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メールマガジン記事 シリーズ古書の世界

世界の古本街見て歩き3 ポルトガル・リスボン カルモ古書街編

 
 

世界の古本街見て歩き3
ポルトガル・リスボン カルモ古書街編

能勢 仁(ノセ事務所)
 ポルトガルがヨーロッパの最西端にあることはご承知の通りである。日本人は小学生の時に、社会科の授業でポルトガル人が種子島に漂流した時に鉄砲を紹介したことを覚えている。その他、我が国の食文化にカステラ、天ぷら、金平糖などももたらしてくれた。カルタ、ボタンなどもポルトガル伝来である。筆者が一番驚いた食文化はいわし料理であった。
路地にあるレストランで昼食をした時、道路沿いの席では鰯をコンロで焼いて食べていた。日本と全く同じ風景に感激してしまった。海洋国家として共通する食文化であった。

 街は長崎に似て坂の多い街であった。違うといえば、その坂道をケーブルカーであったり路面電車が縦横に走っていることである。その車両の綺麗なこと、お洒落なことである。
観光が主要な外貨獲得なので、観光客を飽きさせない工夫であった。

 ポルトガルの人口は1,100万人であり、国土は日本の四分の一と狭い国である。首都リスボンは56万人と中都市である。しかし西洋文化はしっかりと根づいている。夕方になると、必ずと言ってよいほど「ファド」に誘われる。ポルトガルを代表する国民音楽である。
ご承知の通り、ファドは夜の街の中心文化である。リスボンに音楽サロンの多いことに驚く。
哀愁を込めた音楽であって、心を打たれる。

 リスボンの中心地に有名なカルモ教会がある。数世紀前の建物がリスボンを守っている様である。この場所はカルモ坂を登らねば行けない。勿論、路面電車を使って、カルモの街についた。まわりは坂また坂である。その両側に古書街が拡がっていた。道路には手すりがあり、体力をサポートしてくれた。


〇カルモ古書街の様子1


〇カルモ古書街の様子2

 世界の多くの古書街を見てきたが、坂道古書街はここだけである。20~30店の古書店があったが、共通点がある。それは本の陳列である。どの店も棚の隙間という隙間に本が刺されていることである。日本では見られない風景なので、質問してみた。英語が通用しないので、苦労した。答えは、折角の在庫であるから、お客様に是非見てもらいたいという、商売熱心さであった。雑誌古書店もあった。数は少ない。この店はすべて面陳列であった。


〇店内の様子1


〇店内の様子2

新刊書店では雑誌を扱っていないので、贔屓のお客様に頼んで雑誌を売りに来てもらっているという。この訪問はコロナ以前であるが、この古書街でパソコンを駆使している店に出会わなかった。新刊書店では、レジ脇に必ずパソコンがあったが。

 各古書店は店頭に扱い分野が看板に明示されていた。店内に入ると、本のギッシリ陳列である。本の分類版は見当たらなかった。常連客には古書店内の分類は必要ないのであろう。
店頭のワゴンセール100円?は何処も同じであった。しかし、ここカルモ通りは坂の途中に店舗があるので、店頭の販売台は少なかった。


〇カルモ古書街の様子3


〇店内の様子3

 愛想の好さそうな店主がいたので、東京から来たことを話した。そしたら、少し待っていてくれと言われた。何人か仲間を呼んでくるからといって、店を出ていった。七人か八人の古書店主が来た。坂の途中に小さな広場があり、そちらに案内された。日本の出版事情を聞きたいということであった。集まった人は50歳前後の人であった。小生の中学三年の英語を、先程の店主が通訳してくれた。日本では、出版社は本を創るだけの会社、作った出版物を取次に持ち込めば、全国の書店に配送してくれる、書店はその出版物を三か月陳列する義務があることなどを話した。委託のことは遂に解らなかったようであった。本を借してくれるシステムは異常なのであろう。小一時間位話した。楽しい一時であった。こんなことがあるから、海外紀行は止められないと思った。

 カルモ坂の入り口、つまり路面電車の出発駅の構内にプレスセンターがあった。
 海外の書店は雑誌を扱っていない。雑誌は薬局、スーパー、街角などで売られている。
中国では郵便局が販売拠点である。


〇プレスセンター入口

 リスボンのプレスセンターでは入り口で新聞が売られ、奥で200種以上の雑誌が陳列されていた。立派な雑誌専門店である。壁面には書籍棚があり、立派な書店でもあった。回転塔にはペーパーバックスが豊富に陳列されていた。プレス・ブックセンターである。
雑誌については各国、事情が異なっていて面白い。
ハンガリーのブダ・ペストには市営の雑誌スタンドが市内各所の路上に、2坪の市営雑誌販売店がある。ヒルラップという看板が上がっている。営業時間は月~金9時半~17時、女性一人が店番をしている。約200誌陳列されている。


〇プレスセンター店内の様子

 最も本格的な雑誌・新聞専門店はスウェーデン・ストックホルムのセルゲル広場にあるインターププレス雑誌・新聞店であろう。40坪の路面店である。新聞は世界105紙あり、「日経新聞」も並んでいた。雑誌は自国発行以外に、アメリカ誌20誌、ドイツ9誌、イギリス7誌、ロシア5誌、スイス、フランス、イタリア各4誌、ノルウェー3誌、スペース2誌であった。日本誌は無かった。

 エストニアのタリンのストックマン・スーパーの雑誌売場も特色があった。一階入り口に10坪の売場で積極的に雑誌を販売していた。服飾誌、料理誌等女性誌が多かった。雑誌364誌と新聞30紙があった。日本の雑誌、新聞は無かった。
 
 
 

能勢 仁
1933年(昭和8年)千葉市生まれ。慶應義塾大学文学部卒業、高校教師を経て、多田屋常務取締役、JBB取締役(平安堂FC部門)、アスキー取締役、太洋社勤務。1996年ノセ事務所設立。主な著書に「明治・大正・昭和の出版が歩んだ道」(出版メディアパル刊)、「本のことがわかる本・1~3巻」(ミネルヴァ書房)、「商人の機微」(中央経済社)など30数点。

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