『第3版 教育の制度と経営 15講』 【大学出版へのいざない11】元明星大学教育学部教授 樋口修資 |
本書は、教育職員免許法施行規則第6条に定める「教育の基礎理論に関する科目」のうち、「教育に関する社会的、制度的又は経営的事項」に関する事項を取り扱う授業科目である「教育の制度と経営」のテキストとして執筆されたものです。したがって、本書は、主に教職を志す学生の利用を想定していますが、これら教職志望者にとどまらず教育に関心を寄せる一般の方々にも広く読んでいただけるよう、学校教育の制度・経営に関する仕組みの現状とその課題等に関する事柄を、15のテーマに分けて、できる限りコンパクトにわかりやすく紹介する内容となっています。
今日の大学教育では、アクティブ・ラーニングの授業方法が強調され、学生の主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善が求められていますが、教職を志望する学生にとっては、まずは、教職の基礎的・専門的な知識や考え方をしっかりと修得することが求められており、これらの基礎的・専門的な知識理解に立って、それらを活用して批判的に思考し、判断するなどの資質や能力を形成することが大切であると考えます。 今日の学校教育は、すべての国民にひとしく「教育を受ける権利」を保障し、「義務教育の無償」を定める日本国憲法の教育条項とそれを受けて教育の理念と教育制度の基本を定める教育基本法に基づき営まれています。学校教育の在り方を考える上で、戦前教育の痛切な反省に立って行われた戦後教育改革の法制的枠組みである「憲法・教育基本法法制」を踏まえて、教育の民主化・地方分権化・自主性の保障の3大原則の実現が図られてきていることをきちんと認識すべきでしょう。また、学校教育は、国の教育行政の役割として「ナショナルミニマム」の実現を、そして、地方の教育行政の役割として「ローカル・オプティマム」の実現を調和的に図っていくという、国と地方の役割分担と相互の協力の下に、適正に実施されることが重要であると理解していただきたいと思います。 本書では、憲法・教育基本法体制及び公教育制度を支える国と地方の教育行政の仕組みを踏まえて、学校制度と就学制度、学校の管理運営と組織編制、教職員の身分・服務と勤務管理や研修制度、学校の説明責任と地域参画の学校づくりなど教育の制度的・経営的事項の全体像を明らかにすることをねらいとしています。また、学校における教育活動の車の両輪ともいうべき、教育課程と生徒指導について取上げるとともに、児童・生徒の安全安心な学校生活を確保するための学校の保健安全管理の事項についても取り上げています。 本書では、特に教育課程に関する事項と生徒指導に関する事項を重視して取り上げています。教育課程に関する事項については、国が定める学習指導要領と各学校で編成実施する教育課程とのかかわりを整理し、学習指導要領は最小限基準を定めるものであって、教育課程の編成に当たる学校では最小限基準を超える内容について創意工夫を図るなどの裁量性を有していることを詳細に明らかにしています。また、生徒指導に関する事項については、懲戒と体罰に関する取扱いやいわゆる「ブラック校則」をめぐる問題、あるいは、いじめ防止や児童虐待防止など今日的な生徒指導上の問題を取り上げ、どのような改善の取組みが求められているか明らかにしています。 さらに、今日の学校教育をめぐる重要なトピックとして、学校教育において喫緊の課題となっている教員の多忙化解消に向けての学校の働き方改革はじめ、子供の貧困と就学援助、学校徴収金と私費負担の公会計化、学校選択制と教育バウチャー、いじめ防止と児童虐待防止、不登校とフリースクール、特別支援教育とインクルーシブ教育、外国とつながりのある児童生徒の教育の課題などを幅広く取り上げ、これらの問題に対する読者の関心と理解を深めていただくことを期待しています。 教職を志す学生が、本書で明らかにした学校教育の基本的仕組みとその運用の現状と課題について理解を深め、教職の専門性を磨き、「チーム学校」の一員として学校運営に携わる上で、本書が少しでもお役に立つことができれば望外の喜びです。 ![]() 書名:『第3版 教育の制度と経営 15講』 著者名:樋口修資 出版社名:株式会社 明星大学出版部 判型/製本形式/ページ数:A5判/並製/298ページ 税込価格:2,640円 ISBNコード:978-4-89549-232-4 Cコード:C3037 好評発売中! http://www.meisei-up.co.jp/books/330/ |
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