mati

『町を歩いて本のなかへ』

『町を歩いて本のなかへ』

南陀楼綾繁


 若い頃に受けた影響は、そのあとの自分を形づくる。いったんはその影響から逃れたように思えても、歳を重ねるとまたその頃の自分に回帰してしまう。私の場合は、1980年代前半がそうだ。中学から高校にかけて、SFやミステリ、マンガの本や雑誌を読みふけった。田舎町の本屋に置かれていないものが大半だったので、それらをどう手に入れるか考えるところから、読書がはじまっていた。

 その頃の私は、雑誌のコラムが大好きだった。『本の雑誌』『奇想天外』『噂の眞相』『宝島』『漫画ブリッコ』などを買うと、メイン記事は後回しにして、後ろに小さな文字で詰め込まれているコラムを熟読した。そして、そこで知った書き手の本が出ると買って読んだ。情報センター出版局、廣済堂、プレイガイドジャーナル社、北宋社、白夜書房といったマイナーな版元から出たものが多く、初出一覧には見たことのない雑誌が並んでいた。それを手がかりに、また深掘りしていった。

 云い方は悪いが、そのような「雑文集」を自分でも出してみたいと、ひそかに思っていた。しかし、30年前ならともかく、いまでは無名の書き手があちこちの媒体に書いた文章をまとめてやろうという、酔狂な編集者はめったにいない。なかば諦めかけていた頃に、原書房の百町研一さんに出会った。

 百町さんは小山力也さんの『古本屋ツアー・イン・ジャパン』『古本屋ツアー・イン・ジャパンそれから』や、岡崎武志さんの『気がついたらいつも本ばかり読んでいた』を編集した人である。ことに後者は、これまで書いてきた文章から選んだ、まさに理想の雑文集だった(岡崎さんは以前、晶文社でも『雑談王 岡崎武志バラエティ・ブック』を出されている。うらやましい)。

 おずおずと百町さんに、これまで書いた文章のテキストファイルを差し出したところ、そこから選んで、一冊分の目次をつくってくれた。彼は「ここから削りますから」と云っていた気がするが、逆にどんどん増えていって、気づいたら416ページという厚さになっていた。自分では当初入れるつもりのなかったメルマガ「早稲田古本村通信」での連載も、ほぼ全回を収録できた。

 意外に大変だったのは、初出調べだ。本になることは期待していなかったので、記事の切り抜きもやったりやらなかったりで、手元に揃えていなかった。それでも、当時の担当者に問い合わせたりして、ほぼ突き止めることができた。また、書評では本からの引用が出てくるが、ギリギリまで粘って、原文と照合することもできた。それでも、持っているはずのミニコミや私家版が数点見つからず、国会図書館にも所蔵がなくて断念せざるを得なかった。

 こうして、初めての雑文集を出せることになって、本当に嬉しい。しかし、著者というのは貪欲なもので、本書に収められなかった文章にも、いつか陽の目を見せてやりたいという気持ちが強くある。いまはなき『彷書月刊』での連載とか、エロ漫画雑誌での書評連載とか。ちょっと興味があるんだけど、という奇特な編集者がここを読んでいたら、ぜひ声をかけていただきたい。一緒にたのしい雑文集をつくりましょう。

第1部 町と本と
きょうもどこかへ本の旅/いま、地方リトルプレスは/
ブックイベントの現場から ほか。

第2部 古い本あたらしい本
主に地方を題材としたノンフィクションや小説の書評集。

[写真散歩]本の匂いを求めてさまよう

第3部 早稲田で読む
古書店街のこと、受験で古本ツアー、映画狂いの日々ほか、
ワセダ青春記。

第4部 本と人と、それから
草森紳一、山口瞳、花森安治、小尾俊人、入谷コピー文庫の
堀内恭さん ほか。



mati
『町を歩いて本のなかへ』南陀楼綾繁 著
原書房 定価:2,400円+税 発売予定日2017年6月26日
http://www.harashobo.co.jp/


Copyright (c) 2017 東京都古書籍商業協同組合

no-image

2017年5月25日 第227号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
     。.☆.:* その227・5月25日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国930書店参加、データ約600万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━【郵便料金等の改定のお知らせ】━━━━━━━━

2017年6月1日から、『ゆうメール』等の郵便料金が改定されます。

「日本の古本屋」お知らせをご覧ください。
http://www.kosho.ne.jp/announce/20170516.html


☆INDEX☆
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1.東京・神戸の文芸史を探検する     高橋輝次
2. 『中央線古本屋合算地図』       岡崎武志

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


━━━━━━━━━━━【自著を語る(183)】━━━━━━━━━━

東京・神戸の文芸史を探検する

                        高橋輝次



 本書は論創社、森下紀夫社長が私の長い原稿を読んで、面白いの
で何とか出しましょうとおっしゃって下さり、闇夜にやっと灯りを
見出した思いだった。実はそれまで数社に当たったが、すべてボツ
になっていたからだ。
 それにしても私のささやかな経験からも出版業界の現状は深刻だ
との思いが深い。今回の本は前書『ぼくの創元社覚え書』(亀鳴屋)
を出してから、すでに四年近くたっている。その間に、出版のあて
もなく、コツコツ書きためた書下ろし原稿が大半を占めている。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3245

『編集者の生きた空間 東京・神戸の文芸史探検』 高橋輝次著
論創社 定価:2,700+税 好評発売中!
http://ronso.co.jp/


━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━

『中央線古本屋合算地図』

                      岡崎武志



 ミステリアス文庫を始め、出版も手がける東京・西荻窪の古書店
「盛林堂書房」と組んで、古本屋ツアー・イン・ジャパンこと小山
力也さんと共著による古本屋「本」シリーズを出してきた。『野呂
邦暢古本屋写真集』『古本屋写真集』に続く、これが三冊目。
 今回は、中央線沿線に出店してきた古本屋を消滅したものも含め
、半世紀分を各駅エリアごと、一枚の地図に「合算」しようという
試みである。たとえば高円寺駅周辺に、現在は十数軒の古本屋が現
存するが、この射程を五十年ほど遡ってマーキングして行けば、四
十軒を超えるのである。そのなかには、直木賞作家・出久根達郎さ
んが店主だった「芳雅堂書店」もあった。



続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3257


『中央線古本屋合算地図』
編著:岡崎武志×古本屋ツアー・イン・ジャパン
盛林堂書房 価格:1300円(税込) 好評発売中!
http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca11/304/p-r-s/


━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『町を歩いて本のなかへ』南陀楼綾繁 著
原書房 定価:2,400円+税 発売予定日2017年6月下旬
http://www.harashobo.co.jp/


『郊外の果てへの旅/混住社会論』 小田光雄
論創社 定価:5,800+税 好評発売中!
http://ronso.co.jp/
東京堂書店神田神保町店2F 関連図書フェア開催中!
(6月下旬まで開催予定)



「東京都立多摩図書館」
企画展示「雑誌解体!~ポピュラー文化とメディア変容~」
「雑誌で知る 世界・日本そして多摩」 同時開催
会 期:2017年5月12日(金)~2017年6月12日(月)

その他詳細はホームページまで
http://www.library.metro.tokyo.jp/event/event_oll/tabid/1389/Default.aspx?itemid=1578


━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

5月~6月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

見逃したメールマガジンはここからチェック!
 【バックナンバーコーナー】
/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=20

┌─────────────────────────┐
 次回は2017年6月中旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の全国の古書店に ☆*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

==============================

日本の古本屋メールマガジンその227 2017.5.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:小野祥之
編集長:藤原栄志郎

==============================

2017年5月12日 第226号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
        古書市&古本まつり 第51号
     。.☆.:* 通巻226・5月12日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
メールマガジンは、毎月2回の配信になりました!

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛けください。
次回メールマガジンは5月下旬に発行です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国935書店参加、データ約630万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━【5月12日~6月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

--------------------------
藤沢本町古本200円均一セール(神奈川県)

期間:2017/04/11~2017/08/31
場所:藤沢本町トレアージュ白旗ショッピングセンター2F 
「女子文具」会場内  藤沢市藤沢2-3-15

--------------------------
第23回 青空古本堀出市

期間:2017/05/08~2017/05/13
場所:早稲田大学10号館前(大隈像裏の広場) 
新宿区西早稲田1-6-1

--------------------------
第2回 調布の古本市

期間:2017/05/10~2017/05/23
場所:調布パルコ 5階催事場 調布市小島町1-38-1

--------------------------
下町書友会

期間:2017/05/12~2017/05/13
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22  

--------------------------
第5回 美術・古本即売会 丸善ギャラリー古書展(福岡県)

期間:2017/05/12~2017/05/25
場所:福岡県福岡市中央区天神1-10-13
   ジュンク堂書店 福岡店地下1F 丸善ギャラリー内

--------------------------
第11回 東京蚤の市

期間:2017/05/13~2017/05/14
場所:東京オーヴァル京王閣 
   ※入場料が500円かかります。(小学生までは無料) 
   東京調布市多摩川4-31-1(京王多摩川駅臨時改札口すぐ)
URL:http://tokyonominoichi.com/2017_spring/

--------------------------
杉並書友会

期間:2017/05/13~2017/05/14
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9   

--------------------------
新橋古本まつり

期間:2017/05/15~2017/05/20
場所:新橋駅前SL広場

--------------------------
浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2017/05/18~2017/05/21
場所:JR浦和駅西口徒歩5分 さくら草通りマツモトキヨシ前

--------------------------
趣味の古書展

期間:2017/05/19~2017/05/20
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

--------------------------
映画の古書市

期間:2017/05/19~2017/06/21
場所:吉祥寺パルコ5階特設会場 武蔵野市吉祥寺本町1-5-1

--------------------------
第82回 彩の国 所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2017/05/24~2017/05/30
場所:くすのきホール(西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場)
URL:http://furuhon.wixsite.com/tokorozawafuruhon

--------------------------
和洋会古書展

期間:2017/05/26~2017/05/27
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

--------------------------
五反田遊古会

期間:2017/05/26~2017/05/27
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4 

--------------------------
中央線古書展

期間:2017/05/27~2017/05/28
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

--------------------------
BOOK & A(ブック&エー)

期間:2017/06/01~2017/06/04
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

--------------------------
城南古書展

期間:2017/06/02~2017/06/03
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

--------------------------
第5回 BOOKDAYとやま(富山県)

期間:2017/06/03
場所:総曲輪・グランドプラザ 富山市総曲輪 3-8-39
URL:https://bookdaytoyama.net/

--------------------------
反町6月古書会館展(神奈川県)

期間:2017/06/03~2017/06/04
場所:神奈川古書会館 1階特設会場  
横浜市神奈川区反町2-16-10

--------------------------
新興古書大即売展

期間:2017/06/09~2017/06/10
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

--------------------------
長岡米百俵古書市(新潟県)

期間:2017/06/15~2017/06/19
場所:長岡駅前カーネーションプラザ1階(旧大和長岡店)

--------------------------
杉並書友会

期間:2017/06/10~2017/06/11
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

見逃したメールマガジンはここからチェック!
 【バックナンバーコーナー】

https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=20

┌─────────────────────────┐
 次回は2017年5月下旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*゜*.:*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の古書店で ☆*.:*゜*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

==============================

日本の古本屋メールマガジンその226 2017.5.12

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:小野祥之

==============================

chuousenfuru

『中央線古本屋合算地図』

『中央線古本屋合算地図』

岡崎武志


 ミステリアス文庫を始め、出版も手がける東京・西荻窪の古書店「盛林堂書房」と組んで、古本屋ツアー・イン・ジャパンこと小山力也さんと共著による古本屋「本」シリーズを出してきた。『野呂邦暢古本屋写真集』『古本屋写真集』に続く、これが三冊目。

 今回は、中央線沿線に出店してきた古本屋を消滅したものも含め、半世紀分を各駅エリアごと、一枚の地図に「合算」しようという試みである。たとえば高円寺駅周辺に、現在は十数軒の古本屋が現存するが、この射程を五十年ほど遡ってマーキングして行けば、四十軒を超えるのである。そのなかには、直木賞作家・出久根達郎さんが店主だった「芳雅堂書店」もあった。
 古本屋に限らず、家や店が無くなると、そのあと別の建物ができると、ほとんど痕跡はなくなる。空地になった時、「あれ、ここ以前は何があったっけ?」と戸惑うことは多い。古本屋も屋号を覚えている一般客は少なく、「駅前にあった小さな古本屋」といった、漠然とした印象で記憶にかろうじて止めている。それが普通のことなのである。

 新宿から八王子まで、ほぼ各駅を拾って、一枚の地図に、かつて点在した古本屋を再現したいという素朴な思いつきから、この本の制作が始まった。祖父の代から西荻に店を構える盛林堂書房、いま(というより過去も含めて)もっとも日本全国の古本屋を制覇し続けている驚異の探訪者・小山力也さんと、白紙の状態から、ああでもないこうでもないとアイデアを出し合い、110ページ強、折り込み添付の昭和三十年「中央沿線古書店案内図」つきの本がとうとう出来上がった。オレンジの表紙は、もちろん中央線車両のイメージを模している。本文レイアウトデザインともに、そちらが本職の小山力也さんの手による。

 「あとがき」に小山さんも書くが、じつは最初は、「合算地図」に、編著者の二人がエッセイを寄せるぐらいの、楽な作り方を考えていた。しかし、顔をつきあわせるうち、妄想がふくらみ、この際だから、中央線沿線で現役の重鎮に話を聞きたい。重鎮があれば、若手もと、話が膨らんで来た。私を司会とし、竹中書店と岩森書店が「重鎮」版、水中書店と古書サンカクヤマが「若手」版と二つの座談会を敢行し、収めることができた。同時並行して、中央線古本屋アンケート、八王子「佐藤書房」さんの一人語り、阿佐ヶ谷「千章堂書店」さんの貴重な古い写真、中央線の古本屋を巡って来た強者客たちによる回想、小山さん撮影の今は消えた古本屋の写真など、初期の目論みより十倍ぐらいの内容に増殖していった。
 小山「あとがき」は、「岡崎氏の止めどもなく溢れる古本屋愛が、気まぐれに炸裂し過ぎ(締め切りがなければ、本当にずっと作業し続ける勢いで(中略))原稿が増えて行った事態を、あきれ顔で伝えている。

まさにその通り。いろいろな人を出先で捉まえ、すかさず中央線古本屋の思い出を聞き出し、メモし、ほとんどその日のうちに原稿に仕立てた。「重鎮」「若手」の座談会も、胸躍る心地を止められなかったことが、聞き手の分際を越える発言量(やや聞き手が喋り過ぎ)でわかる。古本屋さんの話を聞くのが本当に楽しかったのである。

 立ち話に近い取材で、ちょうど上京中だった画家・装幀家の林哲夫さんには、美大を出て、阿佐ヶ谷のアパートの管理人をしていた時代の話を聞いた。「うつぎ書店」は、店内に猛烈な匂いがたちこめ、「栗田書店」は、いつもAMラジオでNHK第二放送の「ロシア語」「ドイツ語」講座などが流れていた、という話が面白かった。たとえ写真や、そこで買った本は残っても、「匂い」や「音」は残せない。客として通った人の記憶の中にしかない古本屋がある、ということを教えられたのだ。

 一九七六年開業という八王子「佐藤書房」店主・佐藤邦彦さんは、おしゃべり好きで愉快な方だが、今回、ほとんど初めて、その成り立ちから波瀾万丈の店経営の話を聞き、興奮し、また感動した。出入りの植木職人としてお屋敷で仕事をしていた佐藤さんの父親が、「植木屋さん、お茶でも」と呼ばれ、ちょうど買取りに来ていた吉祥寺「藤井書店」藤井正さんと出くわし、それがきっかけで、佐藤さんが古本屋に足を踏みこむ件りは、佐藤さんの軽快な語りもあり、まるで落語を聞いているみたいだった。

 古本屋さんの回想は、支部報などで、ひょっとしたら読めるかも知れないが、部外秘で我々の目には届かない。このチャンスを逃すまいと、やや暴走気味に話をうかがい、せっせと文字にしていった。それを苦笑まじりに受け止めて、みごとなデザインワークで美しい仕上がりの版面にしてくれた小山さんに感謝したい。
 また、版元の盛林堂書房・小野純一さんには、同業者に囲まれながら古本屋の本を作ることは、われわれ部外者が想像できぬプレッシャーがあったと思われる。これもニコニコと難事を「だいじょうぶですよ」と切り抜けて、遅滞なくかたちにしてくれた。こちらもありがたい。

 発売以来、すでに、「あの店が載っていない」等の指摘があるようだが、まあ、お許しいただきたい。これを叩き台に、「いや、こんな店もあったよ」と記憶を呼び覚まし、補填し、より強固な『中央線古本屋合算地図』ができれば、それに越したことはない。盛林堂、小山、岡崎は、この勢いを背に、続く「古本屋」本を画策中である。刮目してお待ちいただきたい。



chuousenfuru
『中央線古本屋合算地図』
編著:岡崎武志×古本屋ツアー・イン・ジャパン
盛林堂書房 価格:1300円(税込) 好評発売中!
http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca11/304/p-r-s/

Copyright (c) 2017 東京都古書籍商業協同組合

hensyu

東京・神戸の文芸史を探検する

東京・神戸の文芸史を探検する

高橋輝次


 本書は論創社、森下紀夫社長が私の長い原稿を読んで、面白いので何とか出しましょうとおっしゃって下さり、闇夜にやっと灯りを見出した思いだった。実はそれまで数社に当たったが、すべてボツになっていたからだ。

 それにしても私のささやかな経験からも出版業界の現状は深刻だとの思いが深い。今回の本は前書『ぼくの創元社覚え書』(亀鳴屋)を出してから、すでに四年近くたっている。その間に、出版のあてもなく、コツコツ書きためた書下ろし原稿が大半を占めている。

 私の年来のテーマである出版社の歴史(例えば砂子屋書房、河出書房、彌生書房他)やその空間、また忘れられがちな編集者の仕事や喜怒哀楽を古本探索を通して浮彫りにした文章を多く収めている。中でも、第三次「三田文学」編集部に集まった若き日の山川方夫、田久保英夫、江藤淳、坂上弘、桂芳久氏ら錚々たる面々の仕事や友情を探求したものや、わが郷里、神戸で出版社を創ったエディション・カイエの編集者、阪本周三氏の生涯と仕事をまとめたものなどは、大いに力をこめて書いたつもりである。阪本氏は東京に移ってからも、水や川のユニークな文化情報誌「フロント」の編集長として腕を振った人で、詩人でもあった。生涯に一冊だけ、『朝の手紙』という、すてきな詩集を遺している。また、戦後の神戸で、竹中郁氏を指導者として詩同人誌「航海表」を独力で編集し出し続けた藤本義一氏にも光を当てている。藤本氏は、かの直木賞作家と同姓同名だが、後にサントリー宣伝部に入り活躍した人である。ほかにも様々な文学者同士の思いがけないつながりが次々判明してゆく文章など、自分では夢中になって書いたのだが、読者は果たして面白く読んでくれるだろうか。ともあれ、神戸の文芸史についていろいろ探検しており、神戸の文芸・芸術の奥深さを全国の読者にもっと知ってほしいとの願いを込めている。

 今回も追及しているテーマに関連した古本文献が連鎖的に見つかってゆくという経験に恵まれ、私の悪癖である「追記」を沢山書くハメになってしまった。ただ、この追記を面白がってくれる読者も身近に割とふえているので、あえて初めから書き直すことはしなかった。「あとがき」にも本文の追記に当たるような文章を入れた始末である。

 本書が、本好きや古本ファンはもちろん、出版社の編集者や新聞記者、全国の同人誌、ミニコミ誌の編集人の方々などに少しでも楽しんでもらえたら、大変幸いである。



hensyu
『編集者の生きた空間 東京・神戸の文芸史探検』 高橋輝次著
論創社 定価:2,700+税 好評発売中!
http://ronso.co.jp/

Copyright (c) 2017 東京都古書籍商業協同組合

2017年4月25日 第225号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
     。.☆.:* その225・4月25日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国930書店参加、データ約600万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

☆INDEX☆
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1.『神田神保町書肆街考』について 鹿島 茂
2.『遠山啓――行動する数楽者の思想と仕事』  友兼清治
3.『阿久悠 詞と人生』を語る         吉田悦志

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


━━━━━━━━━━━【自著を語る(180)】━━━━━━━━━━

 『神田神保町書肆街考』について

                        鹿島 茂



神田神保町という特殊な大学街=古書店街の形成を論じた『神田
神保町書肆街考』を執筆しているときに感じたのは、日本は「中金
持で中貧乏な国だなあ」ということだった。アメリカのような超格
差社会だと大金持ちと大貧乏人しかいない。そのため大金持ちの子
供が行く大学の授業料はとてつもなく高い。年間四〇〇万円以上で
ある。


続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3242


『神田神保町書肆街考』 鹿島 茂 著
筑摩書房刊 定価:4200円+税 好評発売中!
  http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815323/


━━━━━━━━━━━━【自著を語る(181)】━━━━━━━━━

『遠山啓――行動する数楽者の思想と仕事』

                        友兼清治



 いま、「遠山啓」と聞いて、その名を記憶にとどめている方は真
っ先に何を思い浮かべるでしょうか。「あの水道方式の?」「『数
学入門』で有名な?」「障害児教育に一石を投じた?」「競争原理
批判の?」・・・そう、あの遠山啓です。この本を上梓すると同時
に熱い思いの反響がすぐさま返ってきました。しかし、この本はそ
うした遠山のオールド・ファンだけでなく、いまを生きる現役世代
にこそ届けたいのです。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3232



『遠山啓 行動する数楽者の思想と仕事』友兼清治編著
  太郎次郎社エディタス刊 定価:本体3000円+税 好評発売中!
  http://www.tarojiro.co.jp/product/5642/


━━━━━━━━━━━━【自著を語る(182)】━━━━━━━━━


『阿久悠 詞と人生』を語る

                      吉田悦志



よく聞かれることがある。どうして阿久悠なのですか、どうして古
賀政男ではないのですか、と。昭和歌謡史を、あるいは明治大学芸
能史を俯瞰するのであれば、古賀政男から書き起こすのが当たり前
だと言われる。確かにその通りである。ただ、私なりに研究者の端
くれとしての考え方もあった。あるいは切っ掛けもあったのである。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3229

『阿久悠 詞と人生』吉田悦志著
 明治大学出版会 本体2,000円+税
http://www.meiji.ac.jp/press/list/libertybooks/li_14_yoshida.html


━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━━

『編集者の生きた空間 東京・神戸の文芸史探検』 高橋輝次著
論創社 定価:2,700+税 好評発売中!
http://ronso.co.jp/

『中央線古本屋合算地図』
編著:岡崎武志×古本屋ツアー・イン・ジャパン
盛林堂書房 価格:1300円(税込) 発売予定:2017年4月29(土)
http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca11/304/p-r-s/

━━━━━━━━【郵便料金等の改定のお知らせ】━━━━━━━━


2017年6月1日から、『はがき』『ゆうメール』『定形外』の3つ
の郵便料金が改訂されます。

詳しくは日本郵便のホームページをご覧ください。
http://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2016/00_honsha/1222_01.html

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━


4月~5月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


見逃したメールマガジンはここからチェック!
 【バックナンバーコーナー】
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=20


┌─────────────────────────┐
 次回は2017年5月中旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の全国の古書店に ☆*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner


==============================


日本の古本屋メールマガジンその225 2017.4.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:小野祥之
編集長:藤原栄志郎


==============================

no-image

2017年4月12日 第224号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
        古書市&古本まつり 第50号
     。.☆.:* 通巻224・4月12日号 *:.☆. 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
メールマガジンは、毎月2回の配信になりました!

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛けください。
次回メールマガジンは4月下旬に発行です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

このメールは「日本の古本屋会員」の方で、メールマガジンの配信
を希望された方にお送りしています。
ご不要な方の解除方法はメール下部をご覧下さい。
【日本の古本屋】は全国930書店参加、データ約630万点掲載
の古書籍データベースです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━【4月12日~5月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

小江戸川越 ペペ古本まつり(埼玉県)
 
期間:2017/04/06~2017/04/17
場所:西武新宿線 本川越駅前 ペペ広場

--------------------------
第11回つちうら古書倶楽部『春は桜と古本まつり』(茨城県)

期間:2017/04/08~2017/04/16
場所:つちうら古書俱楽部 茨城県土浦市大和町2-1

--------------------------
第30回 古本浪漫洲 Part 1

期間:2017/04/10~2017/04/12
場所:新宿サブナード2丁目広場

--------------------------
藤沢本町古本200円均一セール(神奈川県)

期間:2017/04/11~2017/08/31
場所:有隣堂 藤沢本町トレアージュ白旗 2F
藤沢市藤沢2-3-15

--------------------------
第30回 古本浪漫洲 Part 2

期間:2017/04/13~2017/04/16
場所:新宿サブナード2丁目広場

--------------------------
フリーダム展

期間:2017/04/14~2017/04/15
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

--------------------------
本の散歩展

期間:2017/04/14~2017/04/15
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4 

--------------------------
第30回 古本浪漫洲 Part 3

期間:2017/04/17~2017/04/19
場所:新宿サブナード2丁目広場

--------------------------
サン・ジョルディ古本市(大阪府)

期間:2017/04/18~2017/04/22
場所:大阪府立中之島図書館(本館2階レンタルスペース1)
大阪府大阪市北区中之島1-2-10
URL:http://osaka-koshoken.com/

--------------------------
春の古本掘り出し市(岡山県)

期間:2017/04/19~2017/04/24
場所:岡山シンフォニービル1F 自由空間ガレリア
岡山県岡山市北区表町1-5-1

--------------------------
池袋西口公園古本まつり

期間:2017/04/19~2017/04/27
場所:池袋西口公園
豊島区西池袋1-8-26 東京芸術劇場横

--------------------------
第30回 古本浪漫洲 Part 4

期間:2017/04/20~2017/04/23
場所:新宿サブナード2丁目広場

--------------------------
ぐろりや会

期間:2017/04/21~2017/04/22
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

--------------------------
立川フロム古書市

期間:2017/04/22~2017/05/11
場所:立川駅北口徒歩5分 フロム中武(ビッグカメラ隣) 
3階バッシュルーム(北階段際)

--------------------------
好書会

期間:2017/04/22~2017/04/23
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

--------------------------
第30回 古本浪漫洲 Part 5 (300円均一)

期間:2017/04/24~2017/04/25
場所:新宿サブナード2丁目広場

--------------------------
浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2017/04/27~2017/04/30
場所:JR浦和駅西口徒歩5分 さくら草通りマツモトキヨシ前

--------------------------
城北古書展

期間:2017/04/28~2017/04/29
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

--------------------------
西部展古書展

期間:2017/04/28~2017/04/30
場所:西部古書会 杉並区高円寺北2-19-9

--------------------------
オールデイズ(名古屋)

期間:2017/04/28~2017/04/30
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5丁目1-12

--------------------------
第15回 四天王寺 春の古本祭り(大阪府)

期間:2017/04/28~2017/05/03
場所:四天王寺(大阪市天王寺区四天王寺1-11-8)
URL:http://kankoken.main.jp/

--------------------------
もりのみやの古本展(大阪府)

期間:2017/04/29~2017/04/30
場所:もりのみやキューズモールBASE セントラルスクエア
大阪市中央区森ノ宮中央2丁目1番70号
URL:http://osaka-koshoken.com/

--------------------------
京都古書研究会40周年記念
第35回 春の古書大即売会(京都府)

期間:2017/05/01~2017/05/05
場所:京都市勧業館「みやこめっせ」1F第二展示場
   京都市左京区岡崎成勝寺町9-1
URL:http://koshoken.seesaa.net/category/23649937-1.html

--------------------------
第16回 八王子古本まつり

期間:2017/05/03~2017/05/07
場所:JR八王子駅北口 ユーロード
URL:http://hachiojiusedbookfestival.com/

--------------------------
東京愛書会

期間:2017/05/05~2017/05/06
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
URL:http://aisyokai.blog.fc2.com/

--------------------------
大均一祭

期間:2017/05/06~2017/05/07
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

--------------------------
下町書友会

期間:2017/05/12~2017/05/13
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

--------------------------
第11回 東京蚤の市

期間:2017/05/13~2017/05/14
場所:東京オーヴァル京王閣 
   東京調布市多摩川4-31-1(京王多摩川駅臨時改札口すぐ)

--------------------------
杉並書友会

期間:2017/05/13~2017/05/14
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

--------------------------
新橋古本まつり

期間:2017/05/15~2017/05/20
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ☆ 京都古書籍・古書画資料目録 第18号 発行のご案内 ☆

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇━━━

京都府古書籍商業協同組合(京都古書組合)が年2回発行しております
カラー版・モノクロ版・活字版で構成される目録で、
毎回お客様方より好評を頂いております。

京都古書組合の加盟店、数十店が各書店の特色を出しながら、
古書籍・浮世絵版画・古書画・古文書・古典籍・歴史資料類など、
およそ3,500~4,000点の掲載をしております。

目録送付を希望されるお客様は、千円分の切手を同封の上、
京都古書組合までお申し込みください。

目録の発行は6月初旬の予定です。
クロネコDM便でお届けさせて頂きます。

【お問い合せ】京都府古書籍商業協同組合
 
 〒604-0882 京都市中京区高倉通夷川上ル福屋町723
 TEL:075-221-0307  FAX:075-255-2575
 
  ▼京都古書組合の公式サイトはこちら
   http://www.kyoto-kosho.jp/

 +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

【目録希望宛先】『京都府古書籍商業協同組合 目録』宛

  〒604-0882 京都市中京区高倉通夷川上ル福屋町723
  ◆必須◆お名前・ご住所・電話番号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

見逃したメールマガジンはここからチェック!

 【バックナンバーコーナー】

https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=2

┌─────────────────────────┐
 次回は2017年4月下旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*゜*.:*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の古書店で ☆*.:*゜*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

==============================

日本の古本屋メールマガジンその224 2017.4.12

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:小野 祥之

==============================

kashima

『神田神保町書肆街考』について

『神田神保町書肆街考』について

鹿島 茂


神田神保町という特殊な大学街=古書店街の形成を論じた『神田神保町書肆街考』を執筆しているときに感じたのは、日本は「中金持で中貧乏な国だなあ」ということだった。アメリカのような超格差社会だと大金持ちと大貧乏人しかいない。そのため大金持ちの子供が行く大学の授業料はとてつもなく高い。年間四〇〇万円以上である。一方フランスのような平等が建前の国だと大学の授業料は無料である。

 では日本はというと、真ん中くらいの授業料で年間一〇〇万円。そのため日本の大学は専任教員の数を限定し、不足分を非常勤講師で補わざるをえない。神田神保町に明治・中央・日大・専修などの大学が蝟集しているのは非常勤講師の掛け持ちに便利だからである。

これと同じ構造を神保町の古書店街にも見ることができる。非常勤講師のやり取りに相当するのが市会である。ここでは、仕入れた不要な古書を出品し、必要な専門古書を買うことができる。市会という相互扶助組織の存在が神田神保町への古書店の集住を加速したのだ。

つまり、大学にしろ古書店にしろ「集住」ということがミソなのである。というのも「集住」が行われると、おのずから棲み分けの必要から専門店化が進む。すると、その専門店化が客を呼びこむというスパイラルが生じる。
 このように、 明治10年代に学生相手の中古洋装本を扱う古書店が誕生したのを皮切りに、神田神保町は「集住性」をキーにしてスパイラルの輪を広げ、世界でも類を見ない古書店街を形成していったわけだが、 では、 その拡大を支えた商品構造はというと、 これが「耐久消費財」という本の性質だった。つまり、本は消費財として使い捨てされるのではなく、「耐久消費財」として「使い回し」されたために、古書店はおおいに潤ったのである。

 ところが一九七〇年代後半からこうした商品構造が変わる。本もまた消費財となったため、古書店もまた使い捨てされる本、つまり漫画やアイドル本のようなオタク本を対象とせざるを得なくなり、顧客も学生からオタクに代わる。
 だが、ここに来てまた本の商品構造が劇的に変化しようとしている。消費財としての本は電子メディアにとって代わられてしまうからである。では、古書店に未来はないかといえば、その反対である。

 なぜなら紙媒体としての本は発行部数が減り、高価格化するから。つまり「耐久消費財」に戻るのである。そして、本が「耐久消費財」となったら、再び古書店に春が訪れるだろう。その何よりの証拠はほかならぬ『神田神保町書肆街考』である。発行部数二〇〇〇部で税込み定価四五三六円という高価格。発売後一カ月半で在庫切れ。プレミアムがついてアマゾンでは六、七〇〇円で取引されている。 
ことほどさように、本の高価格化による耐久消費財化が古書店を救うのである。
 やがて夜明けの来るそれまでは、意地で支える夢一つ。いま少しの辛抱である。



kashima
『神田神保町書肆街考』 鹿島 茂 著
筑摩書房刊 定価:4200円+税 好評発売中!
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815323/

Copyright (c) 2017 東京都古書籍商業協同組合

aku

『阿久悠 詞と人生』を語る

『阿久悠 詞と人生』を語る

吉田悦志


よく聞かれることがある。どうして阿久悠なのですか、どうして古賀政男ではないのですか、と。昭和歌謡史を、あるいは明治大学芸能史を俯瞰するのであれば、古賀政男から書き起こすのが当たり前だと言われる。確かにその通りである。ただ、私なりに研究者の端くれとしての考え方もあった。あるいは切っ掛けもあったのである。
阿久悠さんが亡くなったのは丁度10年前の2007年8月のことである。その後、ご遺族や阿久さんが所属していた事務所の方から、ご自宅や事務所にあるゆかりの資料を明治大学に託したいという話があって、私がその頃社会連携担当の副学長であったことから、大学とご遺族の間を取り持つ役目を仰せつかった。

緊急事態だった。古賀政男さんにはすでに財団があり、まつわる資料等はしっかり保管し管理されていた。
阿久悠さんが遺した文化的財産は、今この時纏めて保管しないと必ず散逸する、という危機感が私にはあった。大袈裟に言えば、いま「阿久悠記念館」を作らなければ資料が拡散してしまうという焦りである。私は取り持ちをしただけで、その後具体的な設立への努力は、多くの関係者が担うことになり、阿久悠さんの没後4年目の2011年に阿久悠記念館はオープンした。

『阿久悠 詞と人生』を梓に上す発端はそんなとことだった。阿久悠さんはその生涯に5000曲あまりの詞と、100冊あまりの書籍を遺した。それらに纏わる生原稿やコピー原稿を捲る機会も得た。可能な限り曲を聴き詞を読み、書籍を読んで、この天才作詞家が詞と人生で表現した核心の一端だけにでも触れたいと考えるようになった。

阿久悠さん自身が、私を支えた3つの言葉があると書いている。小学生の頃教員が言った「君の文章は横光利一を思わせる」と、会社勤めの頃その後妻となる女性が言った「あなたは大丈夫よ」と、作詞家になってから父が言った「お前の歌は品がいいね」と、この3つの発語を軸にすることで、核心の一端に触れられないか、と考えた。これらの発語はつながりあって阿久悠の詞と人生を形成している。
だから、『阿久悠 詞と人生』は「文学」と「女性」と「父」というキーワードをめぐることになった。中でも「父」なる存在は阿久悠さんのアイデンティティそのものではなかったか、と確信するようになってきた。拙著の第1章に「父と子」を結構した所以である。

出版後、読売新聞の「よみうり堂」書評や、共同通信発・片岡義博さんのありがたい周到な書評や、週刊新潮に載った上智大学教授・碓井広義さんのこれまた素敵な書評を読むことが出来て勇気づけられている。
この先、阿久悠文学(「瀬戸内少年野球団」など)も、私が代表をしている昭和歌謡史研究会(明治大学史資料センター)で通読してきた亡くなる前26年に渡る「日記」についても、引き続き考えていきたいと思っている。



aku
『阿久悠 詞と人生』吉田悦志著
 明治大学出版会 本体2,000円+税
http://www.meiji.ac.jp/press/list/libertybooks/li_14_yoshida.html

Copyright (c) 2017 東京都古書籍商業協同組合

toyama

『遠山啓――行動する数楽者の思想と仕事』

『遠山啓――行動する数楽者の思想と仕事』

友兼清治


 いま、「遠山啓」と聞いて、その名を記憶にとどめている方は真っ先に何を思い浮かべるでしょうか。「あの水道方式の?」「『数学入門』で有名な?」「障害児教育に一石を投じた?」「競争原理批判の?」・・・そう、あの遠山啓です。この本を上梓すると同時に熱い思いの反響がすぐさま返ってきました。しかし、この本はそうした遠山のオールド・ファンだけでなく、いまを生きる現役世代にこそ届けたいのです。ここには現在おきている難題を解きほぐすヘッドライトがあります。

『数学入門』の読者はたいへん多いと思いますが、遠山を広く国民的にしたのはむしろ教育の仕事で、水道方式と通称される計算体系を創造し、ブームになりました。さらに数学教育の現代化に取り組み、数学教育を根本から改革する仕事で大きな業績を残しました。その後は障害児に教科教育の道を拓き、晩年には教育を覆う学歴批判・序列主義批判を展開して競争原理を超える教育の全面的な改革をめざす「ひと」運動を主宰しました。それは全国的な市民運動にまで発展しました

 いま、教育勅語の復活や道徳教育の強化が唱えられ、新指導要領の改訂と実施など2020年問題が盛んに議論を呼んでいます。子どもの自死や殺傷に象徴されるように、子どもたちのなかに負のエネルギーが蓄積され、とくに学校教育の危惧が叫ばれています。内容においても制度においても、もはや対症療法ではすまないところにきているようです。時評のレベルではなく、「人間とはなにか」「文化とはなにか」「教育とはなにか」という根源的な問いに立ち返り、そこからの吟味と考察を必要としているのではないでしょうか。
没後40年近くたってなお、遠山の主張は予見と警鐘に満ちており、いまなお新鮮です。なによりもその基礎には学問・科学・芸術に対する深い造詣と、そこから教育や人間を捉える真摯な洞察があります。数学者・教育者の枠にはとても収まらず、私にはむしろ警世の思想家に思われます。

いままでにも数学や教育などテーマ別の遠山紹介はありましたが、その全体像に迫るガイダンスはありませんでした。そこで、主要な論点に着目して随所から再録し、その背景やエピソード、人間観・文化観などとともに「遠山啓の思想と仕事と人」を立体的に描くことに全力を傾けました。いうなれば30巻におよぶ著作集を1冊に凝縮した「遠山啓による遠山啓入門」といえます。大部な著作ですが、分野別と年代別を組み合わせた評伝ですので、数学としても、教育としても、文化としても、関心にそって各章を独立して読むこともできますし、戦後教育史の結節点を追跡することも可能です。

この機会に遠山を読み、ぜひ、若い世代に奮起してほしいと願っています。私は遠山番の編集者として仕事をしてきましたが、ご恩は「返す」というよりも、むしろつぎの世代に「送る」ものだとしたら、この本がそんな「恩送り」になれば、望外の喜びです。



toyama
『遠山啓 行動する数楽者の思想と仕事』友兼清治編著
  太郎次郎社エディタス刊 定価:本体3000円+税 好評発売中!
http://www.tarojiro.co.jp/product/5642/

Copyright (c) 2017 東京都古書籍商業協同組合

Just another WordPress site