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古本屋ツアー・イン・ジャパン2025年総決算報告

古本屋ツアー・イン・ジャパン2025年総決算報告

古本屋ツーリスト 小山力也

 ここにこうして文章を書けているということは、2025年も無事に古本と古本屋さんに塗れて過ごした証拠である。もうこのような暮らしを始めて、早十七年になるだろうか。人生のおよそ三分の一を、古本屋さんに捧げているようなものである。だが、そんなにも現在進行形で人生の重大面を占めているのに、それが日常になり過ぎて、自分では異常な行動をしているということには、全く気付いていなかった。

それを示唆してくれたのは、ミステリ評論家の日下三蔵氏で、氏の書庫を長年整理し続けたおかげで、久々の単行本「古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸」を上梓したことは、当メルマガでも報告させていただいた。同時に日下氏も自身の目から見た書庫片付けの記録「断捨離血風録」を出していたので、一緒にトークイベントなどを行うことが多かったのだが、その際日下氏に『小山さんは毎日古本屋に行くおかしな人です』と紹介されたのである。

確かに私は、まるで息をするように普通のこととして日々古本屋さんに通っているが、古本の権化のような氏に、まさかそんな風に見られていたとは……あぁ、私は、おかしな人だったのか。と今更ながら気付いた年なのであった。

 さて、まず上半期の活動を簡単に振り返っておこう。古本屋さん関連では、ひばりが丘の「ひばりが丘書房」にようやく入ることが出来た。福祉系の激安店であるが、二度目に行った時にレア写真集を掘り出せたりしたので、定期的に訪れたいお店と言えよう。柴崎の「古書柴崎」は小さなビルの階上にある小さなお店である。一月には西新井の老舗「書麓高田書店」が閉店。また三月に蕨の「古書なごみ堂」が華々しくバーゲンセールを行いながら閉店。その他にも若林「十二月文庫」、「小川書店平塚店」、関内「博文堂書店」が、役目を終えて実店舗を閉じた。古本屋さんに関わる活動としては、相変わらず西荻窪「盛林堂書房」の買取を手伝いつつ、神保町『春の古本まつり』にも売子として四日間精勤。古本を買えないのは悲しいところだが、神保町に出勤する喜びは、いつでも大きなものであった。後は、十月に大阪「梅田蔦屋書店」で開かれる独り古本フェアに向けて、てんてこ舞いしながら古本を買い集める日々が続いた。  

 そして後半戦である。七月は「盛林堂書房」が研究を続けている探偵作家・大阪圭吉の展覧会が「東京古書会館」で開かれ、期間中その受付を一週間ほど務める。まさか東京の古本屋さんの総本山に、出勤する日が来るとは、人生何が起こるかわからないものである。九月には国立の「みちくさ書店」が『国立デパート』内で領土を拡大しているのを目撃。今に『中野ブロードウェイ』を侵食する「まんだらけ」のようになるのではないかと、大いに期待している。

十月には、「梅田蔦屋書店」で独り古本フェア『はじめてのヴィンテージブックス』を開催。およそ一ヵ月の期間中に六百冊余のクセのある古本をエスカレーター前に並べ、三百四十冊を売り上げることに成功する。これは今年も開かれるかどうかまだ不明だが、準備は怠らぬよう日頃から古本を買い集めておかなければと、今から胆に命じてしまっている。また『第65回神田古本まつり』に、もう当然のように盛林堂ワゴンに売子として出現。時々、東京都古書籍商業協同組合さんが作成してくれた、当メルマガの記事をまとめた無料小冊子「古本屋ツアー・イン・ジャパンの総決算 十四年分」にサインを求められる機会があったのだが、何人かのお客さんに「最近は遠くへ行かれないんですね」と言われる。南千住では「大島書房」がいつ閉めるとは確定していないが、閉店セールを始めてしまっている。

十一月には久々のフリーマーケット式古本市『みちくさ市』に出店予定だったが、残念ながら雨で中止に。もうこれで一年以上参加出来ていないので、今年はぜひとも楽しい対面販売をしたいものである。神保町では、水道橋駅近くの学術書に強い「丸沼書店」が閉店。法律書にも強かったので、弁護士の義理の甥から「丸沼書店閉店は弁護士界に衝撃が走った」という話を聞き、さもありなんと首肯する。

十二月には、吉祥寺の絵本のお店「あぷりこっとつりー」が消滅しているのを目撃し、東急世田谷線の松陰神社前に小さく瀟酒なお店「SAoleil et lune」を発見。松陰神社前の商店街にはお洒落なお店が多く、行き交う人もまたお洒落なので、実に街にマッチしている空間となっていた。また阿佐ヶ谷では、鄙びたアパートの一室をお店に改装した「鹿のデコイ」に潜入。大量の実験音楽のカセットテープとともに、SF文庫がズラッと並ぶ光景は、手術台の上でミシンと蝙蝠傘が出会ったように奇妙なものであった。  

 そんな風に古本屋さんと古本の間を飛び回っていると、古本の神様は時々とてつもないご褒美をくれる。上林曉「嬬恋ひ」の献呈署名入りが五千円、東野圭吾「手紙」署名入りが二百円、「Be50’s写真集 ハートはTEDDY PART2」が百五十円、梶山季之「生贄」が百十円、日夏耿之介「巴里幻想集」署名入りが二千円などが嬉しいところであるが、実は人生最大の掘出し物にも出会ってしまった。横尾忠則の新書館「一米七〇糎のブルース」を七千円で購入したのだが、何と見返しに貼付けられた高級封筒の中に、出版記念の横尾デザイン映画スピードポスター風ポスターが折り畳んで入っていたのだ。献呈籖も挟まっていたので、献本にはこのように稀少なポスターが付属していたのであろう。このような伝説的なものに、万が一でも出会える機会のある古本屋さんは、本当に興味深く可能性のある空間であるというのを、再認識した衝撃的な出来事であった。  

 今年もまた、当然古本と古本屋さんに塗れて過ごし続けるつもりである。すでに幾つかの閉店・開店情報も飛び込んで来ており、また己のフットワークの低下から放置している新店等も、重い腰を上げて見に行くつもりである。三月には「本の雑誌」で連載している『毎日でも通いたい古本屋さん』が、いよいよ連載百回を迎える。ただ好みのご近所の古本屋さんを訪れ、読みたい古本を買う記事であるが、ここまで続くとこれもまた大事な人生の一部となっている。遠いお店についても、今年こそは何処かに足を延ばしたいとぼんやり思っている。

四月開催の古本界のビッグイベント『全ニッポン古本博覧会』には、すでに例年の如く盛林堂の売子として参加する予定だが、他にも縁の下の力持ちとして手伝っていることがあるので、ぜひとも大盛り上がりし、古本が売れに売れてくれれば幸いである。  

 まぁとにかく、古本屋さんがあって古本があれば、それを買いに行くまでだ。今年も何とぞよろしくお願いいたします。

 

小山力也 (こやま・りきや)

2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売っている場所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ『古本屋ツアー・イン・ジャパン』管理人。西荻窪「盛林堂書房」の『フォニャルフ』棚と大阪「梅田蔦屋書店」で古本を販売中。「本の雑誌」にて『毎日でも通いたい古本屋さん』連載中。最新刊は「古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸」(本の雑誌社)
http://furuhonya-tour.seesaa.net/ 

 

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書名:『古本屋ツアー・イン・ジャパンの総決算十四年分 付・古本屋探検術』
著者:小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン)
発行元:東京都古書籍商業協同組合 広報部・機関誌部 日本の古本屋メールマガジン編集部

 

過去のメールマガジンはこちらからご覧ください!
『古本屋ツアー・イン・ジャパンの総決算十四年分 付・古本屋探検術』(2025年10月27日号)

https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=24778

 

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