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『神保町が好きだ! 2020 第14号』

『神保町が好きだ! 2020 第14号 特集 現代マンガは神保町から始まった!?』

本の街・神保町を元気にする会

 江戸時代、旗本「神保長治」の屋敷があったことから名付けられた神田神保町。本の街として、日本のみならず海外にもその名は知られています。神保町は、デパートのような大型新刊書店や約150軒という”世界一”の軒数を誇る古書店、多くの出版社や編集制作会社、デザイン会社、印刷会社などもある「知の集積地」です。
 加えて、カレー・喫茶・和食・洋食・中華など、古くからの老舗店やニューウェーブの店まで、魅力ある一大グルメタウンでもあります。
 そして少し足を延ばせば、御茶ノ水は「音楽と楽器の街」、小川町は「スポーツの街」として多くの老若男女が訪れ、また、界隈には大学や専門学校もひしめき、今も昔も「学生の街」であることに変わりはありません。
 今号の特集では、「現代マンガは神保町から始まった!?」と題して、『漫画少年』『ガロ』『少年サンデー』等の創刊秘話から発行部数600万部超えを記録した『少年ジャンプ』に至るまで、神保町とマンガの歴史・関わりを紐解きました。

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この『神保町が好きだ! 2020 第14号 特集 現代マンガは神保町から始まった!?』を抽選で30名様にプレゼントいたします。

応募申込は下記ページにてお願い致します。
 締切日 11月27日(金)午前10時
http://www.kosho.ne.jp/oubo2020/202011-2.html

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「ワイズ出版30周年記念目録」――思い出すままに

「ワイズ出版30周年記念目録」――思い出すままに

岡田博

 ワイズ出版30周年記念目録の刊行を期に、宣伝のための文章でもなんでも(?)良いので、と、この場をいただいたので、とりとめのない話になるとは思いますが、目録の解説がてら思い出話をさせていただきます。

 目録は1990年から2020年までに出版した403点の書影(カラー)と奥付など収録した資料(モノクロ)で構成、部数は1000部の限定。その内の大半は著者や装丁家など関係者へ献本、残り少しを販売しています(すみません、本来はお金をいただくものではないとは思いますが、カンパと思ってよろしくお願いします。資料篇は別刷で無料配布用があります。申し訳ありませんがこちらも少部数です。と、まあ、古書店のメールマガジンで、希少価値をあおっているようで心苦しいのですが、実情のみです)。

 今年、惜しまれつつ閉店した、京都三月書店の名物ブログはその昔は、情報をミニコミ紙、紙媒体で出版社などに発信していた。そこに「到底頭の良さそうとは思えないが、骨のありそうな出版社があらわれた」(もう30年も前のことで、現物もないので、文面が違っているかもしれない)と記された。『石井輝男映画魂』や『西河克己映画修業』を出版した頃だと思う。三月書店といえば、個性的な棚揃えで勇名を馳せていた書店だったので、とても嬉しかったのを思い出す。
 その「頭の……」の「ワイズ」という名であるが、これは単純に「ワイズ出版」という知人が持っていた取次口座を譲り受けたからにすぎない。この頃はトーハン、日販を代表する取次が流通の要で、今では想像もつかないような力をもっていて、新しく口座を作ること自体が苦労の多いことだった――このことは別の機会にして――その名のことであるが、口座を引き継いだ時、多くの出版社がそうであるように、それらしい凝った名を考えたりもしたのだが、思いついて、ロバート・ワイズ監督にあやかることにした。ロバート・ワイズは、小品『罠』『拳銃の報酬』から大作『ウェスト・サイド物語』『サウンド・オブ・ミュージック』まで様々なジャンルの映画を作り上げた職人監督である。ワイズ出版の向かうところを示しているようで、勝手に彼にあやかった。

 ワイズ出版を昭和の終わった年、1989年に映画専門出版として立ち上げた。世に多く出版されている黒澤明、小津安二郎監督らの巨匠たちの本ではなく、娯楽映画の職人監督たちの仕事にこだわった。私の職人監督へのファン気質からささやかにスタートした後、様々な人の映画愛が徐々に結集して目録にある出版物を作り上げていくことになるのである。

 はじめに『石井輝男映画魂』ありきだった(出版第一作は『前売券シネマグラフィティ』になっているが、『石井輝男映画魂』の製作に時間がかかったためである)。『地帯(ライン)』シリーズや『網走番外地』シリーズや『異常性愛』路線など、奇想に満ちた石井ワールドに私は魅せられていた。
 全く実績のない出版社が新しく企画をもって著者に会いに行くことは、こちらのことをどう思うかなど気になって躊躇われるものがある。石井監督のもとにも、そういう思いで訪れた。ところがこちらの素性も確認するでもなく、「僕のインタビューをずっとやってくれている人がいるので、その人を入れてくれないかな」と、条件はそれのみで了解を得た。紹介された詩人で映画監督の福間健二氏と石井ワールドファン魂を共有して本を作り上げた。

 出来上がった本は大好評だった。職人監督の一作品ごとのインタビューでフィルモグラフィーも網羅した本は画期的(自画自賛ですみません)だったので、大変な評判を得た(もちろん大変な評判と言っても、我々の周りだけかもしれませんが……)。売行きも良く、今だにワイズ出版単行本売行のトップである。  
ところが、大きな誤植があった。石井監督の著者紹介で生年を間違った。本人は「急に若返って良かった」とあくまでおおらかだったが、以来ワイズ出版は、こういう誤植との戦いが長く長く続くことになる(「誤植の思い出」と称して一冊の本ができるほどである。著者の方、編者の方、読者の方にここでもまた、お詫び申し上げます)。
この後『西河克己映画修業』『市川崑の映画たち』が続いて、一作品ごとのインタビューとフィルモグラフィー形式の本がワイズ出版の基盤となっていくのである・・・。
と、このようにワイズ出版の歴史はまだ始まったばかりだが、ここで紙面がつきたので、最後に、皆さんのお仲間の古書店店主の方の本のことを。大場啓志氏の『三島由紀夫 古本屋の書誌学』、中山信如氏の『古本屋「シネブック」漫歩』の二冊を出版しました。どちらも無事再販、相対的に映画本より売れていることをお伝えして、「完」とさせていただきます。

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『ワイズ出版 30周年記念目録』 ワイズ出版編集部・編
ワイズ出版 1,000円+税 好評発売中!
http://www.wides-web.com/

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『近代出版史探索Ⅳ』

『近代出版史探索Ⅳ』

小田光雄

 『近代出版史探索』シリーズの各編はそれぞれが2千字から3千字の短い論稿の集積ではあるけれど、続けて第4巻目を刊行することになった。
 この12年間に及ぶ『近代出版史探索』の長編連作の試みの目的として、第1巻から3巻の本文や「あとがき」、及び本メールマガジンへの寄稿でもさまざまにふれてきている。
 だがこの『近代出版史探索Ⅳ』に至って、中国社会と経済地理学研究者ウィットフォーゲルの『東洋的社会の理論』を取り上げた際に、ようやく吉本隆明の『共同幻想論』に言及することができた。吉本は同書でウィットフォーゲルの「東洋的専制主義」の日本論に異議を発し、日本の場合、大規模な灌漑工事や運河開削は必要としなかったが、日本の初期国家の首領たちにとって文化と文明は大陸からの輸入品で、それを分布させるために財力や権力として、専制力は発揮されたと述べている。
 それは「〈観念のアジア〉的専制」というべきもので、また初期国家においては地理的条件から考えても、海部民、農耕民、狩猟民が多層的に混住していた。それが共同観念の構造を複雑化し、大陸とは異なる「〈アジア〉的特性のひとつの典型」を生みだしたのである。そして吉本はいっている。

  “わが初期国家の専制的首領たちは、大規模な灌漑工事や、運河の開削工事をやる代りに、共同観念に属するすべてのものに大規模で複合された〈観念の運河〉を掘りすすめざるを得なかった。その〈観念の運河〉は、錯綜していて、〈法〉的国家へゆく通路と、〈政治〉的国家へとゆく通路と、〈宗教〉的イデオロギーへゆく通路と、〈経済〉的な収奪への通路とは、よほど巧くたどらなければ、つながらなかった。〈名目〉や〈象徴〉としての権力と、じっさいの政治的権力と、〈宗教〉的なイデオロギーの強制力とは別個のものであるかのように装置されていて、よほど、秘された迷路に精通しないかぎり、迷路に陥むように構成された。そこには、現実の〈アジア〉的特性は存在しないかのようにみえるが、共同幻想の〈アジア〉的特性は存在したのだ、と……。”

 これは『共同幻想論』のエッセンスともいうべき重要な部分であり、省略して引用できず、長くなってしまった。実はここで吉本が述べている初期国家ならぬ、近代の「〈観念〉の運河」がどのように生成されていったのかを追求することも、『近代出版史探索』の目的のひとつなのである。
 近代日本のイメージは「〈アジア〉的特性」の上に「西洋」の文化と文明が出版物を通じて接木され、成立したと見なせるからだし、『近代出版史探索』連作はその複雑な「迷路」をたどっている。しかし吉本にならっていえば、近代出版業界という共同観念の構造は複雑な「迷路」そのもので、すでに5巻の続刊も控え、千編を超えているけれども、まだ「迷路」のとば口で、さまよっている思いにも捉われる。

 日本の近代出版業界の始まりは生産、流通、販売、つまり出版社・取次・書店という出版流通システムの誕生ととともにあった。それは何よりもまず社会経済問題として論じられるべきだったが、たまたまそれに併走するようにして近代文学の発生を見たこともあって、出版物が単なる商品ではなく、作品だというコンセプトと同時に、作者と読者も召喚されることになった。それに教科書出版、アカデミズムと立身出世の物語も重なる。

 そして明治後半からの出版業界の成長に合わせ、特価本、造り本、赤本などのもうひとつの出版業界も台頭し、さらには古書業界の隆盛へともつながっていく。こうした複雑な「出版の運河」が生産、流通、販売をコアとして、それらをリサイクル、リバリューするバックヤードとしての特価本、古書業界を生み出した。これらは吉本の言葉を借りれば、「よほど、秘された迷路に精通しないかぎり、迷路に陥むように構成され」、そこに日本の出版の共同幻想の特性が生じたと考えられる。そのような近代出版の迷路の一端を読者に伝えられれば幸いに思う。

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『近代出版史探索Ⅳ』 小田光雄 著
論創社 定価:6,000円+税 好評発売中!
http://ronso.co.jp/

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『日本印刷文化史』

『日本印刷文化史』

印刷博物館 学芸員 川井昌太郎

 印刷博物館は2020年10月に開館20周年を迎えたことを記念し、3点の書籍を刊行しました。『日本印刷文化史』と『HISTORY OF JAPANESE PRINTING CULTURE』(『日本印刷文化史』英語版)、そして、『印刷博物館コレクション』です。その内『日本印刷文化史』は、講談社さんに出版していただきました。全国の本屋さんにてお買い求めいただけます。本書はリニューアルした印刷博物館の常設展と密接に関連する「コンセプト・ブック」にあたります。
 
刊行の背景と構成
印刷博物館の20年間の活動を踏まえ、日本の印刷文化の歴史を体系的に見通すことはできないだろうか、そのような思いから本書の発行計画がスタートしました。印刷を文化や社会、技術や産業の中に位置づけ、できるだけ実際の出来事や実例に即しながら、その時印刷がどのような役割を果たし、歴史的な展開をしたのか、あきらかにしたいと考えました。「はじめに―読者の皆さんへ」では、この思いをさらに詳しく述べています。
本書の本文は古代・中世・近世・近代・現代の5部から構成され、それらは全部で22の章と6つのコラム、8つの印刷技術に関する挿話から成り立ちます。古代は2章、中世は2章、近世は10章、近代は5章とし、最後の現代は特別に「22章 日本の図書館の歴史」を加え、3章としました。

『日本印刷文化史』からわかる日本の印刷の特徴
本書で日本の印刷の歴史をたどっていくと、他国では見られない特徴があることに気づきます。ここでは大きく3点のポイントに絞り、紹介します。日本の印刷の特徴は、①長い歴史があること、②東洋や西洋から影響を受けていること、③担い手や技術に多様性があることです。

①長い歴史があること
 「1章 奈良時代に始まった日本の印刷」から本書は始まります。称徳天皇の発願により「百万塔陀羅尼」(770年)が印刷されたことが、日本の印刷の出発点です。2020年の現在に印刷産業があることを考えると、日本の印刷には1250年の歴史があることがわかります。印刷が仏教政治に関わっていた古代から、「21章 大量消費社会と印刷―効率化と標準化の時代」で触れたマスメディア、マーケティングメディアとして活用される現代まで、常に印刷は時代にあわせた役割を果たしてきました。

②東洋や西洋から影響を受けていること
 島国である日本は、さまざまな分野で外国からの影響を受けてきましたが、印刷でも同じことがいえます。最も顕著な例としてあげたいのは、「5章 朝鮮出兵―朝鮮伝来活字はなにをもたらしたか」「コラム1 天正少年使節は木製印刷機をはこぶ」で記したとおり、中世から近世に移った時期に、朝鮮半島やヨーロッパから活版印刷が伝わったことです。当時新しい印刷技術であった活版印刷を、天皇、武家、医師、宣教師、医師、商人などが積極的に活用しました。その中でも「6章 徳川家康を中心とする印刷・出版合戦」にあるとおり、家康による駿河版銅活字の製作、駿河版の開版は特筆に値する動きです。

③担い手や技術に多様性があること
 印刷の担い手は、「3章 鎌倉時代の印刷―本格化する寺院の開版」にあるように、中世では寺院がその主役を務めました。近世では「8章 京都・大坂・江戸 三都出版物語」に見るとおり、版元たちの旺盛な印刷・出版活動が始まります。それによって、書物が知識人から一般の人々まで広がり、「9章 印刷が広げた江戸時代の行動文化―旅を助けた書物、版画、摺り物」「11章 学問の進展と印刷―本草学から植物学へ」「13章 改暦と印刷」「コラム2 農業技術を広めた農書」などが説明するように、印刷物は学問や産業の発展、余暇の充実に欠かせないものとなりました。

 印刷の技術が最も多様化していく時代は、近世から近代に移る頃です。「16章 戊辰戦争、そして明治
政府による改革へ―幕末明治の活字文化」「17章 『描く技術』を伝える」「コラム3 めがね絵から紙幣
まで―銅版画の普及」などが示すとおり、江戸幕府から明治政府へ政治体制が変わったとき、木版印刷
から、銅版印刷、石版印刷、そして本格的な金属活字による活版印刷へ変化していきました。
印刷の担い手と技術が広がった近代から現代にかけて、続々と印刷会社が登場します。同時に、印刷物を享受する側、読者や消費者の印刷ニーズも多様化していきます。「18章 資本主義社会と大衆文化の成立―大正時代の印刷」「20章 高度経済成長と素材のバリエーション」では、印刷が書物だけではなく、多方面にわたりたいへん大きな役割を果たすようになったことがよくわかります。

 ここにあげたポイントの他にも、読みどころがたくさんあります。この先はぜひ手にとってご覧ください。本書は冒頭で述べたとおり、リニューアルした印刷博物館の常設展の「コンセプト・ブック」でもあります。印刷博物館にも足を運んでいただければ幸いです。

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『日本印刷文化史』 印刷博物館 編
講談社 2,000円+税 好評発売中!
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000343750

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2020年11月10日号 第310号

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 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第94号
      。.☆.:* 通巻310・11月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

古書組合の役割と古書業界の仕組み その2

            高橋秀行 (前 東京古書組合事務局長)

 前回のお話で市場(交換会)は組合が経営していると解説しなが
ら、実際の運営は組合員の中で専門分野を同じくする古書店が同人
組織を作り、日々市会を運営していると説明したため、話が分かり
にくくなったと思いますので、少し整理して説明させていただきます。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=6418

━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

第22回 鈴木裕人さん 「龍膽寺雄」を掘り起こすひと

                      南陀楼綾繁

 ある日、見知らぬ人から一冊の本が送られてきた。鈴木裕人『龍
膽寺雄の本』と題する同書はA5判・230ページで、龍膽寺雄の短篇
と随筆に加えて、同時代に吉田謙吉と妻である龍膽寺魔子が書いた
龍膽寺評、長男の橋詰光氏の回想などが収録されている。本人の肖像
や資料のカラー写真も入っている。表紙の絵を描いているのは、漫
画家の山川直人さんだ。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=6423

「夜泣き」編集部
https://twitter.com/yonaki2017

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

ツイッター

https://twitter.com/kawasusu

『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!

http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━【11月10日~12月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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第8回 小倉駅ナカ本の市(福岡県)

期間:2020/11/10~2020/11/15
場所:小倉駅ビル内・JAM広場 (JR小倉駅 3階 改札前)

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フィールズ南柏 古本市(千葉県)

期間:2020/11/11~2020/11/27
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場
柏市南柏中央6-7

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富山の魅力を発信する古本市 BOOK DAY とやま駅(富山県)

期間:2020/11/12~2020/11/12
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)

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BOOK & A(ブック&エー)【会場販売あります】

期間:2020/11/12~2020/11/15
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第180回神戸古書即売会(兵庫県)

期間:2020/11/13~2020/11/15
場所:兵庫県古書会館 一階・二階
神戸市中央区北長狭通6-4-5

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11月反町古書会館(神奈川県)

期間:2020/11/14~2020/11/15
場所:神奈川古書会館1階特設会場

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第94回シンフォニー古本まつり(岡山県)

期間:2020/11/18~2020/11/23
場所:岡山シンフォニービル1F  自由空間ガレリア

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趣味の古書展

期間:2020/11/20~2020/11/21
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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名鯱会(愛知県)

期間:2020/11/20~2020/11/22
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12
電話:052-241-6232

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2020/11/26~2020/11/29
場所:さくら草通り
JR浦和駅西口下車 徒歩5分 マツモトキヨシ前

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和洋会古書展

期間:2020/11/27~2020/11/28
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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五反田遊古会

期間:2020/11/27~2020/11/28
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4

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中央線古書展

期間:2020/11/28~2020/11/29
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第18回 上野広小路亭古本まつり

期間:2020/11/30~2020/12/06
場所:谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36
台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階

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第96回 彩の国 所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2020/12/02~2020/12/08
場所:くすのきホール
(西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場)

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書窓展(マド展)

期間:2020/12/04~2020/12/05
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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西部展

期間:2020/12/04~2020/12/06
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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「名古屋骨董祭」 第4回 古書即売会(愛知県)

期間:2020/12/04~2020/12/06
場所:吹上ホール
〒464-0856 愛知県名古屋市千種区吹上2丁目6-3

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赤札古本市

期間:2020/12/10~2020/12/13
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2020/12/10~2020/12/13
場所:さくら草通り
JR浦和駅西口下車 徒歩5分 マツモトキヨシ前

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富山の魅力を発信する古本市 BOOK DAY とやま駅(富山県)

期間:2020/12/10~2020/12/10
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)

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新興古書大即売展

期間:2020/12/11~2020/12/12
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第18回 つちうら古書倶楽部 師走の古本まつり(茨城県)

期間:2020/12/12~2020/12/20
場所:土浦市大和町2-1 パティオビル1階

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12月反町古書会館(神奈川県)

期間:2020/12/12~2020/12/13
場所:神奈川古書会館1階特設会場

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全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

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日本の古本屋メールマガジンその310 2020.11.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:志賀浩二
 編集長:藤原栄志郎

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第22回 鈴木裕人さん 「龍膽寺雄」を掘り起こすひと

第22回 鈴木裕人さん 「龍膽寺雄」を掘り起こすひと

南陀楼綾繁

 ある日、見知らぬ人から一冊の本が送られてきた。鈴木裕人『龍膽寺雄の本』と題する同書はA5判・230ページで、龍膽寺雄の短篇と随筆に加えて、同時代に吉田謙吉と妻である龍膽寺魔子が書いた龍膽寺評、長男の橋詰光氏の回想などが収録されている。本人の肖像や資料のカラー写真も入っている。表紙の絵を描いているのは、漫画家の山川直人さんだ。
 龍膽寺雄(りゅうたんじ・ゆう、1901~92)は、1928年に雑誌『改造』の懸賞小説に『放浪時代』で入選。モダニズム文学の寵児となるが、いまではその作品は忘れられている。むしろ、サボテン研究家としてのほうが知られているだろう。私も名前を知っている程度だったが、今年、平凡社の「STANDARD BOOKS」で『龍膽寺雄 焼夷弾を浴びたシャボテン』が出て、ちょっと興味を持っていた。
『龍膽寺雄の本』には鈴木氏による「龍膽寺雄の読み方・読まれ方」という文章があって、同時代の文壇における龍膽寺の立場が判って興味深い。圧巻なのは、30ページにわたる「龍膽寺雄作品目録」で、小説から随筆、アンケートまで詳細に拾っている。
 こんな本をつくった人は何者だろう? プロフィールが入っていないので、年齢も判らない。これは会ってみるしかない。奥付の住所にある名古屋まで行くつもりだったが、鈴木さんのほうから東京に出向いてくださることになった。

 数日後、神保町の〈東京堂書店〉で声をかけてきた鈴木裕人さんは、細面の青年だった。年齢を聞くと29歳。なんと1991年、平成3年生まれなのだった。
「この本は200部つくりました。デザインは姉(鈴木愛未さん)に頼み、表紙や奥付の検印紙を貼るのは手作業でした。思いのほか多くの注文をいただいたので、嬉しい悲鳴をあげています」と鈴木さんは笑う。
 生まれたのは静岡県袋井市。父は和食の料理人である。母は本好きで、鈴木さんが幼稚園の頃から車で10分ほどの市立図書館に連れていき、絵本を借りていた。小学生になると自転車で図書館に通った。

「記憶に残る最初に読んだ本は、ボーデンブルクの『ちびっこ吸血鬼』シリーズですね。図書館で借りて読んだのですが、気に入ってあとで買ってもらいました。段ボールで棺桶をつくって、そこに入って遊んだりしました(笑)」
 このほか、『大どろぼうホッツェンプロッツ』シリーズやマーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』、アストリッド・リンドグレーン『長くつ下のピッピ』シリーズやジュール・ヴェルヌなどが好きだった。
「冒険への憧れがあったみたいですね。父はあまり本を読まないのですが、子どもを寝かしつけるのにデタラメなお話をしてくれるんです。そこでも冒険の話をせがんでいました」
 現実の鈴木少年は幼稚園に行きたくなくて、途中で別の園に移っている。小学校も嫌いで、授業中に本を読んで怒られたり、仮病で休んで本を読んでいたという。
 その後、私立の中高一貫校に進学。中学では剣道部、高校では弓道部に属する。部活で忙しく、あまり本を読まなくなった。むしろ映画をよく観た。
「テスト期間は部活が休みで、そのときにはわりと本を読みました。ロバート・ウェストールの『機関銃要塞の少年たち』は重い話ですが、好きでした」

 20010年、愛知県の大学の文学部国文学科に入学。ここまで出てきた本はすべて外国の著者だったのだが、どこかに転機があったのか。一人暮らしするようになって、名古屋近辺の古本屋に通いはじめる。
「袋井ではブックオフで漫画を探すぐらいでした。名古屋に来て、大学近くの〈古本まゆ〉という古本屋で30円均一の文庫を買いあさりました。また、藤が丘の〈千代の介書店〉は近代文学の本が並んでいて、龍膽寺雄の本も買いました。店主は80代のおじいさんで、いろいろ教えてもらっています。
 鈴木さんの大学では、現代詩作家の荒川洋治氏がゼミを持っており、鈴木さんは4年生から聴講するようになった。「詩や小説など文学全般についての座談のような時間で、面白かったです」。このゼミではじめて知った作家は多いという。
 中上健次で卒論を書き、「もっと小説を読みたい」と大学院に進学。院生同士で読書会を行った。
 里見弴、小沼丹、小山清、深沢七郎、阿部昭……。鶴舞近辺の古本屋や古書即売会に通い、好きな作家の本を集める。短篇が得意な作家を好む。次第に本が増え、下宿の床が傾いたので引っ越したこともある。修論は坪内逍遥『当世書生気質』で書いた。

 大学院を出て、県内の図書館に司書として採用される。
「館内でのテーマ展示を担当することがあり、これまでに『蒐集物・コレクション』『旅』『夏目漱石』などのテーマで選書しました。館内にある本を選んで展示するのは愉しいですね」
 一方で、ちいさな出版物を手がけるようになる。大学の仲間との読書会がきっかけで、『しんぺんこまし』という雑誌を24号まで出すとともに、「イタリア堂」の屋号で「なみ文庫」として中戸川吉二の『イボタの蟲』を復刻する。同文庫では読書手帳もつくった。
 そして、2017年には「遊びを追求する雑誌」として『夜泣き』を創刊。「エロ」「青森」「履物」「おもちゃ」などのテーマに合わせて、小説やエッセイを掲載。「旧刊案内」「書評」など本を紹介する欄もある。文庫サイズで初期の号は100ページ以上ある。自宅のプリンタで出力し、表紙やしおり紐も手作業でつけている。
「『夜泣き』という誌名は、適当に辞書をめくって決めました(笑)。季刊ペースで現在13号まで発行しました。〈千代の介書店〉と今池の〈ウニタ書店〉には置いてもらっています」

 さて、いよいよ龍膽寺雄の話となる。
「大学のときに古本屋で鎌倉文庫版の『放浪時代』を買って読みました。仲間と過ごした日々を明るく描いていて、この作家が好きになりました。その後、図書館などで少しずつ読んでいたのですが、『アパアトの女たちと僕と その他』(改造社)がヤフオクに出ていたのを思い切って買いました。初版で函付きの美本だったので、自分でやらなければという使命感のようなものが芽生えて、龍膽寺雄の書誌をつくることにしたんです」
昭和書院から出た『龍膽寺雄全集』や『PREVIEW NO.1 モダニズムと龍膽寺雄の世界』(プレス・リーブル・センター)などを参考に、大学図書館や国会図書館などで調べていった。その過程で、龍膽寺雄の遺族に会って話を聞くこともできた。
「全集未収録の文献がいくつも見つかったし、神奈川近代文学館に所蔵されている龍膽寺のスクラップブックも閲覧できました。最初は『夜泣き』の別冊として出すつもりでしたが、こうなったら自分が欲しい本をつくろうと、遺族の許可をいただいて、小説や随筆も入れることにしました。山川直人さんの漫画は前から好きだったのですが、芥川龍之介の時代を描いた『澄江堂主人』に龍膽寺雄が登場したのには驚きました。私のために描いてくれたようなものだと勝手に思い込んで、今回の表紙をお願いしたら快諾してくださいました」
 本文がまとまったあとも、校正に時間がかかったため、完成までに3年近くを費やしたというが、むしろ早い方だろう。そのパワーには驚嘆する。

「本が出たことで、読んだ方から不明だった出典を教えていただきました。今後は龍膽寺雄のサボテン研究家としての側面を取り上げてみたいです。また、他の作家も追いかけてみたいですね」
 古本屋通いは釣りに似ていると、鈴木さんは云う。
「古本屋では、世の中にあるかないか判らない本と出会うことができます。次はあるかなと思って通うのが、古本屋の面白さだと思います」
『夜泣き』を創刊した頃は、その売り上げで古本屋をやりたいと思っていたという鈴木さん。そんなに売れるわけはないので、もう諦めましたと笑う。
このように、他の人が手を着けない貴重な仕事に取り組んでいる若者が、いずれ正当な評価を得て、夢である古本屋を開くことができたらと思う。その頃の日本は、もっと住みよい社会になっていることだろう。とりあえず、『夜泣き』を定期購読するつもりです。

「夜泣き」編集部
https://twitter.com/yonaki2017

南陀楼綾繁
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)などがある。

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古書組合の役割と古書業界の仕組み その2

古書組合の役割と古書業界の仕組み その2

高橋秀行 (前 東京古書組合事務局長)

 前回のお話で市場(交換会)は組合が経営していると解説しながら、実際の運営は組合員の中で専門分野を同じくする古書店が同人組織を作り、日々市会を運営していると説明したため、話が分かりにくくなったと思いますので、少し整理して説明させていただきます。

組合という組織を運営するには役員と職員が必要なことは、どこの組合も同じですが、古書組合の場合は他業種組合と状況が少し違います。その最も大きな理由は取引前の古書の仕分けと価値(値段や値打ち)が専門外の人にはよく判別できないことです。交換会は組合の市場なので当然職員は運営実務に従事していますが、その仕事は古書の取引に関する伝票類の作成や取引後の会計事務及び清算事務、交換会の設備、什器備品の補充や落札品の管理等になります。例えば、青果市場や魚市場も競りで商品を落札しますが、野菜はキャベツやキュウリ、ナス等の商品の等級が仕分けできます。魚もマグロやブリやサンマと仕分けられますが、古書の場合は違います。

商品の古書は全国から東京へ送られてきますし、市会当日の持ち込みもあります。今日の交換会のほとんどは入札方式で取引していますが、古書は高価な貴重本以外一冊ずつ取引することはあまり無く、物量のこともあり、大方括りでまとめて取引します。
多くの業者は交換会に出品する本を自分で仕分けてきますが、それ以外は当該の会を担当する専門分野の会員と経営委員が荷受けと仕分けを行います。この経営委員という役職は組合員の中から選ばれますが、交換会の運営実務を担っています。出品される括りの中にキキメの本を入れたり、業者が落札しやすいように塩梅したり、入札札がたくさん入るように工夫したり、短時間の中で考えながら仕分けを行います。この仕分け作業を組合職員ができれば一番いい訳ですが、仕分け作業ができるくらいの古書の知識があれば何も職員でいる必要はなくなり、皆古書業者になってしまうことでしょう。その位この仕分け作業は本を知らないとできない作業なのです。この古書の価値が分かる知識を豊富に持っている人ほど、古書業者として成功できることは間違いありません。

経営委員という名称は組合内の役職名で、前述したようにこの方たちは組合員ですが、開札作業や運営実務を担当し、自店の専門分野の本を勉強するための場として交換会のお手伝いをしています。ですから、若手の業者や二世の方、業界に入ってまだ日が浅い方が多く務めています。二十年ほど前までは、本部交換会の経営委員になるには支部からの推薦や本部市会からの引き立てが無ければ就けない役職で狭き門でした。このように交換会は売買取引の場であると共に、若い業者を育てる場でもあるわけです。

東京の本部会館は神田小川町にあります。その外堀を埋めるように十年ほど前までは地区会館が東西南北に四つありました。現在では東部会館が廃止され、三地区会館になっています。それらの地区会館でも市場(交換会)と古書即売展(西部会館と南部会館のみ)が開催されているのですが、本部会館は専門書市、支部の地区会館は一般書市という漠然とした区分けがあって、取引される本も異なる傾向です。

地区交換会の市場も入札と競りが採用されていますが、振り市では、振り手を中心に車座になった組合員が落札希望値を発声し落札するという競り方式で、見ていても醍醐味があります。振り手には名人もいて、途中で絶妙なジョークや合いの手、落札価を決定する間合いや本を傷めずに落札者まで放り投げる技は一朝一夕にはできません。この振り手ももちろん組合員です。
現在の交換会はほとんどが入札方式になってしまい、活気のある競り市が少なくなったことは残念でなりません。また、新規に加入した業者は競り市に参加してもなかなか声は出せませんが、本の相場を憶えるには格好の場ですし、地区交換会の運営に関わる事業部委員(本部の経営委員と役目は同じ)を経験すれば、支部の中に溶け込めますし、知り合いも多くなり、営業の勉強もできます。やはり、地区の交換会も古書の取引の場であると共に業者の育成の場でもあります。

このように、古書業者は自店の営業が最も大切ではありますが、交換会を通じて本に関わる様々な勉強や情報と交流、組合事業等の多岐にわたる活動を行っていることをメルマガ読者の皆様に知って頂ければとても嬉しく存じます。

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2020年10月26日号 第309号

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☆INDEX☆
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1.『浮世絵の解剖図鑑』でお江戸へタイムスリップ 牧野 健太郎
2.『活動写真弁史』のこと             片岡一郎
3.『谷崎潤一郎と書物』              山中剛史

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━━━━━━━━━━━【自著を語る(249)】━━━━━━━━━

『浮世絵の解剖図鑑』でお江戸へタイムスリップ

                        牧野健太郎

 北斎さんと広重さんは、お江戸の同じ時期に風景画の絵師として
活躍しました。「富嶽三十六景」シリーズを北斎さんは1831年頃出
版され、当時71歳で大ヒット。その2年後、広重さん37歳が「東海
道五十三次」シリーズを出して大当たり、浮世絵に風景画ジャンル
が出来ました。
そんな北斎さんや広重さんが描いたお江戸に小旅行してみませんか。

続きはこちら
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『浮世絵の解剖図鑑』 牧野 健太郎 著
エクスナレッジ刊 定価 1,600円+税 好評発売中!
https://www.xknowledge.co.jp/book/9784767827841

━━━━━━━━━━━【自著を語る(250)】━━━━━━━━━

『活動写真弁史』のこと

                      片岡一郎

 活動写真弁士という職業がかつてあった、と書かれたり言われた
りする機会は多い。オワコン、などという美しくもない、今やその
言葉自体の方が古び、干からびてしまった蔑称を向けられたことも
多々ある。だが、これらの評価は適切ではない。

続きはこちら
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『活動写真弁史』 片岡一郎 著
共和国刊 価格 6,600円+税 10月31日発売予定
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907986643

━━━━━━━━━━━【自著を語る(251)】━━━━━━━━━

『谷崎潤一郎と書物』

                      山中剛史

 帯文に「古書趣味と文学研究の越境・融合(ハイブリッド)」と
掲げた本書は、古書から出発し、古書を論じ、古書の縁で出版にい
たった古書についての本である。といっても、よくある古書自慢と
いうわけではないし、珍本、稀本も出てはこない。どちらかという
と地味な本を扱っている。

続きはこちら
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『谷崎潤一郎と書物』 山中剛史 著
秀明大学出版会刊 2,800円+税 好評発売中!
http://shuppankai.s-h-i.jp/

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『近代出版史探索4』 小田光雄 著
論創社 6,000円+税 好評発売中!
http://ronso.co.jp/

『ワイズ出版 30周年記念目録』 ワイズ出版編集部・編
ワイズ出版 1,000円+税 好評発売中!
http://www.wides-web.com/

『日本印刷文化史』 印刷博物館 編
講談社 2,000円+税 好評発売中!

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000343750

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

10月~11月の即売展情報

※新型コロナウイルスの影響により、今後、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
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日本の古本屋メールマガジンその309 2020.10.26

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【発行者】
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『谷崎潤一郎と書物』

『谷崎潤一郎と書物』

山中剛史

 帯文に「古書趣味と文学研究の越境・融合(ハイブリッド)」と掲げた本書は、古書から出発し、古書を論じ、古書の縁で出版にいたった古書についての本である。といっても、よくある古書自慢というわけではないし、珍本、稀本も出てはこない。どちらかというと地味な本を扱っている。『日本古書通信』連載のエッセイに加えて、大幅加筆した院生時代の論文、書き下ろしの考証的エッセイや論文も含み、中には十年以上前の文章もあるが、本文だけで文学のボディたる書物を置いてきぼりにする文学研究にも飽き足らず、また、古書コレクターの自慢話に沈潜する気にもなれず、趣味としての古書の探求がそのまま学問的な探求となるような、書誌学とも書物学とも文学研究とも割り切れない未明の領域を手探りで進んでみようという本書の基本的なコンセプトは、実のところ古書蒐集をするようになってからずっと考えてきたことであった。

 「古書趣味と文学研究の越境・融合(ハイブリッド)」とは、齋藤昌三をはじめとして、大正末年から昭和初期にかけて花開いた古書文化を支えてきたのは、在野学者、趣味人たちであったことを捉え直し、「解釈と鑑賞」という狭い枠内ではなく、いわば趣味的追求を通して、文学を論じるというよりは、いま手許にある古書を通して谷崎文学のあり方へ迫ろうというわけである。

 谷崎を銘打ちながら、実は本書で一番力を入れたのは、序文後半を占める書き下ろしの谷崎本に限らない書物、古書論であったりする。すなわち、書物とは、本文に対する単なる衣裳=意匠ではない。それは本文と一にして不可分なオブジェであり、著者のみならず編集者や装幀家らとの協働作業によって、ひとつの文学作品は何度でも書物として問い直される存在でもある。そして古書は、ただ文学の刊本というばかりでなく、かたや時代順に列べてみれば、近代出版・流通史、装幀史といった時代を語る雄弁な証言者でもあり、それとは別に、一冊一冊が個別の歴史を背負い何人もの読者を流転してきたものでもある。いわば古書は、時間の水平軸に拡がるばかりでなく、来し方行く末といった垂直的な時間軸をも含み持つ存在であり、読書という孤独な営為から過去未来を問わない彼方の読者を想像力によって媒介するという独自の魅力を秘めている。

 いささか抽象的な序文だが、引き続いて展開されるエッセイでは、書物の出版、広告や実物から検証する重版状況、装幀、挿絵など、全体的に文学と出版をめぐる状況を古書からひとつひとつ突きとめていきながらも、あまり肩の凝らないように時に古書展の思い出なども織り交ぜながら、広く古書愛好家にも楽しめるよう意識したつもりである。

 本書の目次は次の通り。
 序にかえて―書物あるいは古書という視座
 Ⅰ 谷崎本書誌学序説
 Ⅱ 『人魚の嘆き 魔術師』挿絵とイメージの展開
   『人魚の嘆き』挿絵考
   『人魚の嘆き』挿絵考・補遺
 Ⅲ 潤一郎の書棚から
   『自画像』私考
    谷崎潤一郎宛三島由紀夫書簡を読む
 Ⅳ 書物の生態学 ・『春琴抄』の展開

 二十年近く古書展などで買い集めてきて、なぜ初版と特定の重版本しか見かけないのか、本当はそれ以外の版は存在しないのではないかといった奥付を巡る謎、大正初年に数年の活動を経て突如消えてしまった植竹書院の小伝、いわゆる札幌版をめぐる謎といった考証エッセイ。または春陽堂から出された小説『人魚の嘆き』二種の挿絵本をめぐって、挿絵イメージと作品との関わりを論じた考察やら、版権がたらい回しにされる中で重版につれて装幀も変化していく書物の実証的検証、そして漆塗り表紙で知られている『春琴抄』が、なぜ数年のうちの二度も三度も立て続けに装幀を変えて刊行されたのかを、新劇や歌舞伎、映画やレコードなど各メディアに作品がアダプテーションされていった状況と相関していたことの考察等々——このようなラインナップである。

 古書それ自体の奥深い魅力と、時として存在する筈のない本が出現してしまうことすらある古書の世界の深淵については、まだまだ語り足りないが、本書はわたしにとってそれらを問う最初の書物である。

tanizaki
『谷崎潤一郎と書物』 山中剛史 著
秀明大学出版会刊 2800円+税 好評発売中!
http://shuppankai.s-h-i.jp/

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katudou

『活動写真弁史』のこと

『活動写真弁史』のこと

片岡一郎

 活動写真弁士という職業がかつてあった、と書かれたり言われたりする機会は多い。オワコン、などという美しくもない、今やその言葉自体の方が古び、干からびてしまった蔑称を向けられたことも多々ある。だが、これらの評価は適切ではない。今も活動写真弁士は存在している。本書の著者である私が現役の活動写真弁士なのだから間違いない。我語る故に弁士あり、なのである。

 日本の古本屋を利用される皆さんの中には、徳川夢声の名を何となくは知っている方も多くおられると思う。活動写真弁士を芸能人生の起点とした夢声は、話術の名手らしい語る様な文体が特徴で、旺盛な筆力によって百冊以上の本を出した。彼の著作は映画史に止まらず、庶民からみた大正~昭和史の記述として評価が高く、当然、弁士時代の思い出を綴った文章も多い。

 見世物を語る上で朝倉無声は避けて通れず、弁士を語る上で徳川夢声は避けて通れない。まことムセイは大衆芸能を研究する者にとって、この上もなくアリガタイ名前である。
 だが、偉大過ぎる夢声の存在は、彼こそが弁士の到達点であり、彼の歩んだ道こそが弁士の王道であったとする「偏り」を生み出した。それほどまでに徳川夢声とは圧倒的に魅力的な存在なのだ。
 加えて、多くの映画史家たちが「弁士が日本映画の発達を阻害した」と繰り返し説いたことで、弁士の功罪のうち、罪の部分のみが映画史上で強調されてきた。
 活動写真弁士のイメージは半世紀以上、停滞していると言っていい。

 突然だが、私は恐竜が子供のころから好きだ。一度は地球の覇者となったにも関わらず、忽然とその時代を終えたところが好きだ。絶滅したと一般的に思われているにも関わらず、実は正当な末裔が存在しているところも良い。なんのことはない、活動写真弁士は芸能史上の恐竜なのだ。
 恐竜の研究は日進月歩だ。私が子供の頃に本で読んだ恐竜と、最新の研究結果から想像される彼らは、もはや別の生物だ。

 ならば、長きにわたった「活動写真弁士とはこういうもの」という固定観念を、恐竜の様に、更新する時期が来ているのではないか、その役割を担うのは自分だろう、と勝手に考えた。では、活動写真弁士の再評価を、どのようにすれば良いのか? 何しろ弁士は恐竜より世間に知られていないのだ。だが我が先達たちは雑誌に、新聞に、公文書に、あるいは私的記録に少しずつ存在の痕跡を残している。
 本書は、それら散り散りの記憶をひとつひとつ探し求め、並べ直し、点と点を結び、新たな活動写真弁士像を紡ぎ出すことに挑んだ。

 もし自画自賛が許されるならば幾つかの点において、その試みは成功している。少なくとも黒澤明に多大な影響を与えた、彼の実兄にして活動写真弁士の須田貞明こと黒澤丙午について、ここまで詳述した本は他にはない。

 今、改めて参考文献リストを見直すと、敬愛すべき先輩弁士たちの広大な行動範囲にあきれるばかりだ。まさか弁士の歴史を調べていて『南米調査資料』や『特高月報』を読もうとは思わなかった。もう少し穏便に生きられなかったものかと思うが、お前こそ弁士のクセに小さくまとまってどうするのだ、と反対に叱られそうでもある。
 本書は活動写真弁士の歴史を綴った『活動写真弁史』と題した。執筆は、どんなに願っても実際に対話することの叶わぬ人々と向かい合う時間でもあった。これを、書く喜びとせずになんとしよう。

katudou
『活動写真弁史』 片岡一郎 著
共和国刊 価格 6,600円+税 10月31日発売予定
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907986643

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