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古本屋ツアー・イン・ジャパン ビヨンド

古本屋ツアー・イン・ジャパン ビヨンド

古本屋ツーリスト 小山力也

 続編がこれほど早く出せるとはまったく思っていなかったのだが、実は先月お知らせした「古本屋ツアー・イン・首都圏沿線(本の雑誌社」の地獄のような進行とともに、さらにその地獄を深めるが如く「古本屋ツアー・イン・ジャパン それから(原書房)」の制作作業も、慌ただしく無茶に進んでいたのである。


当初この「それから」は、便宜上のプロジェクト名として「古本屋ツアー・イン・ジャパン ビヨンド」と、仮に名付けられていた。単純に『2』とか『続』とか『新』とか『またまた』とかでは味気ないだろうというところから考え始め、最終的に当時ヒットしていた北野武監督の映画『アウトレイジ・ビヨンド』に感化され、何だか少し笑えるプロジェクト「ビヨンド」となったわけである。しかし一見軽薄にも思えるこの名には、続編を出すからには確実に前巻を越えたいという強い思いが、しっかりと真面目に込められていたのである。


本の土台は当然ブログに載せた全国古本屋自主的調査記事なのだが、もはや二千軒ほど調べ回っているので、二冊目と言えどネタに困ることはまったくなく、この分ならまだ後五冊は出せるぞ!と、勇ましく思ったりする始末。しかし、同時進行していた「首都圏沿線」と同じお店を載せるわけにはいかず、その配分には若干の苦労があった。結果、「首都圏沿線」では現在的情報を最優先し(すでに前巻に掲載されていたり、ガイドとしてどうしても外せないお店は、改めて再調査&完全リライトして掲載)、「それから」では記録性の高い閉店してしまった特色あるお店を多く扱うこととなった。


また、日々のツアーの余録である『どひゃっほう本(安値で見つけた掘り出し物を手にした時に、最上級の喜びの叫び声として心の中に響く言葉が“どひゃっほう”である)』も、長年の成果を披露するが如く6ページに三十点余を展開。さらに当『「日本の古本屋」メールマガジン』に掲載した、毎年の古本屋ツアー活動報告の2010年~2014年分を掲載。これはあくまで個人の古本屋調査活動報告であるが、その息の長さ故か、そうして年代順に並べると、ここ最近の古本屋界動向の一側面を的確に切り取っているページになった気がしている。


もちろん巻末には今まで巡って来た古本屋さんの全リストを掲載…しかしここで初めて、順調に進行して来た構想と作業が立ち止まってしまう…前巻では『古本屋ツアー・イン・ナハ』という、ツアー未上陸の沖縄に赴き、那覇の古本屋さんを一日で風のように巡る単行本オリジナル企画があったのだが、新巻では果たして何をすべきか…。北海道古本屋弾丸ツアー、四国古本屋お遍路ツアー、東北太平洋沿い古本屋再訪ツアーなどが挙ったが、どれもいまいちしっくり来ない…やはりここは絶対にビヨンドしなければならないのだ…。


単行本のために記事を書くのではなく、己が真に行きたい所に行って書きたい記事を書いてみたい。そう初心に立ち返った結果、真っ先に浮かび上がって来たのは『旧江戸川乱歩邸と土蔵』という、もはや古本屋ですらないものであった。だが、あの日本探偵小説界の大巨人、子供の頃からその小説に魅入られ、いまだにその虜となっている身としては、無謀だが是が非でもツアーしてみたい場所なのである!


それにあそこには、ワンサカ古本(と新刊が古本と化したもの)があるはずなのだ! そう大胆に思いつき、100%ダメ元でオファーしてみると、何とこんな本でも奇跡的に取材OKが出てしまったのである。そんな真夏の白昼夢のような、驚きっ放し、叫びっ放しで、かつてそこに立ち入った乱歩研究者とは180度違った興味本位の物見遊山なツアーは、瞬く間に全18ページとなり、本の真ん中に目玉企画として収まることとなったのである。


そんな風にして、仮名の「ビヨンド」が取れて、ようやく発売された「それから」。いやに趣味性がスパークし、いやに探偵小説寄りになってしまった感も否めないが、これもまた、長く果てしなく続く古本屋調査人生の、道程なのであろう。


この本には、十年経っても百年経ってもこの世界に残り続けて欲しい。遠い未来に数を減らしても残っていたなら、古本屋さんの店先に並んでいて欲しい。そして未来の人に想像して欲しい、こんな珍奇で愉快なお店がたくさんあったのかと。そう言えば、近所にまだあるあのお店は、そんな名の古本屋さんではなかったかと。
                           



『古本屋ツアー・イン・ジャパン』 2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売っている場所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ。「フォニャルフ」の屋号で古本販売に従事することも。ブログ記事を厳選しまとめた『古本屋ツアー・イン・ジャパン(原書房)』と、神保町についてまとめた『古本屋ツアー・イン・神保町』さらには首都圏沿線の古本屋約700軒をガイドした『古本屋ツアー・イン・首都圏沿線』(共に本の雑誌社)、さらにさらに「古本屋ツアー・イン・ジャパン それから(原書房)」が発売中。共編に『野呂邦暢古本屋写真集(盛林堂書房)』があり、とにかく派手にどこまでも古本屋にまみれて生きている。http://furuhonya-tour.seesaa.net/



japan



『古本屋ツアー・イン・ジャパンそれから』 小山力也 著
原書房刊 定価:2,400円+税  好評発売中!
http://www.harashobo.co.jp/new/shinkan.cgi?mode=1&isbn=05253-0

Copyright (c) 2015 東京都古書籍商業協同組合

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