『本、お届けします。――注文配達専門さかえだ書店」』について栄田浩己
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僕にとって本とは、読書好きな少年が、この人生とは何かという極めて素朴な疑問を発して、この問いに応答してくれるものだと思っています。
つまり、本屋を始めたのは、42歳でしたが、その歳になるまで、僕なりの人生があって、少年時代発した人生とは何ぞやという疑問が、論語にある孔子の言葉「朝(あした)に道を聞かば夕(ゆうべ)に死すとも可なり」というところの究極の生き方としての「道」を求めていくものでした。その答えを求めていく中で様々な書に出逢い、その書が僕なりの生き方を指し示す役割を果たしてくれたと思っています。 本屋を開くまで勤めていた施設が、39歳の時、閉園になったのを機に、以前から本屋をしたいという思いを、実現したく、本屋見習いを3年しました。 その本屋見習いで、知ったことですが、その書店には日販から書籍は配本されていたのですが、僕が担当した学習参考書の棚には、神田神保町にある中小取次店、通称「神田村」の博文社から配本されていたので、僕は書籍の補充を博文社から取り寄せていました。そんなことで、神田村の存在を知ったのです。そこで、休みの時に、神田村に出向き、博文社を始めとして、その他の取次も見て回るうちに、お客さんから注文受けた本が、神田村の棚にあり、お金さえ出せば、その場で仕入れが出来ることを知ったのです。 本屋見習いを体験した中で、僕が本屋をするとしたら、委託販売でなく、自分が選択した書物を買い切りで仕入れて棚にならべるということでした。この考えを、関係者に話したら、委託でない買い切りの本屋を開くなんて、直ぐ閉店するにきまっていると言われましたが、僕にとって本とは、人生の指針となるものであって、その書を求めている人に応える本屋で無ければ、本屋を開く意味がないと思いました。 そんな思いで42歳の時、開いた本屋でしたが、半年もしないうちに、皆が指摘した通り店の売上では店舗代も払えない現実にぶつかり、一緒に書店で働いていたカミさんに急遽、外で働くことをお願いして、まだ小学生だった息子と娘まで、ひきこんで、店番を手伝はせ、九年もの間、「神田村」を中心にして毎日仕入れに行き仕入れた書籍を棚に並べました。 その九年間には、店にスーッと入ってきて、すぐ出ていく、お客さんもいましたが、並べられた書物を見て、「自分が読みたい本ばかりだ」といわれて、すっかり、気に入ってくださったお客さんが、大勢出来ました。そのお客さんの多くは、書物を通して知的探求を目指す学習者もいれば、自分の生きる意味を追求する求道的学習者もいました。 十年目になって、無店舗の本屋に切り換えたのは、僕が毎日仕入れにいくことで、注文のあった本は、神田村のある本は翌日に入り、神田村に無い本は、出版社に直接に行って仕入れて、届けたので、お客さんにとっては学習意欲を中断することなく継続されることにもなり、大層喜ばれていることを体験的に知っていたからです。 丁度、契約更新時に、店舗の建て替えの話があり、思いきって無店舗に切り換えたわけでしたが、店舗から無店舗になっても、店舗時代のお客さんが、中心となり、本屋開店二十周年に出した『荻窪さかえだ書店の本を愉しむ人々』に投稿された60名近いかたは、殆ど、店舗時代のお客さんでした。 店舗の利点は、買う予定の無い書物を、たまたま手に取って見ているうちに欲しくなり、買うという本との出会いがありますが、注文の本は、あらかじめ、読みたいという目的の本ですから、その本を確実に仕入れてお届けすることには、お客さんの学習意欲を満足させることになります。 また、年二回位でしたが、十名前後、本好きな、お客さん同士が、持ち寄りのお酒や、つまみを元に交流できる場をもうけて行いました。 そんなわけで、買い切りで並べた本屋を9年、無店舗になって注文配達専門の本屋に切り換えて33年、合わせて42年続けて来られたのは、書物を通した、お客さんとの繋がりがあったお陰だと思います。 そんな、こんなことを今度発行した『本、お届けします』の中に書いてあります。 ![]() 書名:本、お届けします。 ――注文配達専門「さかえだ書店」 著者:栄田浩己 出版社:秀明大学出版会 判型・ページ数:四六判並製・224ページ 定価:1,650円(税込) ISBN:978-4-915855-53-5 Cコード:C0095 好評発売中! http://shuppankai.s-h-i.jp/ |
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