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2017年12月25日 第241号

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     。.☆.:* その241・12月25日号 *:.☆. 。
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☆INDEX☆
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1.『編む人 ちいさな本から生まれたもの』  南陀楼綾繁
2. 古本屋癌になる-77歳の日記 青木書店 青木正美
3.『出版物販売額の実態 2017』について
日販 営業推進室 経営相談グループ 書店サポートチーム

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━━━━━━━━━━━【自著を語る(199)】━━━━━━━━━━

『編む人 ちいさな本から生まれたもの』


                      南陀楼綾繁



 大学を卒業して、大学院に入るまでのつなぎのつもりで、ちいさ
な出版社でアルバイトをはじめた。そこで、編集者が一種の特権で
あることに気づく。なにしろ、名刺一枚で、仕事にかこつけていろ
んな世界の専門家や有名人に出会うことができるのだ。人見知りの
私は、パスポートをもらったような気分だった。実際には同じ出版
社でもピンからキリまであるのだが、そんなことを知らなかった私
は、勝手な企画を考えては、以前から愛読していた書き手や研究者
に会いに行った。

続きはこちら
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『編む人 ちいさな本から生まれたもの』南陀楼綾繁 著
出版社ビレッジプレス 定価:1,600円+税 好評発売中!
http://www.village-press.net/?pid=124093781



━━━━━━━━━━━【自著を語る(200)】━━━━━━━━━━

古本屋癌になる-77歳の日記

青木書店 青木正美



 八十四歳になる私は、七年前から東京古書会館へ行かない。行っ
ても”浦島太郎”扱いであろう。二〇一〇年、私は毎回普通市に通
い、七夕大市会にも参加した。その年七十七歳、正月からある出版
社本を書き始めた。戦後の「古書月報」を独力編集、業界人として
も大活躍した都崎友雄のもう一つの伝記である。・・・・・そんな
九月のある日、私は喉に腫瘍を見つけ癌研有明病院へ行く。長い待
ち時間があって、告げられたのは中咽頭癌。



続きはこちら
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『古本屋癌になる 77歳の日記』青木正美 著
日本古書通信社 定価:2,000円+税 好評発売中!
http://www.kosho.co.jp/kotsu/


━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━



『出版物販売額の実態2017』について


    日販 営業推進室 経営相談グループ 書店サポートチーム

突然ですが、1年間の新刊本の売上額ってご存知ですか?
答えは、2016年度は1兆7,221億円、前年よりも730億円減少しました。
730億円という額は業界トップクラスの書店チェーン1企業分の売上
額に相当します。簡単にいうと、ここ数年は、毎年1チェーンが消
えているということになります。それほど出版業界の販売額は急激
な減少をしているのです。

続きはこちら
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『出版物販売額の実態 2017』日販 営業推進室 書店サポートチーム編
日本出版販売株式会社 頒価 1,512円(本体1,400円)好評発売中!
http://www.nippan.co.jp/news/hanbaigaku_2017/

購入する場合のサイトです。
https://www.honyaclub.com/shop/c/c09N0/


━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『本のちょっと (Vol.1 本を旅する)』
啓文社書房 定価 本体926円+税 好評発売中!
http://kei-bunsha.co.jp/archives/683



『文芸同人雑誌出版マニュアル 戦前版』 編・解題 小林昌樹
金沢文圃閣 揃価―6,000円 (税別)好評発売中!
https://kanazawa-bumpo-kaku.jimdo.com/



『図書館人物事典』日本図書館文化史研究会 編
日外アソシエーツ 定価:12,000円+税 好評発売中!
http://www.nichigai.co.jp/cgi-bin/nga_search.cgi?KIND=BOOK&ID=A2678

━━━━━━【東京古書組合展示会開催のお知らせ】━━━━━━



 「戦前の出版検閲を語る資料展
            浮かび上がる検閲の実態」

会期 1月10日(水)~2月3日(土)午前10時~午後5時
   (日曜・祝日休館)


会場 東京古書会館 2階情報コーナー


昭和初期の出版検閲についてパネルで解説するとともに、千代田図
書館蔵「内務省委託本」ならびに、東京古書組合蔵「公定価格関係
資料」など、検閲や出版物統制の実態を今に伝える貴重な本や資料
を展示します。
また、本展示「浮かび上がる検閲の実態」に関連して、講演会をお
こないます。


━━━━━━━━━━━━━【お知らせ1】━━━━━━━━━━━


「日本の古本屋」では、現在、携帯電話のキャリア決済サービスに
対応するための準備を行っております。
サービスの提供開始は来年1月中を予定しております。

今後も、皆様に使いやすいサイトを目指して改善を行ってまいりま
す。引き続きよろしくお願い申し上げます。



━━━━━━━━━━━━━【お知らせ2】━━━━━━━━━━━


日本の古本屋では、メールマガジンを毎月10日と25日に、約16万人
の会員のみな様にお届けしています。
来年1月の10日号(毎月10日発行)のメルマガから、「シリーズ古書
の世界」を連載します。
今回は、日本古書通信編集長樽見博さんの「変遷していく古書店の
営業形態」を三回に分けて(1月~3月)掲載します。ご期待下さい。



━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━


1月~2月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init


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 次回は2018年1月中旬頃発行です。お楽しみに!
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日本の古本屋メールマガジンその241 2017.12.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/


【発行者】
 広報部:小野祥之
編集長:藤原栄志郎


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2017年12月11日 第240号

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    古書市&古本まつり 第58号
     。.☆.:* 通巻240・12月11日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回の配信になりました!

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛けください。
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━━━━━【12月11日~1月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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つちうら古書俱楽部:師走の古本まつり!(茨城県)

期間:2017/12/09~2017/12/17
場所:茨城県土浦市大和町2-1 つちうら古書俱楽部

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有隣堂イセザキ本店チャリティーワゴンセール(神奈川県)

期間:2017/12/13~2018/01/08
場所:有隣堂伊勢佐木町本店 横浜市中区伊勢佐木町1-4-1 

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新興古書大即売展

期間:2017/12/15~2017/12/16
場所: 東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
TEL:03-5280-2288(会期中のみ会場直通)

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五反田古書展

期間:2017/12/15~2017/12/16
場所: 南部古書会館  品川区東五反田1-4-4 
JR山手線、東急池上線、都営浅草線五反田駅より徒歩5分
TEL:03-3441-3975(会期中のみ)

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第124回 倉庫会(名古屋)

期間:2017/12/15~2017/12/17
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田五丁目1-12
電話:052-241-6232

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2017全大阪古書ブックフェア(大阪府)

期間:2017/12/15~2017/12/17
場所:大阪古書会館 大阪市中央区粉川町4-1

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ぐろりや会

期間:2017/12/22~2017/12/23
場所: 東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
TEL:03-5280-2288(会期中のみ会場直通)

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好書会

期間:2017/12/23~2017/12/24
場所: 西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
TEL:03-3339-5255(会期中のみ)

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阪神歳末古書ノ市(大阪府)

期間:2017/12/26~2017/12/30
場所:阪神梅田本店8階催場 大阪市北区梅田1-13-13

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Title 2Fの古本市 Vol.2

期間:2017/12/26~2018/01/11
場所:Title 杉並区桃井1-5-2

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吉祥寺パルコの古書市

期間:2017/12/30~2018/01/14
場所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-5-1 吉祥寺パルコB1特設会場

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♭立川フロム古書市ご案内♭

期間:2018/01/05~2018/01/21
場所:立川駅北口徒歩5分フロム中武(ビッグカメラ隣)
3階バッシュルーム(北階段際)

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下町書友会

期間:2018/01/05~2018/01/06
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
TEL:03-5280-2288(会期中のみ会場直通)

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第32回古本浪漫洲 Part1

期間:2018/01/10~2018/01/12
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場) 新宿区歌舞伎町1-2-2
TEL03-3354-6111

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東京愛書会

期間:2018/01/12~2018/01/13
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
TEL:03-5280-2288(会期中のみ会場直通)

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大均一祭

期間:2018/01/13~2018/01/14
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
TEL:03-3339-5255(会期中のみ)

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日本の古本屋メールマガジンその240 2017.12.11

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
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【発行者】
 広報部:小野祥之

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nippan

『出版物販売額の実態2017』について

『出版物販売額の実態2017』について

日販 営業推進室 経営相談グループ 書店サポートチーム


突然ですが、1年間の新刊本の売上額ってご存知ですか?
答えは、2016年度は1兆7,221億円、前年よりも730億円減少しました。
730億円という額は業界トップクラスの書店チェーン1企業分の売上額に相当します。
簡単にいうと、ここ数年は、毎年1チェーンが消えているということになります。
それほど出版業界の販売額は急激な減少をしているのです。

本書は、出版物全体と各都市の販売額を把握し、出版物が読者の手に届くルートを明らかにする事を目的として、当社が1974年から毎年発行しているものです。
調査を開始した1973年度の販売額は5,967億円で、現在と比べると約3分の1の市場でした。ルート別販売額で大きな順は、書店、割賦販売、スタンド、駅売店、生協などとなっており、割賦販売ルートはなんと、全体の10%の規模がありました。

現在では、割賦販売は販売額も大幅に縮小し、スタンド店数も減少、駅売店はCVSチェーンに塗り替えられており、販売ルートも様々に変化をしています。
1990年代から、それまでの古書店とは一線を画す新古書店と言われる業態が急速に広がり、中古本市場がより一般的な存在になりました。その中古本の市場も緩やかな縮小が始まっており、2016年度の市場規模は782億円となっています。
そのようなルートの変化を踏まえて今回の2017年版では、読者と本の接点であるタッチポイントごとに、具体的には従来の取次経由以外の図書館、中古本市場、電子出版物、教科書の市場規模の推計を開始しました。今後も時代の流れに合わせて出版物のタッチポイントの調査を進めていく予定です。

人の生活導線から書店の姿が消えていく中で、今ほど「本」「書店」に注目が集まる時代もないのではないかと思っています。それほど、本は人を幸せにするし、心躍らせるモノであり、生活に必要なモノなんだと痛感しています。
特に最近は、若い方たちが書店を始めるニュースが多く聞かれるようになりました。みなさんそれぞれの思いを込めた空間を作り、そこには新刊本だけでなく古書や雑貨も取り混ぜて、読者と新たな接点を作ろうとしてます。新しい書店の担い手が増えていくことはうれしい限りです。

この1年間で約300件の書店が閉店し、2016年度の書店の軒数は10,583件です。私たち出版業界がすべきことは、そういう新しい書店の担い手をサポートし、新しいタッチポイントを作り続けること、そう思っています。



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『出版物販売額の実態 2017』日販 営業推進室 書店サポートチーム編
日本出版販売株式会社 頒価 1,512円(本体1,400円)好評発売中!
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古本屋癌になる-77歳の日記

古本屋癌になる-77歳の日記

青木書店 青木正美


 八十四歳になる私は、七年前から東京古書会館へ行かない。行っても”浦島太郎”扱いであろう。二〇一〇年、私は毎回普通市に通い、七夕大市会にも参加した。その年七十七歳、正月からある出版社本を書き始めた。戦後の「古書月報」を独力編集、業界人としても大活躍した都崎友雄のもう一つの伝記である。・・・・・そんな九月のある日、私は喉に腫瘍を見つけ癌研有明病院へ行く。長い待ち時間があって、告げられたのは中咽頭癌。

 長寿社会になりやがて二人に一人が癌になるとも言われるが七年前にも、結果は出たのに中々入院の番は来なかった。やっと保険外の、日に三万円かかる個室なら、という話で入院する。一日おきの放射線治療が三十五回、並行して胃瘻の設置手術。抗癌剤、他の点滴が続く。しまいにはのべつ発生する口内炎の発生で食べるのもしゃべるのも出来なくなる。すると食事は胃瘻に、意志は筆談に頼るようになる。前立腺肥大を放ってあったのが祟って終夜20~30回小用に起きることさえある。トイレの取っ手につかまって、泣いて耐えた夜もあったし、日記さえ書けなくなる。が、すぐに覚った。「さして才能もないお前が文学青年的なところを明古の主任だった鶉屋書店に会員に誘われた元々も”日記”だったんだぜ。この六十年も”日記”を支えに生きて来たお前じゃなかったのか!こうなったらどんなに苦しむのかを書いてやろう!」

 実は今度の本は癌となったその闘病記であり生還記でもあったのは、結果的に病院の適切な対応と家族の協力あってのことだった。
 退院出来たのは年を越した二〇一一年一月三十日。筑摩からは編集者がわざわざ出来上がった本とお見舞いを持って来て下さる。病床で校正を重ねたその本のタイトルは『ある「詩人」古本屋伝』、”風雲児ドン・ザッキーを探せ”のサブタイトルがつく。そう、最初紹介の都=ド・崎=ザキー(都崎友雄)は、戦前はダダイズム詩人ドン・ザッキーだったのだ。

 あの年はまた、このひと月と十二日後に、東日本大震災が日本を襲う。その余波で東京も激震、我が家の書斎、隣の書庫の大崩落の片づけに働き、私のリハビリともなったのである。
 もし、ご一読頂けたら幸いです。



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『古本屋癌になる 77歳の日記』青木正美 著
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『編む人 ちいさな本から生まれたもの』

『編む人 ちいさな本から生まれたもの』

南陀楼綾繁


 大学を卒業して、大学院に入るまでのつなぎのつもりで、ちいさな出版社でアルバイトをはじめた。そこで、編集者が一種の特権であることに気づく。なにしろ、名刺一枚で、仕事にかこつけていろんな世界の専門家や有名人に出会うことができるのだ。人見知りの私は、パスポートをもらったような気分だった。実際には同じ出版社でもピンからキリまであるのだが、そんなことを知らなかった私は、勝手な企画を考えては、以前から愛読していた書き手や研究者に会いに行った。企画が通らずに、お茶を飲んだだけで終わった人もいるし、一緒に仕事をさせていただき、その後もお付き合い願っている人もいる。

 そういった人たちの話をひとりで聴いているだけではもったいないと思い、トークイベントを開催するようになった。2005年に「不忍ブックストリートの一箱古本市」をはじめてから現在までに、地方での開催も含め、いったい何十人にご出演いただいただろうか? 私が聞き手をつとめるのは、でしゃばりからではなく、ほかにやってくれる人がいないからであり、本来なら純粋に客の立場で聴きたいのだ。もっとも、当日までにその人の著作を読み返したり、こんなことを聞こうと考える時間は楽しい。

トークイベントの記録や、雑誌に掲載したインタビューをまとめて一冊にしようと、ビレッジプレスの五十嵐さんと話したのは、もう10年近く前のこと。テーマや人選で悩んでいるうちに月日が流れた。結局、本や雑誌の編集と、それを軸に場所をつくってきた人=〈編む人〉をテーマにしようと決め、9人の話を入れることにした。

その結果、8年も前のインタビューを収録することになったのだが、内容は古びていないと信じている。時間がかかってかえってよかったのは、以前はそれほど気にしていなかった、〈地域〉が、この間に私にとって重要なテーマとして浮上したことだ。そのため、北九州や飛騨、日田で雑誌と地域をつなげる活動を行なっている牧野伊三夫さん、新潟で地域雑誌『LIFE-mag.』を発行する小林弘樹さん、『地域雑誌 谷中・根津・千駄木』を軸に谷根千工房の活動を続けている山﨑範子さんの話を入れた。

刊行後、何人かから感想をいただいたが、どの人の話が興味深かったかがそれぞれ異なるのが面白い。読む人の個性や経験が、おのずと反映されるのだろう。そのなかでも、冒頭に収録した小西昌幸さんのインタビューは好評だ。徳島県で公務員として働きつつ、ミニコミ『ハードスタッフ』をつくり続けている小西さんの話は、かっこいい。彼の話を聴くと、自分にできることをやらなければという気持ちになる。とくに「精神では講談社よりもうちのほうが大きい」とタンカを切った出版社のエピソードには、勇気づけられる。

刊行を記念して、その小西昌幸さんに徳島から来ていただき、来年1月7日に田原町の〈Readin’ Writin’ BOOKSTORE〉でトークイベントを開催する。前回のトークからいままでずっと、『ハードスタッフ』次号を編集中の小西さんの話を、ぜひ生で聞いてほしいと思います。
http://readinwritin.net/



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『編む人 ちいさな本から生まれたもの』南陀楼綾繁 著
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2017年11月27日 第239号

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1.フリーランス書店員『スリップの技法』を開陳 久禮亮太
2.『遅れ時計の詩人 編集工房ノア著者追悼記』 涸沢純平
3.『江戸庶民の読書と学び』について  長友千代治

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━━━━━━━━━━━【自著を語る(193)】━━━━━━━━━━

フリーランス書店員『スリップの技法』を開陳

                       久禮亮太



「フリーランス書店員」の久禮亮太と申します。みなさん聞き慣れ
ない職業かと思いますが、私もまだ呼ばれ慣れません。新刊書店カ
フェ・神楽坂モノガタリで書籍担当をしながら、いくつかの書店チ
ェーンで現場の業務改善コンサルタントを請けおい、ときおり雑誌
の中で本の紹介記事を書くといった仕事をしています。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3535


『スリップの技法』久禮亮太 著
苦楽堂刊 定価:1666円+税 好評発売中!
http://kurakudo.co.jp/ 


━━━━━━━━━━━【自著を語る(194)】━━━━━━━━━━

『遅れ時計の詩人―編集工房ノア著者追悼記』

                        涸沢純平



 編集工房ノアは、1975年(昭50)9月、私が29歳で始めた。住んで
いる大阪、関西の地で、文芸出版がしたかった。42年が経つ。
本書のサブタイトルに迷った。「編集工房ノアの42年」と出来ない。
実は、私が還暦(10年前)に出そうと思いまとめ、校正刷りまで上げ
たが、自信がなくなり、放置していた。自社で自分の本を出すこと
に迷いもあった。が古希をむかえ決心した。恩義を受けた足立巻一
さんの享年72歳を越えては、あまりに恥ずかしい。


続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3530


『遅れ時計の詩人 編集工房ノア著者追悼記』涸沢純平 著
編集工房ノア 定価:2000円+税 好評発売中!
http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784892712814

━━━━━━━━━━━【自著を語る(195)】━━━━━━━━━━

『江戸庶民の読書と学び』について

                     長友千代治



江戸時代の庶民が暮しの中で、書物から学んでいる諸相を彼らが学
習した教材に基づいて記述した。研究書として新知見の探索を心掛
けながらも、周辺領域 或は一般読者の方々にも読んで頂けるよう、
私自身も楽しみ、江戸265年間の変遷を、世代交代 凡そ30年間を一
区切りとして考えてみた。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3506

『江戸庶民の読書と学び』 長友千代治 著
勉誠出版 定価 5,184円(本体 4,800円) 好評発売中!
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100803


━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『編む人 ちいさな本から生まれたもの』南陀楼綾繁 著
出版社ビレッジプレス 定価:1,600円+税 好評発売中!
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『出版物販売額の実態 2017』日販 営業推進室 書店サポートチーム編
日本出版販売株式会社 頒価 1,512円(本体1,400円)
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『古本屋癌になる 77歳の日記』青木正美 著
日本古書通信社 定価:2,000円+税
http://www.kosho.co.jp/kotsu/



━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━


12月~1月の即売展情報


https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init


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日本の古本屋メールマガジンその239 2017.11.27

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:小野祥之
編集長:藤原栄志郎

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2017年11月13日 第238号

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    古書市&古本まつり 第57号
     。.☆.:* 通巻238・11月13日号 *:.☆. 。
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━━━━━【11月13日~12月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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仙台駅前 イービーンズ古本まつり 
※中古レコード市併催(宮城県)

期間:2017/10/27~2017/12/03
場所:イービーンズ(旧エンドーチェーン) 9F杜のイベントホール

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早稲田青空古本祭

期間:2017/11/13~2017/11/18
場所:早稲田大学十号館前(大隈重信公銅像そば) 
新宿区西早稲田1-6-1

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名鯱会(名古屋)

期間:2017/11/17~2017/11/19
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12

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博物館古書市(名古屋)

期間:2017/11/18~2017/11/26
場所:名古屋市博物館 名古屋市瑞穂区瑞穂通1-27-1

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第82回シンフォニー古本まつり(岡山県)

期間:2017/11/22~2017/11/27
場所:岡山シンフォニービル1F  自由空間ガレリア

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ア・モール古本市(北海道旭川市)

期間:2017/11/23~2017/11/29
場所:コープさっぽろ ア・モール店1F催事場(旭川市豊岡3条2丁目2-19)

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2017/11/23~2017/11/26
場所:JR浦和駅西口徒歩5分 さくら草通り マツモトキヨシ前

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和洋会古書展

期間:2017/11/24~2017/11/25
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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五反田遊古会

期間:2017/11/24~2017/11/25
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4

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中央線古書展

期間:2017/11/25~2017/11/26
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

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新宿西口古本まつり

期間:2017/11/25~2017/11/30
場所:東京都交通広場(京王百貨店の横地下1階です)

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第84回 彩の国 所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2017/11/29~2017/12/05
場所:くすのきホール
西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場
URL:http://furuhon.wix.com/tokorozawafuruhon

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書窓会(通称マド展)

期間:2017/12/01~2017/12/02
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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西部古書展

期間:2017/12/01~2017/12/03
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

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反町12月古書会館展(神奈川県)

期間:2017/12/02~2017/12/03
場所:神奈川古書会館1階特設会場  
横浜市神奈川区反町2-16-10

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アツベツ古書の街(札幌)

期間:2017/12/05~2017/12/07
場所:新札幌駅直結サンピアザ光の広場
(新札幌駅直結・紀伊國屋書店厚別店脇)  
札幌市厚別区厚別中央二条5丁目7-2

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2017/12/07~2017/12/10
場所:JR浦和駅西口徒歩5分 さくら草通り マツモトキヨシ前

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歳末赤札古本市

期間:2017/12/07~2017/12/10
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

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フリーダム展

期間:2017/12/08~2017/12/09
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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つちうら古書俱楽部:師走の古本まつり!(茨城県)

期間:2017/12/09~2017/12/17
場所:茨城県土浦市大和町2-1 つちうら古書俱楽部

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有隣堂イセザキ本店チャリティーワゴンセール(神奈川県)

期間:2017/12/13~2018/01/08
場所:有隣堂伊勢佐木町本店 横浜市中区伊勢佐木町1-4-1

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新興古書大即売展

期間:2017/12/15~2017/12/16
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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五反田古書展

期間:2017/12/15~2017/12/16
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4 

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第124回 倉庫会(名古屋)

期間:2017/12/15~2017/12/17
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田五丁目1-12

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 次回は2017年11月下旬頃発行です。お楽しみに!
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日本の古本屋メールマガジンその238 2017.11.13

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:小野祥之

edo

『江戸庶民の読書と学び』について

『江戸庶民の読書と学び』について

長友千代治


江戸時代の庶民が暮しの中で、書物から学んでいる諸相を彼らが学習した教材に基づいて記述した。研究書として新知見の探索を心掛けながらも、周辺領域 或は一般読者の方々にも読んで頂けるよう、私自身も楽しみ、江戸265年間の変遷を、世代交代 凡そ30年間を一区切りとして考えてみた。

資料は、長期間収集してきた重宝記(拙編『重宝記資料集成』臨川書店)を主とする。重宝記は庶民生活万般の知識の宝庫、生活の指針書であり、本書での記述や解説はその資料自身に語らせ、私の論評はできるだけ控えた。

図版も本文理解に役立つよう原資料から転載したが、それは即 読者への絵解き、具体的な教示であった筈である。複雑に解説するよりも、図版提示の方か理解しやすいことがある。
教材としての教科書は、写本から整版印刷になり、それは何刷もでき 出版部数も随意だった。整版印刷の技術は版画製作に基づくもので、図版挿入にも適合していた。整版出版は寛永期(1624~44)頃から盛んになったが、時代が下るにつれ寺子屋教育の隆盛に伴い、出版本屋は軒並み需要の多い教科書、啓蒙書を製作して販売した。熾烈な出版競争になり、名の通った戯作者や画工を編集製作に傭うこともり、自ら編集出版する者も出現した。

出版業は、本屋・作者・読者が相互に関連し合う営為であり、ここからまた行商本屋や貸本屋が派生した。驚くべきことは彼らも出版本屋の成立に遅れず、寛永期から営業している。
出版本屋・行商本屋・貸本屋・作者・読者の相互関係から、近世文学を彩る浮世草子・読本・洒落本・黄表紙・合巻・人情本等江戸文学の諸ジャンルが誕生したと考えている。文学史では各ジャンルの講説は多いが、その誕生の様相を説く者は少ない。

教科書や啓蒙書の普遍的な思想は四書五経の精神、例えば「五倫」の道を学び取り実行する事、体認である。それは君臣間の義、父子間の親、夫婦間の別、長幼間の序、朋友間の信である。この場合、臣が君に、子が親に、弟は兄に、絶対服従せよとは言っていない。上の者が下の者を労わり、先に生れた者が人の道を教え、憐れみ恵むならば、自ら忠節・孝行・敬愛を尽くすというのである。その訳は、教えなければ解りはしないのだと、実に簡明である。江戸時代は相手を尊重する社会であり、各人はそれぞれの立場で果たすべき義務と責任を背負っていた。



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『江戸庶民の読書と学び』 長友千代治 著
勉誠出版 定価 5,184円(本体 4,800円) 好評発売中!
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『遅れ時計の詩人―編集工房ノア著者追悼記』

『遅れ時計の詩人―編集工房ノア著者追悼記』

涸沢純平

編集工房ノアは、1975年(昭50)9月、私が29歳で始めた。住んでいる大阪、関西の地で、文芸出版がしたかった。42年が経つ。
本書のサブタイトルに迷った。「編集工房ノアの42年」と出来ない。実は、私が還暦(10年前)に出そうと思いまとめ、校正刷りまで上げたが、自信がなくなり、放置していた。自社で自分の本を出すことに迷いもあった。が古希をむかえ決心した。恩義を受けた足立巻一さんの享年72歳を越えては、あまりに恥ずかしい。

考えた末、「編集工房ノア著者追悼記」とした。すべてが著者への追悼記なのである。私と著者との間の話なのだが、私だけが知ることもあり、記憶、記録として残しておくことも意味があるかもしれない、と思いなおした。
帯文は、手さぐりで始めた出版の業界の師とも思う、地方・小出版流通センター代表の川上賢一氏の言葉。
「関西で唯一の文芸専門出版社主・涸沢純平が綴る、表現者たちとの熱い交わり模様、亡き文人たちを語る惜別のことば。奥さんと二人の出版物語。」「関西で唯一」は、正確かどうかはわからないが、私は褒詞として受け取った。社員も何人かいたことはあるが、長年の二人出版となった。

帯の裏には、「大阪淀川のほとり、中津の路地裏の出版社。港野喜代子、永瀬清子、清水正一、黒瀬勝巳、天野忠、大野新、富士正晴、東秀三、中石孝、足立巻一、庄野英二、杉山平一、桑島玄二、鶴見俊輔、塔和子。本づくり、出会いの記録」と書き、私が出会い別れた著者たちの名前を上げ全体を表している。
創業第一冊。大阪の名物詩人、港野喜代子の詩集『凍り絵』を持って、宣伝のための新聞社回りわした夜、港野はひとり住まいの家の風呂で、心臓マヒを起こして死んだ。期待した港野の人脈が得られなくなった。

私は詩人大野新の鋭利な文章を読み、評論集『沙漠の椅子』を出版。大野さんに連れられて天野忠さんの「北園町九十三番地」に行った。
表題「遅れ時計の詩人」とは、十三の詩人、清水正一さんのこと。まねかれていく清水さんの家の柱時計はなぜか何時間も遅れていた。生業の蒲鉾屋の時間を詩人の時間にする遅れ時計。私は清水さんのことを父とも、港野さんのことを母とも思った。そうした心模様を書いた。
鶴見俊輔さんは「ノアは十九世紀の出版を思わせる」と言った。遅れ時計の出版社なのだ。
出版して二カ月が経つが、大筋は別にして、気にとめられる細部は、人によってさまざまであることがわかった。私の手を離れた、ささ舟のようなもの。

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『遅れ時計の詩人 編集工房ノア著者追悼記』涸沢純平 著
編集工房ノア 定価:2000円+税 好評発売中!
531-0071 大阪市北区中津3—17—5 電話06-6373-3641 fax06-6373-3642
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フリーランス書店員『スリップの技法』を開陳

フリーランス書店員『スリップの技法』を開陳

久禮亮太


 「フリーランス書店員」の久禮亮太と申します。みなさん聞き慣れない職業かと思いますが、私もまだ呼ばれ慣れません。新刊書店カフェ・神楽坂モノガタリで書籍担当をしながら、いくつかの書店チェーンで現場の業務改善コンサルタントを請けおい、ときおり雑誌の中で本の紹介記事を書くといった仕事をしています。18年間在籍した新刊書店チェーン、あゆみBOOKSを飛び出し、もうすぐ3年。現場で培った私の経験と技能を活用してくださる様々な業種のビジネス・パートナーに恵まれ、私自身はただ行き当たりばったりで仕事を模索しているうちに、いつの間にか周囲の人々にこの肩書きで呼ばれるようになりました。

 このたび、『スリップの技法』と題した本を書きました。新刊書店という場の面白さ、書店員という仕事の面白さを「自分の手で作り直そう!」と、全国の仲間たちに呼びかけたい。そんな思いで、これまで私が学び、考え、実践してきた仕事を伝える教科書を目指しました。かつて私が見てきた書店では、職人然とした「本屋のオヤジ」たちが魅力的な棚を作り、お客様と棚を介した無言の駆け引きを繰り広げていました。しかし、その職人芸は書き残されませんでした。現代のチェーン書店運営は、売上データ偏重で画一的になりがち。そんな現場で若い書店員たちは、自分の手でお客様の喜びと売上を作り出したという充実感を味わえず、疲れていると感じます。そんな彼らと一緒に、仕事の喜びと売上を生む具体的な手法を考え直したいのです。

 書店の仕事において最も大切な道具は、スリップです。買う前の本に挟まっている細長い紙片のことです。お客様が本を買ってくださったとき、書店員はスリップをレジで抜き取って手元に集めます。スリップは売れていった本の分身であり、買った人の思いを想像する手がかりです。

 書店には日々あたらしい本が入荷し、たくさんのお客様が様々な目的や願望を持って本を買ってくださいます。「人が何かを思いながら本を買った」という大量の事実を、売上金やデータといった抽象的な数字に化ける前に把握する。スリップはそのために必要不可欠な道具なのです。

 本書では、実際に売れた本のスリップ100枚以上を例に挙げ、私がどう考え、品揃えにつなげたのかを解説しました。売れた本からお客様の気持ちを想像し次の本を連想する過程は、一般読者のみなさんにも、お楽しみいただけると思います。
 読後のご感想をSNSで拝見していると、意外にも古書店主さんに面白がっていただいているようです。「一箱古本市の店主さんにもぜひ」とおっしゃる方もいました。著者の手を離れ多様な読み方をされて育っていく自著を、嬉しく見守っています。まだという方も、ご一読いただけますと幸いです。



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『スリップの技法』久禮亮太 著
苦楽堂刊 定価:1666円+税 好評発売中!
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