『大正大学出版会から「地域人ライブラリー」創刊』渡邉直樹(大正大学客員教授・大正大学出版会 編集長) |
大正大学出版会では11月5日、地域創生に寄与する書籍シリーズ「地域人ライブラリー」を創刊しました。「地域人ライブラリー」は、2015年9月に創刊し2023年5月の第89号まで、別冊2冊を含め91冊を全国の書店で販売してきた雑誌『地域人』の記事をもとに
編集する新たな書籍シリーズです。 雑誌『地域人』は「地に生きる、地を生かす」をコンセプトに、地域を元気にする「地域人」の様々な活動、先進事例を解説・論評を加えて紹介し、地域創生のためのテキストとしても活用していただいてきました。現在、雑誌『地域人』は休刊していますが、「地域創生」はいまも日本が取り込むべき課題であることは変わりません。『地域人』で8年間にわたり蓄積したコンテンツをもとに企画した「地域人ライブラリー」は、地域創生を進めるうえでのヒントとなる貴重な資源となるでしょう。 その第一弾として、以下の3冊を11月5日に同時発売いたしました。 『生きものを甘く見るな』養老孟司 『生きるための農業 地域をつくる農業』菅野芳秀 『「本」とともに地域で生きる』南陀楼綾繁 「日本の古本屋」の場をお借りして、この中の1冊、『「本」とともに地域で生きる』をご紹介いたします。雑誌『地域人』では特集、連載を含めて、地域に根差した本屋さん・図書館・ローカルメディアなど、本がある場所と、それに携わる人たちの活動をたびたび取り上げてきました。たとえば、こんな特集です。「本屋が楽しい まちが楽しい!」(第50号)、「本屋は続くよ」(第75号)、「こんな図書館のあるまちに住みたい」(第33号)、「図書館とまちづくり」(第42号)、「ローカルメディアと地域おこし」(第22号)。 全国で展開する「一箱古本市」の生みの親であり、本をこよなく愛するライターの南陀楼綾繁さんには、『地域人』の「本」に関わる特集の多くに企画段階から関わっていただきました。また連載ページ「コアコア新聞」内の人気コラム「ローカルメディア力」の取材と執筆もしていただきました。それらの記事をまとめて1冊の書籍となったのが、『「本」とともに 地域で生きる』なのです。 既存の出版社・取次・書店など「出版業界」は、インターネット、SNSなどの隆盛に押され、読書に親しむ人数も時間も減少し、市場も縮小してビジネスとしては苦戦が続いています。しかし、そんななかでも「本」を愛する人たちの新たな動きが全国各地で出てきています。 確実に売れると見込んだ本しか既存の出版社が出さないのなら、自ら企画して少部数から スタートして低予算で本や雑誌をつくり、確実に収益もあげる。そうした出版活動。 「軽出版」や「AIによる雑誌つくり」などもはじまっています。 また本屋さんや図書館もイベント、カフェ、物販、学習スペースなど地域の人たちが集まる交流の場としての役割も大きくなっています。 こういった本を愛する人々の動きに後押しされるように、「出版業界」も、書店、図書館、出版社の間にかつてはあった「塀」が低くなり、「本」の現在と将来のために、交流するようになってきました。南陀楼さんも次のように書いています。 本を販売する本屋、本を所蔵する図書館、本を発行する出版社は、いわば兄弟のような関係でありながら、長い間、交わることが少なかった。さらに本屋については、新刊書店と古本屋は別の業界になっていた。しかし、2000年代に入ってから、お互いを隔てていた壁が少しずつ溶け出してきた。それは、売り上げのピークを迎えた1996年を経て、右肩下がりが続く この本には、山陰から「本の世界」を見つめてきた永井伸和さん(今井書店グループ元相談役)、リブロの店長、統括マネージャーを経て独立し、東京の荻窪で「本屋 Title」を開業した辻山良雄さんへのインタビューにはじまり、全国の特色ある34の本屋、7図書館、49のローカルメディアが取材・紹介されています。 「地域人ライブラリー」では、第一弾の3冊に続き、来年以降も、次のようなテーマの本を |
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