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古書店が翻訳した「台湾書店百年の物語」。

古書店が翻訳した「台湾書店百年の物語」。

フォルモサ書院 永井一広

 古書店が、なぜか翻訳をすることになった。 
 フォルモサ書院という古書店を大阪で開いてもう4年が過ぎた。店名を見て判る人にはすぐに判る。この書店が何を専門にしているのか。フォルモサとは、ポルトガル語で美しいという意味。何も雑居ビルの二階で営業している当店が美しい訳ではない。大航海時代にポルトガル人が台湾の島影の美しさから思わず叫んだ言葉が「フォルモサ」だったと言われている。以来、西洋の地図では台湾のことをフォルモサと記した。そして当店の専門はまさしく台湾の古本だ。当店が開業してまもなく、この「台湾書店百年の物語」の翻訳のお話しをいただいた。会社を辞めていきなり入った古本の世界。当時は右も左も分からないままに店を運営していた。古書組合での入札は修行経験のない私にとって、まさしく徒手空拳で、老舗の店主たちと入札という戦いに挑んでいた。もし一冊も落札できなければ、新たな入荷が全くできないのだ。やみくもに入札し、「絶対に落札してやる」と気合を入れすぎて高く入札して大赤字を出したり、逆にその反動でせこい入札をし、全く落札できず、手ぶらで空しく店にトボトボと帰ることもしばしば。正直、翻訳どころではない。ましてや私の中国語能力は甚だ怪しい。もう習って30年近くが経っていたからだ。だが、幸い私の妻が台湾人で本が好きときた。日本語も堪能だ。二人での共同翻訳ならなんとかできるのではないか。古本業の他に、何か別のチャンネルを持っておきたいと思っていた矢先だったこともあり、無謀を承知で翻訳をさせていただくことにしたのだ。そうして約三年の年月を要して翻訳を終えた。その間、なんとか店の方はつぶれずに済んでいる。

 日本に限らないことだろうけれど、インターネットが普及し、人々に浸透するにつれ、出版・書店業界というのは年々活気が薄れていっている。それはある意味、時代の流れで仕方のないことだろうと誰しもが薄々は気づいている。新刊書店もそうだろうけれど、実は古本屋も気づいている。それでも台湾の書店にはまだ活気があるような気がする。特に独立書店と言われている個人で営業する書店は、どこか日本の書店とはひと味違う活気があるのだ。その違いをひと言で言えば、社会との繋がりを大切にし、書店なりの社会貢献を行おうとしている書店が多いと言えるかも知れない。言い換えれば社会運動を、書店を通じて行っているともいえる。本書でも紹介している台湾e店や南天書局は、中華民国としての台湾ではなく、「台湾」そのものがテーマの書店だ。特に南天書局は、日本時代の古い文献を後世に残すため、採算度外視で復刻版を作成し出版、販売することを使命としている。台湾では暑さと湿気で日本時代の古書の保存状態が甚だよくないからだ。また女書店はフェミニズムをテーマにした書店で、女性をテーマにした書籍の販売のほか、講演会や座談会を開催している。日本の感覚では、このような書店が経営的に利益を出して存続できるのだろうかと心配になるが、実際、女書店は何度か閉業の危機を迎え、今も決して経営は楽ではないだろう。まさしく人生を賭して書店を経営しているのだ。台湾の独立書店はこのように、何か社会的な使命を自ら負った書店が多いのも特徴だ。

 また台湾映画「クー嶺街リンジエ少年殺人事件」で有名な台北市にある「牯嶺街」は戦後、古本屋が多く集まった古書街として発展したが、今は周辺に何店舗が残っているのみで、往時の面影はすっかり影を潜めている。
これら台湾の独立書店の原点や、「牯嶺街」の古書街の形成などは、いずれも日本時代の台湾と大きな関わりがあることが本書には書かれているが、当の日本人はあまり知らない。
私も台湾に行く前は何も知らなかった。今でもよく覚えている。初めて台湾に行った時、台北の町中のガジュマルの樹の下に、ひっそりと佇む木造の古い日本家屋があったことを。日本時代に生まれた妻の祖母と初めて会った時、たどたどしい日本語で「こんにちは」と嬉しそうに自己紹介をしてくれたことを。台湾と日本は切っても切れない関係にあることを改めて実感したものだった。

 日本の学校では教えない、かつての日本がひょっこり顔を出し、昔の台湾から現在の台湾を、「書店」という物語を通じて様々なことを教えてくれる本書が、これからの書店・出版業界の在り方について、何か小さなヒントにでもなれば翻訳者としては嬉しい限りだ。もちろん、古書業界の未来についても。

 
 
 
 
フォルモサ書院
https://formosa8.webnode.jp/
 
 
 
 


『台湾書店 百年の物語〜書店から見える台湾』
台湾独立書店文化協会 著/郭雅暉・永井一広 翻訳
発行元:エイチアンドエスカンパニー
ISBN:978-4-9907596-9-8
定価:2200円+税
好評発売中!
https://www.habookstore.com/

Copyright (c) 2022 東京都古書籍商業協同組合

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前近代の日本を理解するために、漢籍を知る

前近代の日本を理解するために、漢籍を知る

髙田宗平(中央大学兼任講師・青山学院大学非常勤講師・埼玉大学非常勤講師)

漢籍とは何か

 古来、日本人にとって、漢籍は中国文化を知り、これを学ぶ上で重要な道具であり手段であったことは周知の事実である。漢籍を読むことによって知識を取得できたのであり、あらゆる文化は漢籍から読み解く知識がベースとなって生み出された、といっても過言ではない。
 漢籍はいかにして日本にもたらされたのか。古代から近世に至るまで、日本が漢籍を受容した歴史を概観していきたい。

 本書『日本漢籍受容史―日本文化の基層―』は、日本漢籍受容史を日本文化の基層の一つとして捉え、その具体相を明らかにしようとするものである。ここで言う日本漢籍受容史とは、日本「漢籍受容史」、即ち日本における漢籍の受容の歴史であり、その時代範囲は古代から近世(一部論考、近現代に及ぶ)までとする。
 「漢籍」とは、どのような概念か、一言しておきたい。
 漢籍とは、清朝以前に中国人が漢文(漢語)で撰した書物を言う。この原則に合致していれば、日本・朝鮮半島・ベトナムで書写・刊行されたものも漢籍である。ただし、中国人以外が漢文で撰した書物は漢籍とは言わない。清朝以前に中国人が漢文で撰した書物に江戸時代以前の日本人が注釈や評を附したもの、清朝以前に中国人が漢文で撰した書物を江戸時代以前の日本人が翻訳したものは、準漢籍として扱うこともある。なお、和刻本漢籍において訓点が附されたものは、通常、漢籍として扱い、準漢籍には含めない。
 古来日本人にとって、漢籍は中国文化を知り、これを学ぶ上で重要な道具であり手段であった。日本人が古代から近世において、漢籍をどのように受け容れ、伝え、日本独自の文化としていったかを明らかにすることは、日本文化の基層の一斑を明らかにすることであり、中国文化との相違も見えてくるだろう。
 ただ、漢籍受容は、時代により多様な様相を呈しており、本課題を解明するには、日本古代から近世における漢籍受容の歴史に多角的にアプローチする必要がある。そのため、本書の出版を企画する際に、次の三点を念頭に置いた。(一)多分野の研究者に執筆を依頼し、学際的・横断的なものとすること、(二)日本人以外に中国と台湾の研究者に執筆を依頼し、国際的な視点を入れること、(三)第一人者から新進気鋭まで、最前線で活躍する研究者に執筆を依頼し、執筆者に幅広い年齢層を排すること、である。こうした点を踏まえ、第一部古代、第二部中世、第三部近世のように通史的に排置し、そして文献学的テーマを第四部文献研究に排置した。
 

他分野との協業

 日本の漢籍受容史は各時代の受容層、漢籍の形態など密接に聯関しており、これらを看過していては各時代相や文化を精確に把握できないであろう。ただ、このような課題は、単一の研究分野だけでは解明することは難しく、多分野との協業が必要不可欠であると思量される。それは本書の執筆者の研究分野の多彩さからも看取される。
 多分野との協業と言う視点から見れば、本書の執筆者の研究分野は、中国思想・哲学、中国科学思想史、中国天文学史、中国文学、中国書誌学、中国古典文献学、日本古代史、日本中世史、日本中世文学、日本近世文学、日本漢学、日本書誌学、日本思想史、日本古代・中世文化史、国語学、医史学などであり、幅広い領域をカバーしている。本書は、今後、日本の古代から近世の漢籍受容史のテーマで協業を行う上で一つのモデルケースとなるだろう。

 本書出版により、日本前近代の漢籍受容史研究の新たな地平を切り拓くことに繫がれば幸いである。

 
 
 
 
【著者】髙田宗平(たかだそうへい)
1977年生。総合研究大学院大学文化科学研究科日本歴史研究専攻博士後期課程修了。博士(文学)。専門分野は日本古代中世漢籍受容史・漢学史、漢籍書誌学。
〔主な著作〕
『日本漢籍受容史―日本文化の基層―』(編、八木書店、2022年)
『日本古代『論語義疏』受容史の研究』(単著、塙書房、2015年)

 
 
 
 


日本漢籍受容史―日本文化の基層―
髙田宗平編
本体9,000円+税
A5判・上製・カバー装・698頁+口絵16頁
ISBN 978-4-8406-2260-8 C3021
好評発売中!
https://catalogue.books-yagi.co.jp/books/view/2364

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2022年11月10日号 第358号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第118号
      。.☆.:* 通巻358・11月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━━【東京古書会館 展示のお知らせ】━━━━━━━

『地下出版のメディア史』展——珍書屋から辿る軟派出版の世界

【日時】11月30日(水)〜12月14日(水)
【休館日】日曜・祝日 
【開館時間】10:00~18;00 ※土曜17:00 まで 
【会場】東京古書会館 2階情報コーナー
【料金】無料

【主催】慶應義塾大学出版会
【共催】東京都古書籍商業協同組合

詳細はホームページをご覧ください。
https://www.kosho.ne.jp/?p=531
https://note.com/keioup/n/n69402fbbfd22

━━━━━━━━【トークイベントのお知らせ】━━━━━━━━

『島村輝先生・大尾侑子先生 トークイベント
「地下出版のなかの珍書・奇書を語る!――自由の探求/抑圧への叛逆 」』

戦前の日本の地下出版文化において、梅原北明を中心とするさまざまな「裏」
知識人たちが珍書・奇書を世に送り出し、全国の読者に届けようとしました。
そのエネルギーの源は何だったのでしょうか。そしてその珍書・奇書はどの
ようなもので、現代のわたしたちにとってどんな意味をもつのでしょうか。
『地下出版のメディア史』著者の大尾侑子さんと、プロレタリア文学研究を中
心に、エロ・グロ関連雑誌『変態・資料』『グロテスク』『談奇党/猟奇資料』
等の復刻を監修した島村輝さんのお二人に濃厚な地下出版トークを繰り広げて
いただきます!乞うご期待!

12月10日(土) 13時30分開場 / 14時開演
会場:東京古書会館 7階会議室 入場料:無料
定員:50名(応募申込み多数の場合は抽選)

応募申込みは下記ページにて(11月14日 午前10時まで)

https://www.kosho.ne.jp/talkevent2022/entry1210.html

※マスク着用、手洗い、手指消毒、検温と感染防止対策に
 ご理解・ご協力をお願い申し上げます。

━━━━━━【古本屋でつなぐ東北(みちのく)1】━━━━━━

石巻にあった古本屋「三十五反」を追って

               (宮城県・ゆずりは書房)猪股 剛

 私が生まれ育った所は、宮城県石巻市の牡鹿半島付け根にある渡波
(わたのは)という街である。石巻の中心街から橋を渡って北上川を
越えると、そこから渡波を経由して女川町に至るまでの一帯は水産業
の街になる。私は水産業の街が持つ独特の気風に子供の頃から馴染め
ず、早々に東京へ飛び出してしまった。東北で津波を伴う大きな地震
があった時も、地元に戻ろうという気概など起こらず、そのまま神奈
川県で古本屋を続けた。生まれ育った家の問題があって石巻に戻り、
宮城県古書籍商組合に移転した時には、地元を離れてから既に三十年
近くが経っていた。

(「日本古書通信」2022年8月号より転載)

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10392

━━━━━━━━━━━━【学芸員登場】━━━━━━━━━━━━

五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」

            公益財団法人五島美術館 大東急記念文庫
                       学芸員 長田和也

 西行(一一一八~一一九〇)は『新古今和歌集』に全歌人のうち最
多の九十四首入集し、『百人一首』にも「嘆けとて月やは物を思はす
るかこちがほなるわが涙かな」という歌が採られている、日本を代表
する歌人の一人。西行の特色は、歌のみならず、種々の伝説や、それ
を表現した美術品の数々も含めて愛好されている点にある。このたび
五島美術館では特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」を開催し、
西行にゆかりのある作品を約百点展示する(会期中、一部展示替えあ
り)。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10405

五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」
会期:令和四年十月二十二日(土)~十二月四日(日)
その他、詳細はホームページをご覧ください。
https://www.gotoh-museum.or.jp/

━━━━━━━━━━━【プレゼント企画】━━━━━━━━━━━

今月号でご紹介した「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」の
ご招待チケットを10名様にプレゼントいたします。

応募申込みは下記ページにて(11月14日 午前10時まで)

https://www.kosho.ne.jp/entry2022/1110.html

━━━━━━━━━━━━━【お知らせ】━━━━━━━━━━━━

◆自主映画『ボラン』上映のお知らせ◆

第44回ぴあフィルムフェスティバル in 京都2022
【Aプログラム】
2022年11月19日(土) 12時~
京都文化博物館にて上映
(宇治田峻監督『the Memory Lane』と併映)
https://pff.jp/44th/award/competition-kyoto.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「コショなひと」始めました

東京古書組合広報部では「コショなひと」というタイトルで動画
配信をスタート。
古書はもちろん面白いものがいっぱいですが、それを探し出して
売っている古書店主の面々も面白い!
こんなご時世だからお店で直接話が出来ない。だから動画で古書
店主たちの声を届けられればとの思いで始めました。
お店を閉めてやりきったという店主、売り上げに一喜一憂しない
店主、古本屋が使っている道具等々、普段店主同士でも話さない
ことも・・・
古書店の最強のコンテンツは古書店主だった!
是非、肩の力を入れ、覚悟の上ご覧ください(笑)

※今月の新コンテンツはありません。

YouTube 東京古書組合
https://www.youtube.com/channel/UCDxjayto922YYOe5VdOKu9w

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都合により、今回掲載予定の『シリーズ書庫拝見8』はお休みします。
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━━━━━【11月10日~12月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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新橋古本市

期間:2022/11/07~2022/11/12
場所:新橋駅前SL広場

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2022/11/10~2022/11/13
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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趣味の古書展

期間:2022/11/11~2022/11/12
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

https://www.kosho.tokyo/

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第186回神戸古書即売会(兵庫県)

期間:2022/11/11~2022/11/13
場所:兵庫県古書会館 神戸市中央区北長狭通6-4-5

https://hyogo-kosho.com/kamei/

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TOKYO BOOK PARK × ハンズ

期間:2022/11/11~2022/11/24
場所:ハンズ新宿店2階イベントスペース
   渋谷区千駄ヶ谷5-24-2タイムズスクエアビル

https://twitter.com/TOKYOBOOKPARK

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西武本川越PePeのペペ古本まつり(埼玉県)

期間:2022/11/14~2022/11/22
場所:西武鉄道新宿線 本川越駅前ペペ広場

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第27回 紙屋町シャレオ古本まつり(広島県)

期間:2022/11/15~2022/11/24
場所:紙屋町シャレオ中央広場 広島県広島市中区基町地下街100号

https://twitter.com/koshohiroshima

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第5回南大沢古本まつり

期間:2022/11/18~2022/11/24
場所:京王相模原線南大沢駅前~ペデストリアンデッキ~三井アウトレット前特 設テント

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歳末古本掘り出し市(岡山県)

期間:2022/11/23~2022/11/28
場所:岡山シンフォニービル1F  自由空間ガレリア

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2022/11/24~2022/11/27
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)

https://twitter.com/urawajuku

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和洋会古書展

期間:2022/11/25~2022/11/26
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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五反田遊古会

期間:2022/11/25~2022/11/26
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
   JR山手線、東急池上線、都営浅草線五反田駅より徒歩5分

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第63回 名鯱会(愛知県)

期間:2022/11/25~2022/11/27
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12

https://hon-ya.net/

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中央線古書展

期間:2022/11/26~2022/11/27
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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Vintage Book Lab(ヴィンテージ・ブック・ラボ) ※会場販売ありません

期間:2022/12/01~2022/12/20
場所:※会場販売ありません

https://www.vintagebooklab.com/

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書窓展(マド展)

期間:2022/12/02~2022/12/03
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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西部古書展書心会

期間:2022/12/02~2022/12/04
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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ゼスト御池 冬の古書市(京都府)

期間:2022/12/03~2022/12/04
場所:ゼスト御池地下街 河原町広場

https://twitter.com/terra0505/status/1588721179954937856/photo/1

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第104回彩の国所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2022/12/07~2022/12/13
場所:くすのきホール (西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場)

https://tokorozawahuruhon.com/

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歳末赤札古本市

期間:2022/12/08~2022/12/11
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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新興古書大即売展

期間:2022/12/09~2022/12/10
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2022/12/15~2022/12/18
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)

https://twitter.com/urawajuku

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日本の古本屋メールマガジンその358 2022.11.10

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 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部・編集長:藤原栄志郎

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五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」

五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」

公益財団法人五島美術館 大東急記念文庫 学芸員  長田和也

 西行(一一一八~一一九〇)は『新古今和歌集』に全歌人のうち最多の九十四首入集し、『百人一首』にも「嘆けとて月やは物を思はするかこちがほなるわが涙かな」という歌が採られている、日本を代表する歌人の一人。西行の特色は、歌のみならず、種々の伝説や、それを表現した美術品の数々も含めて愛好されている点にある。このたび五島美術館では特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」を開催し、西行にゆかりのある作品を約百点展示する(会期中、一部展示替えあり)。

 展示は四部構成。第一部「西行とその時代」は、「一品経和歌懐紙」(国宝 京都国立博物館蔵)をはじめとする、数少ない西行自筆とされる資料や、肖像画、歌集、系図等によって西行に迫りつつ、西行の生きた時代を描いた延慶本『平家物語』(重要文化財 大東急記念文庫蔵)等の作品や後鳥羽院、藤原俊成、定家という同時代の重要人物に関する品々も展示する。

 第二部「西行と古筆」では特別展の柱の一つである古筆を展示する。伝来や鑑定に基づく筆者を伝称筆者といい、「伝○○筆」と表記する。伝西行筆の古筆切(古写本の一部を切裁したもの)は、江戸時代には「白河切」「落葉切」「出雲切」等と名付けられ、愛好されてきた。展示室では現在ばらばらに所蔵されている同種の古筆切が並んで掛けられているのを楽しんでも良し、同じ伝西行筆でも多彩な筆跡のあることを楽しんでも良し。また今回は俊成、定家も系譜に連なる御子左家の流れを汲む冷泉家蔵の古筆切、古写本も展示する。その中にも、冷泉家の伝来をもって伝西行筆とされているものがある。後世における伝西行筆の古筆愛好については、図録の解説や各論も参照されたい。

 第三部「西行物語絵巻の世界」ではもう一つの柱、「西行物語絵巻」を展示する。西行没後に編まれた『西行物語』は武士の家に生まれた西行が出家し、その後各地を訪れながら歌を詠み、「願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月の頃」と詠じた通りに入寂するまでを描いた物語。絵巻の題材となった。今回は精緻を極める鎌倉時代の絵巻から色彩豊かな俵屋宗達らによる江戸時代の絵巻まで、「西行物語絵巻」の諸本を集めた。こちらも、かつては一つだったが現在では各所に分蔵されている絵巻が展示室内で再び揃う感動的な光景を目にすることが出来る。なお図録には、現存する「西行物語絵巻」諸本の全容をうかがうべく、各絵巻の場面一覧表を掲載した。

 第四部「語り継がれる西行」では、主に江戸時代に作られた書物、工藝、絵画の各分野における西行を題材とした作品を展示する。こうした作品が作られた背景として、出版文化の隆盛による西行伝説の浸透が挙げられる。室町時代までに形成された西行像が江戸時代の人々によって享受され、伝統を受け継ぎつつも新たな西行の姿が生み出された。そして西行は明治時代には橋本雅邦「西行法師図」(東京大学駒場博物館蔵)が制作される等、歴史画の題材になった。西行が現代に至るまで脈々と語り継がれ、日本文化の通奏低音となっていることを展示室で実感していただけるものと思う。

 成程、伝称筆者はあくまでも古筆家の鑑定や状況証拠に基づくものであって、結局のところ西行自筆ではないという見方や、絵巻に描かれた物語は所詮作り話であり、西行の「実像」を伝えるものではないという見方もあろう。しかし、書物によって伝えられた種々の伝説が伝記的事実の素朴な実証以上に西行の歌を鑑賞する助けとなることもあるだろう。絵巻に描かれている西行の姿に惹かれて、その歌や伝西行筆の筆跡を愛好し、心の支えとしてきた数多の日本人がいたという事実が、今回展示する作品たちによって裏付けられている。

 現代は、過去の積み重ねの中にある。現在「正しい」とされている価値観は絶対的なものなのか、果たして我々は「進歩」の道を歩んできたのか。展示室の名品の数々は、過去の人々が大切にしてきたものに敬意を持って向き合うことの必要性をも教えてくれるだろう。まずは五島美術館ホームーページで主な展示予定作品をご確認いただきたい。

 
 
 
 


五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」
会期:令和四年十月二十二日(土)~十二月四日(日)
その他、詳細はホームページをご覧ください。
https://www.gotoh-museum.or.jp/

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石巻にあった古本屋「三十五反」を追って  【古本屋でつなぐ東北(みちのく)1】

石巻にあった古本屋「三十五反」を追って 【古本屋でつなぐ東北(みちのく)1】

(宮城県・ゆずりは書房)猪股 剛

 私が生まれ育った所は、宮城県石巻市の牡鹿半島付け根にある渡波(わたのは)という街である。石巻の中心街から橋を渡って北上川を越えると、そこから渡波を経由して女川町に至るまでの一帯は水産業の街になる。私は水産業の街が持つ独特の気風に子供の頃から馴染めず、早々に東京へ飛び出してしまった。東北で津波を伴う大きな地震があった時も、地元に戻ろうという気概など起こらず、そのまま神奈川県で古本屋を続けた。生まれ育った家の問題があって石巻に戻り、宮城県古書籍商組合に移転した時には、地元を離れてから既に三十年近くが経っていた。

 二〇二二年現在、石巻という街には昔ながらの古本屋は存在していないはずである。私も実店舗は構えていない。今の石巻の人には、古本屋という商売はなかなか珍しく思えるのではないだろうか。何せ街で見かけないのだから。

 私自身は、昔ながらの古本屋を東京へ飛び出す前からすでに知っていた。街に馴染めない代わりに本に馴染めていた私は、石巻駅近くの路地にあった、ある古本屋に実に足繫く通っていた。店の名は「古本屋三十五反」と言った。

 「三十五反」とは民謡由来で、仙台米を北上川経由で江戸に運ぶのに用いられた千石船の帆のサイズのことである。私が古本屋三十五反に通い始めたのはまだ十代。店の存在を知り、中へ入ってみたのは全くの偶然であった。

 外観は店舗に見えない。古い倉庫のような灰色の建物で、古本屋の文字は大きく出ていたが、出入り口は実に閉鎖的で、ちょっと中を覗いてみようという気にはなかなかなれない構えであった。店内は薄暗かった。帳場の奥を覗くと、なぜか生活感が感じられるお座敷のようなスペースがあった。蔵書はかなりの数があり、これぞ古本屋と言うべき雰囲気で、私は魅了され、十代の心をこの場所で満たしていた。

 当時の私は、店主と話すことがあっても二言三言程度でしかなかった。だから、ここの店主から古書について直接薫陶を受けたということは全くない。しかし、私は明らかにこの店から強い影響を受けていた。上京とほぼ同時に神保町に通い始めたのだから。そしていつの間にか、こうして自分でも古本屋をやるようになってしまった。

 上京後、帰省した折に一度だけ三十五反に行ったことがあるが、ほどなく店はなくなってしまい、今では跡地は駐車場になっている。都会にいる間は、あまり三十五反のことを思い出すこともなかったが、こうして石巻に戻った今、この謎の古本屋のことをちょっと調べてみたくなった。

 地元の図書館で、「弁護士布施辰治誕生七十年記念人権擁護宣言大会関連資料」という本を見つけた。そこに三十五反の店主である櫻井清助氏が文章を寄せていた。そして、自身の経歴のことをほんの少しだけ記していた。

 「一九八一(昭和五六)年、わたしは郷里に三十年ぶりに帰ってきて小さな古本屋を始めた」「年余にして広いところに移り、幼稚園の体育館だったとかでステージが座敷になっていた」「少し落ち着いてから、東京時代に関心を持っていた鴇田英太郎(筆者註:石巻出身の戦前の劇作家)について調べ始めた」

 なんと三十五反の店主櫻井氏は、私と同じく長い間東京にいた人だったのだ。ならば昔の神保町も知っているに違いない。三十五反のあの雰囲気は、昔の神保町の様子を自然に継いだものだったのかも知れない。何だか長年の謎が解けた気がした。

 私も櫻井氏から古本屋の灯を勝手に継いでしまっていた。そして気が付くと、私が三十五反に通っていた頃の櫻井氏よりも、今の私の方が古本屋としての業歴がほんの少し長くなっていた。

 
 

 
 
(「日本古書通信」2022年8月号より転載)

 
 
 
 


『増補新版 東北の古本屋』 折付桂子著
文学通信刊
ISBN978-4-909658-88-3
四六判・並製・312頁(フルカラー)
定価:本体1,800円(税別)好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-88-3.html

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2022年10月25日号 第357号

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1.『全国タウン誌総覧―地域情報誌
  ・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』

                         柴田志帆

2.『増補新版 東北の古本屋』
  ―東北に寄り添った古本屋案内と、古本屋から見た震災記録

                  日本古書通信社 折付桂子

3.「流木記」を語る――「書く」という贖罪について

                         窪島誠一郎

4.「“ととのう”街~神田・神保町・御茶ノ水~」

      『神田・神保町・御茶ノ水Walker』編集長 倉持美和

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━━【自著を語る(298)】━━━━━━━━━━

『全国タウン誌総覧―地域情報誌
 ・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』

                           柴田志帆

■『全国タウン誌総覧』の特徴
 戦後から現在までに日本各地で作られてきた、地域の情報を発信す
るタウン誌。私が今回制作した『全国タウン誌総覧』は、そのタウン
誌8,715点をリストアップした目録です。地域で発行・流通するため、
これまで網羅的に探せなかった「タウン誌」「地域情報誌」、さらに
「ミニコミ」「フリーペーパー」「リトルプレス」から、地域に焦点
を当てたものも採録しています。全体を地域別に並べ、創刊・休廃刊
年、刊行頻度といった基本事項のほか、誌名変遷や関連文献、所蔵機
関の情報についてもできるかぎり調査・収録しているところが特徴です。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10237

『全国タウン誌総覧―地域情報誌・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』
柴田 志帆 編著
皓星社刊
B5判・上製・632頁
定価:本体15,000円(+税)
好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407708/

━━━━━━━━━【自著を語る(299)】━━━━━━━━━━━

『増補新版 東北の古本屋』
 ―東北に寄り添った古本屋案内と、古本屋から見た震災記録

                   日本古書通信社 折付桂子

 東日本大震災から一一年が過ぎた。私の故郷は福島県。神保町古書
街近くの勤務先で、連絡の取れない故郷を案じたあの日を今も鮮明に
覚えている。お世話になった古本屋さんたちも大きな被害を受けた。
震災から三週間後、福島県須賀川市と郡山市に店を持つ、古書ふみく
らさんに取材予約を入れ、単身オートバイで被災地へ向かった。そこ
で見た地震被害も衝撃的だったが、ふみくらさんの実家に避難してい
た楢葉町(当時、原発事故による警戒区域)の岡田書店さんとの出会
いで、私の中の何かが変わった。「地震だけなら家に帰れるんですよ。
問題は原発事故で全く先が見えないということ」といった言葉が胸に
刺さる。こうした証言を記録として残したい、残さなくてはと思った。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10247

『増補新版 東北の古本屋』 折付桂子著
文学通信刊
ISBN978-4-909658-88-3
四六判・並製・312頁(フルカラー)
定価:本体1,800円(税別)好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-88-3.html

━━━━━━━━━【自著を語る(300)】━━━━━━━━━━━

「流木記」を語る――「書く」という贖罪について

                          窪島誠一郎

 私はこのたび「流木記――ある美術館主の八十年」(白水社)とい
う本を出した。副題が示す通り、この本は太平洋戦争開戦の直前に生
まれた私が、戦後の混乱期から敗戦の対価としての高度経済成長の波
にのり、ほとんど阿鼻叫喚というしかなかった経済戦争の「昭和」を
いかにして生きたかという記録であり、高校卒業後にイチかバチかで
開いたスナック商売が大当りして貧乏生活から脱出し、やがて絵画収
集の趣味が高じて信州上田市の郊外に、大正昭和期の夭折画家や学徒
出陣で出征して志半ばで戦場のツユと消えた戦没画学生たちの遺作を
あつめた私設美術館をつくるまでの足跡を辿った、自叙伝とも私小説
ともつかぬサクセスストーリー(?)なのだが、これまで百余冊の本
を上梓しながら鳴かず飛ばずだった半アマチュア作家の私の作品とし
ては珍しく、あちこちの書評欄で取り上げられたりして(このメルマ
ガも然り)、大いに気を良くしているところなのである。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10281

『流木記 ある美術館主の80年』 窪島誠一郎 著
白水社刊
四六判 258ページ
定価 2,400円+税
978-4-560-09894-3
好評発売中!
https://www.hakusuisha.co.jp/book/b600629.html

━━━━━━━━━━━【編集長登場】━━━━━━━━━━━━

「“ととのう”街 ~神田・神保町・御茶ノ水~」

    『神田・神保町・御茶ノ水Walker』編集長 倉持美和

このたびウォーカームック「神田・神保町・御茶ノ水Walker」
を発行いたしました。

「○○Walker(ウォーカー)」と言えば、「東京ウォーカー」
が浮かぶ方が多いと思います。

「東京ウォーカー」は、グルメや観光スポット、イベント、
エンタメなどおでかけに役立つネタを紹介するエリア情報誌で、
1990(平成2)年に創刊し、2020(令和2)年に休刊となりました。
「東京ウォーカー」と同時に休刊した「横浜ウォーカー」編集部
にいた私は、現在は「エリアLOVEWalker」ブランドの一つ、「横
浜LOVEWalker」の編集長を務めております。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10254

『神田・神保町・御茶ノ水Walker』
角川アスキー総合研究所 刊
ISBN:9784049111194
定価:990円(税込)
好評発売中!
https://www.kadokawa.co.jp/product/322205000767/

━━━━━━━━━━━【プレゼント企画】━━━━━━━━━━

『神田・神保町・御茶ノ水Walker』を、抽選で10名様にプレゼント致します。
ご応募お待ちしております。

応募申込は下記ページにてお願い致します。
 締切日 10月28日(金)午前10時

https://www.kosho.ne.jp/entry2022/1025.html

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『台湾書店 百年の物語〜書店から見える台湾』
台湾独立書店文化協会 著/郭雅暉・永井一広 翻訳
発行元:エイチアンドエスカンパニー
ISBN:978-4-9907596-9-8
定価:2200円+税
好評発売中!
https://www.habookstore.com/

『日本漢籍受容史―日本文化の基層―』 髙田宗平編
八木書店出版部 発行
A5判・上製・カバー装・696頁+カラー口絵16頁
本体予価9,000円+税
ISBN978-4-8406-2260-8
発行予定:2022年11月25日
https://catalogue.books-yagi.co.jp/books/view/2364

━━━━━━━━━━━━【お知らせ】━━━━━━━━━━━

◆自主映画『ボラン』上映のお知らせ◆

第44回ぴあフィルムフェスティバル in 京都2022
【Aプログラム】
2022年11月19日(土) 12時~
京都文化博物館にて上映
(宇治田峻監督『the Memory Lane』と併映)
https://pff.jp/44th/award/competition-kyoto.html

━━━━━━━━【第62回東京名物神田古本まつり】━━━━━━

◆青空掘り出し市◆
「東京名物・神田古本まつり」、
神田神保町が総力をあげて3年ぶりに開催されます。

【主催】神田古書店連盟
【共催】千代田区
【後援】東京都、千代田区観光協会
【期間】10月28日(金)~11月3日(木・祝)
【時間】10月28日~30日:10時~19時
    10月31日~11月3日:10時~18時
【会場】神田神保町古書店街(靖国通り沿い・神田神保町交差点他)

詳しくは
https://jimbou.info/news/20220915.html

◆特選古書即売展◆
和洋の古典籍、古地図、歴史学、民俗学等の学術書、近現代日本文学の
初版本や草稿、映画、美術、趣味など個性あふれる十数店が出店いたします。

【期間】10月28日(金)~30日(日)
【時間】10時~18時(最終日17時まで)
【会場】東京古書会館地下1階(東京都千代田区神田小川町3-22)

詳しくは
https://www.kosho.or.jp/event/detail.php?mode=detail&event_id=4712
https://tokusen-kosho.jp/

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

10月~11月の即売展情報

※新型コロナウイルスの影響により、今後、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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日本の古本屋メールマガジン その357・10月25日

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 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
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【発行者】
 広報部・編集長:藤原栄志郎

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「流木記」を語る――「書く」という贖罪について

「流木記」を語る――「書く」という贖罪について

窪島誠一郎

 私はこのたび「流木記――ある美術館主の八十年」(白水社)という本を出した。副題が示す通り、この本は太平洋戦争開戦の直前に生まれた私が、戦後の混乱期から敗戦の対価としての高度経済成長の波にのり、ほとんど阿鼻叫喚というしかなかった経済戦争の「昭和」をいかにして生きたかという記録であり、高校卒業後にイチかバチかで開いたスナック商売が大当りして貧乏生活から脱出し、やがて絵画収集の趣味が高じて信州上田市の郊外に、大正昭和期の夭折画家や学徒出陣で出征して志半ばで戦場のツユと消えた戦没画学生たちの遺作をあつめた私設美術館をつくるまでの足跡を辿った、自叙伝とも私小説ともつかぬサクセスストーリー(?)なのだが、これまで百余冊の本を上梓しながら鳴かず飛ばずだった半アマチュア作家の私の作品としては珍しく、あちこちの書評欄で取り上げられたりして(このメルマガも然り)、大いに気を良くしているところなのである。

 だが、この本が読者の関心を惹いたのは、太平洋戦争開戦から八十年を生きた私の波瀾万丈といってもいい人生(たとえば戦時中二歳九日で生父母と離別し、空襲で焼け出された貧しい靴修理職人夫婦のもとで育てられ、その後開業した水商売が当って大儲けしたこととか、戦後三十余年経って再会した父親が何と「飢餓海峡」や「越前竹人形」などのベストセラーで知られる直木賞作家の水上勉氏であったこととか)、あるいはスナック商売のかたわら没頭した絵画収集によって、まがりなりにも一応の自己形成をとげてゆく過程というか、あっちにぶつかりこっちにぶつかりしながら、「昭和」という時代の濁流にのまれて生きた「流木」そのものの運命への共感からきていることも確かな気がするのだが、同時にもう一つ、この物語のタテ軸をなす形で語られている数々の病との戦い、八十歳という老齢にいたった今も、五指をこえる大病をかかえた人間であることへの読者の同情があるようにも思われる。

 七十四歳でおそわれた突然のクモ膜下出血、七十六歳での陰茎ガン(二百万人に一人という確率で発症するきわめて珍しいガンだそうだ)、その翌年に見舞われた間質性肺炎、心臓動脈瘤、さらに三十数年間悩まされつづけているアトピーとならんで根治困難といわれる皮膚病の尋常性乾癬との戦い等々、のりこえてきたその「病歴」のすさまじさにも読者は圧倒されるにちがいない。「流木記」をめくった読者は、筆者である私の奇縁と偶然、不条理と必然のあいだをゆれ動いた八十年に興味をもつと同時に、そうした数多くの病をくぐりぬけてきた強運ぶりにも瞠目するにちがいないのである。

 「流木記」の冒頭は、「二〇一八年八月十日、尾島真一郎はペニスをうしなった」という一行から書き起こされている。
 これは私が(文中では尾島真一郎という仮名を使っているが)、東京慈恵会医科大学附属病院泌尿器科において、担当医師から「陰茎ガン」を宣告されるシーンだが、前段で紹介したように、「陰茎ガン」というのは何百万人に一人というまるでジャンボ宝くじ並みの確率で発症する部位のガンだそうで、私が七十六歳九ヶ月をもって永年慣れ親しんだ己が性器の切除手術をうけるという衝撃的な文章ではじまるのである。その後この本のあちこちにペニスをうしなったあとの私の生活に生じた身体的不具合や、(若い頃ほどではないにしても)日夜性的妄想にかられるたび、悶々烈々とのたうつ竿ナシ男の慨嘆が語られていて切ないのだ。現在信州上田で営む美術館「無言館の運営の苦労や、経済難のために愛蔵していたコレクションを手放さねばならなくなった孤独や喪失感も切々と訴えられているのだが、それより何より老齢の主人公をおそったクモ膜下出血や肺炎、心臓病などの死地からの奇跡的な生還、その「病歴」のトドメをさすようにおそってきた「陰茎ガン」によって、ついにペニスまで喪失するにいたった八十男の哀れが読者の憐憫をさそってやまないのである。

 しかし、この不幸な病との戦いを出来るかぎり包みかくさず、ありのままに綴った「流木記」は、けっして老年にして大事なチンポをうしなった筆者の絶望を語るために書かれた本ではない。私が一番書きたかったのは、そうした幾多の病におそわれつつ戦前、戦中、戦後の時代の激変にもてあそばれ、いかに敗戦(日本人戦死者三百数万人!)の見返りとしての経済成長に自分が救われ、八十歳の現在まで生きのびることができたかという事実なのだった。「ことによると、戦没画学生の美術館をつくったのは、そうした自らにあたえられた時代の恩恵(?)に対するザンゲの気持ちからだったのではないのか」「あの戦争に対して何一つ自省や悔悟の態度をしめすことなく、ただひたすら一億総参加の物欲レースに加わってきた自身の罪滅しのためにつくった美術館が無言館ではなかったのか」

 うまく言えぬが、ことによると己がペニスもろとも行き場をうしない、昭和、平成、令和の袋小路へと追いこまれた一本の「流木」の末路を書くことこそが、この本にあたえられた贖罪の一つではなかったかと自問しているところなのである。

 
 
 
 


『流木記 ある美術館主の80年』 窪島誠一郎 著
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「“ととのう”街 ~神田・神保町・御茶ノ水~」

「“ととのう”街 ~神田・神保町・御茶ノ水~」

『神田・神保町・御茶ノ水Walker』編集長 倉持美和

 このたびウォーカームック「神田・神保町・御茶ノ水Walker」を発行いたしました。

 「○○Walker(ウォーカー)」と言えば、「東京ウォーカー」が浮かぶ方が多いと思います。

 「東京ウォーカー」は、グルメや観光スポット、イベント、エンタメなどおでかけに役立つネタを紹介するエリア情報誌で、1990(平成2)年に創刊し、2020(令和2)年に休刊となりました。「東京ウォーカー」と同時に休刊した「横浜ウォーカー」編集部にいた私は、現在は「エリアLOVEWalker」ブランドの一つ、「横浜LOVEWalker」の編集長を務めております。

 「横浜LOVEWalker」は、「横浜ウォーカー」と何が違うのか? 字面では「LOVE」が加わっただけですが、コンセプトはかなり違います。
まず、定期刊行の紙媒体はありません。WEBやSNS、YouTube放送を中心に展開しています(もちろん雑誌も不定期で発行します)。また、「ウォーカー」はその街に遊びに行く人たちに向けた雑誌で、編集部のスタッフがリサーチ・取材した最新のおでかけ情報を紹介していましたが、「LOVEWalker」は”ジモト愛“をテーマに地域活性を推進することを目的にした地域共創メディアで、 “その街が好きになる”情報を地元の人たちと共に発信しています。※WEBサイト(https://lovewalker.jp/yokohama/)では、地元の人たちが執筆するコラム連載が多数掲載されています。

 そんな「LOVEWalker」のコンセプトも取り入れて製作したのが「神田・神保町・御茶ノ水Walker」です。“地元を愛する人たちと共に”“より深く掘り下げた”企画が、メイン特集の「心がととのう街歩き ベスト25トピックス」です。

 特集タイトルの「心がととのう街歩き」ですが、「神田・神保町・御茶ノ水という3つのエリアを象徴するキーワードを入れたい」という思いがありました。とはいえ、3エリアの特徴はかなり個性的で、一つの言葉でまとめるのは難しく、部内でも何度か話し合いを重ねました。その中で出てきたのが、サウナー効果で一気にメジャーになった「ととのう」という言葉です。きっかけは、神田ポートビルにある「SaunaLab Kanda(サウナラボ神田)」。サウナーの間で話題の場所ということで、リサーチも兼ねて体験しに行くと若い男女の多いこと! 文字通りの“ホットスポット”で、私自身、体も心も“ととのう”ことができました。また、編集スタッフからは、「街を歩いていると、新しいビルの横にすごく古い建物があったりして、その雑然とした雰囲気がなぜか心地よくて落ち着く」という話を聞き、【ととのう(整う、調う)=「きちんとそろう」「調和がとれる」「まとまる」】から、「ととのう」をキーワードに、企画構成を進めていきました。

 ”地元を愛する人たちと共に“という点では、地元企業や地元在住、街づくりを進める方々など、多くの方にさまざまな形でご協力いただきましたが、メイン特集以外でも、コミックエッセイ「気になるスポット調査隊」では、通常では見ることができない「古書交換会」の様子を取材させていただきました。「古書交換会がほぼ毎日行われているのは、世界中で神保町だけ」という話は、ぜひとも多くの方に知ってほしいと思っております。

 「食でととのう」「体験でととのう」「街がととのう」と、若干こじつけに近いものもあるかもしれませんが、ニュースだけでなく歴史やトリビアなど、さまざまな切り口で神田・神保町・御茶ノ水の魅力を伝えておりますので、ご覧になっていただければ幸いです。

 
 
 
 
横浜LOVEWalker(WEB)
https://lovewalker.jp/yokohama/

 


『神田・神保町・御茶ノ水Walker』
角川アスキー総合研究所 刊
ISBN:9784049111194
定価:990円(900円+税)
判型:A4正寸、平綴じ
ページ数:84p
好評発売中!
https://www.kadokawa.co.jp/product/322205000767/

Copyright (c) 2022 東京都古書籍商業協同組合

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『増補新版 東北の古本屋』―東北に寄り添った古本屋案内と、古本屋から見た震災記録

『増補新版 東北の古本屋』―東北に寄り添った古本屋案内と、古本屋から見た震災記録

日本古書通信社 折付桂子

 東日本大震災から一一年が過ぎた。私の故郷は福島県。神保町古書街近くの勤務先で、連絡の取れない故郷を案じたあの日を今も鮮明に覚えている。お世話になった古本屋さんたちも大きな被害を受けた。震災から三週間後、福島県須賀川市と郡山市に店を持つ、古書ふみくらさんに取材予約を入れ、単身オートバイで被災地へ向かった。そこで見た地震被害も衝撃的だったが、ふみくらさんの実家に避難していた楢葉町(当時、原発事故による警戒区域)の岡田書店さんとの出会いで、私の中の何かが変わった。「地震だけなら家に帰れるんですよ。問題は原発事故で全く先が見えないということ」といった言葉が胸に刺さる。こうした証言を記録として残したい、残さなくてはと思った。

 古本と本の雑誌である『日本古書通信』でも、伝えられることはあるはず。それ以来、震災・津波・原発事故に負けずにがんばる東北の古本屋さんたちの姿を取材し続け、『日本古書通信』にリポートを掲載してきた。二〇一八年には全古書連加盟の東北の古本屋さん全店を、店舗のある店には実際に足を運び店主に話を伺い地図と写真も付けて案内、無店舗の店もできるだけ特徴がわかるよう紹介した。その古本屋案内と震災ルポをまとめて、小著『東北の古本屋』を作ったのが二〇一九年秋のことである。

 少部数の自費出版であったが、東北の古本屋さんたちから続々と注文が寄せられた。『河北新報』や『赤旗』、雑誌『地域人』に紹介され、岡崎武志氏が『東京新聞』の「二〇一九年、今年の三冊」に選んでくださり、在庫は瞬く間になくなった。思いがけない反応は嬉しかったが、各地の図書館などからの注文に応えられないことが心苦しくもあった。そんなとき、文学通信さんから新版を出してくださるというありがたいお話をいただいた。

 この三年間で新規加入や開店もあれば閉店や廃業もある。旧版の記述も記録として生かしつつ、全面的に修正、加筆、新たに二〇二一年、二〇二二年のリポートも収録した。また、業界用語などには注釈を加え、詳細な索引も付した。私の拙い手書きの地図は描き直して見やすくなり、オールカラーの写真もより大きく配置され迫力が増した。一般の方にも手に取っていただきやすい本に出来上がったと思う。ちなみに表紙は、担当編集者が描いてくれた、あるお店の棚の風景である。どこのお店か、ぜひ読んで見つけていただきたい。

 この三年間はコロナ禍の三年間でもあった。二〇二〇年の春は、東京神保町でも古書街が閉まり、古書市場も古書即売展も休みになり、街がひっそりと静まり返っていた。同じころ東北でも古書市場が開けず、予定していた即売展が中止になったりしていた。ただその後は、宮城県と岩手県では、感染状況を見極めながら、できるだけ古書の灯を消さぬよう、古書店同士のつながりを保つよう、市場を開催している。

 今年の五月二九日には、二年間延期された「第二回松島皐月大入札会」が開催された。モチベーションを保つのが大変だったと思うが、宮城の若い業者を中心にまとまって開催にこぎつけ、宮沢賢治本を筆頭に多様な出品物が落札され好評を博した。企画、運営、目録作成、広報から後片付けまで自店を犠牲にしての開催には、相当な覚悟と苦労があったと思われる。地方では打ち合せに集まるにも距離があって大変なのだ。しかし、宮城の古書店たちは、今度は第二回「サンモール古本市」を盛り上げようと尽力している。昨年から仙台市の老舗新刊書店・金港堂を場として始まった催事。こちらもコロナ禍に負けずに継続されている。

 この力の源は何なのだろう。昭文堂書店さんは「連帯の機運が満ちてきた」と仰る。組合としてのその連帯の力こそ、共に大震災を乗り越えたゆえに生まれた共同体としての力(火星の庭談)なのではないか。阪神淡路大震災を経験した兵庫古書組合の連帯は、今に続くサンボーホールひょうご大古本市を生み出した。東北の業界にも同様に、つながりを大切にという思いが脈々と流れているのだと思う。

 東北の古書店有志が力を合わせるアオモリ古書フェア、より広がりを見せるイービーンズ古書展に加え、組合員以外の店と歩調を合わせた山形の催事も始まった。また、福島県でも組合員有志が、地元の出版社らと共に会津ブックフェアを企画中だ。本との出会いの場が広がっていることが嬉しい。

 東北の古本屋さんを取材して感じたのは、地域に対する思いの深さ、地域の文化を支えているという矜持である。ベテランが「地元の資料は地元にあるべき」と語れば、若手も「地元に根差して地域の方に愛される店に」と目を輝かす。店舗率も高い。原発事故による帰還困難区域だった楢葉町に帰還、開店した岡田書店さんは今年で七年目、しっかり地元に根付いてきている。これこそが本来の“復興”ではないか。こうした郷土への思いに震災の経験が加わり、連帯の意識が強まった東北の古書業界は、きっと今後も長く地元の文化を支え続けてくれるに違いない。紙の力、本の力、そして本と人をつなぐ古本屋さんの力を信じて、これからも本の世界の片隅からエールを送り続けたい。

 
 
 
 


『増補新版 東北の古本屋』 折付桂子著
文学通信刊
ISBN978-4-909658-88-3
四六判・並製・312頁(フルカラー)
定価:本体1,800円(税別)好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-88-3.html

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『全国タウン誌総覧―地域情報誌・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』

『全国タウン誌総覧―地域情報誌・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』

柴田 志帆

■『全国タウン誌総覧』の特徴
 戦後から現在までに日本各地で作られてきた、地域の情報を発信するタウン誌。私が今回制作した『全国タウン誌総覧』は、そのタウン誌8,715点をリストアップした目録です。地域で発行・流通するため、これまで網羅的に探せなかった「タウン誌」「地域情報誌」、さらに「ミニコミ」「フリーペーパー」「リトルプレス」から、地域に焦点を当てたものも採録しています。全体を地域別に並べ、創刊・休廃刊年、刊行頻度といった基本事項のほか、誌名変遷や関連文献、所蔵機関の情報についてもできるかぎり調査・収録しているところが特徴です。

■本書を作ったいきさつ
 中学生の頃に知った『本の雑誌』に「地方・小出版よろず案内」(川上賢一)などの記事がありました。これが、私が地方出版物や自主制作の出版物に関心を持ったきっかけです。ですが、タウン誌自体を特にたくさん集めていたり読んでいたりしたわけではなく、『ぴあ』も兄弟デュオ・キリンジの渋谷公会堂ライブ(2003年5月)のチケットをとる際に買ったくらい。一方、大学入学前に『おもしろ図書館であそぶ―専門図書館142館完全ガイドブック』(毎日新聞社,2003年)を購入し、この本で大宅壮一文庫などの雑誌専門の図書館があることを知りました。

 レファレンスツールの専門出版社で働いていた頃は、国立国会図書館に必ずしも全て所蔵されていない類の出版物――地域の雑誌、PR誌、社史・記念誌、文化施設の館報、市民活動団体の刊行物、趣味の雑誌などの書誌情報・目次を一覧するツールを作りたいと思っていました。特に、雑誌の現物確認のために所蔵機関を調べる過程で、1つの館で全号所蔵していることはほとんどなく、複数館の所蔵を確認する必要があることや、文学館や博物館などに図書館では所蔵されていないような雑誌があることに気づきました。そして、『ミニコミ魂』(串間努編,南陀楼綾繁ほか著,晶文社,1999年)や『神保町「書肆アクセス」半畳日記』(畠中理恵子,黒沢説子著,無明舎出版,2002年)を読むうちに、タウン誌などの地域発の雑誌の目録を作ってみたいと考えるようになります。2013年頃から資料を集めてExcelに入力を始めましたが、その後転居・転職などで生活環境が変わったこともあり、しばらく作業を中断していました。

 2020年春、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う飲食店休業・イベント自粛などに伴い、自宅にポスティングされるタウン誌から催事・お店情報が消えました。雑誌自体の休廃刊の動きも加速しそうな気配を感じたので、これまでに刊行されたタウン誌についてまとめておきたいと考え、入力を再開。そしてこの度、雑誌記事データベース「ざっさくプラス」を提供している皓星社とのご縁があり、蓄積したデータを書籍として刊行する運びになりました。

■本書制作に「日本の古本屋」をどう使ったか
 制作過程については「『全国タウン誌総覧』の作り方 ─あとがきに代えて─」に詳しく書きましたが、せっかくなのでここでは「日本の古本屋」の利用について取り上げます。

 1980年代前半頃までに刊行された図書の場合、図書館やオンライン書店などの書誌情報を見ても、概要や目次が分からず、タイトルや分類、件名、注記などを頼りに探す必要があります。同様に、地方雑誌や小雑誌は現在でも既存の雑誌記事索引の収録対象外であることが多く、どの雑誌のどの号に知りたいテーマの記事が載っているかを検索する手段がない状況です。

 そこで、「日本の古本屋」でタウン誌関連の言葉を入れて検索すると、「タイトル」に入っている雑誌の特集名や「解説」に載っている内容情報がヒットすることがあります。『Wander』の「特集:おきなわ雑誌名鑑ふくゎんじぇんぶぁん」や、『あすの三重』の「特集:地域情報誌を考える」などは、こうした検索によって存在を知り、制作に役立てることができました。なお、雑誌の表紙画像が掲載されている場合は、目次や執筆者などの情報からどんな性格の雑誌かを把握する手がかりになります。通常は在庫があるものだけが検索されるようになっていますが、詳細検索からその条件を外せば、これまで登録された出版物のカタログとして使うこともできることは意外と知られていないのではないでしょうか。制作中、コロナ禍での移動自粛や図書館の臨時休館もあったため、求める情報がどこに載っていそうかの当たりをつけ、現物を入手する手段として、「日本の古本屋」が役立ちました。

■おわりに
 近年、雑誌記事索引や所蔵目録のWeb公開、雑誌自体の電子化の動きにより、全国から地域資料にアクセスしやすくなってきました。タウン誌をどう利活用するかについては、本書内の「タウン誌の歴史」で私が触れたほか、近代出版研究所所長の小林昌樹氏による「解説『全国タウン誌総覧』の意義とタウン誌の効能」でも取り上げられています。本書が、調査・研究などにタウン誌がより活用される助けとなることを願っています。

 制作にあたって、可能な限り広く情報を集めましたが、遺漏も当然あるでしょう。今後は、各地域の方々の力をお借りして、追補していきたいと考えています。本書に未収録のタウン誌をご存じの方は、版元の皓星社まで情報をお寄せいただければ幸いです。

柴田 志帆(しばた・しほ)
1984年生まれ、茨城県出身。2007年慶應義塾大学文学部図書館・情報学専攻卒業後、レファレンスツールの専門出版社で書籍編集に従事。現在は、茨城県内の公共図書館で働く傍ら、茨城県出身の女性を応援するフリーマガジン『茨女』の編集に携わる。

 
 
 
 


『全国タウン誌総覧―地域情報誌・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』
柴田 志帆 編著
皓星社刊
B5判・上製・632頁
定価:本体15,000円(+税)
好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407708/

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