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『全国タウン誌総覧―地域情報誌・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』

『全国タウン誌総覧―地域情報誌・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』

柴田 志帆

■『全国タウン誌総覧』の特徴
 戦後から現在までに日本各地で作られてきた、地域の情報を発信するタウン誌。私が今回制作した『全国タウン誌総覧』は、そのタウン誌8,715点をリストアップした目録です。地域で発行・流通するため、これまで網羅的に探せなかった「タウン誌」「地域情報誌」、さらに「ミニコミ」「フリーペーパー」「リトルプレス」から、地域に焦点を当てたものも採録しています。全体を地域別に並べ、創刊・休廃刊年、刊行頻度といった基本事項のほか、誌名変遷や関連文献、所蔵機関の情報についてもできるかぎり調査・収録しているところが特徴です。

■本書を作ったいきさつ
 中学生の頃に知った『本の雑誌』に「地方・小出版よろず案内」(川上賢一)などの記事がありました。これが、私が地方出版物や自主制作の出版物に関心を持ったきっかけです。ですが、タウン誌自体を特にたくさん集めていたり読んでいたりしたわけではなく、『ぴあ』も兄弟デュオ・キリンジの渋谷公会堂ライブ(2003年5月)のチケットをとる際に買ったくらい。一方、大学入学前に『おもしろ図書館であそぶ―専門図書館142館完全ガイドブック』(毎日新聞社,2003年)を購入し、この本で大宅壮一文庫などの雑誌専門の図書館があることを知りました。

 レファレンスツールの専門出版社で働いていた頃は、国立国会図書館に必ずしも全て所蔵されていない類の出版物――地域の雑誌、PR誌、社史・記念誌、文化施設の館報、市民活動団体の刊行物、趣味の雑誌などの書誌情報・目次を一覧するツールを作りたいと思っていました。特に、雑誌の現物確認のために所蔵機関を調べる過程で、1つの館で全号所蔵していることはほとんどなく、複数館の所蔵を確認する必要があることや、文学館や博物館などに図書館では所蔵されていないような雑誌があることに気づきました。そして、『ミニコミ魂』(串間努編,南陀楼綾繁ほか著,晶文社,1999年)や『神保町「書肆アクセス」半畳日記』(畠中理恵子,黒沢説子著,無明舎出版,2002年)を読むうちに、タウン誌などの地域発の雑誌の目録を作ってみたいと考えるようになります。2013年頃から資料を集めてExcelに入力を始めましたが、その後転居・転職などで生活環境が変わったこともあり、しばらく作業を中断していました。

 2020年春、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う飲食店休業・イベント自粛などに伴い、自宅にポスティングされるタウン誌から催事・お店情報が消えました。雑誌自体の休廃刊の動きも加速しそうな気配を感じたので、これまでに刊行されたタウン誌についてまとめておきたいと考え、入力を再開。そしてこの度、雑誌記事データベース「ざっさくプラス」を提供している皓星社とのご縁があり、蓄積したデータを書籍として刊行する運びになりました。

■本書制作に「日本の古本屋」をどう使ったか
 制作過程については「『全国タウン誌総覧』の作り方 ─あとがきに代えて─」に詳しく書きましたが、せっかくなのでここでは「日本の古本屋」の利用について取り上げます。

 1980年代前半頃までに刊行された図書の場合、図書館やオンライン書店などの書誌情報を見ても、概要や目次が分からず、タイトルや分類、件名、注記などを頼りに探す必要があります。同様に、地方雑誌や小雑誌は現在でも既存の雑誌記事索引の収録対象外であることが多く、どの雑誌のどの号に知りたいテーマの記事が載っているかを検索する手段がない状況です。

 そこで、「日本の古本屋」でタウン誌関連の言葉を入れて検索すると、「タイトル」に入っている雑誌の特集名や「解説」に載っている内容情報がヒットすることがあります。『Wander』の「特集:おきなわ雑誌名鑑ふくゎんじぇんぶぁん」や、『あすの三重』の「特集:地域情報誌を考える」などは、こうした検索によって存在を知り、制作に役立てることができました。なお、雑誌の表紙画像が掲載されている場合は、目次や執筆者などの情報からどんな性格の雑誌かを把握する手がかりになります。通常は在庫があるものだけが検索されるようになっていますが、詳細検索からその条件を外せば、これまで登録された出版物のカタログとして使うこともできることは意外と知られていないのではないでしょうか。制作中、コロナ禍での移動自粛や図書館の臨時休館もあったため、求める情報がどこに載っていそうかの当たりをつけ、現物を入手する手段として、「日本の古本屋」が役立ちました。

■おわりに
 近年、雑誌記事索引や所蔵目録のWeb公開、雑誌自体の電子化の動きにより、全国から地域資料にアクセスしやすくなってきました。タウン誌をどう利活用するかについては、本書内の「タウン誌の歴史」で私が触れたほか、近代出版研究所所長の小林昌樹氏による「解説『全国タウン誌総覧』の意義とタウン誌の効能」でも取り上げられています。本書が、調査・研究などにタウン誌がより活用される助けとなることを願っています。

 制作にあたって、可能な限り広く情報を集めましたが、遺漏も当然あるでしょう。今後は、各地域の方々の力をお借りして、追補していきたいと考えています。本書に未収録のタウン誌をご存じの方は、版元の皓星社まで情報をお寄せいただければ幸いです。

柴田 志帆(しばた・しほ)
1984年生まれ、茨城県出身。2007年慶應義塾大学文学部図書館・情報学専攻卒業後、レファレンスツールの専門出版社で書籍編集に従事。現在は、茨城県内の公共図書館で働く傍ら、茨城県出身の女性を応援するフリーマガジン『茨女』の編集に携わる。

 
 
 
 


『全国タウン誌総覧―地域情報誌・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』
柴田 志帆 編著
皓星社刊
B5判・上製・632頁
定価:本体15,000円(+税)
好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407708/

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