『山本武利著作集』刊行にあたって山本武利 |
東京大学新聞研究所時代の助手論文を基盤に『新聞と民衆―日本型新聞の形成過程』(紀伊國屋新書、1973))をまとめました。また足尾鉱毒事件の新聞報道を調査し、後に一橋大学教授になった頃に修正し『公害報道の原点』(お茶の水書房、1986)として公刊しました。
メディアの送り手の研究に手を伸ばするとともに、広告や消費者の問題に関心を広げました。『広告の社会史』(法政大学出版局、1984)が代表作です。その後大学の教育現場で学生、院生へのサービスを行いながら、日本とアジアの関係に興味を抱きました。とくに中国、韓国、アメリカからの院生との接触で国際的な視野を広げました。『現代中国の消費革命』(日経広告研究所、1989)、『日韓新時代』(同文館出版、1994)などの編著があります。 国内外の図書館やアーカイブスを廻り、1次資料の発掘に当たりました。とくにアメリカ国立公文書館、メリーランド大学プランゲ文庫を1995年から2年間、安部フェローシップで集中的に調査しました。インテリジェンス、検閲の資料を重点的に収集しました。 21世紀に入ってから文科省科研費を得て298万件の占領期雑誌・新聞の目次データベースを12年かけて作成しました。アメリカ滞在中にデジタル利用のメディア研究の手法を学び、自らそれを研究に活用するようになりました。それを死蔵するのではなく、有料で世界に公開しました。その公的な運用のためにNPO法人インテリジェンス研究所を2012年に開設しました。2001年に研究誌『Intelligence』を公刊しました(版元紀伊國屋書店⇒文生書院) この時期に出した書籍は以下のものですが、このデータベースに多少とも依拠しています。 この半世紀に及ぶ研究生活で著書(単著)20冊、200点を超える論文を世に問うてきました。その大部分は現在では絶版状態です。私自身が持っていないものが多々あることも著作一覧作成過程で判明しました。また古書店には見当たらず、その価格も1部では当初の10倍にもなり、入手困難であります。 さらには版元にお願いして新たな資料を使った書き下ろしを挿入する試みも進めています。そうすると概算A5版10冊、各巻平均550頁になりそうです。第1回配本の第7巻でもその規模となりました。 完成時の2028年まで現在の厳しい出版事情が続くことが予想されます。現在85歳の私自身の健康が維持できるかが心配です。ともかく高齢のドン・キホーテの挑戦をご覧ください。 『第七巻 米国の対日工作』好評発売中! |
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