2023年1月10日号 第362号

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 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第120号
      。.☆.:* 通巻362・1月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━【古本屋でつなぐ東北(みちのく)3】━━━━━━

古本屋の休日―東北古本屋バイク部ツーリング(秋田編)

              (青森県・古書思い出の歴史)今村拓志

 当店「古書 思い出の歴史」があるのは、本州最北端青森市です。現在
の人口は約二七万人、個人経営の古本屋は三店舗(内組合加入店は誠信
堂と当店)。売上げの大部分を占めるのは、ネット販売となります。毎
日の業務はパソコンを使っての入力作業がメインとなり、気がつくと丸
一日ほぼ会話が無いなんて日も少なくありません。

(「日本古書通信」2022年10月号より転載)

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10652

━━━━━━━━━【シリーズ書庫拝見9】━━━━━━━━━

大島青松園 島の読書生活をたどる

                         南陀楼綾繁

 数年前、高松港からフェリーで男木島を訪れた。その途中、小さ
な島のそばを通った。この島には寄らないんだなと思ったのだが、
あとで聞くとそれは大島だった。島全体がハンセン病療養所になっ
ているという。その頃は離島にそういう施設があることの意味に気
づかなかった。

 この島にハンセン病療養所が設置されたのは、1909年(明治42)
のこと。1907年(明治40)に公布された「癩予防ニ関スル件」を受
けてつくられた公立療養所のひとつだ。中国・四国8県の患者を収
容する第四区療養所として発足し、翌年に大島療養所と改称する。
1941年(昭和16)、国立に移管するのにあわせて、大島青松園となっ
た。現在、全国に14か所ある療養所のなかで、船でしか行けない場
所にあるのは、ここだけである。いわば、国の隔離政策を象徴する
島なのだ。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10870

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

国立療養所大島青松園
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/hansen/osima/

※大島青松園は、新型コロナウイルス感染症の対策のために、当分の間、
来園制限を行っています。
入所者を守るために、ご理解、ご協力をお願いたします。

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「コショなひと」始めました

東京古書組合広報部では「コショなひと」というタイトルで動画
配信をスタート。
古書はもちろん面白いものがいっぱいですが、それを探し出して
売っている古書店主の面々も面白い!
こんなご時世だからお店で直接話が出来ない。だから動画で古書
店主たちの声を届けられればとの思いで始めました。
お店を閉めてやりきったという店主、売り上げに一喜一憂しない
店主、古本屋が使っている道具等々、普段店主同士でも話さない
ことも・・・
古書店の最強のコンテンツは古書店主だった!
是非、肩の力を入れ、覚悟の上ご覧ください(笑)

※今月の新コンテンツはありません。

YouTube 東京古書組合
https://www.youtube.com/channel/UCDxjayto922YYOe5VdOKu9w

━━━━━【1月10日~2月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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Title2Fの古本市 vol.7

期間:2022/12/24~2023/01/10
場所:本屋 Title  杉並区桃井1-5-2 八丁交差点すぐ セブンイレブン隣
  ◇八丁バス停(関東バス、西武バス)から徒歩1分)

https://www.title-books.com/event/10673

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♭立川フロム古書市ご案内♭

期間:2023/01/05~2023/01/16
場所:立川駅北口徒歩5分フロム中武(ビッグカメラ隣)
   3階バッシュルーム(北階段際)

http://mineruba.bookmarks.jp/saiji.htm

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第3回八王子オクトーレ古本まつり〈後半〉

期間:2023/01/06~2023/01/12
場所:JR八王子駅北口デッキ直結 八王子オクトーレ2階特設会場

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三省堂書店池袋本店 古本まつり

期間:2023/01/09~2023/01/16
場所:西武池袋本店 別館2F=特設会場(西武ギャラリー)
   東京都豊島区南池袋1-28-1

http://ikebukuro.books-sanseido.co.jp/events/6800

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第47回古本浪漫洲 Part2

期間:2023/01/10~2023/01/13
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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『BOOK DAY とやま駅』(富山県)

期間:2023/01/12~2023/01/12
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)

https://bookdaytoyama.net/

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趣味の古書展

期間:2023/01/13~2023/01/14
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

https://www.kosho.tokyo

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大均一祭

期間:2023/01/14~2023/01/16
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第47回古本浪漫洲 Part3

期間:2023/01/14~2023/01/17
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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第47回古本浪漫洲 Part4

期間:2023/01/18~2023/01/20
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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さんちか古書大即売会(兵庫県)

期間:2023/01/19~2023/01/24
場所:さんちか三番街 さんちかホール

https://hyogo-kosho.com/

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五反田遊古会

期間:2023/01/20~2023/01/21
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
   JR山手線、東急池上線、都営浅草線五反田駅より徒歩5分

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和洋会古書展

期間:2023/01/20~2023/01/21
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第28回 紙屋町シャレオ古本まつり(広島県)

期間:2023/01/21~2023/01/29
場所:広島市中区紙屋町シャレオ中央広場

https://twitter.com/koshohiroshima

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第47回古本浪漫洲 Part5 300円均一

期間:2023/01/21~2023/01/23
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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アクロスモール新鎌ヶ谷古本市(千葉県)

期間:2023/01/25~2023/02/06
場所:アクロスモール新鎌ヶ谷 1F 中央エレベーター前
   千葉県鎌ケ谷市新鎌ヶ谷2-12-1

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2023/01/26~2023/01/29
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)

https://twitter.com/urawajuku

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城南古書展

期間:2023/01/27~2023/01/28
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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中央線古書展

期間:2023/01/28~2023/01/29
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2023/02/02~2023/02/05
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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書窓展(マド展)

期間:2023/02/03~2023/02/04
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第9回 古書会館de古本まつり(京都府)

期間:2023/02/10~2023/02/12
場所:京都古書会館 京都市中京区高倉夷川上ル 福屋町723

https://kyoto-koshoken.com/event/sample-event2/

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杉並書友会

期間:2023/02/11~2023/02/12
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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反町古書会館展(神奈川県)

期間:2023/02/11~2023/02/12
場所:神奈川古書会館1階 横浜市神奈川区反町2-16-10

http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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日本の古本屋メールマガジンその362 2023.1.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部・編集長:藤原栄志郎

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大島青松園 島の読書生活をたどる 【書庫拝見9】

大島青松園 島の読書生活をたどる 【書庫拝見9】

南陀楼綾繁

 数年前、高松港からフェリーで男木島を訪れた。その途中、小さな島のそばを通った。この島には寄らないんだなと思ったのだが、あとで聞くとそれは大島だった。島全体がハンセン病療養所になっているという。その頃は離島にそういう施設があることの意味に気づかなかった。

 この島にハンセン病療養所が設置されたのは、1909年(明治42)のこと。1907年(明治40)に公布された「癩予防ニ関スル件」を受けてつくられた公立療養所のひとつだ。中国・四国8県の患者を収容する第四区療養所として発足し、翌年に大島療養所と改称する。1941年(昭和16)、国立に移管するのにあわせて、大島青松園となった。現在、全国に14か所ある療養所のなかで、船でしか行けない場所にあるのは、ここだけである。いわば、国の隔離政策を象徴する島なのだ。

 昨年9月1日、その大島を訪れた。高松港から大島に向かうフェリーは国が運用する官有船で、以前は園の入所者と関係者しか乗ることができなかった。しかし、現在は一般旅客定期航路化し、誰でも無料で乗ることができる。

 この日は瀬戸内国際芸術祭2022夏会期中で、瀬戸芸の観客で満席になることが予想されたので、朝早くホテルを出る。高松駅近くのセルフうどんを食べて、高松港まで歩く。各方面への船が出るので、待合室はごった返している。大島行きの船「せいしょう」は定員50名とのことで乗れるか心配だったのだが、事前に取材の申請をしていたので先に乗船することができた。

 30分ほど乗るうちに、大島港に到着。この島はひょうたん形をしており、港は西側にある。

 桟橋では瀬戸芸のスタッフが出迎える。乗客の多くは、ここから島に点在する田島征三、鴻池朋子らのアート作品を見て回るのだが、我々にはその余裕がない。図書室のある社会交流会館へと急ぐ。

官有船「せいしょう」で大島青松園へ向かう


大島青松園社会交流会館 外観

閉ざされた島の図書館史

 大島青松園社会交流会館は2016年にプレオープンし、2019年に全面開館した。療養所の歴史を伝える展示やギャラリー、図書室、多目的ホールなどがあり、奥のカフェでは瀬戸芸関係の展示が開催されていた。

 図書室を案内してくれたのは、学芸員の池永禎子(さちこ)さん。子どもの頃から博物館や美術館を訪れるのが好きで、都内で5か所以上の博物館や資料館で働いてきた。
「ハンセン病については国家賠償請求訴訟(1996年に廃止されたらい予防法が違憲であるとして提起)を通して知りました。その後、ハンセン病の歴史と回復者の『生』の証しを伝えていきたいと思うようになったんです」

 池永さんは2018年に着任し、一年間かけて展示室と図書室を準備してきたという。池永さんは、青松園の機関誌『青松』の連載「学芸員のお仕事」で、蔵書整理の過程などを詳しく書かれていて、非常に参考になる。

 閲覧室は空間がゆったりと取られている。棚には青松園に関する資料があり、13歳で青松園に入所し、83歳で亡くなるまで詩を書き続けた塔和子さんの著作も揃っている。他の療養所に関する本も並べられている。


社会交流会館 図書室内観


青島詩人会が発行していた同人誌『海図』が展示されていた

 その奥の扉を開けると、閉架書庫になっている。蔵書数は閲覧室が約7000冊、書庫が約9000冊とのこと。

 ここで大島青松園の自治会が運営する図書室の歴史をざっとたどる。なお、自治会は1941年に「協和会」と改称している。
『閉ざされた島の昭和史 国立療養所大島青松園入園者自治会五十年史』(以下『自治会五十年史』)の年表によると、1927年(昭和2)に「図書室等増築」とある。また、『大島療養所二十五年史』には同年、「患者図書閲覧室」ができたとある。東の浜、浴場のそばにあったそうだ。
『青松』70号(1954年5月)の多田勇「図書室実相」では、次のように紹介されている。
「その図書室は小庭を挟んだ約二十畳敷きの建物が二棟であつて、周囲に灌木を廻らした明るい静隠な場所である。地理的に言つても病者区域のほぼ中央部に位してゐるし、専門的な環境の点から言つても、は入り【ママ】易い便利な場所である」

 当時の蔵書数は約5000冊。多田はここで図書係として働いていた。新刊書(主に娯楽雑誌)は園内ラジオで貸し出し時間を放送するが、熱心な読者の間では順番をめぐって不満も出たという。

 同じ文章で多田は、「村田弘氏(愛生園慰安会勤務)の『病院図書館試論』」というパンフレットに教えられたと書く。前回触れたように村田は長島愛生園の図書館を改革した人物である。療養所の図書館についての村田の論は、青松園以外の療養所にも影響があったのだろうか。
『自治会五十年史』には、1962年に「四国四県寄贈の図書館落成」とあるが、1976年に「旧図書室、住宅整備のため取りこわす」とあるように、十数年でなくなってしまう。

 そして1977年に今ある文化会館が完成し、この中に新たに図書室ができたのだ。
『青松』355号(1980年1月)で、図書係の橋田芳明が「図書室の一日」として紹介しているのは、この図書室のことだ。橋田は利用者の過ごし方を次のように書く。
「毎日、きまった時間に、何人かの者が新聞を読みに来る。時計を見るとほとんど毎日同じ時間である。各人、それぞれに、一日の時間帯があるようだ。(略)ただ、ここでは書籍の貸出しはしても、ここで読書をするということはない。持ち帰って自分の部屋で読んでいる。

 静かに入って来て、新聞や雑誌を読んで、それこそ音も立てずに帰ってゆく者もおるし、また、中には話題の多い者もおって、時には一転して社交と座談の場となることもある。何時の間にか、ただ何んとなく新聞を読むのをやめて、世間話しに発展をする」

 図書室は本と接するだけでなく、人と交流する空間でもあったのだ。

林記念文庫を再編成する

 池永さんによれば、文化会館の隣には小さな書庫があり、図書室とあわせると協和会蔵書は約1万冊だった。これらは点検、燻蒸、整理を経て、社会交流会館の図書室に移管された。
「ハンセン病に関する資料や入所者の出版物など、ここでしか読めないものや大島の特徴をあらわすものを中心に閲覧室に並べ、公共図書館でも読める一般書は書庫に納めました」と、池永さんは説明する。

 閲覧室に配架したうち、最も重要なものは「林記念文庫」だ。林文雄は全生病院(多磨全生園)、長島愛生園で医師として働き、星塚敬愛園では園長を務めた。1944年、結核の療養のために大島青松園に来る。林は文学やキリスト教の信仰を通じて、入所者と積極的に交流した。

 林は『青山荘だより』という手書き雑誌を発行し、入所者の間を回覧した。これがヒントになって、入所者の同人誌として『青松』が創刊されたという(おかのゆきお『林文雄の生涯』新教出版社)。青松園にはそれ以前に『藻汐草』という機関誌があったが、職員が編集するものだった。

 林は1947年に亡くなるが、自治会はその翌月に林記念文庫の設置を決定している。そして翌年の7月、記念会館の一室に開館したという。『青松』には同文庫への本の寄贈を呼びかける広告が掲載された。
「文庫の中核は、一九四〇年代後半から五〇年代に刊行された書籍」であり、「一九三〇年代など林博士の生前や来島前にもたらされた書籍を含む」と、「学芸員のお仕事」で池永さんは書いている。しかし、その事実が判明するまでには多くの苦労があった。
「林記念文庫は図書室の増改築や移転を経る中で再分類され、それぞれのジャンルの書棚に点在していきました。それを一冊ずつ抜き出して、林記念文庫を再編成したんです」と池永さん。

 手掛かりになるのは、本に押された「林記念文庫蔵書」という蔵書印だった。なかには「林児童文庫」の蔵書印がある本もあった。

 閲覧室には、ほかに「歌句詩文庫」「潮騒文庫」もある。
「歌句詩(かくし)文庫」は以前、「北海道書庫」と呼ばれていたもの。2013年・2016年の瀬戸内国際芸術祭で、北側の地区にある一般寮(12寮)にて公開していた。大島は南北に細長いので日本列島に見立て、北地区を「北海道」と呼んでいた。そこに入所者の蔵書を展示するコーナー「北海道書庫」を設置したのだ。
「この図書室に移す際に、ジャンルではなくあえて著者順に並べました。蔵書の中には電気工学、数学などの専門書から文学作品まであるので、その幅広さを感じてほしいという意図です」

 移されるにあたって、整理に関わった滋賀大学の阿部安成さんが「この蔵書のひとつの特徴が、歌人、俳人、詩人の営為にそった貯まりぐあいにある」として、「歌句詩文庫」と命名したという(阿部安成「書史を伝えること、書史から考えること 国立療養所大島青松園で蔵書目録をつくる」、『国立ハンセン病資料館研究紀要』第6号、2019)。

 また、「潮騒文庫」は島内にあった庵治第二小学校が休校する際に寄贈されたものだ。

 さまざまな来歴を経た本が、この部屋に集まってきたのだ。


再編成された林記念文庫と、潮騒文庫

療養所の読書史を

 書庫に足を踏み入れると、本以外にもさまざまな資料が集められていた。自治会の文化活動から生まれた作品なども保管されている。

 棚に並ぶのは、小説や随筆、教養などの一般書だ。小説でいうと、井上靖、柴田錬三郎、川上宗薫、水上勉、松本清張などいわゆる流行作家の本が多い。表の閲覧室に並んでいる本がハンセン病の歴史を学ぶために必要な資料であるのに対して、どこにでもある本が多い。状態も悪い。公共図書館であれば、廃棄の対象にされてしまうだろう。

 しかし、これらはひとつの塊として所蔵されていることが重要なのだ。
「旧協和会蔵書は入所者の中で図書係を務めた方が、丁寧に整理されています。傷んだ本に補修された跡があったり、背表紙を貼り直してタイトルを書き込んだりしています」と、池永さんは云う。

 一冊ごとに押された蔵書印には、「寄贈」「購入」の別、取得年月日、寄贈者名、類別(ジャンル)、整理番号などの情報が記されている。これを手掛かりに調べていくことで、所蔵の経緯や利用のされ方が明らかになるかもしれない。


松本清張など、人気作家の著書は多く読まれていたようだ


協和会(自治会)の蔵書印からさまざまなことが読み取れる

 先に挙げた1952年の「図書室実相」では、「昨年度のベストテン」が紹介されている。林芙美子『あはれ人妻』の27回をトップに、井上靖『その人の名は云えない』、大岡昇平『武蔵野夫人』、舟橋聖一『薔薇と椿の物語』、カミュ『異邦人』、高田保『河童ひょうろん』、尾崎一雄『なめくぢ横丁』、波多野勤子『少年期』などが挙げられている。

 池永さんに調べていただいたところ、このうち5冊は閲覧室にある林記念文庫にあるという。

 社会交流会館では現在、蔵書印を含む本のデータの入力を進めているという。
「そのデータを読み込むことによって、どのような個人や団体が本を寄贈したかという実態が判ってくると思います。本を通して、島の外の人と入所者が交流していた様子を明らかにしたいです」と、池永さんは語る。

 青松園には、自治会が運営してきた図書室のほか、盲人会が運営する点字図書室(1964年設立)やキリスト教信者による「霊交会教会堂」の図書室もある。それぞれの場で、どんな人たちがどのように本と接していたかを想像すると興味深い。

 自分なら、閉ざされた島での生活でどれだけ本を求め、渇きをいやすように読んだのではないか。そう考えながら、帰りの船に乗り込んだ。

追記
現在、大島青松園は、新型コロナウイルス感染症の対策のために、当分の間、来園制限が行われている。入所者を守るために、ご理解、ご協力をお願いしたい。

 
 
 
 
 
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

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古本屋の休日―東北古本屋バイク部ツーリング(秋田編) 【古本屋でつなぐ東北(みちのく)3】

古本屋の休日―東北古本屋バイク部ツーリング(秋田編) 【古本屋でつなぐ東北(みちのく)3】

(青森県・古書思い出の歴史)今村拓志

 当店「古書 思い出の歴史」があるのは、本州最北端青森市です。現在の人口は約二七万人、個人経営の古本屋は三店舗(内組合加入店は誠信堂と当店)。売上げの大部分を占めるのは、ネット販売となります。毎日の業務はパソコンを使っての入力作業がメインとなり、気がつくと丸一日ほぼ会話が無いなんて日も少なくありません。

 そんな引きこもり古本屋の唯一の楽しみが、休日のバイクツーリングとなります。ただ雨や強風の日、それと雪国の宿命で一年の半分は降雪の為乗れないので、年間の乗車率は少なめです。そんな中、二~三年前に宮城県のジェイルハウスブックさんがバイクを購入したとの噂を聞き、顔を合わせる度、いつか一緒にツーリングに行きましょうと話をしており、昨年は新型コロナ禍もあり断念したのですが、今年は二人のスケジュールが合ったので、お互いの中間地点と思われる秋田県への旅をする事となりました。

 一日目、当方は、東北自動車道~秋田自動車を使用。東北自動車道は前日の大雨で一部不通でしたが、手前で降りても大差はないようなので碇ヶ関ICで降り、再度大館北ICから秋田道を利用。

 待ち合わせ場所は「横手市増田まんが美術館」です。漫画原画の保存・展示に力を入れている美術館で、初代名誉館長は「釣りキチ三平」の矢口高雄氏。当方が到着後しばらくしてジェイルハウスさんと合流、ジェイルさんに漫画家の事などを色々聞いていたらあっという間に時間が過ぎついつい長居になり、この後とんでもない目に遭うとは想像もしていませんでした。

 この日は秋田市宿泊のため移動。雨が降ってきました。この時点では小雨のため、ジェイルハウスさんは下半身のみ雨具、当方は雨の日は乗らないので元から用意無し、着の身着のままです(若干厚着)。

 予定では一時間位で到着すると思い一般道(下道)経由・出羽グリーンロードを通って秋田市に向かったのですが、まんが美術館を出発後すぐ本降りの雨になり、少し進んだら大雨、そこから止むこと無く滝のような大雨、道路は川のようになり、全身ずぶ濡れ下着までグッショリでした。途中少し休憩したのですが、とても写真を撮るような状況ではありませんでした。何とか無事に到着、少しだけ 服を乾かし、夜は秋田市・板澤書房の若旦那と一献傾けさせて頂きました。板澤さんの店の周りの様相が変わった話や、再開発で移転しなければならない、毎日仕入れで忙しいことなど伺いました。

 二日目、予定では一緒に角館町に寄る予定でしたが、昨日に続き本日も朝から雨の為、ホテルで解散となりました。朝の天気予報では青森市・雨、仙台市・晴れ予報。

 出発、昨日より幾分マシでしたが、それでも上小阿仁村付近は道路に水が溜まる位の本降りでした。途中止むこと無く降っていたので走り続け、少し雨が弱まった大館市のコンビニで小休憩し青森市に向かいました。青森県に入ると雨もだいぶ弱まり、時折晴れ間も覗くようになり、弘前市に入った頃には雨は止んでいました。無事到着、青森市は少し風がありましたが、雨は完全に上がっていました。後ほどジェイルハウスさんに 聞いたら秋田~宮城(仙台)は強風と大雨だったそうです。 非常に大変な旅でしたが、こ んな経験もバイクならでは。無事終わってみると良い思い出かも!?来年は大船渡を予定しております。部員も随時募集中ですのでよろしくお願いします。

 

 

 

(※写真は上から東北道津軽SAで背景は岩木山、横手市増田まんが美術館、ずぶ濡れになった二台)

 
 
(「日本古書通信」2022年10月号より転載)

 
 
 
 


『増補新版 東北の古本屋』 折付桂子著
文学通信刊
ISBN978-4-909658-88-3
四六判・並製・312頁(フルカラー)
定価:本体1,800円(税別)好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-88-3.html

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2022年12月26日号 第361号

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☆INDEX☆
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1.国会図書館秘伝?――ネットと本での調べものに『調べる技術』をどうぞ

                  小林昌樹(近代出版研究所)

2.ようこそ、大学出版の世界へ

                  山田秀樹(東京大学出版会)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━━【自著を語る(303)】━━━━━━━━━━

国会図書館秘伝?――ネットと本での調べものに『調べる技術』をどうぞ

                   小林昌樹(近代出版研究所)

 去年から今年にかけて、懇意の出版社、皓星社さんのメルマガで「在
野研究者のレファレンス・チップス」なる連載をしました。それを今回、
同社から『調べる技術』という本にまとめて出したのでご紹介します。

 前職場――国立国会図書館(NDL)――でレファレンス(調べもの)担
当司書を15年ほど体験したのですが、その時のノウハウを書き出したのが
本書です。意外と書かれていないコツや予備知識などを書きました。

 この本は、当初の連載タイトルにあるように在野研究者をはじめ、趣味
人、校正者、編集者、ライターなどの方々向けを意識して書いたのですが、
卒論を書く学生さん、それを指導する大学の先生にも役立つと思います。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10575

小林昌樹(こばやし・まさき)
 1967年東京生まれ。1992年慶應義塾大学文学部卒。2021年国立国会図書館
を早期退官し、慶應義塾大学でレファレンス論を教える。近代出版研究所主
宰。近代書誌懇話会代表。専門は図書館史、近代出版史、読書史。

執筆リスト
https://researchmap.jp/shomotsu/

『調べる技術――国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』
小林昌樹 著
発行元:皓星社
ISBN:978-4-7744-0776-0
定価:2,000円+税
好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407760/

━━━━━━━━━【大学出版へのいざない1】━━━━━━━━━━━

ようこそ、大学出版の世界へ

                    山田秀樹(東京大学出版会)

 大学出版部――このメルマガを読むほどの知識欲あふれる人にとっても、
この言葉は堅苦しく響くかもしれない。

 学術研究と大学教育の成果を刊行する大学出版部は、「大学」という最
高学府が生み出す学知をネタにしている点では、硬派にちがいない。しか
しながら、その学知を「出版」として不特定の人向けに分かりやすく伝え
るという点では、軟派たらんとしている。「むつかしいことをやさしく、
やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく……」と続く井上ひさし
の寸言は、なるほど、我らの活動にも当てはまるのでないか。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10564

書名:『季刊「大学出版」132号』
出版社名:一般社団法人大学出版部協会
判型/製本形式/ページ数:A5判/中綴じ冊子/32ページ
税込価格:100円
https://www.ajup-net.com/daigakushuppan

━━━━━━━━━━━━【プレゼント企画】━━━━━━━━━━

『季刊「大学出版」132号』を、抽選で20名様にプレゼント致します。
ご応募お待ちしております。

応募申込は下記ページにてお願い致します。
 締切日 12月28日(水)午前10時

https://www.kosho.ne.jp/entry2022/1226.html

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
『明治・大正・昭和の出版が歩んだ道』
  ―近代出版の誕生から現代までの150年の軌跡―
出版メディアパル刊
能勢仁・八木壯一共著
定価 1,980円(税込)
ISBN:978-4-7744-0776-0
好評発売中!
https://www.murapal.com/books.html
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「大学出版へのいざない」シリーズ 第2回

九州大学出版会刊『近代初期イギリス演劇選集』
執筆者:鹿児島近代初期英国演劇研究会 代表 大和高行
https://kup.or.jp/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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「2022年の古ツアをふり返る」(仮題) 
古本屋ツアーインジャパン 小山力也
http://furuhonya-tour.seesaa.net/
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━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

12月~1月の即売展情報

※新型コロナウイルスの影響により、今後、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
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日本の古本屋メールマガジン その361・12月26日

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国会図書館秘伝?――ネットと本での調べものに『調べる技術』をどうぞ

国会図書館秘伝?――ネットと本での調べものに『調べる技術』をどうぞ

小林昌樹(近代出版研究所)

 去年から今年にかけて、懇意の出版社、皓星社さんのメルマガで「在野研究者のレファレンス・チップス」なる連載をしました。それを今回、同社から『調べる技術』という本にまとめて出したのでご紹介します。

 前職場――国立国会図書館(NDL)――でレファレンス(調べもの)担当司書を15年ほど体験したのですが、その時のノウハウを書き出したのが本書です。意外と書かれていないコツや予備知識などを書きました。

 この本は、当初の連載タイトルにあるように在野研究者をはじめ、趣味人、校正者、編集者、ライターなどの方々向けを意識して書いたのですが、卒論を書く学生さん、それを指導する大学の先生にも役立つと思います。

■本書の内容:Googleの先へ行くには
 調べもので「ググる」のは当然としても、他にどんな専門的データベースがあるのか、1990年代に話題になった「アリアドネ」のようなリンク集があるとよいなぁ。今はないの?→ある。それも国営で。

 本を読んでいたら知らない人物が出てきたんだけれど、あまり有名な人でないみたい。人名事典に載っていない人がわかるようなデータベースはないの?→ある。WhoPlusといい、大きな大学の図書館でなら検索できる。

 でも契約大学/図書館経由でしか見られないんしょう。ただで引けるデータベースはないの? →ある。それも国営で。

 こんな予備知識やちょっとした検索テクニックまで、レファレンスにはそれなりのノウハウがあります。それらをまとめて書きました。本書目次は出版社サイトにありますが、列挙すると、調べものの基本的考え方、実際に役立つデータベースに行けるリンク集の紹介、新聞や雑誌の記事の探し方といった一般的手法から、ちょっとした小ネタ集、といったものです。ベテラン司書の暗黙知だった日本語「ドキュバース」にも言及しました。

■ホントにNDL秘伝なの?
 サブタイトルを「国会図書館秘伝のレファレンス・チップス」としました。これは販売戦略でもありますが、図書館史上の事実でもあります。

 敗戦後、アメリカから図書館使節が呼ばれ、彼らが国立国会図書館の基本コンセプトをイチから作ってくれました。その際、「国会図書館はレファレンス局を筆頭に編成せよ」と言われたので、とにもかくにも74年間、200人ほどのレファレンス司書や調査員がレファレンス事業を実行してきました。そういう意味では「伝承」。

 けれど、どうやったら情報参照できるのか、適切なレベルでノウハウを本にした職員はいなかったのです。そういう意味では「秘密」。

 伝承されてきたのに秘密状態だったから「秘+伝」というわけです。

 正確には、外見的に見えやすい部分だけ本になっていました。図書館界でこれまで作られてきた参照ツールの解説リストがそれです(『日本の参考図書』といったもの)。けれど、そこには個々のタイトルごとにスペック(何万語収録とか)が書かれるだけで、類似の本を使う順番や、関連する違う分野の本をセットどう使うか、といったメタな「考え方」は書かれてこなかったのでした。

■ノウハウは司書にたまるが、その「見える」化は?
 そんな本がいままでなかったのは、司書自身が、お客の代わりにやってあげればよい、と誤解してきた側面もあったからでした。代行業なら結果だけをお客に教えればよく、ノウハウまで教える必要はありません。実際、国会図書館では議員さん向けレファレンスを、ほぼ代行業でやってきました(もちろんNDLにはセルフ・レファレンス用の議員閲覧室もありますが)。

 また、紙メディアしかない時代なら、司書の調べを見ていれば利用者も自然にマネできる、という事情もありました。かつては新人司書も、徒弟奉公よろしく、職人のレファレンス術を見様見真似で身につけたものでした。コツが言語化されるキッカケはありません。

■コロナ禍で可視化された調べるニーズ
 しかし、司書に貯まるスキルは本に書いて一般人に公開すべきと私は思ったのでした。きっかけは、2020年コロナ禍で、当時勤めていた国会図書館が閉館し、論文書きの学生さんや院生、調べもので通っていたライターさん、校正者さんたちの「仕事ができない」という声がネットで顕在化したことです。

 彼らの悲痛な声に押されて、国会図書館が10年間ネットに出してこなかった分の「デジタル・コレクション」(通称「デジコレ」)が、部分的ですが登録利用者にネット公開されたのは今年5月のことでした。

■本とネットの複合効果が広まらないといけない
 前述の国会のデジコレを私は「本」だと思っていて、だからこそ、公開がさらにすすめば、かなりいろいろなことが家にいながら分かるようになると思っています。というのも、従来の紙メディア(=本)とネット情報源をセットで使うと、どちらかだけでは絶対出ないことも、わりとすぐ出る傾向になったからです。

 けれど、司書がネット情報源を使ってもお客さんからは「見え」ません。同僚にすら「見え」ない。つまり「見様見真似」ができないのです。本とネットのあわせ技で新しい調べの構造ができつつあるのに、ネット情報源の使い方を可視化しなければ、それが広まるわけはありません。そこで、私は「本好き」ではありますが、今回の本では特に、ネット情報源について力点を置いて発想法や使う順番などを可視化しています。

 調べものというのは結局、各人が自分で納得しなければ終わらないものなので、本書を使っていただき、自分なりの調べものを展開していただければ幸いです

■「ただ検索しただけで求めるものに手が届くとは限らない」とようやく気づいた?
 なぜだか本書は前評判がとても良く、アマゾンも楽天もそうそうに「カート落ち」(品切れ)となりました。

 広く学際的な啓蒙活動をなさっている山本貴光さんにはご自身のユーチューブで紹介いただき有り難く思ったことでした。
哲学の劇場 #134 注目の新刊

 はてなブロガーさんに、次の書評を挙げている方がいました。私も「そうそう」と膝を打つ的確なツッコミでした。
調べる技術: 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス /小林 昌樹 (著) – dtk’s blog(71B)

 ブックファースト新宿店さんが発売日(12月9日)に何十冊も平台角に置いてくれたり(これも14日現在売り切れ)、私もよく通う東京堂神保町店さんでベストセラー週刊3位になったり、大変好評です。初刷も発売前2刷も、客注やネット書店で溶けてしまい、年末進行で3刷をかけることになりました。戦前なら「忽ち三版!」とでも言うところでしょう。

 なんでこんなに当たったのか、著者の私もわかりませんが、前記の山本貴光さんは、「ただ検索しただけで求めるものに手が届くとは限らないと、ようやく分かり始めた我々に時宜を得た本。ありそうでなかった」と指摘しています。

■謝辞
 サブタイトルは、Yutaro KTR(育休中)さんの、次のツイートからヒントを得ました。感謝です。
・「図書館レファレンスの秘伝のたれ、みたいな感じでためになる

 
 
 
小林昌樹(こばやし・まさき)
 1967年東京生まれ。1992年慶應義塾大学文学部卒。2021年国立国会図書館を早期退官し、慶應義塾大学でレファレンス論を教える。近代出版研究所主宰。近代書誌懇話会代表。専門は図書館史、近代出版史、読書史。
執筆リスト

 
 
 
 


『調べる技術――国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』
小林昌樹 著
発行元:皓星社
ISBN:978-4-7744-0776-0
定価:2,000円+税
好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407760/

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ようこそ、大学出版の世界へ  【大学出版へのいざない1】

ようこそ、大学出版の世界へ 【大学出版へのいざない1】

山田秀樹(東京大学出版会)

 大学出版部――このメルマガを読むほどの知識欲あふれる人にとっても、この言葉は堅苦しく響くかもしれない。

 学術研究と大学教育の成果を刊行する大学出版部は、「大学」という最高学府が生み出す学知をネタにしている点では、硬派にちがいない。しかしながら、その学知を「出版」として不特定の人向けに分かりやすく伝えるという点では、軟派たらんとしている。「むつかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく……」と続く井上ひさしの寸言は、なるほど、我らの活動にも当てはまるのでないか。

 その大学出版部のヨコの繋がりが、大学出版部協会である。北は北海道大学出版会から南は九州大学出版会まで、全国25の大学出版部が集い、書店での共同フェアや海外の大学出版部との交流などを通じ、学術出版の活性化を図っている。「大学と社会を結ぶ 知のネットワーク」という協会のキャッチフレーズが、我らの何たるかを端的に言い表していよう。

 そして“大学と社会を結ぶ”ため更に一歩踏み出すのが、協会のPR誌『大学出版』。大学―学問―出版をめぐる話題を深掘りし、併せて私たちの自慢の新刊を広く紹介するリトルマガジンだ。

 誌面の前半は、時流を読み解く特集記事。編集・流通・販売など出版に関する話題を中心に、大学の変化や学生の動向、さらには最新の学問状況などもクローズアップし、テーマに即し多様な論者が自説を展開する。「研究評価と〈本にすること〉」「コロナ禍のなかで知を届ける」「印刷文化と印刷博物館」「大学とスポーツ」「アカデミアの多様なかたち」「現代中国の学術と出版」――最近の特集テーマを並べただけでも、また、苅谷剛彦、樺山紘一、中澤史、読書猿、江草貞治、石井剛、などそれらの書き手を並べただけでも、どうです? ワクワクするでしょう。ちなみに、最新号(132号、11月30日発行)の特集テーマは「学術書を読み継ぐ――オンデマンド出版・デジタル送信・古書」。文庫化、古書、電子化に見られるように、ひとたび刊行された学術書が時の経過のなかでどのような価値を帯び、いかにして新しい読者を獲得するかを、出版流通(柴野京子・上智大)、ロングセラー(園部雅一・講談社)、デジタル送信(福林靖博・国会図書館)、古書(河野高孝・河野書店)の視角から迫ったものだ。

 誌面の後半は、各出版部の新刊紹介。解説やカバー写真なども交えて紹介される作品の総数は毎号約50点にのぼり、大学出版部の充実ぶりがおのずと窺える。日本の学術出版のトレンドを把握するうえで、うってつけのブックガイドと言えよう。

 そしてこのメルマガでも、次号から、それら新刊のなかからイチオシの一冊を、その著者や編集者が語ることになる。内容紹介はもちろんのこと、作品に込めた思いやエピソードなども散りばめ、魅力的な記事になること請け合いだ。

 ますます近視眼的に、短絡的になりがちな世知辛い世の中にあって、ホンモノの学術や出版は、物事を俯瞰的に、複眼的にみる視点を養い、日々の生活を何と豊かにしてくれることか。かのパスカルも、「人間は考える葦である」のくだりに続けて、かく宣(のたも)うている。

 「われわれの尊厳のすべては、考えることのなかにある。われわれはそこから立ち上がらなければならないのであって、われわれが満たすことのできない空間や時間からではない。だから、よく考えることを努めよう。」(『パンセ』)

 そのためにも、大学出版部の刊行物と『大学出版』は、みなさまの人生を支えるものになるはずだ。

 
 
 
 
 


書名:季刊「大学出版」132号
出版社名:一般社団法人大学出版部協会
判型/製本形式/ページ数:A5判/中綴じ冊子/32ページ
税込価格:100円
https://www.ajup-net.com/daigakushuppan

Copyright (c) 2022 東京都古書籍商業協同組合

2022年12月9日号 第360号

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 古書市&古本まつり 第119号
      。.☆.:* 通巻360・12月9日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━━【東京古書会館 展示のお知らせ】━━━━━━━

『地下出版のメディア史』展——珍書屋から辿る軟派出版の世界

【日時】11月30日(水)〜12月14日(水)
【休館日】日曜・祝日 
【開館時間】10:00~18;00 ※土曜17:00 まで 
【会場】東京古書会館 2階情報コーナー
【料金】無料

【主催】慶應義塾大学出版会
【共催】東京都古書籍商業協同組合

詳細はホームページをご覧ください。
https://www.kosho.ne.jp/?p=531
https://note.com/keioup/n/n69402fbbfd22

━━━━━━【古本屋でつなぐ東北(みちのく)2】━━━━━━

帯に込めた推薦文―想いをつなぐ古本屋として

                 (岩手県・盛高書店)工藤 尚

 古本販売で独立をして今年の四月で一〇期目となりました。震災後、
これからの日本には、地方でも未来に夢と希望をもって生きていける会
社を作る事が必要だと考え、全国に販路を持てるビジネスを模索し、ネッ
トで古本を売る仕事を選び独立しました。

 ビジネス書などは好きで買っていましたが、古本に対する想い入れは
薄く、古本販売はあくまでもビジネスの手法でした。本について素人の
私にとって、仕事を通して出会った人達との関わりは学びの連続で、
「古本屋」という仕事の意義を知るきっかけを沢山頂きました。

(「日本古書通信」2022年9月号より転載)

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10525

━━━━━━━━━【シリーズ書庫拝見8】━━━━━━━━━

長島愛生園 神谷書庫 バトンは受け継がれる

                         南陀楼綾繁

 8月31日の朝、赤穂線の車内は通学の中高生で満員だった。邑久駅
で降りると、強い日差しが照りつけてくる。すさまじい暑さだ。

 改札口で編集者の晴山さんと落ち合い、駅前に停まっている愛生園
行きのバスに乗り込む。乗客はほかに2人ほどだ。

 のどかな風景の中をしばらく走ると、山の中に入っていく。このとき
は見過ごしてしまったが、その先に30メートルほどの小さな橋があり、
それを渡ると長島なのだった。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10537

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

国立療養所長島愛生園
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/hansen/aiseien/

神谷書庫
http://www.aisei-rekishikan.jp/pursuer.php

━━━━━━━━━━━━━【お知らせ】━━━━━━━━━━━━

◆自主映画『ボラン』上映のお知らせ◆

東京ドキュメンタリー映画祭2022
【長編部門9】
2022年12月15日(木)10時~
2022年12月18日(日)16時15分〜
新宿ケイズシネマにて上映
https://tdff-neoneo.com/lineup/lineup-2955/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「コショなひと」始めました

東京古書組合広報部では「コショなひと」というタイトルで動画
配信をスタート。
古書はもちろん面白いものがいっぱいですが、それを探し出して
売っている古書店主の面々も面白い!
こんなご時世だからお店で直接話が出来ない。だから動画で古書
店主たちの声を届けられればとの思いで始めました。
お店を閉めてやりきったという店主、売り上げに一喜一憂しない
店主、古本屋が使っている道具等々、普段店主同士でも話さない
ことも・・・
古書店の最強のコンテンツは古書店主だった!
是非、肩の力を入れ、覚悟の上ご覧ください(笑)

※今月の新コンテンツはありません。

YouTube 東京古書組合
https://www.youtube.com/channel/UCDxjayto922YYOe5VdOKu9w

━━━━━【12月9日~1月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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Vintage Book Lab(ヴィンテージ・ブック・ラボ) ※会場販売ありません

期間:2022/12/01~2022/12/20
場所:※会場販売ありません

https://www.vintagebooklab.com/

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第104回彩の国所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2022/12/07~2022/12/13
場所:くすのきホール (西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階 総合大会場)

https://tokorozawahuruhon.com/

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歳末赤札古本市

期間:2022/12/08~2022/12/11
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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新興古書大即売展

期間:2022/12/09~2022/12/10
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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east TOKYO BOOK PARK

期間:2022/12/09~2022/12/25
場所:錦糸町パルコ 3階特設会場  墨田区江東橋4-27-14号

http://tokyobookpark.com/

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フォーラス古本市 仙台古本倶楽部(宮城県)

期間:2022/12/10~2023/01/09
場所:仙台フォーラス8階特設会場
   〒980-8546 宮城県仙台市青葉区一番町3丁目11-15

https://www.forus.co.jp/sendai/shop/5897

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港北古書フェア(神奈川県)

期間:2022/12/13~2022/12/25
場所:有隣堂センター南駅店店頭ワゴン販売
最寄駅:横浜市営地下鉄 センター南駅
    市営地下鉄センター南駅の改札を出て直進、右前方。※駅構内

http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2022/12/15~2022/12/18
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)

https://twitter.com/urawajuku

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ぐろりや会

期間:2022/12/16~2022/12/17
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

http://www.gloriakai.jp/

------------------------------
五反田古書展

期間:2022/12/16~2022/12/17
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
   JR山手線、東急池上線、都営浅草線五反田駅より徒歩5分

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第143回 倉庫会 古書即売会(愛知県)

期間:2022/12/16~2022/12/18
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12

https://hon-ya.net/

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フィールズ南柏 古本市(千葉県)

期間:2022/12/17~2022/12/28
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場  柏市南柏中央6-7

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つちうら古書俱楽部 師走の古本市(茨城県)

期間:2022/12/17~2022/12/25
場所:茨城県土浦市大和町2-1(パティオビル1F)

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下町書友会

期間:2022/12/23~2022/12/24
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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好書会

期間:2022/12/24~2022/12/25
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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♭立川フロム古書市ご案内♭

期間:2023/01/05~2023/01/16
場所:立川駅北口徒歩5分フロム中武(ビッグカメラ隣)3階バッシュルーム(北階段際)

http://mineruba.bookmarks.jp/saiji.htm

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オールデイズクラブ古書即売会(愛知県)

期間:2023/01/06~2023/01/08
場所:名古屋古書会館 2階 名古屋市中区千代田5-1-12

https://hon-ya.net/

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第47回古本浪漫洲 Part1

期間:2023/01/06~2023/01/09
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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東京愛書会

期間:2023/01/06~2023/01/07
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

http://aisyokai.blog.fc2.com/

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杉並書友会

期間:2023/01/07~2023/01/08
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第47回古本浪漫洲 Part2

期間:2023/01/10~2023/01/13
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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『BOOK DAY とやま駅』(富山県)

期間:2023/01/12~2023/01/12
場所:富山駅南北自由通路(あいの風とやま鉄道中央口改札前)

https://bookdaytoyama.net/

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趣味の古書展

期間:2023/01/13~2023/01/14
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

https://www.kosho.tokyo

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大均一祭

期間:2023/01/14~2023/01/16
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第47回古本浪漫洲 Part3

期間:2023/01/14~2023/01/17
場所:新宿サブナード2丁目催事場  新宿区歌舞伎町1-2-2

https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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日本の古本屋メールマガジンその360 2022.12.9

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 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
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長島愛生園 神谷書庫 バトンは受け継がれる 【書庫拝見8】

長島愛生園 神谷書庫 バトンは受け継がれる 【書庫拝見8】

南陀楼綾繁

 8月31日の朝、赤穂線の車内は通学の中高生で満員だった。邑久駅で降りると、強い日差しが照りつけてくる。すさまじい暑さだ。

 改札口で編集者の晴山さんと落ち合い、駅前に停まっている愛生園行きのバスに乗り込む。乗客はほかに2人ほどだ。

 のどかな風景の中をしばらく走ると、山の中に入っていく。このときは見過ごしてしまったが、その先に30メートルほどの小さな橋があり、それを渡ると長島なのだった。

 この邑久長島大橋が架かったのは1988年。それまで長島に行くには、船で渡るしかなかった。

 長島には、長島愛生園と邑久光明園という二つのハンセン病療養所がある。両施設の関係者以外は居住しておらず、いわば閉ざされた島だった。この島に橋を架けることは入居者の悲願であり、開通したこの橋は「人間回復の橋」と呼ばれている。

 邑久光明園の敷地を抜けて、もうひとつ小さな橋を渡る。すぐ先のバス停で降りる。ここが長島愛生園なのだ。目の前には瀬戸内海がきらめいている。

 さっそく汗をかきながら歩くが、目的地が見当たらない。電話を掛けると、女性が迎えに出てくれる。愛生編集部の駒林明代さんだ。
「ようこそ。ここが神谷書庫です」と案内されたのは、コンクリート造り平屋の小さな建物だった。

神谷書庫外観

瀬戸内海の二つの療養所

 先日、国立ハンセン病資料館の図書室を取材し、国内に14か所のハンセン病療養所があることを知った。そのなかには、貴重な資料を収めた書庫を持つ療養所もあるという。

 そのひとつとして紹介されたのが、長島愛生園の神谷書庫だった。

 書庫の話に入る前に、なぜ長島に二つのハンセン病療養所があるのかを簡単にまとめておこう。

 1907年(明治40)に「癩予防ニ関スル件」が公布され、全国5か所に公立療養所が設置された。前回触れた東京の全生病院(のち多磨全生園)もそのひとつだ。

 その後、1920年ごろからは患者の隔離を強化するようになった。その流れを推進したのが、当時全生病院の院長だった光田健輔である。光田は公立療養所の現状を批判し、入居者が「逃走不能な場所に懲罰的な性格を持たせた国立療養所の設置を求めた」(以下、松岡弘之『ハンセン病療養所と自治の歴史』みすず書房 を参照)。

 国立癩療養所長を兼務することになった光田が、候補地として挙げたのが長島だった。そして1930年(昭和5)に初の国立療養所として長島愛生園が誕生したのだ。

 光田は初代の園長となり、全生病院から一部の患者を愛生園に移転させた。彼らは「開拓患者」と呼ばれ、「いわば模範的な患者として新入園者を導」く立場を期待された。そのひとりに、全生病院の機関誌『山桜』の創刊に関わった栗下信策がいたのは興味深い。

 一方、公立療養所のひとつで、第三区(近畿2府10県)として大阪府に設置されたのが外島保養院だった。同院は1934年(昭和9)の室戸台風で、死者187名という被害を出した。その移転先となったのが長島で、1938年(昭和13)に第三区府県立光明園として復興した。これが現在の邑久光明園である。

 松岡弘之は両園を比較し、外島保養院(邑久光明園)は「自治会が最も早く成立」しており、「自治の起点となった療養所」であるのに対し、長島愛生園は「隔離を強化するために設置された施設」で、1936年(昭和11)に発生した長島事件(待遇改善を求めた入所者の抗議運動)後に自治会が発足した療養所だと位置づけている。

愛生図書館のおこり

 愛生園には、開園と同時に礼拝堂の一隅に図書館が設置された。
「収納図書はいずれも篤志家による寄贈であって、収納から利用までの系統的な配慮はなく、入園者の図書館への期待もまた主に娯楽であったとみられる」(『隔絶の里程 長島愛生園入園者五十年史』長島愛生園入園者自治会)

 1934年(昭和9)10月の機関誌『愛生』には、図書係の川口清による「愛生図書館報告」によると、蔵書は書籍1600冊、雑誌3000冊であり、朝8時から夜8時まで開館していた。「心の糧に飢へた入園者は或は不自由なる身を杖にすがり或は作業後のつかれた身をもかいりみず図書室へ詰めかけてくる状態である」とあり、読書を心の支えとした入所者が多かったことがうかがえる。

 しかし、入所者は自由に何でも読めるわけではなかった。『改造』を購入しようとした患者は「そんな本を読むより『キング』か『富士』を読め」と施設職員に云われたという(『隔絶の里程』)。入所者が社会問題に関心を持つことは、園側にとっては迷惑だったのだ。

 その後、1940年(昭和15)には患者事務所だった桃源寮が図書館となった。

 戦後、1951年には司書の資格を持つ村田弘が着任した。村田は1952年10月の『愛生』に「病院図書館のABC」を寄稿。見学に行った病院で、「何処にも『図書館』(Library)と呼ばれるべきものが見当たらなくて、ただ僅かに『書庫』が極めて無責任な状態で放置されていたに過ぎなかつた」と批判している。

 村田は愛生図書館を、第一図書室(医学図書部及び職員厚生図書部)、第二図書室(患者図書部)、第三図書室(保育所及び分校)、病歴記録室(医事記録部)の4つのセンターに分けた。さらに「病床へのブツク・トラツクにより巡回文庫、点訳奉仕、患者文芸作品集の出版、等実施を計画しており、一方『らい関係文献総合目録』作成と愛生園の紹介写真集作成、らい病学々術書出版にも着手中」とある(『愛生』1955年1月)。このうち、どれぐらいが実現したのかは判らないが、村田の熱心さが感じられる。

 なお、村田弘は愛生園着任以前、奈良刑務所などに勤務し、「行刑図書館研究会」を組織している(立谷衣都子「日本の刑務所図書館史」東京大学大学院 修士論文)。

 1955年、愛生会館の前に新図書館が完成、園内作業として2〜3人の入所者が働いていた。モルタル平屋30坪だった。1963年にはハンセン病関係の図書を集めたコーナーが設けられた。また、『愛生』編集部が同居した時期がある。1996年に取り壊しが決まり、蔵書約2万冊は旧事務本館(現在の歴史館)に移され、紆余曲折を経て現在でも園内に保管されている。

愛生歴史館外観

神谷美恵子とハンセン病

 ようやく、神谷書庫の話に戻ってくることができた。

 神谷書庫は精神医学者・神谷美恵子の名前を冠している。神谷は19歳の時、叔父と一緒に多磨全生園に行き、患者の姿に衝撃を受け、医学を志す。1943年(昭和18)に長島愛生園に滞在し、診療などの実習を行うも、父の反対により、精神医学の道へと進む。

 しかし、ハンセン病への思いは消えず、43歳で長島愛生園の非常勤職員となる。芦屋の自宅から5時間かけて通い、診療や調査を行う。1965年には愛生園の精神科医長となる。

 神谷とともに愛生園で精神医療に携わった高橋幸彦は、療養所での神谷をこう描く。
「先生の外来診療は、昼過ぎから夜の八時頃まで続き、十時頃に食事をされることもしばしばであった。さらに常勤医師の激務が少しでも軽減されたらと自ら宿直を引き受け、ハンセン病特有の激痛に呻吟する人があれば、厳寒の夜、海を渡る凍てつく強風の中を、歩いて遠くまで往診に行かれ、男性でも過酷な臨床活動を続けられた」(「神谷美恵子先生との邂逅」、『神谷美恵子の世界』みすず書房)

 そこまで神谷を動かしたものは、なんだったのだろう?

 神谷の「癩者に」という詩には、「何故私たちでなくてあなたが?/あなたは代って下さったのだ」という一節がある。
「べつに理屈ではない。ただ、あまりにもむざんな姿に接するとき、心のどこかが切なさと申訳なさで一杯になる。おそらくこれは医師としての、また人間としての、原体験のようなものなのだろう。心の病にせよ、からだの病にせよ、すべて病んでいる人に対する、この負い目の感情は、一生つきまとってはなれないのかもしれない」(「らいと私」、『神谷美恵子著作集2 人間をみつめて』みすず書房)

 神谷は1979年、65歳で亡くなる。その後、遺族が愛生園に贈った基金をもとに建設されたのが、神谷書庫だった。

神谷書庫の設立趣旨

全国の療養所の機関誌を収集

 「ここにあるものは。神谷先生の蔵書の一部と、各地の療養所の機関誌をはじめとするハンセン病関係の資料です」と、駒林さんは云う。

 神谷蔵書は5年ほど前に遺族から寄贈されたもので、約400冊。和書は精神医学、心理学のほか、哲学や文学に関する本が多く、フランス語、ラテン語などの洋書もある。神谷の書き込みが多くあるものを選んだという(神谷蔵書とその書き込みについては、山本貴光『マルジナリアでつかまえて2』本の雑誌社、に詳しい)。別の棚には、神谷の著作や関連本、記事のファイルもあった。

 しかし、この書庫の主役はハンセン病関係の資料だ。機関誌は療養所ごとに整然と並べられている。もちろん、1931年(昭和6)創刊の『愛生』は全号揃っている。

 長島愛生園歴史館の学芸員である田村朋久さんは、「機関誌については国立ハンセン病資料館以外ではここが一番揃っていると思います」と話す。「この書庫を整理した双見美智子さんは『機関誌にはその時その時の心情が表れていて、格好をつけない文章が多い』とおっしゃっていました」と、『愛生』を編集する駒林さんも云う。

 また、愛生園に関わった人物の棚もある。初代園長の光田健輔と、その後を継いだ高島重孝、医師として勤務し『小島の春』がベストセラーとなった小川正子らについての本が多い。

 入所者が書いた詩集や句集、小説などの作品を並べた棚もある。その一角には『ハンセン病文学全集』全10巻(皓星社)もあった。

機関誌をはじめとする資料群。療養所ごとに排架されている

神谷美恵子関連資料の棚。ファイルのラベルにも敬称がある

『愛生』編集部の人びと

 一通り見終えてから、駒林さんに話を聞くために隣にある『愛生』編集部へと向かう。

 すると、ここにも多くの本や資料が並んでいるではないか。

 書籍も多いが、資料をまとめたファイルが多く目につく。新聞や雑誌に掲載された記事の切り抜き、園内の施設に関する資料、名簿、会計記録、入所者が撮影した写真アルバム……。

 愛生園内に設置された邑久高等学校新良田(にいらだ)教室についての資料や、愛生園に入所していた歌人の明石海人の生原稿類も保管されている。
「これらを整理されたのは私の先輩たちです」と、駒林さんは云う。

 駒林さんは岡山県生まれだが、ハンセン病療養所についてはまったく知らなかった。
「義理の兄が勤めていた縁から愛生園で働くことになりました。それまで印刷会社に勤務していたことから、1997年に『愛生』の編集部に配属されました」
 
 編集長は双見美智子さん、ほかに和公梵字さん、上原糸枝さん、森茂雄さんがいた。
「双見さんは小柄なおばあさんでした。愛生園に収容されたときに娘さんと別れるという体験をされていますが、『人生何があってもクヨクヨしたってしょうがない』とさっぱりした性格でした」と駒林さんは話す。

 双見さんは資料収集について、次のように書く。
「(神谷書庫には)編集部の先人、秋山老人が誰かの死亡か転宅があれば、早速フゴ(藁製のモッコ)をもって出かけて、捨てられた紙屑の中から、らいに関わる資料を執念に近い収集のおかげで、書庫の基礎になっている蔵書が茶箱に十数杯も集められていたのです」(「神谷書庫のこと」、『ハンセン病文学全集』第4巻月報、皓星社)

 双見さん自身も園が書類を整理したと聞くと、ゴミ捨て場に急行し、めぼしいものを拾い集めたという。歴史館で見ることができる双見さんのインタビュー映像では、いろんな資料を分類・整理したことから「引き出しばばあ」というあだ名がついたと笑って話していた。

 双見さんは47年間、『愛生』の編集に携わり、節目節目で同誌掲載の執筆者一覧、年表、神谷書庫収蔵書一覧などを作成した。2007年、90歳で逝去。駒林さんは、双見さんが『愛生』に書いた記事をまとめ、『土に還る』(2009)として刊行した。

 一方、和公梵字さんは資料整理を担当。双見さんが見つけてきた資料を、和公さんが分類し、ファイリングした。
「目が悪かったので、特殊なメガネを掛けて作業をされていました。きれいな文字でファイルの背表紙に書き入れていました。俳句が好きで禅宗を信仰されていました。いつも愉快な人でした」と、駒林さんは回想する。2019年、96歳で逝去。

 編集部以外でも資料集めに尽力した人がいる。編集部の棚には自治会の宇佐美治さん、詩人の島田等さん(いずれも故人)が集めた資料が並んでいる。

 また、各所からの通信をまとめた「来簡集」というファイルもある。その一冊に「皓星社」という見出しのあるものがあり、中を開くと、『ハンセン病文学全集』や『海人全集』を編集した同社の能登恵美子からの手紙・葉書が入れられていた。

 能登さんは、明石海人の作品を収集することを目的に、『愛生』のバックナンバーを読むうちに、同誌に掲載された子どもの綴り方に惹かれる。その結果、『ハンセン病文学全集』の10巻が「児童編」となる。

 全集完結の翌年、能登さんは49歳の若さで亡くなる。『増補 射こまれた矢 能登恵美子遺稿集』(皓星社)には、愛生園で資料を収集し、後世に残した双見さん、宇佐美さん、島田さんらとのやりとりが、敬意をもって記されている。

明石海人関連資料。ラベルの字は和公梵字さんのもの

書簡の類、相手毎に分類・保管してある

バトンを受け継いで

 愛生園の入所者は現在111人。高齢化が進み、年々その数は減少している。

 『愛生』は以前は年10冊発行されていたが、現在は隔月刊である。かつて盛んに行なわれていた文芸活動も停止したため、入所者からの寄稿は少ない。そのひとりが宮﨑かづゑさんだ。80歳ごろからワープロで文章を書きはじめ、『長い道』『私は一本の木』(ともにみすず書房)などを出した。

 現在、ひとりで同誌を編集する駒林さんは、今年定年の予定だったが、「宮﨑さんの作品を載せ終わるまでは続けたい」と、再任用してもらう予定だ。

 愛生園で暮らす人が誰もいなくなる日が、そこまで来ているようだ。

 最新号の『愛生』を手にして驚いたのは、愛生園をテーマにした漫画が掲載されていたことだ。

 歴史館では長島愛生園見学ツアーを実施。また、船で長島を一周する見学クルーズツアーも行なっている。2021年11・12月号に掲載された「こんにちは、愛生園」という漫画は、
そのクルーズツアーに参加した体験を描いたものだ。

 船から見ると島と本土との距離の近さ、入所者の穏やかな風貌、園内の施設から受けた印象などが、柔らかいタッチで描かれている。
「ハンセン病については以前から関心がありました。自分が子どもを産んでからは、子どもと別れて療養所に入った母親に共感するようになりました」と、作者のあさののいさんは話す。2012年に千葉県から岡山県に移住した。

 その後、愛生園を訪れ、園内の〈喫茶さざなみハウス〉へ。2019年に空き施設にオープンした入所者も一般客も利用できるカフェだ。あさのさんは、店主の鑓屋(やりや)翔子さんに「入所者の方のお話を聴きたい」と相談した。ちょうど開催されたクルーズツアーに参加し、入所者に会うことができた。
「『愛生』に連載している鑓屋さんの紹介で、駒林さんにお会いして、漫画を掲載してもらうことになったんです」

 あさのさんは、鑓屋さんが開催した「愛生ヲ読ム会」に参加する。テーブルに並んだ『愛生』を参加者が思い思いに読む会だ。
「ハンセン病というと差別とか人権問題という側面しか知りませんでした。でも、誌面には友達との会話とかペットのことなど日常的な話が多く、ここには自分と同じ人たちがいるんだと感じました。文章を読むことで、いなくなった人が目の前にいるような気持ちになります」

 あさのさんは『愛生』や『点字愛生』に掲載された文章を漫画化し、サイトに載せている。(https://note.com/asanonoi
「読者に身近なこととして感じてもらうにはどうしたらいいか、悩みながら描いています」と、あさのさんは云う。

あさののいさんの漫画は『愛生』に連載中。第3回(2022年7・8月号)は神谷書庫をとりあげた

 愛生園の歴史を伝える資料を発見し、神谷書庫に収めた双見さん。その思いを継いで、『愛生』を発行してきた駒林さん。同誌に書かれた入所者の思いを読者に伝えようとするあさのさん。資料をめぐって、バトンが受け渡されている。
 多くの人の手によって、神谷書庫は守られてきた。今後もそうあってほしいと願う。

 
 
 
 
 
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

ツイッター
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国立療養所長島愛生園
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神谷書庫
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帯に込めた推薦文―想いをつなぐ古本屋として 【古本屋でつなぐ東北(みちのく)2】

帯に込めた推薦文―想いをつなぐ古本屋として 【古本屋でつなぐ東北(みちのく)2】

(岩手県・盛高書店)工藤 尚

 古本販売で独立をして今年の四月で一〇期目となりました。震災後、これからの日本には、地方でも未来に夢と希望をもって生きていける会社を作る事が必要だと考え、全国に販路を持てるビジネスを模索し、ネットで古本を売る仕事を選び独立しました。

 ビジネス書などは好きで買っていましたが、古本に対する想い入れは薄く、古本販売はあくまでもビジネスの手法でした。本について素人の私にとって、仕事を通して出会った人達との関わりは学びの連続で、「古本屋」という仕事の意義を知るきっかけを沢山頂きました。

 一番大きな出来事は古書籍商組合へ加入した事で、沢山の古本屋の先輩や同世代の仲間と出会う事が出来た事です。その出会いが古本屋として成長する糧となりました。特に市会に参加出来る事は刺激的で、そこで多くの本の売買に関わる事が出来、様々な本の価値を知る事が出来ました。

 二〇二一年一月に店舗をオープンして以降は、お店にご来店頂いたお客様からの気付きもありました。『岩手のスポーツ人』という本をご購入されたお客様から、「この本を長い間探し続けていたが見つけられなかった。やっと見つけられて嬉しい。大好きだったおじいさんの事が書かれている本なんです。本当にありがとうございます。」と涙ながらに話して頂きました。長年ネット販売しか行っていなかったので、お客様から直接感謝の言葉を頂ける事がとても嬉しく、古本屋としてのやりがいを感じました。また、ネット販売の先にも同じようにお客様がいて、ご購入者様の想いに応えているという事にも気付きました。

 店舗は、お陰様でほぼ毎日来られる常連さんも増え、お客様からスタッフへ差し入れを頂けるような交流が生まれるお店になってきました。一〇〇円本だけではなく、高額な郷土史などもご購入頂いており、幅広い客層の地元のお客様から支持されるお店に近づいていると実感します。

 まだまだ勉強しなければならない事は沢山ありますが、これからも古本屋の先輩や仲間、お客様と向き合いながら地元から愛される古本屋を目指していきたいと思います。

 そんな中、店舗の新たな取り組みとして、お売り頂くお客様に「帯に込めた推薦文」を書いて頂き、それを付加価値として買取させて頂くサービスをスタートさせる事にしました。推薦文を書いた帯が本を選んでいる方への新たな提案や気付きとなり、売り買い双方の付加価値となると考えます。お客様自身が商品に付加価値を付ける新しい取り組みとなります。

 同じ本を読んでも、心に残る文章は人それぞれです。新たな視点を知ることによって「また読み返してみようかな?」というきっかけにもつながるかも知れませんし、この人の帯の他の本を読んでみたい、となるかも知れません。帯が本と人とのつながりを生み、更に本を介して人と人がつながる古本屋になれたらと思います。

 誰かに読んで欲しいという想いと、欲しい本を探し求めている人をつなぐ事が古本屋の大切な仕事の一つだと思います。手放す人にとっては役目を終えた本かも知れませんが、誰かにとっては探し求めているたった一つの本かも知れません。最後に、そんな想いに気付かせて頂いたお客様からのメッセージをご紹介します。「この本をずっと探していました。子供の頃に月一で幼稚園から配られた本の一冊で、大人になってから度々思い出しては探していましたが、図書館にも無く諦めていたところ、こちらに出品されていて感動しました。先程届きましてドキドキしながら開封しました。早速読み、再びこの本に巡り合えた喜びをかみ締めています。幼い頃には読めなかったあとがきも読むことが出来ました。本当に本当にありがとうございました。一生の宝物にします。」

 
 

 
 
(「日本古書通信」2022年9月号より転載)

 
 
 
 


『増補新版 東北の古本屋』 折付桂子著
文学通信刊
ISBN978-4-909658-88-3
四六判・並製・312頁(フルカラー)
定価:本体1,800円(税別)好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-88-3.html

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2022年11月25日号 第359号

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☆INDEX☆
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1.古書店が翻訳した「台湾書店百年の物語」。

                   フォルモサ書院 永井一広

2.前近代の日本を理解するために、漢籍を知る

          中央大学兼任講師・青山学院大学非常勤講師・
                 埼玉大学非常勤講師 髙田宗平

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━━━━━━━━━━【自著を語る(301)】━━━━━━━━━━

古書店が翻訳した「台湾書店百年の物語」。

                   フォルモサ書院 永井一広

 古書店が、なぜか翻訳をすることになった。
 フォルモサ書院という古書店を大阪で開いてもう4年が過ぎた。店名
を見て判る人にはすぐに判る。この書店が何を専門にしているのか。
フォルモサとは、ポルトガル語で美しいという意味。何も雑居ビルの二
階で営業している当店が美しい訳ではない。大航海時代にポルトガル人
が台湾の島影の美しさから思わず叫んだ言葉が「フォルモサ」だったと
言われている。以来、西洋の地図では台湾のことをフォルモサと記した。
そして当店の専門はまさしく台湾の古本だ。当店が開業してまもなく、
この「台湾書店百年の物語」の翻訳のお話しをいただいた。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10434

フォルモサ書院
https://formosa8.webnode.jp/

『台湾書店 百年の物語〜書店から見える台湾』
台湾独立書店文化協会 著/郭雅暉・永井一広 翻訳
発行元:エイチアンドエスカンパニー
ISBN:978-4-9907596-9-8
定価:2200円+税
好評発売中!
https://www.habookstore.com/

━━━━━━━━━【自著を語る(302)】━━━━━━━━━━━

前近代の日本を理解するために、漢籍を知る

          中央大学兼任講師・青山学院大学非常勤講師・
                 埼玉大学非常勤講師 髙田宗平

【漢籍とは何か】
 古来、日本人にとって、漢籍は中国文化を知り、これを学ぶ上で重要
な道具であり手段であったことは周知の事実である。漢籍を読むことに
よって知識を取得できたのであり、あらゆる文化は漢籍から読み解く知
識がベースとなって生み出された、といっても過言ではない。
 漢籍はいかにして日本にもたらされたのか。古代から近世に至るまで、
日本が漢籍を受容した歴史を概観していきたい。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10426

【著者】髙田宗平(たかだそうへい)
1977年生。
総合研究大学院大学文化科学研究科日本歴史研究専攻博士後期課程修了。
博士(文学)。専門分野は日本古代中世漢籍受容史・漢学史、漢籍書誌学。
〔主な著作〕
『日本漢籍受容史―日本文化の基層―』(編、八木書店、2022年)
『日本古代『論語義疏』受容史の研究』(単著、塙書房、2015年)

日本漢籍受容史―日本文化の基層―
髙田宗平編
本体9,000円+税
A5判・上製・カバー装・698頁+口絵16頁
ISBN 978-4-8406-2260-8 C3021
好評発売中!
https://catalogue.books-yagi.co.jp/books/view/2364

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

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『調べる技術――国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』
小林昌樹 著
皓星社 発行
定価 2,000円(税別)
ISBN:978-4-7744-0776-0
12月9日 発売
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407760/
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【特別コラボ企画 日本の古本屋×大学出版部協会】
          「大学出版へのいざない」シリーズ 第1回

季刊『大学出版』132号 [特集]学術書を読み継ぐ
執筆者:山田秀樹(東京大学出版会第一編集部長、季刊『大学出版』編集担当)

大学出版部協会
https://www.ajup-net.com/
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━━━━━━━【東京古書会館 展示のお知らせ】━━━━━━━

『地下出版のメディア史』展——珍書屋から辿る軟派出版の世界

【日時】11月30日(水)〜12月14日(水)
【休館日】日曜・祝日 
【開館時間】10:00~18;00 ※土曜17:00 まで 
【会場】東京古書会館 2階情報コーナー
【料金】無料

【主催】慶應義塾大学出版会
【共催】東京都古書籍商業協同組合

詳細はホームページをご覧ください。
https://www.kosho.ne.jp/?p=531
https://note.com/keioup/n/n69402fbbfd22

━━━━━━━━━━━━【お知らせ】━━━━━━━━━━━

◆自主映画『ボラン』上映のお知らせ◆

東京ドキュメンタリー映画祭2022
【長編部門9】
2022年12月15日(木)10時~
2022年12月18日(日)16時15分〜
新宿ケイズシネマにて上映
https://tdff-neoneo.com/lineup/lineup-2955/

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

11月~12月の即売展情報

※新型コロナウイルスの影響により、今後、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
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