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メールマガジン記事 古本屋ツアーインジャパン

『古本屋ツアー・イン・首都圏沿線』

鉄道路線から捉えた首都圏の古本屋

古本屋ツーリスト 小山力也

ブログ『古本屋ツアー・イン・ジャパン』は、自主的に全国の古本屋を調査し、文章でお店の様子を異様に詳細に報告するものである。しかしひとつのお店に対して熱い情熱は注げても、ブログにアップしてしまえばそこで作業はおしまいとなる。だからその調査データを、体系的に整え何かの役に立てようなどとは、ついぞ考えたことはなかった。元来の気質がめんどくさがりで、細かい作業が苦手なためである。だが、一年前に本の雑誌社から、神保町の150軒余の古本屋(主に店舗として入れるもの)を調査してまとめた「古本屋ツアー・イン・神保町」を出したことにより、その考えに少し変化が訪れる。


とにかくネットには、己が作り出した膨大な古本屋のデータが漂っている。街を括りにしてこのような本が作れるのならば、例えば古本屋が多く集まる『中央線沿線』でもまとめることが出来るはず。また『古本屋ツアー・イン・神奈川』なども可能だなと、小さく仄かな野望を抱き始めるようになったのである。


しかし次なる本の雑誌社からの依頼は、そんな仄かな野望を一蹴する、驚くべきものであった。それは『首都圏』の古本屋をまとめて一冊にするという、あれば確実に便利だが、その全貌が良く掴めぬ、壮大な企画だったのである。慌てふためきすぐさま編集者と打ち合わせに入るが、話せど知恵を出せど、進むべき道が、闇に閉ざされているように見えて来ない。…これは、まずは腰を据えて、首都圏の範囲を定め、それを元に古本屋のデータを作成するしかないと、苦手な作業にまずは従事することを覚悟する。それはまるで、呼吸を停めて素潜りするような、地味で苦しく真摯な日々であった。


まずはどんな本にするかという、基本的なところから決めなければならない。第一歩は簡単で、使えるガイドブックにしようとの方針は最初から決まっていた。ではどのように使えるようにするのか?これが最初から大きな壁として立ちはだかり続けたが、普段古本屋さんに向かうのに、何を基準にしているのかを考えた結果、首都圏に網の目のように張り巡らされた鉄道路線とその駅が浮かび上がって来た。そうか!鉄道路線を基にして、どの駅にどんな古本屋さんがあるのかが分かるようにすれば、地図はなくとも感覚的にその大勢が掴めるようになるはずだと、希望的観測に基づき、もはや迷わず突き進むことにする。


結局作り上げたリストは七百店余に及ぶのだが。まずここで軽く絶望してしまう。この大量の古本屋を、どのように紹介すれば良いのか?ブログの記事をそのまま掲載したら、全四巻ほどの大作になってしまうではないか…いや、どうにかして一冊にまとめなければ、色んな人から怒られてしまう…ということで、主だったお店についてはブログ記事を加筆訂正し、後は路線と駅ごとにまとめた文章で、端的にその特徴を紹介することを決断したのである。


そこからは嘘のようにパッと道筋が見え始め、後は坂道を転げ落ちるように、加速度的に作業は進行して行く。だが、その時にはすでに、作業時間が圧倒的に足りなくなっていたのである。おかげで盛大に、編集者・デザイナー・校正者にご迷惑をおかけすることになってしまった…。


そんなこんなで難産の末に生まれた「古本屋ツアー・イン・首都圏沿線」。おかげさまで、様々な方の尽力を得て、素晴らしく凄まじい本になったと自画自賛する。この過密な情報量が、2015年の首都圏の古本屋群を鉄道路線から炙り出し、間違いなく使える前代未聞のガイドブックになったと、強く思い、その嬉しさを今日も噛み締めている。だが、そんな風に今は、本が完成した達成感に恍惚と浸っていられるが、実は頭の隅の何処かで、次はどんな難問を依頼されるのだろうかと、畏れ戦いていたりする。次も作れるならば、きっとそれも前代未聞の古本屋ガイドブックとなるのであろう。…あぁ恐ろしい…だが、楽しい!
                            



『古本屋ツアー・イン・ジャパン』 2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売っている場所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ。「フォニャルフ」の屋号で古本販売に従事することも。ブログ記事を厳選しまとめた『古本屋ツアー・イン・ジャパン 全国古書店めぐり 珍奇で愉快な一五〇のお店(原書房)』と、神保町についてまとめた『古本屋ツアー・イン・神保町(本の雑誌社)』が発売中。共編著に『野呂邦暢古本屋写真集(盛林堂書房)』があり、とにかく古本屋にまみれてい生きている。
http://furuhonya-tour.seesaa.net/



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『古本屋ツアー・イン・首都圏沿線』 小山力也 著
本の雑誌社刊 定価:2,200円+税  好評発売中!
http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860112776.html

Copyright (c) 2015 東京都古書籍商業協同組合

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