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第二回 古本屋稼業十年目の呟き

第二回 古本屋稼業十年目の呟き

山本善行

 物を集めて喜ぶというのには何か意味があるのではないか。それが男性に多いということにも意味があるのだろう。男が生きていく上で抱えるストレスの種類と関係があるのかも知れない。とにかく、本に限らず、集める人は周りに多くいるし年々増えているようにも思う。私は、集めるのを楽しんでいる、あるいは苦しんでいる人たちの話を聞くのが好きだ。

 最近も工作舎から、四方田犬彦さんの『女王の肖像』という本が出たが、副題が「切手蒐集の秘かな愉しみ」、帯には「実はまだ切手を集めているのです。」とある。私は、すぐに注文して店に並べた。人が集め続けるという心理に興味があるし、お客さんに読んでもらうことで何か感じてもらえると思ったのだ。古本屋にぴったりの本だと思った。集める人が増えていけば、本を集める人も増える、そう都合よく考えたい。
 私自身も、本とレコード、さらには万年筆などにも興味を持ち集めてきたが、本を扱う仕事をするようになったので、本に関してはちょっとまた違った道筋に入ってきている。

 十年前、自分の集めてきた本を、全部売ってもいいと思えたことで、古本屋を始めることができた。毎日のように古本屋に行き、迷いながら買った本は、全部自分自身のような気がして、残しておきたかったが、それらを店に並べてお客さんに見てもらい、色々話しながら買ってもらえるとしたら、それもまた第二の人生にもなるだろうし、楽しいだろうと思ったのだ。本への執着が人一倍強かった私は、全部売るんだと決心しないと、古本屋にはなれなかった。

 私の店には、例えば、青山二郎の装幀を全部集めようとしている人、和田誠の著書を集めている人、泉鏡花の本を探している人など、いろんな人たちがやってくる。私はその手伝いをすることで、その人たちのこだわりなどにも触れることになる。今は売る側に回った私だけれど、お客さんのコレクション話を聞いたり、本を探したりしているうちに、元々あった私のコレクション魂に、ちょろちょろと火がつき始めた。
 古本屋でも、自分用の本箱に本を並べても良いではないか、と思うようになったのは最近のことだ。吟味してまた一冊ずつ本棚に並べていくのが楽しくて新鮮、それらもまた売る気になれば売ればいいわけで、固まる必要はない。

 それでは、どのような本が、私の本棚に並んでいるか、本棚の前の椅子に腰掛けて、少しだけ見てみよう。
 まずは、関口良雄『昔日の客』。三茶書房版。私は何冊も店で売ってきたが、入荷するたびに読み返して、もう自分用に持っておこうと思ったのだ。
 『ガルガンチュワ大年代記』、昭和18年の筑摩書房版。これは頂いたもので、なんと、訳者の渡辺一夫から筑摩の創業者、古田晁への献呈署名本である。こういう本は開くたびに、気持ちが温かくなり、引き締まる。

 『ラムネの日から』。黒瀬勝巳の詩集なのだが、「あわわん」の詩人、長谷川進への献呈署名本。この詩集は店に置き値段も付けていたが、売れなかった。
 小林秀雄『ランボオ論』。これは一番好きな本かも知れない。49部発行の27番。出雲産の雁皮紙と印刷が見事で、野田書房の制作だ。
 これからも、年に1、2冊でも、自分の本棚に好きな本を並べていこうと思う。こんな楽しみを持つことで、よりお客さんとの話が盛り上がり、商売繁盛という結果が付いてきたらいいな、と思っている。

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『漱石全集を買った日』山本善行 清水裕也 著
夏葉社 刊 本体1300円+税 好評発売中!
http://natsuhasha.com/

山本善行
2009年、銀閣寺近くに「古書善行堂」を開店する。
著書に「古本泣き笑い日記」「関西赤貧古本道」「漱石全集を買った日」など。雑誌「APIED」と関西ジャズ情報誌「WAY OUT WEST」に連載中。

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第11回 磯貝一さん 「ことば」のルーツを探るひと

第11回 磯貝一さん 「ことば」のルーツを探るひと

南陀楼綾繁

 古本マニアの方々に話を聞くという連載をやっていながら、いまの私自身はすっかりその世界から遠ざかっている。古書会館の即売会にもめったに行かないし、以前は毎月何冊も届いていた古書目録で注文することもない。いっぱしのコレクターになりたいという夢が潰えたぶん、真っただ中にいる人の話を客観的に面白く聴くことができるのかもしれない。

 今回登場いただく磯貝一さんは、複数の古本屋さんから「あの人に取材してほしい」と名前が上がるほどで、ツイッターでの発信も盛んだ。私も、古本関係のトークイベントで何度かお見かけしたことがある。取材を申し込むのが遅くなったのは、磯貝さんが今年4月の杉並区議会議員選挙に立候補され、忙しそうだったからだ。それにしても、古本と議員がうまく結びつかない。

「区民のスマホ利用を推進したり、中央線文士など杉並区ゆかりの作家の作品をデジタル化するなどを政策に掲げたりましたが、落選しました。ネット(ブログ)だけの活動でどれぐらい票が得られるかを実例として示したかった。供託金は戻ってきたし、いろんな体験ができたので後悔はしていません」と磯貝さんは笑う。

 1959年、父の転勤先の山口県下関市で生まれる。2歳で実家のある浅草に戻り、そこで育つ。
「父は東京外国語学校(現・東京外語大)でスペイン語やタガログ語を学び、商事会社に入りました。その上司が同じ浅草出身で外語でも先輩だった松村文雄という人で、『これからは学歴が大事だから』と父にも東大に行くことを強く勧めてくれました。この松村さんが、詩人の北村太郎です。ですから、父の本棚には松村さんの影響でパスカルやモンティーニュと並んで、北村太郎の詩集もありました」
 また、母方の祖母は、女学校で丸谷才一の母の同級生だったという。さらに母の従兄弟は丸山一郎(のちのミステリ作家・佐野洋)で、戦後食糧難ということもあり一高の友人である大岡信や日野啓三を連れて、磯貝さんの家に食事をしに来ていた。
「いまの母は記憶がぼやけているので、以前に聞いておけばよかったなと思います。父と母の知り合いに文学に関わる人がいたことが、最近になって大きな意味を持ってきました」
 磯貝さんは、丸山一郎宛の署名入りの大岡信詩集『記憶と現在』(書肆ユリイカ)を〈虔十書林〉で入手したそうだ。

幼稚園の頃は、家にある童話全集を母に読んでもらったり、雑誌『少年』で手塚治虫の『鉄腕アトム』を読んだりする。小学校に入ると、江戸川乱歩や『ナルニア国ものがたり』を読む。高学年では床屋に置いてあった貸本マンガがきっかけで、『COM』や『ガロ』を読むように。
「三筋町にあった台東区立図書館には自転車で通っていました。近所の公園には「ひかり号」という移動図書館も来てましたね。やってくると、大人も子どもも並んで本の取り合いです。古書会館の即売会みたいでした(笑)」
 近所には新刊書店が4、5店あり、上野の博物館に行くときには〈明正堂〉に寄った。古本屋にはほとんど行っていないが、1970年に二天門産業会館で第1回「浅草古書展」が開催されたときには、父に連れられて行き、『毛沢東語録』を買ってもらったという。

 磯貝さんは、ほかにも特異な読書体験をしている。詩人の谷川雁が筑豊炭鉱闘争から離れ、創設に参加した「ラボ教育センター」で、母がチューター(指導員)をしていたことから、磯貝さんも小学生で英語教育を受けた。その教材の本には文学の名作が収録されていたのだ。
「音楽付きの朗読オープンリールテープもあって、林光や武満徹らが曲を提供していました。チューター宛の機関誌『ことばの宇宙』という雑誌は読み物としても面白かったです。のちに平岡正明が編集に関わっていたと知りました」

 中学の同級生には、のちに弥生美術館の館長になる鹿野琢見の次男がいた。
「彼の父は当時弁護士で、竹久夢二のコレクターでした。家に行って、こっそりきわどい絵を見せてもらっていました(笑)」
 また、塾の先生は歌人の土屋文明の息子で、現代詩や前衛短歌を読まされた。当時はその良さがさっぱり判らなかったという。
 文京区の都立高校に通い、鷗外図書館や真砂図書館に通う。小石川図書館はレコードを貸し出していたので、ジャズやクラシックを聴いた。この頃、パンクにハマり、レコード屋めぐりをする。一方で、バタイユや澁澤龍彦を読み、名画座で洋画を観まくるという、忙しい青春期を過ごす。

 大学では日本近代思想史を専攻。小学生の数年間で、安田講堂の攻防、大阪万博、三島由紀夫の自決、あさま山荘事件など大きな出来事を見たことから、反社会的なものへシンパシーが生まれ、アナキズムに強い関心を持ったという。
「この頃、実家が浅草から西荻窪に引っ越しました。西荻は〈信愛書店〉など新刊書店が多くありました。でも、この時期はまだ古本屋には足を踏み入れていません」
 また、アメリカのアンダーグラウンド・カルチャーへの関心から、翻訳をするようになり、阿木譲が発行する『ROCK MAGAZINE』、山崎春美が編集長だった『HEAVEN』に翻訳記事を載せた。そして、勃興しつつあったパソコンにハマり、大学卒業後は繊維会社などを経て、日本ソフトバンクに入社。その後も、コンピュータ/インターネット業界で仕事を続けてきた。
「仕事が忙しかった頃は、銀座の〈イエナ〉でコンピュータ関係の洋書を買ったり、コンピュータ雑誌を読んだりするだけで、文学からは離れていました。でも、30代後半になると多少余裕が出てきたんです。その頃、西荻窪の〈森田書店〉に通うようになった。店主が私と年齢が近くて、吉行淳之介などの話をしました」

 古本屋通いを本格的に開始したのは、2011年の東日本大震災のあと。
「不安な日々が続き、死ぬ前に読んでおきたいと、未入手の絶版・品切れ本を古本屋で探しました。雑司ヶ谷・鬼子母神通りで開催された『みちくさ市』で、大学の先輩である編集者が出店しているのを見に行ったら、隣が岡崎武志さんだった。その辺りから、古本屋にも即売会にも通うようになりました。自分が知らない本に出会えることが、とにかく楽しかったんです」
 仕事柄、早くからはじめていたツイッターでも、古本のことをつぶやくようになる。古本屋と客のあいだをつなぎたいと、情報発信をしていった。

 そして5年前、大きな出来事が起こる。悪性リンパ腫が見つかったのだ。5年生存率が55パーセントと云われ、死を覚悟している。
「人生ってなんだったんだろうと考えたときに、自分には『ことば』しかないと思いました。浅草に育って、浅草のことばが身近にありました。だから、浅草出身の田村俊子や小山清が好きです。ことばと土地の関連性を考えたことから、詩の本を読むようになったんです」
 父と縁のあった北村太郎や、彼が属した『荒地』の同人の詩集から入り、現代詩の本を集めるように。約1万冊あるという蔵書のうち、半分近くが詩の本である。
「最も大切にしているのは、阿部次郎、小宮豊隆、安倍能成、森田草平の共著『影と聲』(春陽堂、明治44)です。『漱石先生へ献ず 一仝』と署名が入っています。西荻窪の〈盛林堂書房〉で100円で見つけました。今後、これを上回る掘り出し物ができたら嬉しいですね」
 2人いる娘さんは電子書籍派で、家じゅうを占めている本を「もう燃やしたい」と云われたこともあるという。「でも、家族にも価値が判るような本を残したいという気持ちはあります」と磯貝さんは云う。

 磯貝さんは今年から、ヤフオクで全額募金のチャリティ・オークションを行なっている。売れた本はYahoo!基金を通じて非営利団体に寄付され、被災地復興などの活動に利用されるという。
「古本にはこういう使いかたもあるんだと知ってもらいたくて、はじめました。チャリティということで、結構高く買ってくれます。月に10万円以上売れることもあります」
 また、国会図書館に所蔵されていない本を古本屋で見つけて、寄付(納本)したいとも語る。
「空いているピースを埋めたいという気持ちがあるんですね。先日は詩人の小野十三郎と、児童文学作家の三木澄子の本を送りました」

 選挙への立候補もそうだが、震災と病気を経てからの磯貝さんは、これまでの経験を生かして、本と社会をつなげようとしている。その根底には、「ことば」への信頼があるのだろう。

磯貝さんツイッター
https://twitter.com/ISOGAI_1

南陀楼綾繁
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)などがある。

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『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
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2019年10月25日 第285号

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☆INDEX☆
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1.『戦時下の映画──日本・東アジア・ドイツ』について
                         岩本憲児
2.ネット文化資源を作るガイドたるべく      岡田一祐
3.私的古本屋店主考           カラサキ・アユミ

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━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━

『戦時下の映画 日本・東アジア・ドイツ』について

                        岩本憲児

 本書に関しては「編者の一人として語る」ことになるが、そのま
えに、本書より先に刊行された森話社の「日本映画史叢書」につい
てふれておきたい。この叢書の企画と編纂にも私は関わっており、
全15巻が完了したとき、書評紙で「戦争に関わるテーマが多い」と
書かれたことがある。

続きはこちら
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『戦時下の映画──日本・東アジア・ドイツ』岩本憲児・アン ニ編
森話社刊 本体:4500円+税 好評発売中!
http://www.shinwasha.com/

━━━━━━━━━━━【自著を語る(232)】━━━━━━━━━

ネット文化資源を作るガイドたるべく

                       岡田一祐

『ネット文化資源の読み方・作り方 図書館・自治体・研究者必携
ガイド』(文学通信)という本を刊行した。タイトルの「ネット文
化資源」とは、インターネット上で公開される文化資源のコレクシ
ョンを手短に言ってみたものである。 最近話題のデジタルアーカイ
ブのほか、インターネット上で文化資源のコレクションを構築する
ことに関わる内容について紹介しているものだ。

続きはこちら
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『ネット文化資源の読み方・作り方 図書館・自治体・研究者必携ガイド』
岡田一祐 著 文学通信 刊 定価:本体2,400円(税別) 好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-14-2.html

━━━━━━━━━【古本乙女の独り言⑤】━━━━━━━━━━

  私的古本屋店主考

                  カラサキ・アユミ

 学生時代、当時複数通っていた古本屋の中でもとりわけ〝堅い独
特な緊張感〟を漂わせる一軒があった。均一本が詰め込まれた底の
浅い木箱等を地面にテトリスのように配置した店先、開け放たれた
入り口をくぐると出迎えてくれたのは昼間でも薄暗い店内だった。

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━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『未来趣味 増刊 横田順彌追悼号』
発行:日本古典SF研究会 頒価:2,000円
http://seirindousyobou.cart.fc2.com/

『近代出版史探索』小田光雄 著
論創社 価格:6000円+税 好評発売中!
http://ronso.co.jp/

『「言論統制」の近代を問いなおす 検閲が文学と出版にもたらしたもの』
金 ヨンロン(編)尾崎 名津子(編)十重田 裕一(編)牧 義之(執筆)
村山 龍(執筆)逆井 聡人(執筆)
発行:花鳥社 価格 3,200円+税
https://kachosha.com/books90983211/

古本乙女の独り言⑥
ある日の古本屋にて
カラサキ・アユミ

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

10月~11月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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 【バックナンバーコーナー】
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 次回は2019年11月中旬頃発行です。お楽しみに!
└─────────────────────────┘

*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の全国の古書店に ☆*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

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日本の古本屋メールマガジンその285 2019.10.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
編集長:藤原栄志郎

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「神田古本まつり特選古書即売展」のお知らせ

「神田古本まつり特選古書即売展」のお知らせ

令和元年度神田古本まつりの一環として、神田古書店連盟協賛「神田古本まつり特選古書即売展」が来たる10月25・26・27日の3日間 東京古書会館地下1階で開催されます。(午前10時~午後6時 最終日午後5時閉会)

和洋の古典籍・古地図・歴史学、民俗学等の学術書・近現代日本文学の初版本や草稿・映画・美術・趣味など個性あふれる14店が出店いたしますので、是非ご来場お願い申し上げます。

今回も昨年同様、会場・東京古書会館2階情報コーナーにて25・26・27日の3日間「希少書籍の展示会」を行います。
また期間内の会場決済に限り、総額1万円以上の場合はクレッジト決済がご利用になれます。

会期内、会場で5千円以上お買い上げのお客様には
送料無料券をご提供いたします。

目録ご希望の方は切手500円同封の上
〒101-0051 東京都千代田区猿楽町1‐4‐4 STビル102  かわほり堂
までお申し込みください。
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東京古書会館2階情報コーナーにて「希少書籍の展示会」風景

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ネット文化資源を作るガイドたるべく

ネット文化資源を作るガイドたるべく

岡田一祐

『ネット文化資源の読み方・作り方 図書館・自治体・研究者必携ガイド』(文学通信)という本を刊行した。タイトルの「ネット文化資源」とは、インターネット上で公開される文化資源のコレクションを手短に言ってみたものである。 最近話題のデジタルアーカイブのほか、インターネット上で文化資源のコレクションを構築することに関わる内容について紹介しているものだ。

本書の元になったのは、メールマガジンに連載していた「デジタル日本研究」に関する時評である。デジタル日本研究とは聞きなれない分野だろうが、デジタル技術を積極的に活用した日本研究というほどの意味である。このような分野は、総体的に人文情報学ないしデジタル人文学という呼称が与えられ、目立たないながらも数十年の歴史を有している。国立国語研究所に大型コンピューターが入ったのは、1960年代の早きに属し、70年代にはいくつもの文系研究機関で計算機の導入が相次いだ。「デジタル日本研究」は、その日本研究への応用というほどの意味で、専門分野というよりは、デジタル技術の利活用をしたものを取り上げたということになる。本書をもともとのテーマでまとめずに、ネット文化資源の本としてまとめることになったのは、あたらしいサービスやコンテンツ、技術動向などをよくいえばひろく、じっさいのところをいえばかんがえもなしに取り上げたことによる。

書名に「読み方」と付けたのは、ネット文化資源をいわば文献学的に位置づけることを意図したからである。べつのところにも書いたが(「もっと記述のことばを、あるいは『ネット文化資源の読み方・作り方』の長い後書き」『人文情報学月報』97号、 https://w.bme.jp/bm/p/bn/htmlpreview.php?i=dhm&no=all&m=9&h=true )、 ネット上の情報資源は概して儚い。きょうあると思っていたものが突然サービスを停止することこそ最近は減ったものの、比較的長い告知期間はあったにせよ、Yahoo! Geocitiesはたくさんのすぐれたウェブサイトとともに消えていった——組織的保存もされずに(消えてしまったなつかしいサービスには@nifty omepage、Lycos Tripodなどもあった)。Internet Archiveなどの保存サービス はあるものの、収集し切れてはいないし、最近はやりの機能盛りだくさんのサイトにも対応できていない。そこでやはり残るのは言葉による記述である。そのため、紙幅の制限はありつつ、後世の資料となるような記述を心がけた。それを繰り返していたら一冊の本の長さになっていったというのが実感である(連載は上記の月報でまだ続いている)。

書名のもう一方の「作り方」のほうはもうすこし現実的で、そのような構築に携わる際の資源の扱い方、技術の取り入れ方について論じたからである。しかし本書を読んでも、直接的なガイドはなく、デジタルアーカイブは作れない。それでもなお「作り方」ということばを付け加えたのは、なにかを作るにあたって先行事例をどう読み解くかがけっきょく大きく関わるからである。読むことが作ることに先立つ、そのような意図が本書の題名には込められている。そのような意味で、本書が今後ネット文化資源を作るガイドたれば、それに優る幸いはない。

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『ネット文化資源の読み方・作り方 図書館・自治体・研究者必携ガイド』
岡田一祐 著 文学通信 刊 定価:本体2,400円(税別) 好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-14-2.html

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『戦時下の映画 日本・東アジア・ドイツ』について

『戦時下の映画 日本・東アジア・ドイツ』について

岩本憲児

 本書に関しては「編者の一人として語る」ことになるが、そのまえに、本書より先に刊行された森話社の「日本映画史叢書」についてふれておきたい。この叢書の企画と編纂にも私は関わっており、全15巻が完了したとき、書評紙で「戦争に関わるテーマが多い」と書かれたことがある。拾い出してみると、『日本映画とナショナリズム1931-1945』(第1巻)、『映画と〈大東亜共栄圏〉』(第2巻)、『映画のなかの天皇 禁断の肖像』(第9巻)、『映画と戦争 撮る欲望/見る欲望』(第10巻)、『占領下の映画 解放と検閲』(第11巻)があり、第10巻を除き他は私の編著である。

 叢書完結(2011年)のあと、『日本映画の海外進出 文化戦略の歴史』を編纂(2015年)、ここでも私は映画史初期から戦時下までを俯瞰して執筆した。このように、「日本映画史叢書」を機に、もともとモダニズム映画・芸術を研究テーマにしていた私の関心は「戦争の時代の日本」へ移ってきた。

 ところで、「戦時下の映画」という書名を一般読者が目にするとき、イメージとして真っ先に浮かぶのは映画作品のことだろう。ついで、監督の名前や俳優の顔が浮かんでくるだろう。すると、本書は一般読者のイメージとそれに伴う期待をはぐらすことになるかもしれない。とりわけ、日本映画に関する前半(第一部)の各論は、具体的な対象を中心に論じていないからである。

 書名の「戦時下」とは日中戦争に端を発し、太平洋戦争へと至る時期、広くは1931年の満洲事変から1945年の戦争終結期(いまでは「アジア・太平洋戦争」)までを対象とした。次に「映画」であるが、本書では、「あとがき」に記したように、「アジア・太平洋戦争期、映画はどのように時代と関わり、時代に対応してきたのだろうか」を大きな括りとした。国内の課題としては、戦時体制がもたらした「映画界」の変化と対応に重点を置き、これまで論じられることの少なかった領域へ眼を向けた。

 すなわち第一部「戦争の時代と映画」には6本を収録――順に「「映画戦」への遠い道程」(岩本)、「映画統制構想の展開と映画工作」(加藤厚子)、「戦ふ映画館」(近藤和都)、「日中戦争下の農村巡回映画の活動」(平賀明彦)、「教化映画か教材映画か」(渡邊大輔)、「戦時下の映画ジャーナリズム」(古賀太)など。戦時下では日本映画界が海外へ、とりわけ中国や東南アジアへ、国策に協力するかたちで否応なく対峙していくことになったため、後半の第二部「越境する映画」には8本を収録した――「初期満映について」(上田学)、満映の「『東遊記』論」(門間貴志)、「朝鮮映画の戦時体制」(鄭琮樺)、「越境する植民地劇場」(李相雨)、「映画と台湾総督府の南進政策」(李道明)、「占領下の上海映画と日本映画」(晏妮)、「”大東亜の歌姫“李香蘭の表象性」(秦剛)、「ドイツの銀幕における〈大東亜戦争〉」(ハラルト・ザーロモン)など。

 第二部の「越境性」は当時の映画界が担った大きな課題である。一方に<日本帝国の拡張と膨張>を抱え込み、片方に<プロパガンダと侵略>を背負い込んだ日本映画はどのように対応したのだろうか、そして周辺諸国はどのように反応したのだろうか。なお、戦時下の日本映画界は国策と厳しい検閲に縛られながら、海外で日本映画の普遍性とは何かという問題にも直面した。編者の一人、晏妮をはじめ、現代の中国・韓国・台湾・ドイツの研究者たちにも執筆の協力を仰ぎ、本書ができあがったのである。

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『戦時下の映画──日本・東アジア・ドイツ』岩本憲児・アン ニ編
森話社刊 本体:4500円+税 好評発売中!
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☆古本乙女の独りごと⑤ 私的古本屋店主考

☆古本乙女の独りごと⑤ 私的古本屋店主考

カラサキ・アユミ

学生時代、当時複数通っていた古本屋の中でもとりわけ〝堅い独特な緊張感〟を漂わせる一軒があった。均一本が詰め込まれた底の浅い木箱等を地面にテトリスのように配置した店先、開け放たれた入り口をくぐると出迎えてくれたのは昼間でも薄暗い店内だった。コンクリートの地面に直に積まれたおびただしい量の雑誌やら図録、そう高くはない天井に向かって連なりそびえ立つ棚には下段から上段までぎっしりと文庫本、新書、ハードカバー本が詰め並べられていた。そして、店の奥の更に薄暗い帳場には微動だにせず椅子に座りこちらには一切目もくれない老店主。その店主の眼鏡が異様に存在感を放っていたのであった。お前さんのようなアマチュア古本好きはまだまだだ!と言わんばかりのオーラが放たれていて(完全に私の妄想だが。)そんな店主に対して私は畏敬の念を抱きながら棚を物色させてもらっていた。

 その古本屋に通い始めて二年ほど経ったある日、会計時に初めて店主に話しかけられた。釣銭を渡される時の「ありがとうございました…」の声、それも微かな声量しか聞いたことのなかった私にとって、アルプスの少女ハイジの車椅子のクララが立ち上がった際の〝クララが…クララが立った‼︎〟レベルに驚いた瞬間であった。他愛もない話をした後おもむろに店主は私に一冊の本を手渡してきた。どうやら店主が最近自費出版した本らしい。だがしかし私にはまるでチンプンカンプンな哲学的な難しい内容だった。だがここは知識の浅さを露呈せずに堂々とせねば、と「スゴイですねー‼︎」を私はひたすら連発した。そんな私の様子も見透かしたかの様に店主はさて本題に入ります、といった空気で話を続けた。「とにかくこの本はいいよ。我ながらいい本だよ。どう…?試しにさ。」

 店を出た私の手には先程の本が収められていた。買ったのだ。全く興味のない一冊の本を。なかなか高額な定価で。財布の中に残していた昼飯代も無くなってしまった。仕方ない、今日はコンビニの安いオニギリで済ませるか…と腹の虫を鳴かせながらも、不思議な高揚感に満ち満ちていた。結局買った本は読まずじまいのままだった。

 人には「いいカモだったんだよ、アンタ」と言われるかもしれないが、いや、現にカモにされたわけだが、それでも当時の私にはとても嬉しい出来事だった。あの寡黙な店主が私に笑いかけ話しかけてくれた、その感動に代金を支払ったわけである。そう思う程に私にとって〝古本屋店主〟という存在はなんだか特別な存在なのだ。昔も今もこれからも。

karasaki5
『全古書連ニュース』より転載

otome5
東京古書組合発行 『古書月報』より転載

hibi
『古本乙女の日々是口実』皓星社
価格1,000円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/furuhonotome/

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2019年10月10日 第284号

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 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第81号
      。.☆.:* 通巻284・10月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛け下さい。

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━━━━【キャッシュレスポイント還元のお知らせ】━━━━━━

10月1日より「日本の古本屋」サイトにて、キャッシュレス決済で
ご購入頂くと、お客様に5%のポイントが還元されます。

これは、キャッシュレス化の推進を目的に、経済産業省が主体と
なって行う事業で、消費税率引き上げ後の2019年10月から2020年
6月までの間、日本の古本屋でキャッシュレス決済を行って頂くと
決済金額の5%が還元されます。

■実施期間
  2019年10月01日~2020年6月30日 まで

■対象の支払い手段
「日本の古本屋」でのキャッシュレス決済はクレジットカード
での決済になります。

※キャリア決済、Apple Payは対象外となります。

また、対象となるクレジットカードは6大国際ブランドです。
 (VISA、マスターカード、JCB、ダイナースクラブ、
      アメリカンエクスプレス、ディスカバーカード)

この機会にぜひご利用ください!

━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

第一回 古本屋稼業十年目の呟き

                    善行堂 山本善行

 仕入れてきた本を、何も考えず、そのまま店の棚に並べておくと、
いつの間にか、そのほとんどが売れて無くなっている。するとすぐ、
誰かが読み終わった本を、店に持って来てくれる。それを空いた棚
に入れると、たちどころにまた売れてしまう。もしこれが本当であ
ったなら、古本屋は最高の職業の一つだろう。実際は、少し大げさ
に言うと、百円の本を売るのにも、作戦を立て、知恵を絞り、本を
大量に動かして、やっと売れるという有様である。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5206

山本善行

2009年、銀閣寺近くに「古書善行堂」を開店する。
著書に「古本泣き笑い日記」「関西赤貧古本道」「漱石全集を買
った日」など。
雑誌「APIED」と関西ジャズ情報誌「WAY OUT WEST」に連載中。

━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

第10回 山本幸二さん 集めて記録して手放すひと

                       南陀楼綾繁

 5月のある日、私は神戸・元町の喫茶店で人を待っていた。
〈チェリー〉というその店は、いまでは各地で姿を消しつつある普
通の喫茶店で、その時間はまだ空いていた。
「お待たせしましたか?」と入ってきたのは、物腰が丁寧で、温厚
そうな人だった。この喫茶店の近くにある〈花森書林〉の森本恵さ
んに、神戸で取材したら面白い古本好きを紹介してほしいと頼んだ
ら、紹介してくれたのがいま目の前にいる山本幸二さんだった。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=5211

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

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『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━【10月10日~11月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2019/10/10~2019/10/13
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
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城南古書展

期間:2019/10/11
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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第21回 八王子古本まつり

期間:2019/10/11~2019/10/15
場所:八王子駅北口ユーロード
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京都マルイ秋の古本市(京都府)

期間:2019/10/11~2019/10/14
場所:京都マルイ(四条河原町)1階店頭 四条通側
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第11回横浜めっけもん古書展(神奈川県)

期間:2019/10/12~2019/10/13
場所:神奈川古書会館1階特設会場
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丸善秋の古書市(鹿児島県)

期間:2019/10/12~2019/11/20
場所:丸善天文館店 地下3階特設会場 鹿児島誌中町3-15
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第50回 鶴屋古書籍販売会(熊本県)

期間:2019/10/16~2019/10/22
場所:鶴屋百貨店本館 6階会場 熊本市中央区手取本町6-1
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ぐろりや会

期間:2019/10/18~2019/10/19
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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本の散歩展

期間:2019/10/18~2019/10/19
場所:南部古書会館  品川区東五反田1-4-4
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フィールズ南柏古本市(千葉県)

期間:2019/10/18~2019/10/31
場所:フィールズ南柏モール2 2階催事場 柏市南柏中央6-7
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秋の古本掘り出し市(岡山県)

期間:2019/10/23~2019/10/28
場所:岡山シンフォニービル1F 自由空間ガレリア
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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2019/10/24~2019/10/27
場所:JR浦和駅西口さくら草通り徒歩5分マツモトキヨシ前
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アモール古本市(北海道)

期間:2019/10/24~2019/10/29
場所:旭川市豊岡3条2丁目2-19
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イービーンズ古本まつり(レコード・CD市 併催)(宮城県)

期間:2019/10/24~2019/12/08
場所:宮城県仙台市青葉区中央4-1-1 9階 杜のイベントホール
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神田古本まつり特選古書即売展

期間:2019/10/25~2019/10/27
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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第60回 東京名物 神田古本まつり(青空古本市)

期間:2019/10/25~2019/11/04
場所:神田神保町古書店街(靖国通り沿い・神保町交差点ほか)
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好書会

期間:2019/10/26~2019/10/27
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9
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第14回 にしお本まつり(愛知県)

期間:2019/10/26~2019/10/27
場所:愛知県西尾市立図書館/西尾市岩瀬文庫
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第43回 秋の古本まつり-古本供養と青空古本市-(京都府)

期間:2019/10/31~2019/11/04
場所:百萬遍知恩寺境内 京都府京都市左京区田中門前町103
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東京愛書会

期間:2019/11/01~2019/11/02
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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古書愛好会

期間:2019/11/02~2019/11/03
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
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新橋古本まつり

期間:2019/11/04~2019/11/09
場所:新橋駅前SL広場
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洋書まつり

期間:2019/11/08~2019/11/09
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
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第10回 上野広小路亭古本祭り

期間:2019/11/11~2019/11/17
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36
台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階
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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2019/11/14~2019/11/17
場所:JR浦和駅西口さくら草通り徒歩5分マツモトキヨシ前
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└─────────────────────────┘

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日本の古本屋メールマガジンその284 2019.10.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
 編集長:藤原栄志郎

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第10回 山本幸二さん 集めて記録して手放すひと

第10回 山本幸二さん 集めて記録して手放すひと

南陀楼綾繁

5月のある日、私は神戸・元町の喫茶店で人を待っていた。〈チェリー〉というその店は、いまでは各地で姿を消しつつある普通の喫茶店で、その時間はまだ空いていた。
「お待たせしましたか?」と入ってきたのは、物腰が丁寧で、温厚そうな人だった。この喫茶店の近くにある〈花森書林〉の森本恵さんに、神戸で取材したら面白い古本好きを紹介してほしいと頼んだら、紹介してくれたのがいま目の前にいる山本幸二さんだった。
 さぞや年季の入った古本コレクターなのだろうと思ったら、「私は2011年から本格的に古本屋をめぐりはじめたんです」と云う。けっこう最近じゃないか。しかし、山本さんのお話を聞いていくと、この人の人生は「集めること」と不可分なのだと判ってきた。

 山本幸二さんは、1951年に神戸市の中央区に生まれた。実家は光村印刷という会社を営んでいた。東京の光村印刷は神戸で創業したが、東京に移ったあと、神戸では別の人が経営し神戸光村印刷となり、その後、山本さんの祖父が引き継いだのだという。
 同社は主に宣伝物の印刷を手掛けており、私がこの前日に大阪の〈本は人生のおやつです!!〉でトークをしたジュンク堂難波店店長の福嶋聡さんが、神戸で俳優として所属していた劇団のチラシやパンフレットも印刷していたそうだ。

「母は本好きでしたが、子どもの頃の私はあまり本を読んでいません。小学生の時に『世界の国々』という本を読んで地理が好きになり、中学生の頃は貝殻を集めていました。兄が白川峠に化石採集に連れて行ってくれたことから、高校では地学部に入りました」
高校のときは、化石を集めたり、星の写真を撮りに行ったりした。学校の図書館で天文や鉱物の本ばかり読んでいた。当時購読していたのが、日本気象協会発行の『地球の科学 cosmos』。「世界の熱帯低気圧」などの特集を組んでいる。「自然科学系の本ばかり読んでいて、文学はウソだと思っていました(笑)」とおっしゃる。高校では小説やエッセイしか読んでいなかった私とは真逆だ。

 大学では経営学部に入る。クラブは地理研究会に属し、過疎地帯を調査して、報告書をつくった。
 この頃、はじめて古本屋に行き、岩波新書を買った。つくり話だと思っていた文学も読むようになり、高橋和巳、安部公房、野坂昭如などを読んだ。
「『妊婦たちの明日』(角川文庫)を読んでから、井上光晴を集めるようになりました。暗いところが好きでした。この頃は元町、三宮の古本屋と、〈コウベブックス〉〈日東館書林〉〈海文堂書店〉〈丸善〉などの新刊書店をめぐっていました」

 卒業後は、船舶用のエンジンメーカーである阪神内燃機工業に入社。一貫して、経理畑で仕事をしてきた。その頃から、野鳥の会に属し、山や川で野鳥の羽を集めた。それらを洗って分類し、クリアファイルに収める。
「なんでも分類して、記録することが好きなんですね。山に行った記録や、流れ星の観測記録なども付けています」

 この頃になると、純文学の単行本が古本屋で安く買えるようになった。山本さんは新潮社の「純文学書下ろし特別作品」シリーズを集めた。
「装丁が統一されているので、集めやすいです。最後の方に函入りでなくなったときは、がっかりしました」
 話を聞いていると、この頃からそれなりに古本も集めているように思えるが、当時の山本さんのなかでは他のコレクションほど古本に重きを置いてなかったのかもしれない。

 そして2011年、山本さんに転機が訪れる。転勤で元町の本社に通勤するようになった。会社はそれ以前しばらく経営的に厳しかったが、業績が上がって余裕もできた。
「古本も安くなったし、バンバン買えるようになったんです」と山本さんは笑う。
 直接のきっかけは、〈海文堂書店〉が常設していた古本の棚を見たことだ。そこに本を出していた元町の〈トンカ書店〉で井上光晴の本を買い、毎週通うようになった。そして、京都から姫路まで、阪神間にある古本屋を訪れ、大量に買った。
「文学では井上光晴をはじめ、井上荒野、梨木香歩、川上弘美、干刈あがた、鈴木いずみなど。他にも地理や民俗学、鉱物、映画本などいろいろ買います」
 これだけ買って、相当数の本を読むというからすごい。

 山本さんはインターネットでは本を買わず、古本屋に足を運ぶ。文庫は1000円までなど、価格の上限を決めている。
「〈ハニカムブックス〉では鳥の本を買うとか、自分でルールを決めています。それと、女性店主の古本屋は応援しています。昔の古本屋の店主は男が多くて、帳場の奥に座っていましたが、女性店主は立って接客している人が多いのがいいです。女性店主の古本屋が栄えると、本の幅が広がっていくと思います」

 とくに〈トンカ書店〉の森本さんは「客の分け隔てがなくて、楽しんで仕事をしているのがいい」そうで、開店10周年のときは、集めてきた「純文学書下ろし特別作品」を全冊放出し、店でフェアを行った。
 山本さんは、ひとつのコレクションがだいたい集まってきて、先が見えてくると、まとめて古本屋に売るのだという。それを「卒業」と呼んでいる。
「集めて、記録して、手放して卒業、というサイクルですね。それで次のコレクションに行くんです。古本屋で買った本は古本屋さんに戻すのが自然だと思うので」
 コンプリートに近い状態で処分するのだから、古本屋にとってこんなにありがたい客はいないだろう。
 しかも、山本さんは買った本の表紙をカラーコピーし、リストもつくっている。「いちど手元にあった証拠」だというが、処分するときにはそのリストも一緒に渡すそうだから、これもありがたい話だ。
 最近では、〈トンカ書店〉が移転して今年2月に〈花森書林〉として開店したのを祝して、これまで集めてきた福武文庫約400冊を放出するフェアを行った。取材時にはすでに半分売れてしたが、私も阿部昭編『葛西善蔵随想集』など何冊か買った。
 いまは、講談社文芸文庫を集めているそうだ。
「1000点以上あって、いまでも刊行中なので、全部集めるのは諦めて、ひとりの作家につき2冊までにしようかなどと悩んでいます」
 その様子は本当に楽しそうで、どっちでもいいから好きにすれば? と突き放す気も起きなかった。

 しかし、それだけ買っていれば、家のなかは大変だろう。
「たしかに本だらけですね(笑)。でも、置く場所はだいたい決まっていて、本棚にも岩波新書は番号順、文庫は作家別に並べています。入りきらない本は段ボール箱に入れています」
 また、各地方の観光パンフレットや映画のチラシも数千枚あり、若い頃から集めてきた化石や鉱物もある。山本さんはそれらをすぐに取り出せるようにしているようなのだ。
 私は部屋が狭いから、探している本が見つからないと弁明を重ねてきたが、本当はスペースの問題ではなく、整理することができるかどうかという性格の問題だったのだろう。うすうす気づいてはいたけれど……。

「買った本はその日のうちに、リストにつけて整理しないと忘れてしまいますね」と山本さんはおっしゃるが、それができる人がうらやましい。
 ダブって買った本は、会社の図書室に寄贈する。山本さんは会社の図書部にも属して、本の整理を行っているという。同社の社史(『阪神内燃機工業百年史』)は、山本さんの古本屋とのつながりから、神戸の出版社・苦楽堂が編集している。
「古本屋に通うようになって、店主やお客さんなどいろんな人たちと出会って、話ができるようになったのはとてもよかったです」と、山本さんは語る。

 取材を終えて〈花森書林〉に行くと、店主の森本さんが笑顔で迎えてくれた。福武文庫の本棚に立って、「あの本が売れた」などと話す二人を見ているとほのぼのとした気持ちになる。誰とも競わずに自分の好きな本を集めていって、古本屋さんにも愛される。素敵な古本人生だと思う。
「コレクションのテーマは次々に出てきますね。他に行くところもないので、これからも古本屋めぐりは続いていくでしょうね」と、山本さんは笑った。

南陀楼綾繁
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)などがある。

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第一回 古本屋稼業十年目の呟き

第一回 古本屋稼業十年目の呟き

山本善行

 仕入れてきた本を、何も考えず、そのまま店の棚に並べておくと、いつの間にか、そのほとんどが売れて無くなっている。するとすぐ、誰かが読み終わった本を、店に持って来てくれる。それを空いた棚に入れると、たちどころにまた売れてしまう。もしこれが本当であったなら、古本屋は最高の職業の一つだろう。実際は、少し大げさに言うと、百円の本を売るのにも、作戦を立て、知恵を絞り、本を大量に動かして、やっと売れるという有様である。皆さん、周りの古本屋を見てください、滅茶苦茶働いていますよ。私も定休日の火曜日に、業者の市場があるので、ほとんど休みなくこの十年、働いてきました。

 でも、そんな古本屋生活でも、楽しみはある。やせ我慢みたいな文章になるとは思うが、そのことを書いてみたい。私の場合、お客さんと話をしながら本を売るスタイルなので、本の内容を知っていた方がいいのだ。本を読むことが仕事につながるわけで、私にとって仕事が苦にならない。古本屋はあまり本を読まない方がいいという人もいるが、またそういう面も実際あると思うが、しかしこれは仕方のないことで、私は読むことを武器とするしかないのである。

 例えば、竹下彦一という作家の話をしよう。詩集や句集、エッセイ集など、著書は多いが、おそらく、その一冊を棚に差しておいても、なかなか売れないと思われる。でも竹下彦一という人物を明らかにしていけば、興味を持つお客さんがきっと現れると思う。

 私は最初、タバコの箱を綴じて本にしたのを見て、竹下彦一に興味を持った。ちょっと調べて見ると、この竹下彦一、なかなか面白い作家であった。日本大学工学部で柔道を教えていたこと(講道館八段)や、カルヴァドスの会会員でもあったことがわかる。

 こうなると調べることが面白く楽しくなってくる。そしてやはり一冊本が欲しくなります。こういうときには「日本の古本屋」が便利で、私が買ったのは「ロココ風な喫茶店」という詩集だった。

 二枚半の紙を折り、段ボールで挟んだ、という簡単なもので、装幀は池田勝之助、印刷は植田秀雄、昭和29年、カルヴァドスの会刊行、限定二百部の本であった。池田勝之助は小川未明の「生きぬく力」という童話の挿絵を書いた画家だったことも知る。

 さてこの『ロココ風な喫茶店』であるが、読んでみるとなかなか面白い。喫茶店と珈琲と詩集が好きな著者の姿がそのままストレートに語られている。あとがきでは、名古屋のカフェー「パウリスター」のことにも触れ、五銭で香高い珈琲を飲ませてくれたとか、詩を書くようになったのは珈琲のためだとか、書いている。「小さい幸福」という詩は、こんな短い詩なのだ。/わたしの膝の上には/新刊の詩集/わたしの卓には/一杯の熱い珈琲/

 心から好きなことを、次から次に並べて、分かりすぎるような詩は、現代詩からみると、物足りないようにも感じるが、新鮮でもあった。その後「喫茶店にて」という詩集も入手することになる。この詩集には、年譜がついていたので竹下彦一のことをさらに知ることになる。

 今は、カルヴァドスの会について調べているが、こうなると、竹下彦一の本もだんだんと光を放つようになってくる。ただ、もっと調べたくなってまだ売らなくてもいいか、などと思うので、結局、本はなかなか売れないということに変わりなく、ただ調べて遊んでいるとも言えるのである。

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『漱石全集を買った日』山本善行 清水裕也 著
夏葉社 刊 本体1300円+税 好評発売中!
http://natsuhasha.com/

山本善行
2009年、銀閣寺近くに「古書善行堂」を開店する。
著書に「古本泣き笑い日記」「関西赤貧古本道」「漱石全集を買った日」など。雑誌「APIED」と関西ジャズ情報誌「WAY OUT WEST」に連載中。

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