『本屋の周辺Ⅴ』について松永 弾正
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これまで自分が巡った国内外の本屋を『本屋の周辺』シリーズとしてH.A.Bより刊行してきたが、本書、『本屋の周辺Ⅴ』は京都市内にある本屋を対象としている。
京都には、現在皆様が読んでいる洋装本ではなく和本を取扱っていたり、仏教書を専門とした本屋が存在している。また、江戸時代より営業している店もある。本書では江戸期より営業している店も含め自分が訪れた7軒の本屋について、資料調査も含めて書いている。 今も営業している喫茶店がかつて本屋をやっていた話から調査を行なった「[調査ノート]ミレー書房」や京都の古本まつりに1年間通ってみた話も収録している。「[調査ノート]ミレー書房」では「民主書店」がキーワードであったが、おそらく本屋に関する本(以降「本屋本」とする)ではあまり記述がされていない分野だと思う。 なお、本書の調査では貝葉書院の項にて黄檗山萬福寺の黄檗文化研究所へ調査に伺った。 『本屋の周辺』について簡単に申し上げると、会社員として働いている自分が趣味で巡った国内外の本屋についてまとめた本である。自分はこれまで出版業界で働いたことすらない、ただの趣味人である。2022年10月27日に『本屋の周辺Ⅰ』を刊行し、半年から1年に1冊のペースで続刊を出し、現在5冊刊行している。 本屋巡りは学生の頃、神田三崎町に通学していた時からやっていた。当時は丸沼書店や有文堂書店、篠村書店によく通っていた(この頃はまだ趣味ではなかった)。2019年にとりあえず何か書きたいと思いnoteに自分の本屋巡りを書き始めた。その後しばらくして和氣正幸氏にお声がけいただき、BOOKSHOP LOVERに「松永弾正の本屋紀行」を持つことになった。連載を書き続けてしばらくすると、本書の版元H.A.Bの松井祐輔氏よりお声がけいただいた。「松永弾正の本屋紀行」とnoteの記事といくつかの新規原稿を加え、H.A.B ZINEシリーズとして刊行することとなった。本屋巡りが趣味の人が記事を書き続けていたら偶然本になった、それが『本屋の周辺』だ。 このシリーズでは実際に伺った本屋について資料を使い「その本屋がどのような歩みをしたのか」を書いている。この特徴はこれまでに刊行されているいわゆる「本屋本」にはあまりないものだと認識している。あまり意識していないが、田中治男の『書店人国記』と資料調査を足した感じだと思う。 主に使っている資料は『全国書籍商総覧』や『古本年鑑』などの名鑑や書店名簿、組合史や「日本古書通信」に官報、近世ならば国書データベースやARC板木ポータルデータベースと意外と広範囲な気がする。資料は国会図書館を利用したり現地の図書館へレファレンスを依頼して収集する。また、日本の古本屋や訪れた古書店でも資料を購入している。それ以外に、2018年に出したZINE『本屋の本の本(壱)』のために収集していた本屋本も資料としている。 自分が会社員であり、研究を業としていないため、可能な限り皆様もアクセス可能な資料を用いている。 『本屋の周辺』は当初、自分が各地で巡った本屋について書くだけのはずだった。松山の古本屋を訪れた際(当時は鹿児島・熊本・都城・宮崎・別府・大分・松山・伊予大島の本屋を約一週間で巡っていた)に資料をいただいたことが方向を決定付けた。この出来事がなければ今のような形には間違いなくなっていなかったし、書籍にもなっていなかったはずだ。 時間が経てばそこに何があるかなんて忘れられてしまう、ということへのささやかな抵抗として書いている。また、資料を使っていれば後の人が参照し、様々に話を進めることができるはずだ。業界全体や大きい本屋についての本はあるものの、個々の店について話の土台となる記述が多くないと感じていることも、『本屋の周辺』を書き続けている動機となっている。皆様の街に昔から営業している本屋があるとすれば、その店を辿れる記録が少しでもあるか、ぜひ見てもらいたい。 と言いつつ、自分にはどうやら気になったことがあると調べずにはいられないという気質があり、こちらも書き続けている理由になっているのかもしれない。 余談だが、書名の由来は布川角左衛門の『本の周辺』である。 本書以後も『本屋の周辺』は可能な限り継続して刊行していきたい。そのためには書誌学以外にも、近現代の教科書流通に関しての知識を入れておきたい。教科書に関して記述がある本屋本をあまり見たことがないのだが、個人的に新刊書店の話では教科書の存在は無視できないものであると考えている。 最後に宣伝色が強くなることをご容赦いただきたい。 京都に興味がある方なら最新の『本屋の周辺Ⅴ』を、東北ならば前号と前々号を、著者の執筆スタイルが立ち上がりながら沼へ落ちていく流れを見てみたいならば最初からと、『本屋の周辺』は基本的にどの本から読んでも大丈夫なようになっている。既刊では松山大街道の一等地にあった松菊堂書店の話や、戦後に洲之内徹が松山で営業していた本屋の話も取り上げている。 『本屋の周辺』は版元のインターネット販売以外にも、国内の本屋でも取り扱っていただいている。興味のある皆様、本を探しているついでに本書も手に取っていただければ幸いである。 『本屋の周辺』は版元との直取引となっている。興味のある本屋の皆様、1冊からでも取扱いが可能なため、取扱いたい際は是非版元H.A.Bにご連絡いただければと思う。
松永弾正
本屋旅行人。1992年生まれ。平日は会社員、休日は各地の本屋を巡り本屋や出版流通の歴史も見ている。本屋に関する本(いわゆる本屋本)や近世~現代の出版史・書誌学に関する本を蒐集している。最近は台湾によく渡航している。近現代の教科書流通に関する勉強をしたい。 2024年『近代出版研究 第三号』(皓星社)に「本屋の調べ方 「本屋誌」のための方法」を寄稿。2021年からBOOKSHOPLOVER にて「松永弾正の本屋紀行」を連載中。 ![]() 書名:『本屋の周辺5 特集:京都書肆』 著者:松永弾正 出版:H.A.B(ZINEシリーズ) 判型/ページ数:A6(文庫)版/168ページ 価格:1,320円(税込) 好評発売中! 『本屋の周辺』シリーズ 『本屋の周辺 Ⅰ 』
『本屋の周辺 Ⅱ』
『本屋の周辺 Ⅲ』
『本屋の周辺 Ⅳ』
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