶ月の会期中に21万人が押し寄せました。そして、女性来館者55%、5人に1人が図録を購入するという異例の記録を打ち立て、美術界の話題をさらったのです。

 私は浮世絵の愛好家であって専門家ではありません。しかし、研究者たちが評価する芸術性に優れた春画には、肉体を立体的に描写する線の力、人肌や着物などの鮮やかな色彩と光沢を表現する技術、そして江戸の浮世絵師たちの卓越した世界観や構図感覚があり、今も私たちを感動させる力をもっていると感じています。それは、展覧会で本物を見ることによって心に響いてきます。
葛飾北斎、喜多川歌麿、菱川師宣ら当代きっての浮世絵師のほとんどが絵筆をとり、当時最高水準の彫りと摺りの技術を用いた傑作がたくさん生まれたのですが、明治時代になると近代化を急ぐ政府は春画を徹底的に弾圧しました。そして、たいへん残念なことに、何万の春画、数千の版木が燃やされ、名品の数々が海外に流出しました。日本人の春画との向き合い方を、急激に変化させた近代化とは何だったのだろうか。これも、映画のテーマのひとつになりました。

太平洋戦争が日本の敗北に終わり、新憲法が誕生し、民主主義の世の中が訪れると、表現の自由が広く認められるようになりました。しかし、春画は猥褻物として扱われ、その真価が認められるようになるには長い時間がかかりました。映画製作の過程で、表現の自由の中でも「展覧会の自由」「売買の自由」「研究の自由」「出版の自由」の4つの自由について、私自身は深く考えさせられました。4つのうちひとつでも欠けている状態は、社会にとっても、研究を進める上でも不健康な状態だと思います。

研究者の方々に伺った話の中で印象的だったことがあります。江戸の絵師たちは、役者絵、美人画、風景画も春画も同時に製作していたし、同時に考えていたというのです。そうした日常的な連続性があったのに、現在は○○展などと絵師の名前を冠した展覧会でも、春画だけ切り離して隠すようにして、まるで春画と描かなかった絵師であるかのように、その絵師の人生を語るのが普通になっているというのです。素人の私ですら、そうした展覧会は、江戸の絵師たちの真の姿を描き出すことにならないのではないかと感じてしまいます。歴史を考えるときの常ですが、現在の常識に基づいて過去を考えると真実に近づくことができません。春画と日本人について考えることは、日本社会が明治政府のもと始めた近代化、太平洋戦争後の価値観の激変の中で、私たちが「展覧会の自由」「売買の自由」「研究の自由」「出版の自由」の4つの自由とどのように向き合ってきたのか、と写し鏡になっています。インタビューに応じてくださった研究者、関係者の言葉の中に、いくつも今の時代を象徴する言葉がありました。そのひとつが「見えない何かに脅えている社会がある」でした。私たちは何に脅えているのでしょうか?こうして映画のタイトルは、やや大仰で気恥ずかしいのですが「春画と日本人」になりました。

もともと研究・教育目的の自主上映会向けに製作した本作が、劇場公開されることとなり、とてもうれしく思います。映画製作にご協力いただいた方々、長時間のインタビューに答えてくださった研究者の方々、関係者に心より感謝しています。春画の価値をいち早く発見して、守り育てた人たち、過去にさかのぼり、そして永青文庫春画展の実現に力を尽くした人たちの姿を、十分かどうか定かではありませんが描けたのではないかと感じています。是非とも、劇場に足をお運びいただき、ご覧いただき、古書店を経営するみなさまのお立場からのご意見を承ることができれば幸いです。

大墻 敦(おおがき・あつし)
1963年生まれ。自主製作映画『録音芸術の現場 Duo Concertante: Rainer Küchlと福田進一』、ショートドキュメンタリー『日本画家・竹内浩一 芳春院の襖絵を描く』『青柳いづみこ+高橋悠治 4手連弾による「春の祭典」』などがあるほか、2018年より「ル・ポン国際音楽祭 赤穂・姫路」で記録映像の製作アドバイザーを務め、クラシック音楽、文楽、女流義太夫など、文化、芸術の分野で映像製作活動を積極的に展開。現在、築地市場に関するドキュメンタリー映画の製作が進行中。

shunga
文化記録映画「春画と日本人」

監督・撮影・編集・製作著作:大墻敦(2018年/87分/カラー/16:9)
9/28(土)〜 東京・ポレポレ東中野
10/19(土)〜 名古屋シネマスコーレ
10/26(土)〜 大阪・第七藝術劇場
10/26(土)〜 京都シネマ
11/2(土)〜 横浜シネマリン
11月中 長野・上田映劇
12/7(土)〜20(金)神戸アートビレッジセンター
19年中 苫小牧・シネマトーラス

ホームページ
http://shungamovie.com

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matinoakari

『街灯りとしての本屋 11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』について

『街灯りとしての本屋 11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』について

田中佳祐

 何年か前に、韓国を旅行した。航空券を取り、美術館をめぐり、ローカルフードを食べ、目的も無く数日を過ごした。
どこかの街を歩いていた時に、一件の書店を見つける。おそらくチェーン店ではなく、個人書店だと思う。店内は薄暗く、ドアには張り紙があった。書かれている韓国語をスマートフォンで読み取り翻訳すると、こういうことが書いてあった。

「出かけてきます。ご用の方は、少しだけ待っていてください」
 
僕は少しだけ待つことにした。
近所のカフェで少し割高なコーヒーを頼み、店内のロッキングチェアに座り読書をした。しばらくしてからお店に行っても、まだ閉店中。街を散歩することにして、パン屋や骨董品屋、よくわからない韓国料理の店をのぞいた。

 再び書店に行くと“open”の看板がかけられている。扉を開けて店内に入ると、眼鏡をかけた女性がレジに立っていた。胸の高さほどの低めの本棚に、韓国語の本や雑誌が並べられている。本棚の上には、小さな雑貨やかわいらしい文房具があった。
 読めそうなものはないか探してみると英語やドイツ語、ロシア語のタイトルの本がいくつか並んでいた。その棚には“classics”と書かれたプレートがかかっており、ドストエフスキーやカフカ、ゲーテなどがあったと思う。

 僕はPOPでオススメされている、シェイクスピアの『テンペスト』を買うことにした。タイトルは英語だが、中身は韓国語である。もう内容は忘れてしまったけれどPOPに素敵なことが書いてあって、それが欲しくてレジでお願いをした。僕の英語がマズかったのか、そうじゃない理由があったのか、上手く伝わらずに貰うことができなかった。店を後にして、その街の酒屋でマッコリを買いホテルに帰った。

 珍しい本を買ったわけではないし、店員さんとちゃんと会話したわけでもないのにその時に訪れた本屋と街の事は鮮明に覚えている。

『街灯りとしての本屋 11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』は、新しい試みに挑戦している11の本屋をインタビューして作った一冊だ。老舗の本屋が次々に閉店し、出版不況と言われる現代において、生成しつつある新しい本屋を作り上げている“人”を紹介している。
この本に載っている書店に、共通点はあまり無い。地域もバラバラで、新刊書店も古本屋も、ここ数年で始めた店も長い歴史をもつ店も取材している。

11書店について少々無理をして一言で説明するならば、忙しい今の世の中で「少しだけ待つ」ことのできる空間を作っている店と言えるかもしれない。誰かに見つけてもらうことを待っているような、誰かと出会うことを待っているような本屋だ。そこを訪れると特別なエンターテインメントはないけれど、人生を休憩するのにぴったりな温かい灯りがともっているような気がする。店の作りや本棚、そして店主の表情からその独特な温かさが滲み出ている。

 この灯りを絶やさないようにするために、それぞれの書店は様々な工夫をしている。多くの店主は自分の身の丈に合った、生活によりそった働き方をしながら、無理なく本屋を続ける方法を探していた。
 
『街灯りとしての本屋 11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』は、本屋を始めたい人や読書が好きな人のために書いた。そういった方だけでなく、自分の働き方や生き方に悩んでいる人にも読んでほしい。
本が売れない時代に苦労しながらも、自分のやりたい仕事を素直に選んだ書店主たちの言葉は、きっと人生の楽しみを見つけるヒントを与えてくれるはずだ。

matinoakari

『街灯りとしての本屋 11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』
田中佳祐 著  竹田信弥 構成
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hototogisu

ホトトギス

ホトトギス

稲畑廣太郎

 中学か高校の教科書で「ホトトギス」という俳句雑誌が嘗て発行されていた、ということを御存知の方は多いだろう。しかしその雑誌が途切れることなく、現在令和の世になっても発行し続けられている、ということを御存知の方は少ないのではないだろうか。

 明治三十年一月、愛媛県松山市で「ホトトギス」は、かの俳人正岡子規を中心として、子規の盟友柳原極堂によって創刊された。当時は俳句雑誌はおろか、月刊誌という形態で発行される書物は珍しく、どのようにしたらこのように伝わるのかが不思議でもあるが、あるお婆さんが発行所を訪れ「『ホトトギス』なる脚気の薬が出たということだそうだが、ひとつ私に売ってくれんかね」と言って来た、という笑うに笑えない話も現在に伝わっている。そんなこともあったが、取り敢えずは松山を中心に発行されていた俳句雑誌であったが、やはり現代のようなネットワークが当時あるわけもなく、ローカルの雑誌として、結局第一号から第二十号まで発刊したところで経営破綻の危機を迎えたのである。当然柳原極堂は子規に相談するのだが、子規は当時東京に居た高濱虚子にこの雑誌を任せる、という案を考えた。実は当時虚子はこの時タイミング良く何がしかの雑誌を発行したかったという希望を持っていたのである。

 こうして明治三十一年十月から「ホトトギス」は、高濱虚子を発行人として東京で発行されることになった。そして当時としては斬新な俳句雑誌として多くの読者を得たが、ある転機が訪れることとなる。そう、夏目漱石の登場である。勿論明治三十年代の漱石は未だ無名であるが、虚子に勧められて書いたある小説が大ヒットする。これがかの「吾輩は猫である」である。漱石はこの小説を最初「猫伝」として書き始めたが、虚子が「ホトトギス」に掲載するにあたってどうも題名が気に入らなく、結局最初の始まりの一文をそのまま題名としたこともこの小説の面白さの一つであろう。

 ここで又転機があり、「吾輩は猫である」によって一層売行きを伸ばした「ホトトギス」であるが、虚子は俳句よりも小説に興味を持つようになり、この雑誌を俳句雑誌から文芸雑誌へと変貌させてしまうのである。最初は文芸雑誌としての評価は高かったが、俳句を志す人の多くは虚子の許を離れて行ってしまい、漱石も売れっ子になり「ホトトギス」にあまり寄稿しなくなったりしてだんだん経営も悪化してきた。これは明治四十年頃から大正二年までであったが、大正二年になると、又虚子は一念発起して俳句雑誌として立て直す決意をした。その後は俳句雑誌として、昭和十三年四月に五百号、昭和五十五年四月には一千号、平成八年十二月は創刊百年を迎えた。そして現在最新号の令和元年十月号の時点で千四百七十四号である。

 これは俳句雑誌全体にも言えることであるが、「ホトトギス」でも、読者によって誌面が作られている、ということに尽きるだろう。本を購入された方なら何方でも巻末の投句用紙で自分の俳句作品を投句出来、そして選者が選をする。毎月どのような句を選者に投句して、その中から選者がどの句を選ぶか。その選者とのコミュニケーションによって、俳句作家として、読者一人一人が研鑽を積んで行く。俳句は五・七・五の十七音で季題を詠む詩、と言うと少し難しく思われる方がおられるかも知れないが、日本人なら、誰でも俳句作家という詩人として文學の世界に遊ぶことが出来るのである。

hototogisu

俳句雑誌『ホトトギス』
合資会社 ホトトギス刊 定価:1,750円 好評発売中!
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