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メールマガジン記事 古本屋ツアーインジャパン

古本屋ツアー・イン・ジャパン2025年上半期報告

古本屋ツーリスト 小山力也

 私は今年も、非常にてんてこ舞いなのである……その訳は、去年同様に開催されることが決まってしまった、大阪「梅田蔦屋書店」での独り古本フェアのために、またも古本五百冊以上を用意しなければならなくなったのである。一度やってみて大変なことは重々承知していたのだが、「去年のフェアはお客さんにも店長にも好評でした。今年も是非!」などと言われたら、断れるわけがない。おかげで、様々なお店に不要古本を持ち込み、買い取ってもらい、家を圧迫する本を減らしつつあったのだが、いつの間にやら売る以上に、古本を買い込むモードに入ってしまったのである……もはや私の人生は、どうにも古本から離れられぬようだ。

だが幸いなのは、今年のフェアは十月開催予定なので、少しだけ去年より余裕があるのだ。
今現在大阪に送ることが出来たのは二百冊強。つまり後三百冊プラス、フェア補充用の古本を用意しておかねばならぬのである……ふ、古本を買って買って買いまくるしか、道はない! しかも安く良い本を見つけなければ意味はない! そんな訳で、今日も馴染みの古本的相性の良いお店に、良質な古本を求めて通い続けているのである。  

 その仕入れの場所は、去年同様やはり主に近所である。遠くまで買いに行くと、交通費という足枷が重くなるので、仕入れはやはり交通費のかからぬ近所でということになる。その主なルートを去年より詳しく挙げてみると、まずは阿佐ヶ谷&荻窪コース。「古書ワルツ荻窪店」「竹中書店」「岩森書店」を回って徒歩で阿佐ヶ谷に戻り、帰り道がてらの「千章堂書店」と「古書コンコ堂」と「銀星舍」を覗いて行く。もっとも、阿佐ヶ谷の三店は、何処に出かけても最後に必ず立ち寄るお店である。

西荻窪コースは、「盛林堂書房」と「古書音羽館」で、ここに時々かなり離れた「古書西荻モンガ堂」が加わる。吉祥寺は「バサラブックス」から「古本センター」へ。そして最後に「よみた屋」というパターンが多いが、ここに最近「藤井書店」が加わってしまった。連続して署名本や良書を安く買えたので、ルートに加えざるを得なくなったのである。通うお店は、どのお店でも毎回買えるという訳ではない。無駄足になることも多いし、また潮目が変わり、今まで足を運ばなかったお店がルートに加わったりすることもある。色々組み合わせを替えることにより、古本屋さんを巡る楽しさもまた変化することに、今さら気付いたりもしている。

三鷹では「りんてん舎」と「水中書店」。武蔵境近辺では新小金井の「尾花屋」を合わせ、「プリシアター・ポストシアター」と「おへそ書房」。高円寺では「西部古書会館」の催事と「古書サンカクヤマ」を組み合わせることが多い。さらに中村橋の「古書クマゴロウ」と保谷の「アカシヤ書店」を繋ぐルートもある。さらに下北沢の「ほん吉」→「古書ビビビ」→「古書明日」のルートは高確率で“黄金のルート”となるので、いつも行くのを楽しみにしている(ちなみにここには、代々木上原「Los Papelotes」経堂「ゆうらん古書店」東松原「古書瀧堂」が頻繁に加わる)。もちろん各店で狙うのは均一本であるが、均一本に良書の混ざるお店は、店内もまた魅力的な可能性大なので、掘出し物や欲しかった本や読みたかった本を見つけてしまい、ついつい散財してしまうことが多いのも事実である。

 以上のようにご近所の古本屋さんにお世話になりまくり、古本を買い集める日々を送っているのだが、当然こればかりではなく、少しは他の活動もしている。ひばりケ丘の新店「ひばりが丘書房」でようやく古本を買えたり、柴崎の「古書柴崎」で中井英夫「虚無への供物」の元本を薦められたり、西新井の「高田書店」の閉店に駆け付けたり、関内の「博文堂書店」や
学芸大学の「SUNNY BOY BOOKS」が店舗閉店したのを教えてもらったり、若林の「十二月津文庫」がすでに昨年三月に閉店していたことを今さら知ったり、「小川書店平塚店」が本店に統合されたのをタレ込まれたりしたが、上半期のトピックは、何と言っても蕨の「古書なごみ堂」の閉店を、宣伝的にお手伝いしたことであろうか。一ヶ月以上に渡って行われた閉店セール(三割引→五割引→七割引と推移)を宣伝するとともに、己もそれに完全に巻込まれ、
ついついたくさんの古本を買ってしまい、悲しくも嬉しいお別れとなってしまった。

 そう言えば「古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸」を出したことにより、入手出来た新店古本屋さん情報もあった。京都の画家で古書研究家の林哲夫氏から献本のお礼に届いた、何枚かのカードである。京都の「共同書庫」「NAGORO BOOKS」「暮霞書房」、兵庫豊岡の「だいかい文庫」などである。今現在、京都はもしかしたら東京より新しい実店舗が出来ているかもしれない……。  

 古本屋さんを巡る以外にも、相変わらず古本屋さんでお仕事もさせてもらっている。西荻窪「盛林堂書房」の買取手伝いは大体月に一〜二回のお仕事で、いつも力の限り古本を運んでいる。そんな風にこの仕事もちょっとは慣れたものだったが、つい先日、本のギッシリ詰まった重過ぎるダンボール三十箱を、時間制限のある中で、三階から一階まで薄暗い螺旋階段を伝って単独で下ろし続けたら、見事にエネルギー切れになってしまい、改めて古本屋さんのハードさを思い知ったりしたことも。また買取以外にも『神保町さくらみちフェスティバル 春の古本まつり』のワゴン販売を手伝ったり(年を経るごとにどんどん勤務日数が増えている)、これを書いている時点の七月現在、東京古書会館で行われている盛林堂主催の『探偵作家・大阪圭吉展』の受付を務めたりと、お店での活動の幅を微妙に広げている。  

 とこのように、上半期も古本屋さんに通い、古本を買い、古本屋さんで働き、古本屋さんに関する文章を書き、究極の古本片付けの本を出し、古本フェアの準備をしたりと、もはや自分が何者なのかわからぬ毎日を送っている。恐らく下半期もより一層、上記のような行動にさらなる拍車を掛け、暮らして行くに違いない。  それでは最後に、こんな活動の末に入手した掘出し物を列記しておこう。博文館「空襲警報/海野十三」(函ナシ)が200円。覆面探偵作家・物集高音の署名本が660円。筑摩書房「犬の生活/小山清」が300円。博文館「猟奇の果/江戸川乱歩」(函ナシ)が1500円。筑摩書房「YASUJI東京/杉浦日向子」献呈署名入りが220円……こういうことを書いていると、今直ぐ古本屋さんに行きたくなって来てしまいます。
 
 
小山力也 (こやま・りきや)

2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売っている場所の、全調査踏破を
目指す無謀なブログ『古本屋ツアー・イン・ジャパン』管理人。西荻窪「盛林堂書房」の
『フォニャルフ』棚と大阪「梅田蔦屋書店」で古本を販売中。「本の雑誌」にて『毎日でも通いたい古本屋さん』、「日本古書通信」にて『ミステリ懐旧三面鏡』連載中。最新刊は「古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸」(本の雑誌社

http://furuhonya-tour.seesaa.net/

 
 

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